12月で、新居に移って1年が経ちました。それもあって、渡辺武信著「住まい方の思想」「住まい方の演出」「住まい方の実践」「住まいのつくり方」(それぞれ中公新書)を、読み返しました。寝る前に布団の中で読む本は進むのですが、書斎での難しい本は進みませんねえ。結果として、新書と文庫本、エッセイのたぐいしか読めません。
さて、家を建てるに際し、いろんなハウツー本も読みました。それはそれなりに役に立った(役に立たなかった)のですが、そのようなハウツーより、記憶に残った本、なるほどと思ったのが、これらの本です。
先生の主張は、「住まいは単に住む場所でなく、その人の人生観の表現である」と、要約したらいいでしょうか。「私の場所」をつくることだとも、おっしゃってます。良い住まい、住みよい住まいとは、業者がいくら金をかけても、高い家具を置いてもできるものではなく、住人がそこでどのような生活を送るかによります。ただ広ければいい、というものではないのです。「狭苦しい」(狭楽しい)ということも、おっしゃってます。まあ、そこそこの面積は必要ですが。住まいは、ものとしてみれば、大きな箱であり調度品です。しかしその容れ物が問題なのではなく、そこにできる隙間が重要だと主張されます。そうですね。そこで、どのような時間を過ごすかですから。となると、重要なのは入れものである家でなく、その中での住人の生活の仕方になります。ハードウエアでなく、ソフトウエア、コンテンツです。
もっとも、私も若いときは、1年のほとんどを仕事場で過ごし、家には寝るだけに帰っていました。そのような暮らしは、本でも批判されています。もう少し、自分の時間を大切にするべきでした。まあ、そんなことを考えることができる歳になった、ということでしょう。でも、書斎がなくても、本は書けるのですよね。私の著作の多くは、食卓で生産されました。
これから家を建てようと考えておられる方だけでなく、暮らし方を考えておられる方にはお勧めです。家を通じた人生論です。もっと他の建築の本も、教養として勉強になりましたが、小さな我が家には縁のないことが多いので、省略します。