カテゴリー別アーカイブ: 社会と政治

社会と政治

共働き世帯が専業主婦の3倍に

9月18日の日経新聞に「共働き世帯1200万超、専業主婦の3倍に 制度追いつかず」が載っていました。この30年間に、暮らしの形は大きく変わっています。それが、連載「公共を創る」の主題でもあります。

夫婦共働きが2023年に1200万世帯を超え、専業主婦世帯のおよそ3倍となった。保育所の増設や育児休業の拡充など環境整備が進み、仕事と家庭を両立しやすくなってきたことが背景にある。ただ、社会保障や税の制度には専業主婦を前提にしたものがなお多く、時代に合わせた改革が急務となる。
男女雇用機会均等法が成立した1985年時点で専業主婦は936万世帯で、共働きの718万世帯を上回っていた。90年代に逆転し、2023年までに専業主婦世帯は6割減り、共働きは7割増えた。

23年の15〜64歳の女性の就業率は73.3%に達し、この10年で10.9ポイント伸びた。男性の就業率は84.3%で伸びは3.5ポイントにとどまる。
働く女性が増えた背景には、男女雇用機会均等法が施行され、男女ともに長く仕事を続けるという価値観が一般的に広がったことが挙げられる。同時に保育所の整備やテレワークの普及といった仕事と家庭を両立しやすい環境づくりも進展した。「人手不足のなかで、企業が女性の採用・つなぎとめを進めている」(ニッセイ基礎研究所の久我尚子上席研究員)といった側面もある。

働きの女性の働き方では、週34時間以下の短時間労働が5割超を占める。25歳以上の妻で見ると、どの年代でも短時間が多い。年収は100万円台が最多で、100万円未満がその次に多い。
短時間労働が多い理由の一つに、「昭和型」の社会保障や税の仕組みがいまだに残っていることがある。
例えば、配偶者年金があげられる。会社員らの配偶者は年収106万円未満といった要件を満たせば、年金の保険料を納めなくても老後に基礎年金を受け取れる。第3号被保険者制度と呼ばれる。
第3号被保険者の保険料はフルタイムの共働き夫婦や独身者を含めた厚生年金の加入者全体で負担している。専業主婦(主夫)を優遇する仕組みとも言え、「働き控え」を招くと指摘されている。

会社員の健康保険に関しても、保険料を納める会社員が養っている配偶者らを扶養家族として保障している。専業主婦(主夫)を扶養している場合は1人分の保険料で2人とも健康保険を使えるようになっている。
配偶者の収入制限がある配偶者手当を支給する事業所は減少傾向にある。23年は事業所の49.1%で、18年と比べて6.1ポイント下がった。
税制にも配偶者控除があり、給与収入が一定額以下であれば、税の軽減を受けられる。「働き過ぎない方が得だ」といった考えが残る要因とも言える。共働きが主流となり、各業界で人手不足が深刻さを増すなか、制度の見直しは欠かせない。
夫婦が働きながら育児に取り組むためには、企業の長時間労働の是正や学童保育の受け皿の拡大なども急がれる。官民をあげた取り組みが不可欠となる。

雇用格差対策や職場改革に取り組む労働組合

9月19日の日経新聞に「UAゼンセン、労組で一人勝ち 「非正規」代弁し存在感」が載っていました。

・・・流通・サービス業などの労働組合でつくるUAゼンセンの拡大が続いている。18日に公表した組合員数は約190万人と約10年で3割増えた。非正規の働き手の組織化が進んだほか働き方改善などにも取り組んだことが奏功した。正社員の賃上げに活動の軸を据え続ける主要な産業別労働組合(産別)の退潮が続くなか、存在感は高まる一方だ・・・

・・・UAゼンセンは12年、繊維産業などの労組でつくるUIゼンセン同盟と、小売業などの労組でつくるサービス・流通連合が統合して発足した。2位の自動車総連の約80万人を引き離し、国内最大の産別だ。
日本の労組の組合員数は1994年の1269万人をピークに減少に転じ、2023年には993万人にまで減った。過去10年間、約40の主要産別の7割で組合員が減り、電機連合や情報労連など、1割以上減らした組織も少なくない。そのなかで、UAゼンセンは発足以来、組合員数を約50万人増やし一人勝ちしている状態だ。

躍進の理由の一つが、パートやアルバイトなど非正規の働き手の取り込みに成功してきたことにある。日本の労組は伝統的に終身雇用の正社員が中心だ。国内全組合員に占める非正規の比率は14%(23年)にとどまり、「正社員クラブ」とやゆされることもある。UAゼンセンは非正規組合員の比率は6割超、過去1年に加入した組合員では9割を占める。
ここ20年余り、生産年齢人口の減少が加速するなか、多くの企業が女性やシニアなど短時間労働の働き手を増やした。とりわけ「非正規の基幹化」が進んだのがUAゼンセンの中核を占める小売業や飲食業だ。「職場の正社員比率が低下するなか、『数の力』を強化するため、短時間労働者の組合員化が不可欠になった」(松浦会長)
このため発足当初から「雇用形態間格差の是正」を掲げ、加盟労組に非正規を組合員化する労働協約の改定を促した。UAゼンセンの都道府県支部ごとに目標を設け、地方企業での労組結成も後押しした。昨秋以降もヨークベニマルなどで数千人規模の非正規が組合員となり、串カツ田中などでは新たな労組が誕生した。
23年秋以降、約1万7千人の非正規を組合員に加えたスギ薬局ユニオンでは、原則、正社員に限定していた積み立て有給休暇制度などの対象を非正規に拡大。小沢政道中央執行委員長は「短時間従業員の不満を把握し解消することで離職防止にもつながる」と強調する。

UAゼンセンのもう一つの特徴は賃金交渉以外の活動の広さだ。伝統的に日本の労組の最大の役割は春の賃上げ交渉にあったが、2000年代にはデフレの長期化などで主要企業の労組はベア要求を凍結。13年に政府が企業に賃上げを要請した「官製春闘」でベアは復活したが、要求水準は依然として低く、「労組不要論」すらささやかれた。
UAゼンセンはこの間、職場のジェンダー平等や育児・介護の両立支援など総合的な労働条件の改善に交渉の範囲を広げ、19年には他産別に先立ち、デジタル化などに対応したリスキリング(学び直し)も労使交渉のテーマに掲げた。
今年は小売業などの現場で深刻化する「カスタマーハラスメント(カスハラ)」対策にも力を入れ、顧客の迷惑行為に直面した従業員向けの相談窓口の整備や専門研修の実施を経営側に求める。賃金だけでなく働き手の多様な悩みに対応することが、労組の存在価値を高め、さらなる組合員の獲得につながる好循環が生まれている・・・

給与上がらず、看護師不足

8月26日の朝日新聞に「給与上がらず、看護師不足が深刻 歴30年でも手取り32万円」が載っていました。

・・・東海地方の病院に勤める看護師の女性(58)は週に一度、眠れない夜を過ごす。17時間を超える夜勤に入るためだ。
夜勤は午後4時15分~翌日午前9時30分。その間に1時間の休憩が2回ある。休憩室にはソファがあるが、横にはならない。「寝てしまうのが怖いんです」
深夜は看護師2人だけで患者24人をみる。そのため、自分が休憩中でも、複数のナースコールが鳴れば病室に走らないといけない。
1時間おきに病室を見てまわり、たんが詰まりそうな患者がいればこまめにチェックする。「もし何かあったら……」。朝になって命をあずかる緊張感から解放されると、心も体もへろへろだ。夜勤明けと翌日の休みで疲れをとる。
夜勤のほかに三つの勤務時間があり、シフトは毎週違う。4週間で8日の休みはあっても、生活は不規則になる・・・

・・・日本医療労働組合連合会が今春、全国の125施設を対象に実施した調査によると、4月の募集人員に対して「充足していない」と答えた施設は67%にのぼる。
さらに「充足していない」と回答した施設に影響を尋ねると、51%が「患者サービスの低下」を選んだ。仕方なくおむつ交換や入浴回数を減らす病院もあるという。
今後は高齢化で看護の需要は高まる一方、少子化により働き手は減る。人材確保のためにも、処遇改善が必要になる。

看護師不足の要因のひとつとして指摘されるのが、キャリアを重ねても上がりにくい給与だ。離職を招く一因となっている。
厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、20~24歳の看護師の平均給与は29万6千円。55~59歳は39万5千円で、上げ幅は約10万円、3割ほどにとどまる。一方、全産業の大卒者の平均では26万円から52万2千円と、2倍になる。30~34歳で看護師を上回る。
看護師の賃金が上がりにくい原因として、管理職のポストが少なく昇給の機会が乏しいことや、歴史的な男女の賃金格差が残っていることなどが指摘される。看護師の9割は女性だ・・・

薄給の保育士

8月25日の朝日新聞東京版「薄給の保育士 国の基準で、できっこない」、認可保育園を運営する元帝京大教授(保育学)の村山祐一さんの発言から。

――保育士の処遇改善がなかなか進みません。

国が「保育に必要な額」として算出した公定価格が、認可保育園の運営費です。人件費もここに含まれますが、あくまでも国の配置基準の人数分。ただ、「配置基準では足りない」というのが保育界の常識です。
例えば、3歳児15人を1人で8時間保育できますか。食事や昼寝などいろんな時間がある中で、子どもたちの様子をつぶさに見ながら対応し、記録をつけ、保護者と連携して子どもの育ちを支える。国の配置基準では、できっこないです。
実際、多くの現場では配置基準の1・6~2倍ほどの職員を置いています。配置基準に応じて支給される運営費を、倍近い人数に分配しているのです。

国が想定している保育士の給与額は、国家公務員給与法を参考にしていますが、国家公務員は勤務年数に応じて格付けが上がり、昇給するのに対し、保育士は経験が反映されません。
公費である委託費を全国一律に計算するため、1年目の人も10年目の人も同額で計算される。想定する給与額に経験年数による加配がないため、初任給を高くすれば経験者の給料が低く抑えられる状況です。

――なぜ抜本的な改善にならないのですか。

保育士の仕事が軽視されているとしか考えられません。子どものことを本気で考えていない。どれだけ人手がかかり、子どもの思いを受け止めるのはどれだけ大変なのか。専門性が認められていません。
背景には、政治家の中に「子育ては家庭で」という価値観が根深くあると思わざるを得ません。現場の状況と、国が示す職員の配置基準や公定価格が、とにかく合っていないのです。

――今後、どのようなことが懸念されますか。

なり手は既に減っています。一部の養成校では「定員に満たない」とも聞きます。
心配なのは、子どもの育ちが保障されなくなること。待機児童問題が、これまでと別の形で出てくると思います。預けたい子どもはいても、職員がおらず、園の定員を縮小せざるを得ない。だから預けられない、という問題です。十分な保育士を確保できるだけの給与と配置基準にしないといけません。

日本語苦手な子7万人、10年で倍増

8月9日の日経新聞に「日本語苦手な子、6.9万人で最多 学習環境追いつかず」が載っていました。

・・・外国生まれなどで日本語指導が必要な小中高生が2023年度時点で約6万9000人に上り、約10年前から倍増したことが8日、文部科学省の調査で分かった。このうち1割が日本語について特別な指導を受けておらず、支援体制の構築が追いついていない現状も明らかになった。
政府は国内の人手不足を補うため、海外人材の受け入れを拡大し、家族呼び寄せの道も広げている。子どもの学習機会を確保し、人材の定着を促すことが急務だ。

調査は各教育委員会を対象とし、日本語で日常会話が十分にできない公立小中高校の児童生徒らについて聞いた。前回調査の21年度時点(約5万8000人)から18.6%増え、12年度時点(約3万3000人)からは約2倍になっていた。
国内では23年末時点の在留外国人数が約341万人で過去最多となり、学校に通う子どもも増えている・・・

・・・外国籍児童生徒の母語別の在籍割合を見ると、ブラジルなどで使われるポルトガル語(20.8%)が最も多く、中国語(20.6%)やフィリピノ語(15.4%)が続いた。
要支援者が増える一方、学校側の対応は追いついてない。日本語の基礎を学ぶプログラムや各教科の補習など、特別な指導を受けている児童生徒は外国籍で90.4%、日本国籍で86.6%。21年度比でそれぞれ0.6ポイント、1.5ポイント減少した。
特別な指導を行っていない自治体からは、理由として「日本語指導の教員がいない」「個別に対応する人材が不足している」といった声が寄せられ、国への要望として人材配置や財政面での支援などが挙がった。
進学状況にも依然として課題がみられた。中学生の高校などへの進学率は全中学生を8.7ポイント下回る90.3%で、高校生の大学などへの進学率は全高校生を28.4ポイント下回る46.6%。高校段階での中退率も全高校生の7.7倍にあたる8.5%だった。日本語能力が学習や学校生活における困難につながっている可能性がある・・・