カテゴリー別アーカイブ: 明るい課長講座

生き様-明るい課長講座

ビデオ会議は対面に代わるか

9月16日の日経新聞経済教室は、鶴光太郎・慶大教授の「ビデオ会議、対面に代わるか」でした。
コロナウイルスの感染拡大で、ビデオ会議の利用が急速に進みました。では、ビデオ会議は、対面接触に取って代わることができるのか。

・・・対面接触の経済学ともいうべき分野の第一人者としては、経済地理学者であり、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校のマイケル・ストーパー教授が挙げられる。2004年の共著論文では、経済における対面接触の4つの特徴について述べている。

第1は情報伝達技術の側面である。対面接触であれば、対話は高頻度かつ瞬時のフィードバックが可能だ。これは電子メールと対比すれば明らかである。また、文字や数式などにより成文化された情報のみならず、不確実な環境下で、複雑で言葉にできない、また、やりとりする人々の間でのみ理解できるような文化・文脈依存型の情報、つまり、暗黙知ともいえる情報も伝達することが可能となる。これは会話のみならず、表情、ボディーランゲージ、握手などの肉体的接触による多面的な情報伝達が可能になるためだ。

第2はモラルハザード(倫理の欠如)などの機会主義的な行動を抑制し、信頼関係を築くという側面である。面と向かって嘘は言いづらいし、対面接触によって相手を注意深く観察し、動機、意図、本音をより正確に察することができ、共通の理解や親近感が生まれる。また、対面接触は、関係構築に時間、お金、努力などの目に見え、関係解消で戻ることのないコストがかかるため、関係を継続させるコミットメント(約束)と解釈できる。

第3はスクリーニング(ふるい分け)とソーシャリゼーション(社会の規範や価値観を学び、社会における自らの位置を確立すること)の側面である。対面接触はコストが高いだけに、そうした接触が必要なグループのメンバーを選ぶには、試験や資格要件だけではなく、仲間内でのみ共有できるようなローカルで文脈依存的な暗黙知が欠かせない。また、こうしたグループのメンバーとして認められるためには、お互いを良く知り、広く共通した背景を持つためのソーシャリゼーションが必要となる。家族、学校、企業にかかわらず、こうしたソーシャリゼーションは対面接触によってこそ可能となる。

第4は対面接触の際のパフォーマンスで得られる快感の側面である。例えば、プレゼンテーションで自分がその場にいる誰よりも優れていることを示したいという競争心・ライバル意識を生む効果だ。

ストーパー教授らは、対面接触が分業にまつわるコーディネーション(調整)やインセンティブ(誘因)の問題を解決し、ソーシャリゼーションが組織のメンバーをスクリーニングすること、また、競争心をあおるような動機を与えるといった上記の特徴を一体的に捉えて、こうした環境を「バズ」(人々の会話のざわめき、ワイガヤ)と名付けた。そしてこれが都市、産業、イノベーション(革新)の集積の根幹的な要因であることを強調した・・・
・・・情報伝達手段の違いによる影響という観点では、実験経済学が専門の独デュイスブルク・エッセン大学のジャネット・ブロジック教授らの一連の研究が参考になる。教授らは4人で10回繰り返されるゲームの実験を行い、協調が達成されるかをみた。対面接触で行った場合に比べ、顔が見えない電話会議では協調達成は低かったが、ビデオ会議の場合は対面接触と遜色がないことを明らかにしている。対面接触と電子メールとの対比では、明らかに前者の方が協調達成されやすいことが既存研究でも明らかとなっているので、顔が見え、リアルタイムでやりとりのできるビデオ会議は、その他の情報伝達手段と比較しても、本質的に異なる可能性が示唆される・・・

・・・対面接触の役割で代替が最も難しいと考えられるのは、ソーシャリゼーションである。新たな組織のメンバーとなり、そこでの価値観や流儀を学びながら仲間になっていくプロセスを、ビデオ会議で実現するためのハードルは相当高そうだ。これは、今年の社会人1年生や大学1年生が、まさにいま直面している困難である。それをどう乗り越えていくか、我々のアイデアと技術を活用する知恵が問われている・・・

在宅勤務で問われる管理職の指導力

9月15日の日経新聞「テレワークできてますか(3)」は「受け身の上司はいらない 「在宅」で問われる指導力 進む管理職改革、降格も」でした。
・・・できる上司とできない上司――。テレワークの広がりは、管理職の優劣も浮き彫りにした。リモートでも仕事を適切に割り振った管理職がいる一方、目の前に部下のいない状況に戸惑い業務が滞った人もいた。新型コロナウイルス後をにらんだ管理職改革が広がっている・・・

・・・「自己の役割ランクに応じた具体的な『役割』と『業務内容』を明記し、提出願います」。中堅機械メーカーの中西金属工業(大阪市)は7月中旬、全管理職約150人に通達した。管理職の役割を改めて自己分析してもらう狙いだ・・・まずは日報提出と部署内での共有を義務付けた。
日報を基に上司が部下に適切な助言をできれば。そんな思惑だった。ところがむしろ管理職の課題が明らかになった。例えばある管理職は「午前メール処理、午後資料作成」と書いた。実際に何をしているのか分からない。中西竜雄社長は「2割は部下への指示・助言も不十分で役割を果たしていなかった」と漏らす。
出勤していれば部下の様子は目に入る。誰かしらが相談や報告にやってくるし会議も多い。主体的に動かなくても一日が終わる。受け身の姿勢が染みついた管理職は、テレワーク環境で機能停止していた・・・

・・・内閣府の調査では、テレワークで生産性が落ちたとの回答が約半数を占めた。一因は上司と部下のコミュニケーション不全だ。
アデコが管理職と一般社員を対象に7月実施した調査によると、テレワークで部下とのコミュニケーションが減ったとの回答が約4割に上った。具体的な課題(複数回答)は「チーム間でのコミュニケーション不足」33%、「部下とのコミュニケーション不足」31%、「部下の仕事ぶりが分からない」22%など。部下側も「上司とのコミュニケーション不足」31%、「さぼっていると思われないか」28%など、上司と部下双方の不満がうかがえる・・・

・・・これまでのやり方を見直すのは楽ではない。中西金属工業も、すべての管理職が自分の役割を見いだせてはいない。会社は各自がまとめた「役割」「業務内容」などを基に全管理職と面談中だ。ベテラン社員が指導役になり、業務を「将来につながる仕事」「現状の業務に不可欠な仕事」「なくせる仕事」に分類し、将来につながる仕事の比率を高めるよう促していく・・・

日報と役割シートについて、よい記入例と悪い記入例も、載っています。これは、わかりやすいです。参考にして下さい。

広報の家庭教師

9月14日の朝日新聞夕刊「凄腕しごとにん」は、「広報の家庭教師」を自称する、舩木真由美さんでした。「広報担当者を育てた企業、約120社

・・・小所帯のベンチャー企業は、当初は広報担当者がおらず、メディアに情報を伝えるプレスリリース(発表資料)作成や情報提供自体をPR会社に外注することが多い。自身も、かつてPR会社で働いていた。
しかし、そこでたどり着いたのが「広報は、伝言ゲームのようになるよりも、企業理解や商品愛がある社内の人間がやった方がいい」という「自走」の思想だ。そのため、いつまでも黒衣として広報活動自体を手伝うのではなく、約1年で独り立ちできるように「広報の仕方」を伝えている。
広報の仕事と言えば、一般に思い浮かべられるのが、プレスリリースづくりやメディアの記者との関係づくり。でも、それ以上に難しいのが「どのネタをどう打ち出すか」という企画づくりだという・・・

・・・よく伝えるのが「米国の大手IT企業では、新規事業の決裁文書がプレスリリース形式になっている」という話。プレスリリースには、事業概要や立ち上げの背景、ターゲット層などをA4一枚で書くのが一般的だ。企画段階でプレスリリースを書けるか否かで、それが社会で必要とされている事業かどうか見極められ、本当に顧客や社会の求める事業につながると説いている・・・

・・・広報の指南役として社会の課題を知り、情報の目利き力を養うために「インプット」を大事にしている。毎朝、主要各紙をチェックし、ニュース検索のキーワードに「法改正」を登録して社会の変化をつかむ。ツイッターでは多様なアカウントを追いかけ、本を読み、評判の映画を月8本は見る。そうやって培った視点やノウハウも支援先に伝授する・・・

仕事をする上でのコツが、書かれています。広報担当者だけでなく、社員と職員に有用です。全文をお読み下さい。

職場でコロナ感染が出たらどうするか

9月11日の日経新聞に「社員がコロナ感染 心得は 専門家の話・企業の実例からみる」が載っていました。
「感染拡大の勢いは鈍ってきたが、新型コロナウイルスの収束はいまだ見通せない。今春と比べ出勤者が増えたことで、企業のリスクはむしろ高まっている。社員のコロナ感染を想定し、周到な準備が欠かせない。専門家への取材をもとに、具体的な心得やノウハウをまとめた」

参考になります。
世界中の職場で初めて経験する、感染症の拡大。ほとんどの人は経験もなく、事前の教育も受けていないでしょう。しかし、感染拡大から、半年以上が経ちます。さまざまなことがわかってきました。職場の管理職は、対応策について「知りませんでした」では、すまなくなりました。参照「明るい公務員講座 管理職のオキテ」P170。
一部を抜粋します。全文をお読み下さい。

・・・(1)行動追跡へ席固定
企業が対応を迫られるのは、感染による業務への影響が大きいからだ。
労働契約法は企業に対し「従業員全体に安全な就業環境を提供する義務を定めている」(アンダーソン・毛利・友常法律事務所の松村卓治弁護士)。感染者を出社させると他の社員の健康を損ないかねない。「職場内の感染をいかに防ぐか」が対応の焦点になる。
最優先は保健所との迅速な連携だ。社員が陽性判定を受けると、診断した医療機関は最寄りの保健所に届け出る・・・
・・・保健所と連携する第1の目的が、感染者と濃厚接触した社員の特定だ・・・保健所と連携する第2の目的が消毒だ・・・

(2)陰性証明は求めず
職場での感染連鎖を防ぐには、社員に自宅待機を命じる必要も出てくる。賃金の扱いや復帰までの期間は、感染者か濃厚接触者かで異なる・・・
安心のためとはいえ、自宅待機の解除にあたって陰性証明書や治癒証明書を求めるのは禁物だ。
PCR検査の実施能力には限りがあり、その精度自体にも課題があると指摘されている。専門家らは「陰性証明は実効性に乏しい」と口をそろえる。厚生労働省も「医療機関に発行を依頼する行為は控えてほしい」と訴えている。

(3)公表は同意の上で
企業によって判断が分かれているのが、社内に感染者が出た事実をどう開示するかだ・・・

働き方改革で増える管理職の残業

9月13日の朝日新聞に「飲食業界、悩み多き中間管理職」が載っていました。それによると。
日本企業の特徴として、プレイングマネジャーが多いのだそうです。産業能率大学総合研究所の調査では、部長の95%ほどが、プレーヤーとしての役割を担っています。管理するだけでなく、現場で汗をかいています。

しかし、部下の仕事の肩代わりをすることで、長時間労働になりがちです。
企業活力研究所の調査では、週60時間以上働き過労死ライン(月平均80時間超の時間外勤務に相当)に当たるミドルマネジャーが、4人に1人いました。残業時間の規制が強まったことで、部下に仕事を回せず、労働時間が延びた管理職もいます。
パーソル総合研究所の調査では、働き方改革が進んでいるとした企業では、管理職の62%が業務量が増えたと回答。進んでいないという企業の48%を上回っています。

そして、管理職は、残業代がもらえません。ただし、名ばかり管理職は、裁判で残業代が認められています。