カテゴリー別アーカイブ: 仕事の仕方

生き様-仕事の仕方

難しい話を1枚の紙で

講談社のPR誌『本』2013年3月号、翻訳家上原昌子さんの「ヒッグス粒子探索をめぐる壮大なドラマ」に、次のような話が載っています。
素粒子物理学者が、理論的に予測されていたヒッグス粒子を、巨額の費用をかけた装置(LHC)で発見しました。その過程で、科学者は国家に費用負担を求めました。イギリスのサッチャー首相の下で大臣を務めたワルドグレイブ氏が、1993年、イギリス物理学会での講演で、次のように述べました。
・・・財政難の英国政府にLHCの建設資金援助を望むなら、まず、その粒子が一体どういうものなのか、なぜその発見が重要なのかを、A4紙1枚以内で私にわかるように説明せよ・・

上司の役割

今日は、仕事の関係で、12:20頃に職場に戻って、弁当を広げました。今日はなぜか、静かに食べることができました。しかし、13:00になったとたんに、次々と職員が決裁やら相談にやってきました。
どうやら、Y秘書が私のブログ(ゆっくりさせてくれない職員たちと黒幕)を読んで、次の対策を考えたようです。
でも、部下の言うとおりに動くのが、上司の務めですね。Y秘書の指示に従いましょう。

金曜日に、×を2つもらった職員(若手職員卒業試験)は、今朝早く、修正した案を持ってきました。完璧にできていました。でも、100点を与えると慢心する恐れがあるので、あえて問題点を探して、「95点」と採点しました。満足せずに、さらに向上してもらうためです。きっと、将来有能な職員になってくれるでしょう。
上司の楽しみは、将来有望な職員を鍛えることです。復興庁には、各省のほか民間企業やNPOからの職員がいます。それぞれ有能な職員ですが、これまで「狭い職場」で生きてきました。
彼らに、復興の現場を見せ、内閣と与党はどう動いているかを見てもらい、どのように企画して段取りをつければ仕事が進むかを勉強してもらっています。若手職員では、なかなかそんな機会は、ありません。でも、復興庁では、これまでにないことをしていること、職員が少ないこと、仕事が忙しいので、若手職員でもいろいろなことが経験できます。
良いアイデアがなければ、進歩はありません。しかし、アイデアだけでは、企画は実現せず、世の中は動きません。その勉強ができます。

放課後には、元部下職員と一緒に「異業種交流会」に出ました。私は、「今日も、ホームページを加筆するので、先に帰るわ」と、皆より早く退席しました。去り際に、彼曰く「S省のS君は、よく仕事ができたが、さらに磨きがかかった、と書いてください」と。で、その注文を、こうして実行しています(苦笑)。

若手職員卒業試験

昨日金曜日、若手職員が資料を持って説明に来ました。あるテーマについて想定問答集を作るので、その項目を整理した案です。自信満々の様子です。確かに彼の自信通りに、内容は良くできていました。しかし私は、厳しく次のように指導しました。
「1 右上に、作成した日付が入っていない。
2 下に、ページ番号が打たれていない。
まずここで、失格。×。
次に、
3 表題が内容を表していない。よって、表題を見ても、これが何の資料かわからない。例えば、次のようにしてはどうか・・・。
4 さらに、これは別添資料であって、関係者に示す資料になっていない。この紙を関係者に配って、答弁作成の依頼をするのだから、この紙の前に、何の目的で、いつまでに、どのような体裁で作るかを書いた「趣旨紙」が必要。
よって、××」と。
彼は「ううう・・」と唸り、「岡本学校を卒業するために、卒業試験と思って作ったのですが」と。
私は、「これでは、落第。よって、岡本組組員に残留」と、申し渡しました。
内容は良くできた資料なので、月曜日には、100点満点の資料が上がってくるでしょう。

情報セキュリティセンター

内閣官房に、情報セキュリティセンターがあります。先日出席した会議では、政府機関がサイバー攻撃にあった事例が報告されていました。
手口が巧妙になっているので、職員には「変なメールを開かないように」注意を呼びかけています。また、時々「引っかけメール」を送って正しく対応できるか、訓練もしています。
組織管理者、監督者には、次々と新しいリスク管理が求められます。セクハラやパワハラ、個人情報保護、部下のメンタルヘルスなどは、かつてはなかった組織のリスク管理です。管理職が知っていなければならない「知識」が増えています。そして、予防だけでなく、起きてしまった場合の対処も重要です。『明るい係長講座』の次に、「管理職が知っていなければならない組織管理常識集」をまとめたいと思っているのですが・・。
政府機関だけでなく、個人も危険にさらされています。最近では、スマートフォンを利用している際に、銀行口座からお金を引き出される、あなたの名前で他人を中傷するなどの被害が多いようです。被害に遭わないように、子どもへの教育も重要です。

悪魔の代理人

先日紹介した、齋藤ウイリアム浩幸著『ザ・チーム』に、次のような記述があります。筆者がアメリカの高校で、ディベートの訓練に励んだときのことです。
・・ディベートは、きちんと筋道立てて自分の意見を述べ、品位を保ちながら静かな言葉で、相手を説得することだ・・試合はチーム戦で行われる。弁舌をふるう人、資料を探す人、戦略を練る人がチームを組む・・
議論に不可欠なのが、「悪魔の代理人」(Devil’s Advocacy)と呼ばれる役割だ。議論にあえて反対の立場で質問し、相手の論理の弱点を突く。もともとはローマ・カトリック教会で教義を定めたり改定するとき、誰かを聖人に列するとき、意図的にその教義やその人の業績に反対する「悪魔」の立場をとって、教義を正当化する主張の隙をチェックしたり、より強い議論に支えられた教義に鍛え上げる、あるいは聖人になるためのより説得力ある理由を見つける役割だ。
いまでもコンサルタント業界などでは、大事なプレゼンテーション前に中身をチェックするとき、悪魔の代理人が指名されている・・(p222~)
・・ドラッカーは、異論の重要性を指摘している。GM中興の祖であるアルフレッド・スローンについて述べたくだりを引用する。
「スローンは、GMの最高レベルの会議では、『それではこの決定に関しては、意見が完全に一致していると了解してよろしいでしょうか』と聞き、出席者全員がうなずくときには、 『それでは、この問題について、異なる見解を引き出し、この決定がいかなる意味をもつかについて、もっと理解するための時間が必要と思われるので、検討を次回まで延期することを提案したい』といったそうである」(『経営者の条件』ダイヤモンド社)・・(p226)

私も時々、部下が持ってくる案について、あえて「こんな考えの人が質問したら、どう答えるの?」と、いろんな角度から質問を投げて、悪魔の代理人をやっています。国会質問や記者会見では、こちらの思ったような質問は出ません。こちらが困るような質問を、想定しておかなければならないのです。部下職員は、「いやな上司」と思っているでしょうね(苦笑)。
想定問答を作る際に、部下職員は、答えやすい問を作ることは、「お詫びの仕方」(2007年2月1日の記事)でも指摘しました。
想定問答を打ち合わせているときに、2種類の上司や同僚がいます。1人は、原案について、その答弁案を深掘りする人。一番狭い場合は、文章を練る人です。
もう1人は、その答弁案を離れて、違った角度から問題点を指摘する人です。例えば「そもそも、そんな質問は出ませんよ。出るとしたら、××の角度でしょう」とか「この答弁をする時点では、前提条件が変わっているはずです・・」とかです。前者も重要ですが、後者はもっと重要です。