カテゴリー別アーカイブ: 報道機関

世論調査項目、賛成ですか反対ですか

報道機関が、しばしば政治に関して、世論調査をします。その質問の仕方を見て、考えることがあります。例えば、1月12日の朝刊に載った世論調査結果です。
◆原子力発電を利用することに賛成ですか。
賛成29▽反対57
◆原子力発電は今後、どうしたらよいと思いますか。
ただちにゼロにする9▽近い将来ゼロにする62▽ゼロにはしない21

原子力発電をやめることも、あって良いと思います。しかし、その影響をどのように埋めるかです。
方法としては、火力発電で補う、再生可能エネルギーで補う、経済活動を縮小するなどがあるでしょう。しかし、火力発電は、地球温暖化につながります。再生可能エネルギーは、まだ量として不十分でかつ不安定、費用もかかります。経済活動の縮小は、生活にも大きな影響を及ぼします。
「ただちにゼロにする」「近い将来ゼロにする」という選択肢を選ぶなら、その減った分をどのように穴埋めするか、またそれを実現するまでのつなぎの方策も聞かないと、答えにはなりません。

次の質問も同様です。
◆福島第一原発にたまる汚染された水から、大半の放射性物質を取り除き、国の基準値以下に薄めた処理水を、海に流すことに賛成ですか。
賛成32▽反対55

反対する場合は、たまり続ける水をどうするのかをあわせて問わないと、答えにはなりません。タンクを増やすことは、地元町にさらに負担を押しつけることになります。

かつて「橋の哲学」の事例がありました。美濃部都知事が、反対意見のある公共事業を中止する際に、「橋の哲学」として「1人でも反対があれば橋は架けない」という言葉を引用しました。この言葉はフランツ・ファノンの言葉だそうですが、この言葉の続きにある「その代わり川を歩いてる」といった趣旨の部分を省略してあります。
新型コロナウィルスに当てはめると、前段だけでは解決にならないことがわかります。「一人でも反対者がいると、外出自粛は要請しない」と言っていたら、感染は広がるばかりです。

判断には、絶対の善と悪に別れる場合は少なく、良い面と負の面があります。そして「反対」だけでは解決にならず、代案が必要なのです。

最高裁判事の任命

アメリカ連邦最高裁判事に、エイミー・バレットさんが、トランプ大統領に指名され、10月26日に議会上院で承認されました。新聞各紙が、1面で伝えていました。

そのことの是非は、ここで問うことではありません。しかし、日本の最高裁判事が任命されたときに、新聞などニュースはどの程度伝えるでしょうか。アメリカの場合、特に今回は保守対リベラルの対立の中で、大きく取り上げられたたようです。
しかし、よその国の裁判官の任命にこれだけの紙面を使う割には、日本の裁判官を任命する際には、任命された事実しか伝えませんよね。次回、日本の最高裁判事の任命の際の、各紙の記事を見守りましょう。

消費税増税1年

先日、訪ねてきた新聞記者と、次のようなやりとりをしました。

全:10月1日で、消費税が10%に引き上げられてから、1年が経つけど、記事になったかな?
記者:そう言われれば、そうですね。すっかり忘れていました。
全:報道の悪い癖やね。毎日のニュースは、つまらないことでも載せる。政府や会社の発表なら、その広報組織と化して、宣伝に努める。でも、それがどのような結果になったか、どのような成果を生んだかは、検証しないよね。
消費税増税の際には、あれだけ大騒ぎをしたのに、1年経ったら忘れている。安倍総理が、2度も消費税増税を延期したけど、このような状態がわかっていたら、延期しなくてもよかったね。

いくつかの新聞記事はありますが、各紙とも熱心ではないようです。10月5日読売新聞「消費税増税1年 軽減税率定着」。

マスメディアの役割 事実の検証

読売新聞は、7月17日18日と、「検証コロナ 次への備え」を載せていました。
・・・新型コロナウイルスの感染者が国内で初めて判明してから、16日で半年となった。この間、日本が直面した感染症危機管理の教訓と課題を探る・・・「クルーズ船で何が起きていたのか」「医療の逼迫はなぜ起きたのか」。
・・・未知のウイルスの感染者が乗っていた大型客船が突然、日本にやって来た。想定外の事態で、国際的なルールもない。日本政府はどう対応したのか。どんな課題が見えてきたのか―・・・

よい企画ですね。日々の出来事(ニュース)の報道も大切ですが、このように振りかえって検証する。そこに、マスメディアの機能があります。日々の報道では、事実が次々と流され、流れ去っていきます。それは、一種の消費財です。それらの事実をつなぎ合わせて、どのような意味があったのか、何がよくて何が問題なのかを検証することが重要です。マスメディアというより、ジャーナリズムという方が良いのでしょう。インターネットニュースではできないことです。

コロナ関連では、20日の朝日新聞記者解説が、「際限なき借金大国 コロナで危機拍車、財源語られぬまま」を解説していました。この論点も重要です。国会などではあまり議論されていないようですが。
読売新聞は、19日の「あすへの考」で「自衛隊とは・・棚上げの70年」を解説していました。このような取り上げ方もよいですね。

数値による問題点の指摘。部分と全体と

3月2日の読売新聞1面は、「復興住宅、孤独死243人…高齢・単身者の入居多く」でした。詳しくは記事を読んでいただくとして、復興住宅での孤立防止、自治会やつながりつくりが、次の課題です。これは、国が直接できることではなく、現場での住民や自治体の活動、NPOの支援が必要です。

ところで、この243人(3県、7年間累計)。大きな数字ですが、孤独死は復興住宅だけの問題ではなく、全国的な問題です。全国では年間2万7千人との推計もあります。他の地域の公営住宅などと比べ、発生率が高いのかどうか。この記事だけでは分かりません。大まかに言えば、高齢者の数に比例すると思われますが。

新型インフルエンザについても、同様の問題があります。今回の新型インフルエンザは、旅客船での患者を含めて千人近くの患者と、10人を超える死者が出ています。
これを例年のインフルエンザと比較してみます。厚労省によると、例年のインフルエンザの感染者数は、国内で推定約1000万人いると言われています。年間の死亡数は214人(2001年)~1818人(2005年)です。
また、直接的及び間接的にインフルエンザの流行によって生じた死亡を推計する超過死亡概念というものがあり、この推計によるインフルエンザによる年間死亡者数は、約1万人と推計されています。

まだ薬ができていないので、例年のインフルエンザと比べるのは問題がありますが。この数字を見る限り、「とんでもなく恐ろしい病気」とは言えないようです。「いつものインフルエンザと同程度に注意しましょう」というのは、素人の考えでしょうか。
今年は、国民が注意しているので、国立感染症研究所によると、例年に比べインフルエンザ全体の流行は低いようです。とはいえ、高齢者や持病を持っている人にとっては怖い病気です。注意しましょう。