「明るい課長講座」カテゴリーアーカイブ

生き様-明るい課長講座

社員をやめさせない

7月17日の日経新聞に「社員一丸なら若手やめず」(電子版では「小さくても勝てる 社員をやめさせない 中小でも希望通り休め、友達採用でミスマッチ防止」)が載っていました。要点は、風通しの良い職場、心理的安全性をどのようにして作るかだと思います。

・・・多くの企業が社員の退職に頭を悩ませるなか、一部の中小企業は独自の工夫で社員の離職を防いでいる。樹脂部品を開発する陽和(北九州市)は過去26年間で、新卒採用で入った社員の離職を2人に抑えた。若手や中堅社員は「自分の成長を実感できる仕事の進め方」「社員一丸で課題と向き合う社風」を〝やめない〟理由に挙げる。

厚生労働省の2024年のデータによると、21年3月卒業の新規学卒就職者の就職後3年以内の離職率は38.4%と、前の年より1.4ポイント上がった。大卒が2.6ポイント高い34.9%、高卒は1.4ポイント高い38.4%だった。
従業員1000人以上の企業は3年以内に大卒の28.2%が辞め、30〜99人の企業では42.4%が辞めるなど、規模の小さい企業ほど離職率は高い。大卒の離職率は00年代に36%を上回る年もあったが、今は当時より少子化が進み、新卒採用のハードルは上がった。若手の離職を深刻にとらえる企業は増えている。

陽和はデータのある1999〜2025年に大卒や高卒を中心に29人を新卒採用し今も27人が働く。離職率は単純計算で6.9%。130人超の中小で「やめない経営」を実践する。
越出理隆社長は約20年前に「1人の社員が1週間休んだとき、生産ラインを止めた経験が転機になった」と振り返る。熟練者に一部の業務を頼っていたため、代役を果たす社員がいなかった。
数年かけて業務別の手順書を一つずつ作成し、生産などの現場作業は動画を共有した。「カンやコツと呼ばれるポイントをなるべく数値化して説明し、社員が互いの仕事をカバーしあえる職場に改めた」(越出氏)
社員が自分の望む時期に気兼ねなく休めるようになり、有給休暇や育児休暇の取得率は90%を超える。越出氏は休みやすい職場が離職率を抑える最初の一歩とみる。
その上で入社5年目の上杉玲央さんは「答えを自分で考えるよう、先輩が若手を導いてくれる」と指摘する。陽和では若手が困難にぶつかると、先輩が解決策ではなく、うまくいかない原因を伝える。
上杉氏は「解決策を考えて正解に近づくと成長を実感する。複数の先輩が業務に通じているため、相談はしやすい。特定の先輩が忙しいから相談できないといったストレスもない」と話す。

22年目の前田康太課長は入社当時と現在を比較して「改善活動がしやすくなった」と語る。数年前、残業時間が月40時間を超える状況が続き、工場内の不満が高まった。残業を減らすため、原因となる作業を機械で自動化することにした。
その際、どんな自動化装置が使いやすいか、生産と開発のチームが繰り返し話し合い、装置に反映した。導入後、残業は月10時間に減った。前田氏は「社員が一丸となり装置を完成させ、達成感があった。風通しのよい職場でなければ難しかった」と強調する・・・

職員研修、失敗を体験させる

7月11日の日経新聞東京版に「JR東日本のトラブル対応実習施設、失敗のツボに「わざと落とす」」が載っていました。良い職員研修ですね。

・・・1年に1200人。制服をバッグに詰めた電車の乗務員や駅職員といった訓練生らが緊張した面持ちで鉄のゲートを通り抜ける。門柱には黒地に渋い金色で「横浜総合訓練センター」(神奈川県横須賀市)。JR東日本横浜支社の社員がトラブルの対応を実習する技能訓練施設だ。熟練の講師が「失敗のツボ」を次々と繰り出し、訓練生に冷や汗をかかせている。

「人身事故が発生、的確に報告を」「進行方向を伝えないと右と左は逆になる」「亡くなったと誤解される。布は顔までかけてはいけない」
JR横須賀線久里浜駅構内にある訓練センター。初めて体験する「事故」にパニック寸前の訓練生に、講師は「君はどうする?」と問い続ける。
約3000平方メートルの敷地には路線図にない「駅」がある。訓練用の湘南駅と相模駅だ。2つの駅を結ぶ約450メートルの線路には信号機や線路を切り替える分岐器など本物の設備がびっしり。訓練生は「209系」を改装した鉄道車両を運転中にトラブルの発生を告知され、その場の対応が試される。

訓練は社員に2年に1回の受講を義務付けている。グループやパートナー企業が参加することもある。駅舎では特別仕様のシミュレーターが訓練生を待ち構える。ゲームと違うのは6台あるモニタリングカメラ。様々な角度から運転中の微妙な視線や手の動きを記録し、ミスの兆候を講師が見極める。訓練生にも細部は非公開だ。
トレーニングの原点は「失敗を体感すること」(門倉久胤副所長)。現場で落ち着いてみえる同僚も、トラブルに直面すると「何度も同じ失敗の穴に落ちるケースがある」。技術の進化で事故は減ったが、いざという時「現場では機械に頼らない人の目と経験が必要になる」(実習に参加した佐川博紀さん)。実際に亀が設備に挟まり異常が発生したこともあったという。

壁には国鉄時代から続く「安全綱領」がある。変わらぬ言葉が並ぶなか、東日本大震災後、最後の項目「疑わしいときは、最も安全と認められるみちを採らなければならない」に、ある文章が加えられた。句点の後に「あわてず、自ら考えて」。
東北地方の海沿いの路線。大きな揺れの後、マニュアルが示した避難所は近くの小学校だった。「ここは学校より高台にある」という乗客の声に耳を傾けた車掌は、停車した車内に全員で残る決断をした。津波に巻き込まれたのは避難所のほうだった。

「みな技術も知識もある。安全に自信があるから忘れてしまう弱点を再認識し、自分で判断できるようにする」とセンターの楠田広行所長は狙いを話す。「だから、あえて落とし穴に落ちてもらう」・・・

伝えるためには相手の話を聞く

日経新聞私の履歴書、7月は、魚谷雅彦・前資生堂会長です。奈良県の先輩です。
9日の「コミュニケーション」から。勤めたライオンから、アメリカ・コロンビア大学に留学します。論理的に発信する力、コミュニケーション能力を高めなければと焦り、毎週2回、夜にリーダーシップ、対話術を学ぶデール・カーネギースクールに通います。

・・・「皆さんはコミュニケーションの能力を高めるために来たのでしょう」。デール・カーネギースクールのベテラン講師のピーターさんが10人の受講生を前に話し始めた。「リーダーとして自分の思いを伝えたいなら、まずは心を開いて相手の話を聞くことが肝心です」と意外な説明だった・・・

・・・話す相手のニーズを事前に調べる重要性。結論を先にはなし説明する組み立て方。「質問の力」を活用して相手に話させる訓練などで鍛えられた・・・

職場は仕事だけの場ではない

6月22日の朝日新聞くらし面、「コロナ禍で壊れた心、抱えたまま 行動制限下「すごく孤独だった」、うつの波は今も」から。

・・・5年前の2020年4月、コロナ禍で最初の緊急事態宣言が出された。行動制限は人を孤立させ、ときに心を壊すほどのストレスを強いた。今も、一度負った傷を抱えている人がいる。

神奈川県内のメーカーで総務の仕事をしていた女性(28)にとって、仕事は決して楽しいものではなかった。それでも、19年に新卒で入社した当初は、研修や飲み会を通じて同期と交流があり、愚痴を言い合うこともできた。プライベートではカラオケやライブ、旅行でストレスを発散していた。
翌年からコロナ禍に入り、状況は一変する。家と職場を往復し、業務をこなすだけの日々。楽しみはなくなった。21年3月にリモートワークが始まると、完全に「やる気スイッチ」が消えた。なぜ集中できないのか。家で悶々としていると、孤独感が募った。
夏ごろには日中、急な眠気に襲われるようになった。十分睡眠はとっているのに、パソコンに向かい、気づいたら眠り込んでいる。そのうち、夜に眠れなくなった。今日も眠れない、と思うと不安になり、余計眠れなくなった。

原則出社に戻っても、日中は常に眠気と戦っている状態。すべてを投げ出して逃げたい、消えたいという思いに駆られた。
食事ものどを通らなくなった。息苦しさや貧血、動悸にも悩まされるようになった。
12月には1週間、会社を休んだ。年明けは忙しく、無理に出社した。「休んじゃいけない」と思い込んでいた。4月には、いよいよ朝起きられなくなった。
母に連れられて精神科を受診し、うつ病と診断された。「これでもう会社に行かなくていい」という安堵感と、「気持ちが晴れる日は来るんだろうか」という不安感が同時に押し寄せた。
実際、通院してもよくならないどころか、薬の副作用で吐き気や倦怠感に苦しんだ。何度か転院し、脳に電流をあてる「経頭蓋(けいとうがい)磁気刺激(TMS)」も試したが、期待したほどの効果はなかった。「なぜこんなに自分は弱いのか」と思い詰め、どうやって死のうか、と毎日考えていた。

どん底のなか、ようやく合う薬が見つかり、症状も副作用も少し落ち着いてきた。23年4月からは主治医の提案で、復職に向けたリワークプログラムに通った。同じ境遇の人と悩みを共有し、「一人じゃない」と思えた。
同年9月に復職。夜眠れる、ごはんが食べられる、支度ができる。「ふつうの生活ができる。それが何よりうれしかった」。その後も精神状態の波はある。転職もした。だが、大きく体調を崩さないよう、自分を守ってきた。気兼ねなく友人と会い、旅行もできるようになった。
いま振り返ると、「コロナがなければ、ここまで悪化しなかった」と思う。「すごく孤独だった」

徳島大学の山本哲也教授らの研究では、コロナ禍で悪化したメンタルヘルスは改善傾向にあるものの、若年層ほど回復から取り残されていることがわかった・・・

具体の従業員学び直し

6月8日の日経新聞に「米ウォルマート、AI時代に「脱単純労働」 30万人にリスキリング迫る」が載っていました。

・・・米小売り大手ウォルマートが毎年30万人の従業員にリスキリング(学び直し)の機会を与えていくと表明した。30万人は全従業員の15%にあたる。オンラインに販売の主軸が移り、人工知能(AI)導入を進めるなか「単純労働」はなくなると判断した。米国の最大雇用主である同社の方針は、他の企業にも波及しそうだ。

ウォルマートは4〜6日、従業員大会と株主総会、メディア説明会などのイベントを本社がある南部アーカンソー州で実施した。毎年、関係者を集め経営戦略を説明している場で今年はリスキリング計画を表明した。世界約200カ所の研修拠点に、あわせて毎年30万人分のリスキリングプログラムを導入する。
これまで店舗で荷出しや顧客対応、オンライン注文の発送作業などを担当していた従業員がリスキリングの対象だ。資格が必要な技能職への転換を促す。自動化装置の保守、空調や冷蔵などの電気機器の管理、フォークリフト操作や庭園管理などだ。

「将来すべて自動化された現場で、何に投資すべきだろう。私たちは(従業員の)皆さんに投資し、成長し続けるのを見守りたい」。ダグ・マクミロン最高経営責任者(CEO)は6日、従業員大会に集まった数万人の従業員を前にリスキリングの意義を説き、発破をかけた。
なぜリスキリングが必要か。「小売り現場の労働力は変質している。手作業の荷詰めや簡単な機械操作はもう必要ない。新しくてより高度なスキルが求められるようになっている」。RJ・ザネス副社長は、単純労働は必要なくなっていくからだと端的に説明した・・・

次の文章に納得しました。
「これまで店舗で荷出しや顧客対応、オンライン注文の発送作業などを担当していた従業員がリスキリングの対象だ。資格が必要な技能職への転換を促す。自動化装置の保守、空調や冷蔵などの電気機器の管理、フォークリフト操作や庭園管理などだ」

「学び直し」(リスキリング)という話をよく聞きますが、具体的に何をするのか。私には理解できませんでした。これから必要とされる技能、転職先で使える技能を示さないと、単にリスキリングと言われても困るでしょう。