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社会

人の弱みつけこむテック企業

8月11日の日経新聞、トロント大のジョセフ・ヒース教授の「情報中毒から理性守れ」「人の弱みつけこむテック企業 哲学者が憂える副作用」から。

・・・ソーシャルメディア、アルゴリズム、そして人工知能(AI)。情報技術は恩恵と同時に様々な問題を社会にもたらしている。テクノロジーと適切に向き合うにはどうすればいいのか・・・

「問題は、企業が人間の弱みにつけこむことがあるという点だ。私たちの脳は大量の情報を瞬時に処理できる。だからスマートフォンの画面からとめどなく流れてくる刺激にくぎづけにされてしまう。ここに商機を見いだしたのがビッグテックの企業群だ。
これらの企業のサービスにうつつを抜かしている間に、貴重な資源である集中力が奪われてしまった。刺激に身を委ねるばかりで熟考の習慣を失った人々は非合理的な判断に傾きやすい。思考停止、他者への攻撃的な態度、そして摩擦と分断。情報技術がもたらしたそうした状況を見るにつけ、今の社会は正気を失っていると思う」

「動画共有サイトやネットショッピングのサイトは消費者の検索・閲覧履歴を学習し『おすすめ』を繰り出してくる。次々に表示されるコンテンツには中毒性があり、気がつくと見入ってしまう。これを1日に何時間も眺めていたら、人生の長い時間をオンラインで過ごすことになる」
「人間の認知の特性を研究したテック企業は様々な手法を用い、時間や注意力という私たちの貴重な資源を収奪する。だからネットを見続けるのがよくないことは誰だってわかっているが、弱点につけこまれあらがえない。まずこの現実に目を向ける必要がある」

世間で広がる英会話

先日の地下鉄駅でのことです。外国人旅行者と思われる家族連れに、駅員さんが英語で話していました。説明を受けて家族は、出口に向かって進んで行きました。
駅員が手すきになった頃合いを見て、質問しました。「英語は必須ですか」と。駅員さん曰く「はい、しゃべれないと仕事になりません」とのことでした。
車内放送でも、録音でなく、車掌さんが英語で説明しています。

東京の地下鉄や鉄道は、外国人観光客がたくさん乗っています。ロンドンやパリでも、観光客と思われる人がたくさんいますから、東京も同じようになったということですね。
外国企業を相手にするような専門の職場だけでなく、訪日外国人が増えて多くの職場で英語が必要になりました。ホテルはもちろん和風旅館でも、従業員が英語を話すようになりました。中国語を話す従業員も増えています。

かつては、「私は英語は話せません」と変な自慢をする人がいました。中学3年間、高校3年間、場合によっては大学4年間(予備校1年間)も英語を習っていながら、話せないのはおかしいですよね。難しい学術用語を使うのではなく、日常会話です。
学校での英語教育は、将来使わない場合は教養でしかありませんでした。しかし職業に必要となると、習得に力が入るでしょう。

博物館の外国人訪問者

先日、キョーコさんのお供で、東京国立博物館「神護寺展」に行きました。暑い日が続いていますが、今行っておかないと行けないだろうと決心しました。
展示物については、それぞれに素晴らしいものですが、それについては実物を見ていただくとして。千年もの間引き継がれてきたことに驚きます。それらは、紙、絹、木でできています。火災や虫、盗難の危機を乗り越えて、守られてきたのです。

ここで述べたいのは、その混雑ぶりです。夏休みの時期もあるのでしょうが、大変なにぎわいで、切符売り場には長蛇の列ができていました。事前に切符を入手していたので、並ばずに入りましたが。
会場も、混雑していました。展示物は、仏像と掛け軸、書類ですから、美術展とは異なりそれほど華やかではなく、わかりやすいものでもありません。子どもを連れて行ったら、「つまらない」と言いそうです。

私の観察では、この会場と本館では、半数以上が外国人観光客と思われる人たちでした。でも、ルーブル美術館に行っても、大英博物館に行っても、プラド美術館に行っても、大半が外国人観光客とおぼしき人ですよね。
私はかつて外国からのお客さんに、東京国立博物館(特に埴輪)、皇居東御苑、大名庭園跡を勧めていました。訪日外国人が増えると、日本らしさを見るために、博物館に行く人も増えるのでしょう。
しかしその観点からすると、東京国立博物館は狭いですね。上野の森にいくつも文化施設が集まっているのは、よい発想でした。ほかにも、そんな地区があればよいのですが。

アルファベット日本語再考

SNSって何のこと」の続きです。「アルファベット日本語、新聞表記」の再考です。

NHKのSNSの説明では、ツイッター、フェイスブック、インスタグラムも「TwitterやFacebook、Instagramなど」と、アルファベット表記です。
SNSという言葉が日本語であることも考えれば、「日本語は、漢字、ひらがな、カタカナで表記する」と習いましたが、アルファベットも追加しなければなりませんね。日本語の表記は、漢字仮名交じりではなく、漢字仮名アルファベット交じりです。

国語学では、アルファベット表記をどのように扱っているのでしょうか。学校の国語の授業ではどのように、日本語の中でのアルファベットの使い方を教えているのでしょうか。ローマ字表記を教えますが、アルファベット表記はそれとは別です。
例えば縦書きの時は、どのように書くのでしょうか。そして、発音はどうするのでしょうか。ローマ字表記は、日本語の五十音に当てはめで、日本語として発音します。

しかし、Instagramは、/ɪnstəɡræm/(Oxford Learner’s Dictionariesによる)と発音するのでしょうか、インスタグラム/ɪnsutaɡuramu/と発音するのでしょうか。SNSも、英語だと、/es en es/という発音ですが、NHKのアナウンサーも含めて私たちは、/esu enu esu/と発音しているようです。

国語辞典も、単語を「あいうえお」で並べるだけではすまなくなりました。これについては、別途書きましょう。「頭は類推する。カタカナ語批判。3

高級だけでないフランス料理

7月31日の日経新聞夕刊文化面、橋本周子・関西学院大学准教授の「フランス料理の精神史⑤「国民国家の時代映す「ポトフ」 家庭料理が育てた愛国心」から。

・・・日本人なら、「フランス料理」と聞いてまず想像するのはホテルのレストランなどで提供される高級フレンチのコース料理だ。グーグルの画像検索で「フランス料理」と日本語で打ち込めば、期待通りのおしゃれな料理の写真が並ぶ。
ところが今度はフランス語で《cuisine française》と入れてみるとどうだろう。もちろん、日本語で打ち込んだ場合と同様の高級フレンチや、日本人も大好きなクロワッサンなども並ぶが、同時にそこにはいくつもの煮込み料理が登場する。ニンジン、ジャガイモ、牛肉・・・ポトフだ。

この検索結果の違いは、私たち日本人が高級フランス料理に、明治期以来の依然強い憧憬のような感情を抱いていることを示すとともに、当のフランス人たちは、そのような高級フレンチだけを「フランス料理」とは思っていないらしい、ということも表している・・・