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生き様-明るい課長講座

職員の心の健康

10月15日の日経新聞オピニオン欄、村山恵一・コメンテーターの「社員の気分を上げる経営」から。心の健康には、病気にならないだけでなく、積極的に仕事に打ち込むこともあります。

・・・従業員のメンタルヘルス(心の健康)に気を配っているか。そう問われれば、イエスと答える日本企業は多いだろう。ストレスチェックやEAP(従業員支援プログラム)があると。それでは足りないと訴えるシンガポール企業が9月、日本に上陸した。2019年創業のインテレクトだ。
スマートフォンアプリを介し、主に企業の従業員にメンタルケアを提供する。ストレスや不安への対処法、睡眠の質や自己肯定感を高める方法が学べ、コーチングも受けられる。アジアを中心に300万人以上が利用する。科学的な根拠を重視し、大学などとの共同研究にも熱心だが、売りはアプリ経由というカジュアルさだ・・・

・・・わが社の従業員はいま何を思い、欲しているのか。経済学だけでなく心理学の視点もないと、経営は回らない。米国を見てみよう。
セクハラ問題に対する会社の対応が手ぬるいと、グーグル従業員が各地でストライキに踏み切ったのは18年だ。19年にはアマゾン・ドット・コムの従業員たちが環境保護を徹底せよと会社に株主提案した。この年のある従業員アンケートでは、75%が「自分たちには雇用主の方針に反対する声を上げる権利がある」と答えている。
経営者が直面するのは「物言う従業員」に限らない。「物言わぬ従業員」からも目を背けられない。米ギャラップが9月に公表した調査によると、米国では働く人の半数が「静かな退職者」だ。
実際に会社を辞めるのではない。行動を起こすほど強い不満はないが、仕事への熱意もない。最低限の業務をこなすだけ。コロナ禍で在宅勤務が広がり、薄れた会社との結びつきが背景にある・・・

・・・教科書に正解が書いてあるような問いではない。アプローチはいくつもあり、模索が会社を鍛える。ソフト開発のコンピュータ技研(大阪市)はヒントになる。
約130人が働く同社は、社員が自分の給与(年収)を自己申告して決める仕組みを20年から段階的に導入してきた。社員はまず、自分が業務や社風にどう貢献できるか、人生の目標とどう関わるかなどを専用シートに記載する。そういう自分に対する会社からの「投資」として給与額を求める。
シートの中身について社員とマネジャーが対話した後、松井佑介代表取締役とマネジャーによる投資準備委員会で各社員への投資の可否を判断する。認められれば松井氏と役員からなる投資委員会で最終決定だ。準備委員会を通るまで、社員はマネジャーと対話して納得のいく着地点を探す。
制度の導入後、社員の7割で年収がアップし、全社の人件費は三千数百万円増えたが、手応えもある。ずっと1~2%台だった営業利益率が4%を超えた。離職率も下がった・・・

なぜ叱ってしまうのか2

なぜ叱ってしまうのか」の続きです。今度は、職場でです。

――パブリックな空間にも広がっているということですか?
「家庭以上に権力の格差がはっきりしている会社のような組織では、部下を指導する自分の方が正しい、と上司は思い込みがちです。人は、ルールに違反した相手に罰を与えると、脳の報酬系回路が活性化する。強く活性化した人ほど、相手に罰を与えようとする傾向があることが、実験で確認されています。つまり、叱る依存の落とし穴にはまりやすい」
「処罰感情の充足が人間の欲求の一つなら、人間がつくる社会の仕組みに影響を与えないはずはありません。最近も、ネット上の誹謗中傷対策として『侮辱罪』が厳罰化されました。とりあえずの抑止効果はあると思いますが、人を公然と侮辱することに快を感じている人が、厳罰化されたから改心するでしょうか。どうすれば再犯予防できるかの議論が必要なのに、『悪いやつには罰を』という処罰感情の充足で終わっている。社会も『叱る』に依存しているということではないでしょうか」

――他方で、企業ではパワハラと受け取られないかと、叱ることを怖がる風潮も強まっています。私自身も管理職ですが、必要な指導を躊躇してしまうことも……。
「それもむしろ、叱ることの効果を過大視していることに原因があります。効果があると思い込んでいるから、処罰感情が募り、依存する。行きすぎる。大して効果がないと認識していれば、叱ることを怖がることはありません」
「パワハラ上司扱いされたくないから必要な指導もしないのは、企業にとって損失です。近年、こうした傾向への解決策として、職場で自由に意見できる『心理的安全性』が重視されています。心理的安全性があれば、処罰感情もわきにくいのではないでしょうか」

――具体的にどうすれば?
「叱られる相手が行動しない理由が『できないから』なのか、『しないから』なのか、見極めることが大事だと思っています。特に子どもの場合、過去に一度できたことが毎回できるとは限りません。『この間はできたのに』ではなく『まだこの子は50%しかできないんだな』と考えるだけで、だいぶ違う世界が開けてきます」
「その上で、どんなサポートがあれば『できない』が『できる』に変わるのか、と考えてみるのです。叱る、叱らないではなく、新しい方法を試行錯誤するうちに気づいたら叱らなくなっていた……というのが、目指したい姿です」

――「叱る」を手放せたら、社会も変わりますね。
「そのためには、人は叱られ、その苦痛から学んでこそ成長するという『苦痛神話』から脱却しなければなりません。人は叱ることに依存する。でも、叱るだけでは人は学ばない。これが社会の常識としてインストールされれば、もっと生きやすい世の中になるのではと思います」

心当たりのある方は、原文をお読みください。職場で部下を叱って、良いことはありません。それは指導ではなく、怒っている本人が自分の感情を制御できていない、感情のはけ口にしているのです。『明るい公務員講座 管理職のオキテ』第2講をお読みください。

なぜ叱ってしまうのか

9月16日の朝日新聞オピニオン欄、臨床心理士・村中直人さんへのインタビュー「なぜ叱ってしまうのか」から。
・・・ほめて育てたいのに、叱ってしまう。叱っているうちに、だんだん止まらなくなる――。私たちはなぜ、叱るという行為にふりまわされるのか。臨床心理士の村中直人さんは「叱る」には依存性があり、その効果が過大評価されているからだと言う。とはいえ、一切叱らない聖人君子にはなれない。「叱る」とのつきあい方を聞いた・・・

――子どもを叱った後は自己嫌悪に陥るのに、また叱ってしまう。どんどんエスカレートし、抑えられなくなることがあります。約束の時間になっても宿題を始めないときとか、親に口答えしたときとか……。
「心の奥では、子どもが自分の言葉に反応し、思い通りに動いてほしいと思っていませんか? そういう意味では、叱るという行為は即効性があります。それだけでなく、『相手が自分の言葉に従う』という自己効力感が得られるし、『悪いことをした人を罰したい』という処罰感情も満たせる。こんなにごほうびがあれば、『叱る』に依存性があっても、おかしくはありません」

――では、私は叱ることに「依存」しているのですか?
「乱暴な言い方をすると、人間が毎日のように続けている行動は、習慣か依存のどちらかです。例えば毎日ランニングする人は、習慣化するほど楽に走れているか、走ることで得られる『快』に依存しているか、です」

――でも叱った後は後悔し、快い感情とはとても言えません。
「後悔は、『してはいけないことをしてしまった』という二次的な感情です。一方で、処罰感情は生まれながらに持っている欲求です。生来的な欲求は二次的感情に勝ってしまいます」

――とは言え、教育上、必要だと思うから叱っているのですが。
「誤解しないでほしいのは『一切、叱ってはいけない』とも、『叱ることへの依存は心の病だ』とも言っているわけではないということです。私には小学生の息子がいますが、普通に叱っています。例えば、子どもが私のあごに体を押しつけてきて、『やめて』と何度言っても聞かないとき。言い聞かせても人が嫌がることをやめないときは、私も叱ります」
「ただ、親は『教育的効果がある』と思っていても、実は子どもの学びにつながっていないことも多々あります。叱ることの効果と限界を、知ってほしいのです」

――効果と限界、ですか。
「たとえば、命にかかわるような危険な行為や、誰かを傷つけるなど、絶対にしてはいけないことをやめさせる危機介入には、叱ることが一番効果的です。約束の時間になっても宿題をしないことをこっぴどく叱られ、『また叱られたら嫌だな』と、その行動を自ら避けるようになるといった抑止効果もあります」
「しかし、子どもにとって叱られることは、苦痛な時間以外の何ものでもない。『この状況から早く逃げ出すには、早く宿題をした方が得かも』と、とりあえずやっているだけかもしれません」
「不安や恐怖を感じると、知的な活動に重要だと考えられている脳の前頭前野の活動が大きく低下します。親は『時間を守る大切さを学んでくれた』と思っていても、実は子どもはそのとき何かを学んでいるのではなく、その場しのぎで対処しているだけ、ということもあり得るわけです」

今の職場では女性が活躍できる

8月22日の日経新聞女性欄に、令和入社の女性社員1000人調査(下)「3人に1人「仕事や出世優先」」が載っていました。

今の職場では女性が活躍できる――。令和以降に大学や大学院を出て社会人になった女性の75.5%がそう感じていることが、日本経済新聞社の調査で分かった。また3人に1人は「仕事や出世を優先する働き方が理想」と回答。若手女性社員らが、女性活躍や昇進に前向きなイメージを抱いている様子が浮かんだ。
「今勤めている会社は女性が活躍できる職場か」との問いに「とてもそう思う」「ややそう思う」と答えた人は、4分の3を占めた。

会社や社会は、着実に変わりつつあります。

夏休みの宿題と残業時間

8月21日の読売新聞、森川暁子・編集委員の「自分に気づける 夏休みの宿題」から。

2018年、学習塾「明光義塾」が小学5年〜中学3年までの子を持つ保護者600人に、子供が前年の夏休みの宿題にどう取り組んだかを尋ねたインターネット調査がある。
「計画を立て、コツコツ」が34・2%で「計画はなく、気が向いたときに」が39・2%。案外ちゃんとしてると思ったが、「終了間近にまとめて」(15・7%)と「夏休み中に終わらなかった」(3・8%)を合わせ約2割ギリギリ組がいた。

兵庫県立大准教授の黒川博文さん(34)(行動経済学)らは16年、ある会社の協力を得て労働時間に関する調査を行った。回答者はオフィスワーカー146人。性格など個人の特性を尋ねる中で、子供のころの夏休みの宿題についても質問した。
残業時間と照らし合わせると、夏休みの宿題を遅くやった人ほど、午後10時以降の深夜残業時間が長かったという。「宿題をするのが遅いというのは、努力を後回しにし、楽しいことを優先することです。大人になっても一部、そうした後回しの傾向が残るのでは」と、黒川さん。残業の理由はそれだけではないだろうが、深夜にこの原稿を書きながら身につまされた。
「もちろん、ずっと変わらないわけではありません。どこかの時点で、つい後回しにする自分の癖に気付き、工夫して乗り越える人もいると思います。大事なのは気付くことです」

まだ宿題を追い込み中の人が、これからできる工夫はないか、黒川さんに尋ねた。
「『来週までに50ページ』といった漠然とした目標だけではなく『毎日5ページ』のように、具体的にできる範囲の目標を設定すると達成しやすい。強めの方法だと、スマホを家に置いて図書館に行き、宿題しかできない状況を作るというのもあります」
自由研究や工作などは「このテーマにする」と、決めないと始まらないのでさらにハードルが高い。
「いきなり『アイデアを出す』というのは大変です。5分でも、とにかく何かを書いてみるところから、でどうでしょう」