私は、建築はもちろん門外漢で、この本に出てくる建築家、建物、専門用語は、知らないことばかりです。でも、たくさんの建物の写真がついていて、話の流れはわかったつもりです。もっとも、本文に出てくる建築物で、写真がついていないものもあり、そこはお手上げです。
私は、この本を建築様式の歴史としてでなく、社会と思想の歴史として読みました。すなわち、モダンとポストモダンは、何を基準にどこで分かれるか。ポストモダンとその次の時代は、何を基準でどこで分かれるのか。その際には、ポストモダンは、何と命名されるのか。日本の戦後とその後の時代は、何を基準にどこで分かれるのか。
カテゴリー別アーカイブ: 歴史
建築様式に見るモダン
岸和郎著『デッドエンド・モダニズム』(2015年、LIXIL出版)が、興味深かったです。著者は、1950年生まれの建築家です。この本は、20世紀の建築を対象として、モダニズム(近代主義)と、それへの対抗(ポスト・モダン)を分析したものです。モダニズムが、それまでの装飾を取り払い、機能主義のデザインを持ち込みます。王侯貴族というパトロンでなく、市民や資本家が顧客になります。アパートメントや個人住宅がその象徴です。鉄とコンクリートとガラスが、それを支えます。色でいうと、白です。それに対抗するデザインが出てきて、ポスト・モダンが生まれます。しかし、行き詰まります。
近代は、政治、経済、社会など様々な分野で、それまでの時代を変える大きな時代を画しました。建築様式の世界でも、一つの時代です。「ウイキペディアの解説」。
ところで、その後に来たのは「ポストモダン」です。しかし、「ポスト」と名づけられているように、それは新しい哲学を生んでいません。私が思うに、もう一つ先の哲学・思想・様式が生まれたら、「ポスト・モダン」もそれとの比較で何かの名前をもらうのでしょう。日本の現代史でも、いまだに「戦後」と言いますが、次の思想・様式・政治形態が出てこないと、戦後はいつまで経っても、戦後です。御厨先生が「災後」という名称を提唱されましたが、定着していないようです。
ドイツの自然がつくったドイツ人
池上俊一著『森と山と川でたどるドイツ史』(2015年、岩波ジュニア新書)が、面白いです。内容は、表題のとおりです。先生には、このシリーズに『パスタでたどるイタリア史』、『お菓子でたどるフランス史』があります。ドイツもその延長で、ジャガイモ、ソーセージ、ビールを考えられたようですが、森と山と川を選ばれました。
ジュニア新書なので、子ども向きにやさしく書かれています。しかしそれによって、切れ味良くドイツの特性を描いておられます。高校の教科書や専門書が細かい事実を並べるのに比べ、わかりやすいのです。国家ができなくて民族が先にあったこと、神秘主義が好きだとか、ワンダーフォーゲルが生まれたとか。といっても、カノッサの屈辱やルターの宗教改革なども出てきて、子どもには難しいかもしれません。
感染症の歴史、3
NHKカルチャーラジオ、吉川泰弘先生の「生物の進化の謎と感染症」、テキストp55から。
・・・1997年、世界保健機関は「新しく認識された感染症で、局地的にあるいは国際的に公衆衛生上問題となる感染症」を新興感染症と定義しました。なんでもないことのようですが、定義を決め、それに該当する事柄をまとめると、それまで曖昧としていた、いろいろなものがみえてきます。この定義により過去20年間に30種類以上の新興感染症が出現したことがわかりました・・・
感染症の歴史、2
インフルエンザウイルスの大きさは、10のマイナス7乗(100nm)です。人の子どもの大きさを1mとすると、1,000万倍違います。地球の大きさは直径13,000kmで、子どもの1,300万倍です。インフルエンザウイルスと子どもの大きさの比が、子どもと地球の比とほぼ等しくなります。子どもに感染するウイルスは、人を乗せて地球に接近する宇宙船のようなものです。
くしゃみで、2m先の別の人に感染する場合、ウイルスから見た距離は、2×10の7乗の距離で、人に置き換えると2万kmになり、北極から南極までの距離になります。1回のくしゃみに、10の8乗(1億個)のウイルスが含まれる1mlの唾が飛ぶとすると、1億人が北極から出発し南極を目指すことになります。たどり着くのは、なかなか大変なことです(p158)。でも、風邪がうつりますよね。
海水中のウイルスは、少なくとも1ml中に、深海で100万個、沿岸で1億個と推計され、世界の海全体でウイルスの総量は10の30乗個といわれています。ウイルスの大きさは平均100nmと極めて小さいのですが、海のウイルスをすべてつなぐと、10のマイナス7乗×10の30乗=10の23乗で、1,000万光年(1光年=10の16乗m)になります。銀河系の直径の100倍だそうです! 全人類70億人が手をつなぐと、2m×7×10の19乗=1.4×10の10乗m。光の速度が1秒で30万キロメートルなので、47光秒です。太陽と地球の距離の10分の1です(p39)。ひえ~。