カテゴリーアーカイブ:社会

上野誠著『万葉学者、墓をしまい母を送る』

2022年10月21日   岡本全勝

上野誠著『万葉学者、墓をしまい母を送る』 (2022年、講談社文庫)を紹介します。友人が勧めてくれたので、読みました。

上野誠・奈良大学名誉教授による、親族の死と葬式をめぐる考察です。
・半世紀前の祖父の自宅での死と地域での葬式と、最近の母の病院での死と家族だけの葬式。その民俗学的比較。
・遺体を湯灌する際の怖さ。
・祖父がつくったとても立派なお墓と、それが維持できなくなり墓じまいをすること。その民俗学的、経済学的考察。
・両親の面倒を見ていた兄の死で、実家を離れていた弟が高齢になった母を引き取り、見取り、葬式を出すこと。その体験談。
大家族が核家族になり、自営業が勤め人になり、子どもたちが家を離れます。地方都市での商店・問屋が成り立たなくなり、大きな家やお墓を維持できなくなります。私の体験と一部共通することがあるので、身につまされる思いで読みました。

1960年の明日香村、おばあちゃんが死んだときは、親族と隣近所をあげての葬式でした。座棺(丸い風呂桶のようなもの)に収め、籠に乗せて、葬列をつくって、山の上の墓地まで行きます。土葬です。近所の人が集まって料理をつくり、墓を掘りに行きます。仏壇の前で、おばさんたちが念仏を唱え、大きな数珠を繰ります。その輪の中に座らされた記憶があります。
村でも、その後は火葬になり、葬式は家から出すのではなく、斎場を使うようになりました。このあたりは、上野先生と同じです。

お墓は、山の上の埋め墓とお寺の境内の参り墓の二つありましたが、岡本の墓は近年に、参り墓に集めました。村の地主で名家だったので、お寺の境内の一番良い場所に大きな石の墓があります。私の曾祖母が建てたそうです。
本家の当主(伯父)と跡取り(いとこ)が亡くなり、次男だった私の父が本家の屋敷や墓の管理をし、父の死後は私の弟が管理をしています。長男である私は東京にいて、勤め人なので、まったく役に立ちません。弟夫婦に感謝です。
戒名をもらうのに多額のお金が必要であることについて、上野先生はお寺を維持するために必要だと説明しておられます。その点は納得しますが、大きな家やお墓の維持は、地主制度がなくなり、自営業をやめて勤め人になると、子孫にとって負担は大変になります。

「立派な墓をつくると家は栄える」と言うことについて、上野先生は「家が栄えると立派な墓がつくられる」と読み替えておられます。私の若いときも、見合いの聞き合わせ(相手の家の近所に行って、その家がどのような家かを調査する)の際に、お墓を見るとその家の格が分かると聞いたことがあります。昭和は遠くなりました。

優先座席に座るかどうか

2022年10月20日   岡本全勝

障害者などのための電車の優先座席が適正に使われているかを調べた調査があります。「どうすれば「優先席」を優先利用できるのか~罰則? 社会の目? それとも……」(ウェブ論座、10月10日)
全国6地区で比較調査したところ、札幌での適正利用率が飛び抜けて良く、関東は極めて悪いです。札幌市営地下鉄は「専用席」だそうです。

私が利用する地下鉄丸ノ内線でも、元気そうな若者が優先座席に座って、スマートフォンに熱中しているのを見かけます。外見だけでは判断できませんが。テニスの用具を持って、これから練習に行くと見える人が座っているのを見ると、「なんやこの人?」と思います。
私は「あなた元気そうなのに、優先席に座っていますね。あそこの高齢者や子ども連れに譲ってあげませんか」とは、よう言わないので、黙って見ています。根性無しです。
私にできるのは、まずは優先席に座らないこと。普通の座席に座っていて、そのような人が乗ってきたら、座席を譲ることです。

今日も、二人連れの高齢者が乗ってきて、私の隣が一つ空いていたので、二人で座ることができるように座席を譲りました。「すみませんねえ」とおっしゃるので、「いえ、私の方が若いですわ」と笑いました。小さな満足です。

自転車の取り締まり強化

2022年10月15日   岡本全勝

警視庁が、自転車の交通違反の取り締まりを強化するとのことです(10月14日のNHKニュース)。
・・・自転車の悪質な交通違反について警視庁は、これまで「警告」にとどめていた違反にも刑事罰の対象となる交通切符、いわゆる「赤切符」を交付して検挙する方針を固めました。信号無視など自転車の交通違反による事故が相次いでいることを受けたもので今月下旬にも取り締まりの強化に乗り出すことにしています・・・
・・・具体的には、
▽信号無視
▽一時不停止
▽右側通行
▽徐行せずに歩道を通行の
4項目のうち悪質な違反については、これまで「警告」にとどめていたケースでも今後は交通切符を交付して検挙するということです。
交通切符を交付されると検察庁に送られて刑事罰の対象として扱われるうえ、一定の期間内に繰り返し検挙された場合は、講習の受講が義務づけられています・・・

信号無視した自転車が危険なことは、最近このホームページに書いたばかりです「魔の交差点?」。数日前にも、冷やっとすることがありました。「危ない」と叫んでも、自転車は通り過ぎたあとです。
新高円寺駅前交差点での取り締まりも、よろしくお願いします。

情報は爆発しても、人が咀嚼できる量には限りがある

2022年10月11日   岡本全勝

9月24日の朝日新聞「はじまりを歩く」は、「日本初のホームページ」でした。今や誰もが利用する、しかも毎日何度も使うホームページですが、日本初は1992年だそうです。まだ30年なのですね。
私がこのホームページをつくったのが、20年前です。いろいろな組織のホームページを閲覧するだけでなく、素人でも簡単につくることができます。
記事に、次のような話が載っています。

膨大な情報の海から、どうすれば必要なものを効率よく見つけられるかも難題だ。05〜10年度に文部科学省の「情報爆発プロジェクト」という研究事業があった。世界中でやりとりされる情報の爆発的な増大にどう対応するかを多面的に研究した。
まとめ役だった喜連川優(きつれがわまさる)さん(67)はいま、東京都千代田区にある国立情報学研究所の所長を務める。
情報爆発に私たちはどう向き合えばいいのか。そう尋ねると、「それが分かれば苦労はありませんよ」と笑いながら、こう話してくれた。
「どれだけ情報が増えても、一人の人間が咀嚼できる量には限りがある。私たちは、より優れた検索の仕組みを開発しようとしています。情報の供給者も、話題のトピックについて様々な視点を整理し、分かりやすく伝えるキュレーション(情報の収集・整理)の役割がますます重要になるのではないでしょうか」

子どもの心「なんとなく不調」

2022年10月6日   岡本全勝

9月20日の日経新聞夕刊「子どもの心「なんとなく不調」」、平山哲・大阪母子医療センター子どものこころの診療科副部長の発言から。

ここ3年ほど、子どもの心のストレスが話題になり、精神疾患発症率の上昇なども報告されるようになった。国立成育医療研究センターが2020年6月以降に公表した複数の報告書では、心身の不調を訴えている子どもが一定数いることがわかっている。
21年12月に実施したアンケートでは、1週間のうち数日以上で「気分が落ち込む、ゆううつになる」などと答えた小学4~6年は36%いた。中学生では56%にのぼっている。「疲れた感じがする、気力がない」と回答したのも小学4~6年で43%、中学生では75%だった。
私は子どもの発達にかかる領域全般を専門に診療しているが、初めて受診される方の約半数は未就学児で、残り半数は小中高校に通っている児童や生徒。未就学児では発達に関する相談が中心だが、小学生以上になると学校生活の問題や思春期特有の悩みなど、心のストレスにまつわる内容が多くなる。

そもそもストレスはどのような時に感じるのか。
嫌な出来事があった時によく「しんどかった、つらかった」などと言う。だが、実は嫌な事だけがストレスにつながるとは言い切れない。
厚生労働省によるコロナ下でのメンタルヘルスに関する調査では、回答した15歳以上の約8300人のうち17.5%が「第5波」の期間だった2021年7~9月に「生活の変化に対する不安」を感じていた。このような結果を参考にすると、ストレスとは嫌な事があった時だけではなく、変化が起きて心身へ何らかの影響があったことで生じると考えられる。
外来では「コロナが落ち着き、遠足や運動会など様々な行事が再開できるようになって楽しみにしていたのに、体調を崩してしまった」と保護者が不思議そうに話すことがある。楽しみにしているにもかかわらず、体調不良という正反対の反応が出てしまっている。これも変化によって生じた不調と言えるだろう。

大切なのは子どもと対話をすることだ。国立成育医療研究センターのアンケートでは「子どものことを決めるときに大人たちが気持ちや考えを聞いてくれるか」と尋ねたところ、小学4~6年で18%、中学生で39%が「そう思わない」と感じていた。
大人に対して「もっと熱心に話を聞いてほしい」「接している時にスマホを見ないでほしい」など求める声もみられた。
外来にくる子どもたちを診療していると、コロナ下であっても「友達と遊ぶ」「祖父母に会いに行く」など自分がしたいことを保護者と共有できている子どもたちは元気に過ごしている傾向がみられる。話す時間は短くてもかまわない。「明日は何をしようか」ということを保護者から語りかけてもらいたい。