カテゴリー別アーカイブ: 仕事の仕方

生き様-仕事の仕方

レストラン調理場での壮絶な修行、3

斉須さんは、いつまでも下働きに甘んじてはいません。ずるをする同僚を殴ります。オーナーの奥さんと意見の合わない時、不条理と感じた時は、ソースがついたアスパラガスを投げつけ、彼女のドレスを汚します。そして、料理長になる夢を見て、どうすればなれるかを考えます。
・・「ヴィヴァロア」でお客さんに提供しているサービスの水準を日本でもやってみたい、と強く願いました。ただ「ヴィヴァロア」の従業員の一人として働くことと、自分が料理長としてその水準を作り出すということが、まったく別ものだということも、肌で感じはじめていた時期でした。
自分が従業員として働いている時には、チームの勢いに乗っかっていればいいのです。おもしろいし、ラクです。しかし、料理長は既にある環境や雰囲気に乗っかることはできない。その環境や雰囲気を一から作り出さなければいけない。
従業員としてフルに活躍できるからといって自分でもできると思ってしまえば、すぐに落っこちるだろうなぁ、と感じていた・・(オーナーのやりかたを)チームメイトとしてではなく、リーダーのあり方を見ていた。彼のやっていることをどうスライドさせれば、ぼくが日本で同じことをできるようになるのか?・・(p132)
そしてよき同僚に恵まれ、彼と2人で店を開きます。その店はミシュランの2つ星を取ります。
・・料理は技術よりも人格なのだと教えられたような気がします。ベルナールがいなければ、今のぼくはないでしょう。人が真摯に生きていくことのすばらしさを教えてくれたのは彼です・・(p186)
そして、彼ベルナールの人となりを作った生い立ちも、書かれています。
斉須さんが新人を採用する際の基準が、書かれています。
・・採用するかしないかを決める基準は、ふたつだけです。気立てと健康。そのふたつには、余計な作為が入っていないからいいのです。どこを切っても裏表なく人に接する人はすばらしい。
まわりの誰もが「あ、この子は何でも嫌がらずにやるな」と、憎からずおもうでしょう?そう思ってもらったら、もう成功の切符を手にしたようなものです。そういう人ならどこに行ってもうまく行くでしょう・・(p258)
まだまだ紹介したい内容がありますが、それは本をお読みください。これだけの内容が詰まった本が、600円(税別)です。お買い得です。

レストラン調理場での壮絶な修行、2

(レストラン調理場での壮絶な修行、2)
斉須政雄著『調理場という戦場』の続きです。斉須さんは、3店目にして、三つ星レストランで働くことになります。パリの高級住宅街にあるヴィヴァロアです。その店のオーナーに、斉須さんは理想像を見いだします。その立ち居振る舞いにです。
・・オーナーがやってことと言えば、一日じゅう掃除をしている…ほとんど掃除しかしていない。彼の印象に残る姿と言えば「掃除をしている姿」です。
レストランで何よりも重要なのは「清潔度」だということや、お客さんに対する家庭的な態度…ぼくは大切なことの大半を彼から教わったような気がします。仕事場のありようや空気は、そっくりそのまま仕事に映し出されるとと知りました・・(p91)
お店にはワイン会社の営業の人などがよく来ますが、あまりに従業員然としているから、オーナーとわからないのです。洗い場のおじさんのように見えるオーナーに向かって、「オーナーはどこにいますか?」と訊ねます。オーナーは茶目っ気を出して、洗い場のおじさんを呼びに行ったりします。
お客さんが喜んで「今日の料理はすばらしかった」と言うと、オーナーはお客さんを厨房に連れて行きます。「すばらしいのは私じゃない。彼が作ったのですよ、この子」と従業員を誉めます。
職員が気持ちよく働くことができる職場を作るコツは、どこも同じですね。この項まだ続く

レストラン調理場での壮絶な修行

斉須政雄著『調理場という戦場―コート・ドール斉須政雄の仕事論』(2006年、幻冬舎文庫)が、勉強になりました。フランス料理のシェフと聞けば、かっこよく見えますが、修行の内容が壮絶です。著者は1950年生まれ。23歳でフランスに渡り、12年間フランス料理店で修行し、その後帰国して東京でフランス料理店を開いておられます。その経験談と、それに基づく人生論です。駆け出しの頃の仕事ぶりから(p28)。
・・翌日の仕込みや注文の打ち合わせがあるから、夜12時半前に仕事が終わることはなかった。週に2回か3回、市場で買い出しのある日には、午前3時半に市場に市場に着いていなければならない。その場合にはレストランを2時半に出る。
「30分しか寝ていないのに」なんて日もしばしばで、「ぼくは、いつ倒れるのかなぁ」とおもっていました・・
ところが、2時に起きて、コーヒーを淹れてオーナーを起こしに行くと、既にオーナーも起きているのです。2人で市場に行って、3時半から開く魚や生鮮品、4時半からの内臓、6時からの肉、9時からの野菜を買い付けます。途中で、いったん店に戻って出直すのですが、帰ってくるのが12時。サービスが始まる時間です。起きてから既に10時間くらい働いています。
ところが、コックだけでなく、オーナーもすごく働きます。修行の4店目は、有名なパリのタイユバンです。オーナーは、誰よりも最後までお店にいます。夜中の2時までいて、翌朝には従業員が出勤する様子を、事務所の中から監視しています。
著者にとって、余裕のあるのは休日だけです。しかし、休みの日も後半になると、翌日の仕事を考え、落ち着かなくなります。

調理場、しかも最初の頃はフランス語も通じません。そこでの壮絶な修行、いわば戦場でどのように戦ったか。経験者だけが語ることのできる話です。
私も20歳代の駆け出しの頃、冬の時期には、毎日職場に泊まり込みました。1週間、一度もビルを出なかったとか、2週間、寮に帰らなかったとか、変な記録を自慢していました。自治省財政課の見習いは、いくら仕事をしても、追いつかなかったのです。昼食は社員食堂、夕食は出前。明け方まで仕事をして、局長室の床に寝袋を持ち込んで寝ていました。もちろん、朝飯は抜きです。お風呂は、せいぜいシャワーを浴びるくらいで、お湯で身体を拭いていました。着替えは、2週間分を旅行鞄に入れて持ち込んでいました。すると、1週間くらい、あっという間に過ぎるのです。よくまあ、あんなことができたものです。でも私の場合は、日本語は通じましたし、先輩同僚がいろいろ教えてくれました。精神的には、きつくなかったです。
この項続く。

参議院復興特別委員会、また名前が出ました

(参議院復興特別委員会、また名前が出ました)
今日17日は、参議院復興特別委員会で質疑がありました。前回(10月29日)の質疑の際には、寺田議員が私の名前を出してからかわれたのですが、今日は平野議員が私の名前を出されました。困ったものです(苦笑)。
議事録が参議院のホームページに載ったので、引用しておきます。会議録の3分の2くらい(後半)の場所です(会議録の番号では134です)。

○寺田典城君 あと、三番になりますけれども、小林委員が質問なさっていましたように、二十八年度復興予算の在り方について、これはまだ見通し付かないということです。ですから、私の案を一つ申し述べたいと思うんですが。
交付金制度だから、やっぱりオーバースペックとか、もらえばいいという形が地方自治体なっちゃうんですよ。私は市長をやっておったことがありますから、国からいただきましょうということになっちゃう。それを、復興特例債とか発行できるようになれば、自分たちが、借金ですから、考えるんです、議会も通さなきゃならないし、特例債を発行するために。そうすると、住民も参加するわけなんですよ。そして、それをどういう補填するのかというのは、特別交付税なり交付税算入なりでやればいいことであって、その辺を、私は当初からその話を訴えてきましたから、統括官なんかはよくその話は知っています。なかなかあの人、岡本全勝さん、全勝と書いているんですけれども善処をしていないので。要するに、地方債の特例制度を考えてみた方がいいんじゃないでしょうか。そういうことをひとつ申し伝えしておきたいと思います。

この発言があった時、委員室にいた私は、神妙に頭を下げました。ご指摘は、ごもっともです。参考にさせていただきます。

記者懇談会

今日午後に、記者さんたちを相手に、懇談会(説明会)をしました。官庁ではそれぞれに違いはありますが、記者さんたちを相手に、年に数回、業務の概要説明を行います。復興庁では、不定期ですが、年に2回くらいやっています。重要事項の発表の他に、行うのです。「バックグラウンド・ブリーフィング」も、記者さんに背景や事情を理解してもらうのに、重要です。私は、好きです。
記者さんたちは、それぞれに問題意識を持って、官庁に対して取材をします。それは重要なのですが、役所としては、まず基本的な知識を持ってもらって、それから取材をしてもらいたいのです。記者の多くは、1年未満で交代していきます。全体像を知らずに、重箱の隅を研究されても、良い記事になりません。
私としては、現場での復興がどこまで進んだか、復興庁は何をしているか、これから何が課題かを、客観的公平に見てもらいたいのです。そのためには、私も、何が進んで、何が進んでいないか、さらに今後の課題は何かを、正直に提供しなければなりません。
もっとも、復興庁を長く取材している記者さんと、現場を取材している記者さんは、もし私が問題点を隠しても、鋭く指摘してくるでしょう。
質疑応答は、私にとって、真剣勝負の場です。記者会見の場で、答えにくい質問に、「××なので、コメントを差し控えます」という答を返す人がいます。しかし、記者懇談会やバックグランド・ブリーフィングの場合に、はぐらかしては信用を失います。もちろん、質問の内容によりますが。
私の発言が、ぎりぎり活字になるかならないか、活字になっても良いかを判断しながら、答えなければなりません。「わかりません」「それはお答えできません」を連発すれば、次回から記者さんは参加しなくなるでしょう。
なので、この懇談会は、彼ら記者たちが、官庁側の説明者の力量評価をする場です。「この統括官は、今後取材しても無駄だな」「この参事官は、取材してみようか」と。私にとっても、記者さんたちそしてその後ろにいる国民が、どのような点に関心を持っているのかを知る、貴重な機会です。