カテゴリー別アーカイブ: 明るい課長講座

生き様-明るい課長講座

法令順守疲れ

11月20日の日経新聞に、「不正対策 絞って強化 「コンプラ疲れ」解消」が載っていました。これは、多くの職場で役に立ちます。何か不始末があるとそのたびに確認や対策が積み重ねられる役所では、よくある話です。詳しくは原文をお読みください。

・・・コンプライアンス(法令順守)対策を効率化し、不正防止の効果を高めようとする企業が増えている。三菱電機は品質不正問題を機に、社内監査の質問数を大幅に減らし、リスクが高い項目に絞る手法に転換した。イオン銀行は営業員の報告書チェックに人工知能(AI)を活用している。法改正や不祥事の度に増える社内規定や研修を負担に感じる「コンプラ疲れ」を解消する狙いもある・・・

・・・社内の雰囲気を一変させたのは、21年に発覚した長崎県の工場での大規模な品質不正問題だった。不正検査やデータの虚偽記載が判明した。外部の弁護士らによる調査は約1年4カ月に及び、不正は最終的に同社単体だけで197件見つかった。
三菱電機の経営陣にとって衝撃だったのは、21年の品質不正問題が「再発」だったことだった。18年度に発覚した子会社の不正を受けて、他に品質不正がないかを点検してグループ全体で再発防止策を講じたばかりだった。その前の16、17年にも他社の品質問題を受けて品質不正の有無をチェックしていた。
3度にわたって徹底的に点検したのに、なぜ不正が見つけられなかったのか――。再発防止策の機能不全や対応する中間管理職の疲弊などの問題も浮かんだ。日下部聡常務執行役は「やり方を抜本的に変える必要を痛感した」と振り返る。
たどり着いたのが社内リスクを調べ、重要な事象を優先して対応する「リスクベース・アプローチ」だ。不正を受けて設置したガバナンスレビュー委員会にも同様の提言を受け、正式に方針を決めた。本体の各部門や子会社に想定リスクを尋ね、リスクの高い部門や事業を特定して先に対応にあたるやり方に改めた・・・

・・・コンプラ強化を目指す企業は多いが、一方で社内ルールや研修の負担が業務を圧迫する「コンプラ疲れ」の問題も指摘される。一橋大学経済研究所の森川正之特任教授が21年、政府の規制や社内、業界も含むルールが過剰だと思うかどうかについてネット上でアンケート調査を実施したところ、回答した20歳以上の労働者5707人のうち29.7%が「過剰感がある」と回答した。業種別にみると、金融・保険業(40.6%)や情報通信業(36.9%)で、過剰感が高かった。
調査では、就労者全体で労働時間の約20%がコンプラ業務に費やされるとの結果も出た・・・

話を聞いてくれる先輩と上司

拙著『明るい公務員講座』にも書きましたが、いろんな上司や先輩のおかげで、ここまで来ることができました。素晴らしい上司や先輩に巡り会ったのですが、その中でも「特にうれしかった」人を考えました。

何が違うか。皆さん仕事ができて、部下にも優しく、甲乙つけがたいのです。一つ差を見つけました。相談に行くと直ちに正解を教えてくださる方と、しばらく話を聞いてくださる方の違いです。効率的に考えると前者の方が良いと思えるのですが、その後長く付き合いが続いたのは後者の方です。

人の悩みには2種類のものがあるようです。一つは目の前の課題解決です。もう一つは漠然とした不安です。後者は、話を聞いてもらうだけで、解決策がなくても安心できます。

話を聞いてもらえることは、若手だけでなく、この歳になってもありがたいことです。残念ながら、私は聞き上手ではなかったです。何人かの後輩たちからは「全勝さんに話を聞いてもらえた」と言われたことがあるのですが。まだまだでした。

支援型上司

10月26日の日経新聞夕刊「私のリーダー論」、藤原美喜子アルファ・アソシエイツ社長の「カリスマより「サーバント」」から。

・・・研修などで管理職の卵たちと接し、求められるリーダー像が変わりつつあることを実感しているそうだ。いったいどんな変化なのか。

――ずばり、どんなリーダーが今、必要ですか。
「サーバント・リーダーシップを発揮できる人材です。サーバントという言葉は奉仕という意味ですが、『支援型』と言い換えるとよいかもしれません。部下の話をよく聞き、信頼感を醸成し、力を最大限発揮できるよう導く。自ら考え、自主的・積極的に行動する部下を増やすことをゴールとする。そんなリーダーシップの手法です」

――強烈なカリスマ性を有する人物が組織をぐいぐいひっぱる。こんなリーダー像はもう時代遅れですか?
「カリスマ型のリーダーは今は時代に合いません。黙って上司の言うことを聞けと言っても従順に従う人は若い世代ではいないでしょう」
「企業の管理職研修では約9割の人が部下について悩んでいます。指示したことはやるが自主的には動かないと」

――そんな状況下で、サーバント・リーダーシップはどう有効に働くのでしょうか。
「英国の投資銀行で働いていたころ、私が仕えたリーダーたちは部下の育成に自分の時間の半分くらいは割いてくれていた。それは、部下をちゃんと育てないと競争に生き残れないからです」
「研修を受ける管理職は、忙しくて部下を育てる時間がないとこぼす。でも私はそれは逆だと言います。部下が育っていないから上司であるあなたは忙しいのだと。部下のために時間を使い、ちゃんと育てたらあなたのために仕事をもっとするようになると」
「部下の話を聞きながら『君はここが長所だからそれを伸ばそう』と助言する。ミスが多ければ『こんなミスをしてはダメだ』ではなく、どんなミスが多いのかを部下と一緒に分析し、改善策を話し合う。そこまですると、部下の心は動き出します」

――従来のリーダー像とはだいぶ異なるため、モデルやお手本があまりないのでは。
「管理職は3つ、毎日部下に実行するだけでまずはいい。1つ目はおはようとか、体調大丈夫? など日常的な声かけをする。2つ目は部下が知らないことを減らそうという姿勢で教える。3つ目は部下の仕事を認めてあげる」
「子育てと似ている。そう思いませんか。子供には信号の青や赤の意味から教えていく。わからないことがあれば『誰でもそこから出発点だからね』と寄り添う。そんな上司がいたら、部下はもっとやる気が出せるはずです」

サラリーマンに必要な「成仏」

10月19日の日経新聞夕刊「人間発見」、経済コラムニスト・大江英樹さんの「「定年楽園」を生きる」から。

・・・サラリーマンにとって定年は人生の一大事。前と後で慣れ親しんだ生活が一変します。本当は50代になり「社長になる目」がなくなった人は、早めに頭を切り替え次の人生へと踏み出すべきです。
そもそも出世レースは相当分の悪い勝負です。ゴールは社長の席1つだけ。実力に加え、運も左右します。会社に全てをささげ仕事にまい進、出世に努めるのも40代までならいい。でも50代は残りの人生に目を向けた方がいい。
社長以外は、副社長もヒラもサラリーマンの大多数はある意味「負け犬」です。そして定年を迎える。早めに切り替え「成仏」してこそ、残り30〜40年の人生が輝きます。

かく言う私も当時は全くダメでした。起業したいとは、ぼんやり思っていましたが、具体的なプランはない。流されるまま、定年後も65歳まで勤められる再雇用制度を利用し、それまでと同じ仕事を惰性で続けました。
これは相当のストレスです。昨日までその部門の長だったのが一兵卒となり、責任と権限が曖昧になる。もちろん週3日勤務だし、給与の激減は納得の上でした。自分なりに努力し、コピーやお茶入れ、トナー交換などもフットワーク軽くやってみましたが明らかに浮いていましたね・・・

社内転職の薦め

10月12日の日経新聞夕刊に「「社内転職」会社も応援」が載っていました。

・・・会社員生活と切っても切り離せない人事異動。その主導権を会社から個人に移す動きが広がっている。働きたい部署でやりたい仕事ができるよう個人に情報提供し、時に助言もして会社が「社内転職」を積極的にサポートする。終身雇用の限界が指摘されるなか、会社と個人のパワーバランス見直しが迫られ、キャリアの積み方は過渡期にある・・・

・・・リクルートワークス研究所の調査では欠員などを社内公募するジョブポスティングを37.9%が導入するなど個人選択型異動制度は普及しつつある。ただ千野翔平研究員は「仕組みはあっても有名無実化している企業が多い。例えば上司の許可や社歴、年齢など条件があって自由に手を挙げられない。本格的に広がるのはこれからだ」と指摘する。
調査では会社主導より自ら手を挙げて異動した人の方がエンゲージメント(働きがい)が高かった。「経営にも利点がある。今後は異動の主軸を会社主導型から個人選択型に切り替えることが必要だ」とみる・・・

詳しくは記事を読んでいただくとして。日本のメンバーシップ型雇用慣行では、会社や役所に採用されると、その後の職務も異動も会社・役所任せでした。経済発展期にはこの仕組みが良く機能したのですが、成長が止まると、生産性の低い職場、職員が不満を持つ職場に暗転しました。連載「公共を創る」で、今議論しているところです。
紹介されている試みは、ジョブ型を組み合わせようとしています。「あてがい扶持」の異動は不満を生み、自ら手を挙げた場合はうまくいけば満足し、うまくいかなかった場合も納得できます。