「明るい課長講座」カテゴリーアーカイブ

生き様-明るい課長講座

部下と戦う上司

頭が良くて仕事ができるのですが困った上司に、部下と戦う上司がいます。

部下が上げてきた案を、細かく詰めます。それは案を良いものに仕上げるには、必要なことです。ところがその上司は、欠点の指摘をするのですが、それ以上の助言をしないのです。すると、わからない部下は、何度説明に行ってもその上司の了解を得ることができず、仕事は前に進みません。
また、部下を叱る上司もいます。「なぜこんなことができないのか」と言ってです。上司は自分が経験してきたことを基に、それと同じことができない部下を叱ります。

これは、上司が部下と同じ「平面」に立って、対等に戦っているからです。
部下は多くの場合、上司より経験が少なく、仕事の能力も劣ります。その部下を指導して育てることも、上司の任務です。
部下が考えた案について、欠点を指摘することは必要ですが、部下が難渋したらそれを助けるのが、上司の役割です。しかも急ぎの仕事なら、差し戻しを繰り返す時間はないはずです。

部下を叱る上司も、同じです。なぜ、部下はあなたのようにはできないのか。できたら、その部下が上司の席に座っているでしょう。
達観した上司は、仕事のできない部下を叱りません。「叱ったところで、仕事が進むわけではないわ」と考えるのです。それよりも、早く仕事を進めるにはどうしたらよいかを考え、次回は部下ができるようにするにはどのように指導するのが良いかを考えます。

管理職になりたくない

1月11日の読売新聞「管理職はつらいよ」「職場まとめる力 重要に」から。
・・・かつては多くのサラリーマンが目指した管理職が、憧れの地位ではなくなってきているのかもしれない。「なりたくない」という人が増えているのだ。組織の中核を担う重要なポストはなぜ、避けられてしまうのだろうか。

その歴史は古い。紀元前の古代エジプト時代、ピラミッドの建設現場に労働者を差配する「管理職」がいたことが、発掘物から明らかになっている。
現在の企業では、どんな役職が管理職にあたるのか。通常は部長や課長を指す。働く時間や休日を自分の裁量で決められる一方、どれだけ働いても残業代は支払われないケースが多い。任された部署で陣頭指揮を執り、部下をまとめて成果につなげる。組織の目標達成に、なくてはならない存在だ。

「じゃあおまえは何故サラリーマンを選んだんだ」
1983年に連載が始まった漫画「課長 島耕作」(著・弘兼憲史、講談社)で、出世争いから距離を置こうとする大手家電メーカー課長の主人公に対し、同僚がこう問いかける。
会社員は出世を望むべきで、その登竜門が管理職。高度経済成長やバブル景気に沸いた昭和時代は、そんな風潮が根強かった。「出世のためなら苦労も我慢」と考える会社員が半数超に上ったという調査結果もある。

近年は価値観が一変しつつある。パーソル総合研究所が2022年に行った調査では、18か国・地域で管理職になりたい会社員は、日本が全体平均(58.6%)を大きく下回る19.8%で、最下位だった。
理由の一つに業務負担の増加がある。少子高齢化により、生産年齢人口(15~64歳)は、この30年で1000万人以上も減り、人手不足が深刻化した。長時間労働を是正する「働き方改革」も進み、部下の業務を管理職が肩代わりするケースが相次ぐ。産業能率大学の23年の調査では、「プレーヤー」を兼ねる課長は94.9%に上った。
共働きの浸透で、育児や親の介護といった事情を抱える部下は多く、細やかな管理が必要となった。部下の指導や育成と、ハラスメントとの線引きに悩む人も少なくない。
厚生労働省の統計によると、01年に1.8倍だった課長級と一般社員の賃金格差は、23年に1.6倍まで縮まり、報酬面での魅力も薄れている。
パーソル総合研究所の小林祐児・上席主任研究員(41)は「管理職として働くことが、『罰ゲーム』のような状況になってしまっている」と指摘する・・・

・・・管理職の働き方に詳しい法政大の坂爪洋美教授は「価値観の多様化が進む現代ほど、職場を一つにまとめ上げる管理職の力が求められている時代はない。仕事に誇りが持てるよう、待遇改善や支援が重要だ」と語る。
日本経済の未来は、管理職が生き生きと働けるかどうかにかかっているのかもしれない・・・

社員の懲戒、社内公表

1月13日の日経新聞に「社員の懲戒、社内公表は名誉毀損か 再発防止に悩む企業」が載っていました。詳しくは記事をお読みください。

・・・不正やハラスメントなどで下した懲戒処分について、社内でどの程度周知するか悩む企業が増えている。氏名を明らかにすると名誉毀損の恐れがあるとして見直しを検討する動きがある一方、再発防止のために事例の周知が必要という考え方も根強い。プライバシーや名誉への配慮と社内の規律維持の両立に向け各社が模索する。

「今までは懲戒処分の対象者の氏名を社内公表していたが、このままでいいでしょうか」。労務問題を多く手掛ける友野直子弁護士のもとには近年、そんな相談を持ちかける企業があるという。
友野氏は「企業が公表を望む場合には、内容や方法について慎重に検討するよう」助言するという。同時に「これまでは氏名を公表していた企業も、プライバシー意識の高まりなどで注意を払うようになってきている」とみる。2005年に個人情報保護法が全面施行されたこともあり、慎重な姿勢に転じる企業は多い。
「譴責」や「減給」、「降格」など懲戒処分の内容は様々だが、従業員の氏名を含む社内公表をした場合について益原大亮弁護士は「企業側が、名誉毀損などの不法行為責任を問われるリスクが伴う」と指摘する。懲戒処分を巡っては、その処分自体が妥当かどうか従業員側と企業の間で労務トラブルに発展するケースが絶えない。
処分自体に慎重な対応が必要になるだけに「本人を特定するような社内公表も加わると、(本人の感情ももつれて)紛争に発展する可能性が高まりかねない」(益原氏)ためだ。

ただ、氏名も含めた懲戒処分の社内公表が慣例になっている企業も少なくない。懲戒処分を巡る氏名の社内公表の是非についての裁判例は事例ごとに判断が分かれ、明確な線引きが定着しているともいえない。
基準として参考になるのが、懲戒解雇やその理由について記した文書を従業員に配布したり社内に掲示したりした行為が名誉毀損に当たると判断した1977年の東京地裁の判決だ。
裁判所は、解雇の公表が違法かどうかの基準として①公表する(企業)側にとって必要やむをえない事情がある②必要最小限の表現を用いる③解雇された従業員の名誉や信用を可能な限り尊重した公表方法を用い事実をありのままに公表する――などを挙げている・・・・

職場内訓練が少ない日本

12月25日の日経新聞「2025年を読む 変革の行方2」は「賃上げ定着へ生産性向上 人材教育投資こそ成長のバネ」でした。

・・・高い賃上げを定着させるには、裏付けとなる生産性向上に企業が正面から向き合う必要がある。

サントリーホールディングスは9月下旬、2025年春に7%の賃上げを目指すと表明した。過去2年と同水準だが、内情は異なる。一つは海外消費が弱くなっている点。もう一つは賃上げ持続への施策を労働組合と対話し始めたことだ。
ベースアップ(ベア)が毎年積み上がる負担に不安を漏らす経営幹部もいる。だが新浪剛史社長は人材獲得と消費喚起へ賃上げが不可欠だと説く。活路とするのは社員が生み出す付加価値の最大化だ。「賃上げと人材育成の両輪を回して生産性向上を目指す」と河本光広執行役員は話す。

「完全なゲームチェンジ。今後は人件費など様々なコストの上昇を前提にした経営が不可欠だ」。食品スーパー大手、ライフコーポレーションの岩崎高治社長は話す。
同社のパート・アルバイトは約4万4千人。24年春に6.6%賃上げしたが、競合他社との人材の取り合いで足元の時給はさらに上昇。20年代に最低賃金1500円という政府目標も「全国では無理でも東京都ではありうる」と身構える。
粗利率の改善や省力化投資を進めるが、カギとなるのはパートの生産性向上だ。本社の指導員の人数を2年で100人増の450人とし、複数の業務ができる多能化を目指す。非正規社員への教育投資は少ないのが一般的だが、「待遇改善と能力開発を一体で進める」と岩崎社長は言う・・・

記事には次のような記述があり、各国(中国、アメリカ、イギリス、スウェーデン、ドイツ、フランス)の職場内訓練を受けた人の割合が図になって載っています。
・・・日本の賃金は上昇し始めたが、人材教育投資は心もとない。リクルートワークス研究所の調査では、23年に職場内訓練(OJT)を受けた人は日本は39.8%。ドイツの半分強の水準で7カ国で最低だ。人を資本と捉え、その価値を最大限に引き出す「人的資本経営」をいくら唱えても、着実に投資しなければ付加価値は増えない・・・

災害救援の難しさ

12月26日の日経新聞夕刊「私のリーダー論」は、栗田暢之・レスキューストックヤード代表理事の「理念との整合、常に振り返り」でした。

・・・阪神大震災が起きた1995年は全国から130万人が支援に集まり「ボランティア元年」と呼ばれた。名古屋市を拠点とするNPO法人「レスキューストックヤード(RSY)」代表理事、栗田暢之氏は30年にわたって被災者支援を続けてきた。組織のリーダーとして「一人ひとりと向き合う」という活動の理念をぶれずに貫くことを大事にする・・・

――災害救援を担うNPOのトップとしてどんなリーダーシップを大事にしていますか。
「リーダーと言えば周囲を引っ張るタイプと思われるかもしれません。私にも『自分がやってやるぞ』という面はあります。でも、一人ができることには限界があるじゃないですか。スタッフをどれだけ信じられるかがリーダーにとって大事だと思います」
「私たちは営利を目的とするわけではなく、災害からの復興を助け、避難生活に伴う災害関連死を無くし、人の命と暮らしを守ることを実現していく団体です。仕事を数値で評価するのは難しく、正解がありません。どんな手法で活動を進めていくか、スタッフそれぞれが考えることが重要で、『リーダーについてこい』という発想はありません」

――活動を進めていくうえで、リーダーの役割をどう捉えていますか。
「ぶれない理念を示すこと。それが役割だと思っています。何のために自分たちがNPOとして活動しているのか。目指すべき大きなビジョン、果たすべきミッションを示します。それに整合した活動になっているかどうかは常に見極めます」
「スタッフが担当する事業はうまく進むときも進まないときもありますが、信頼して任せることが必要です。細かいところまで全てトップに言われたら、煩わしいですよね」

――大事にしているミッションとはどんなものでしょうか。
「一人ひとりと向き合うことです。例えば東日本大震災で故郷から遠方に避難している家族にアンケートを取っても、世帯ごとの回答しか得られません。実際は父親は故郷に帰りたい、母親は帰りたくないというケースがあります。当時は幼かった子どもたちも年とともに自分の意思を持ちます。生の声に耳を傾け、大事にするというミッションは阪神大震災の頃からずっと譲れません」

――被災者支援の難しさをどう感じていますか。
「災害はその規模や地域性によっても状況はさまざまです。足りない物資を届けることは分かりやすいですが、『何から手をつければいいのか分からない』『何だか気が晴れない』といった人の心の部分を扱うわけですから、支援を求めるニーズすらはっきりしない『グレー』な状況と向き合うことになります。個々の状況にたどり着かなければ上辺だけの支援になってしまいます。だからこそ一人ひとりの声を聞きます」
「災害救援のプロフェッショナルと言ってもらうこともありますが、自分たち自身は毎回必死にやっているだけです。被災者の支援、災害からの復興は本当に難しく、『私たちはプロです』などと言うのは慢心です」