カテゴリー別アーカイブ: 仕事の仕方

生き様-仕事の仕方

時間外につながらない権利

9月10日の日経新聞に「時間外「つながらない権利」、取引先の電話に応答不要」が載っていました。

・・・休日や終業後など業務時間外に仕事の連絡に返答しない「つながらない権利」に企業が対応している。空調設備のオーテックは個人の業務を部署全体で担い、連絡無しでも仕事が回る仕組みをつくった。リモートワークの普及で連絡しやすくなった一方、時間外の応答は社員のストレスになる。海外では法制化する動きもあり、8月からオーストラリアでも施行された。

「平日にお休みを頂く場合があります。働き方改革の一環として、個人携帯への連絡は会社へ転送されます。宜しくお願い致します」。オーテックは、2023年11月に中部支店の技術部で「つながらない権利」を導入した。取引先には、冒頭のお知らせをメールに添えて社員に直接連絡がいかないようにした。
技術部は空調機器のメンテナンスや新築建物の試運転調整を担う。ビルや病院向けは土日勤務が多く、平日に代休を取得しているが、「取引先などから連絡があるかもしれない」と社員は心が休まりにくい状況だった。
導入にあたり各社員が抱える仕事を部署内で共有し、他の人員でも代替できる体制を敷いた。
特に引き継ぎに工夫を凝らした。まず担当社員とペアで病院などを訪れ、機器の設置場所やフロアの構造など確認して課題を洗い出す。次は引き継いだ社員と新たな社員が訪れるという方法で人員を増やした。資料のやりとりだけでなく、現場を回ることで業務に支障が出ないようにした。
社員からは「休日に仕事の連絡を確認する回数が大幅に減った」と好評だ。懸念した取引先からのクレームもなく、同部署の白石肇課長は「リスクだけを考えるのではなく働きやすい方法を提案するのが肝要」と話す・・・

・・・日本では法整備に向けた具体的な動きはないが、厚生労働省は23年の研究会で「健康への影響の観点から、勤務時間外や休日の業務上の連絡の在り方についても引き続き議論がなされることが必要」と指摘している。24年5月には連合が「つながらない権利の立法化を検討すべき」と提言した。
労働者からは業務時間外の連絡が負担になるとの意見が多い。連合の23年の調査によると、「勤務時間外に部下・同僚・上司から業務上の連絡がくるとストレスを感じる」との答えは62.2%にのぼった・・・

・・・「つながらない権利」は海外で法制化が進む。フランスが17年に導入して注目を集め、イタリアなど欧州で先行していた。8月からは新たにオーストラリアでも施行され、雇用主からの合理的な理由がない勤務時間外の連絡に労働者は対応しない権利を得た。
豪州の制度は時間外連絡に常に応じる必要がある社員には別途手当の支払いを促すのが特徴。応答を求める合理性について労使で折り合いがつかない場合、公正労働委員会が判断する。命令に従わなければ、企業は最大9万3900豪㌦(約910万円)の罰金が科される可能性がある。
豪通信大手のテルストラは法制化を支持する。同社は従来から勤務時間外のメールを控えるなどの施策を促している。人材担当役員のキャサリン・ヴァン・デル・マーウェ氏は「働き方が大きく変わるとは考えていない。社員が不合理な時間外労働に応じないことに自信を持つための絶好の機会」ととらえる。
一方、業種によっては対応を懸念する企業もある。豪州で事業展開する資源世界大手は「趣旨は理解しているが鉱山は常に操業している。他国への連絡は時差もあり、完全に時間外に指示をしないことは難しい。制度を変えることはないが、柔軟に対応していきたい」と話す・・・

『理系的 英語習得術』

鎌田浩毅著『理系的英語習得術─インプットとアウトプットの全技法』(2024年、ちくま新書)を紹介します。
鎌田先生の『一生モノの英語勉強法』『一生モノの英語練習帳』『一生モノの受験活用術』に続く、第4弾です。

「ラクして実を取るのが理系的方法論」とおっしゃっています。いつ使うかわからない知識を暗記することはエネルギーの無駄だと書かれています。
英語習得術の本ですが、英語はほぼ出てきません。
試し読み」できます。

リーダーは指導者ではなく始動者

8月25日の読売新聞、朝比奈一郎・青山社中筆頭代表の「日本再生へ「始動者」育成」から。

日本の国力低下が顕著となって久しい。少子高齢化の急激な進行や経済の低迷、地方の衰退などで日本の市場は縮小し、国際経営開発研究所(スイス)が公表する世界競争力ランキングでは、1990年代初頭の首位から、2024年には過去最低の38位に低下した。
「失われた30年」の間に、日本社会の内向き志向は強まった。安定を重視する傾向が広がり、変化への対応の遅さや変革を求める機運の薄さが停滞から抜け出せない要因とも指摘されている。
リーダー人材の育成や、官公庁や自治体などへの政策提言を行うシンクタンク「青山社中」筆頭代表の朝比奈一郎氏は、再び「日本を世界で戦える国」にするために必要なのは、「始動者」の存在だと説く。

・・・日本が停滞から抜け出せない今、多くの分野でリーダーの育成が重要なことは論をまちません。ただ、現在必要なのは、「リーダー=指導者」ではありません。
このことに気づかされたのは、経済産業省の官僚時代に米ハーバード大ケネディ行政大学院に留学した時です。パブリックセクター(部門)について学ぶ大学院として人気が高く、「リーダーシップ論」と「マネジメント論」の講義が非常に盛んでした。
日米の意識差を痛感したのは、日本では、部下に慕われて仕事を円滑に進められる人を良き「リーダー=指導者」と呼ぶのに対し、米国ではむしろ、この役割は管理職が担うマネジメント業務と認識されていた点です。米国でリーダーとは、時に部下に嫌われたり、命を落としたりしても、「リスクを取って新たな取り組みを始め、自ら動いていく人」を指していました。「始動者」と訳すのが正しく、リーダーとマネジャーは異なるのです・・・

ファックス番号

先日、霞が関の後輩と会ったときに、異動後の新しい名刺をくれました。最近は、名刺をもらうより、電子メールアドレスをもらってやりとりする方が便利です。で、あまり真面目に名刺を見ないのですが、ふと気がつきました。

右上に役職、中央に氏名、そして左下に住所、電話番号、電子メールアドレスが書いてあります。普通の名刺です。電話番号と並んで、ファックス番号が書かれています。
で、彼に質問しました。「今どき、ファックスでやりとりしているのかね?」と。
彼曰く、「いや~、国会議員からの質問をファックスで受けることはありますが、課長の私が使うことはありませんね」
で、やさしく助言・指導しました。
「今どき、ファックスでやりとりしたら面倒だから。すくなくとも名刺に記載するのはやめたらどうですか」と。

最近もらった名刺のいくつかを見ると、ファックス番号を書いているものがたくさんありました。そろそろ、職場でのファックス利用はやめませんか。パソコンを使っていない家庭では、ファックスはまだ必要でしょうが。

「仕方ない」が生む日本の低迷

7月17日の日経新聞「私見卓見」、的場正晃・PHP研究所経営共創事業本部本部長の「経営幹部は意識を変えよ」から。

・・・日本企業の競争力が低下したのは、現場でさまざまな問題が発生し、それが常態化しているからではないか。そして、そのことに対して多くの社員が「仕方ない」と諦めたり、「どうせ無理」と無力感を感じたりして、問題の解決が先送りにされているようだ。

変革が求められながら、なぜうまくいかない企業が多いのか。経営幹部の意識と行動が変革を阻害するケースがほとんどだ。変革の必要性を説きながら、いざ実行の段階になると自身の不利益になることを潰すことが多い。
さらにやっかいなのは、会社をダメにしている当人が、それを自覚していないことだ。彼らは口を開けば「会社のためにやっている」と言う。ところが、客観的に見ると、彼らの言動の大半が自身の立場を守るための保身行動になっていることがよくわかる。

では、どうすれば経営幹部の意識を変えることができるだろうか。経営幹部は、過去の成功体験に基づく自分なりの価値観や強い信念を持っている人たちだ。そのため、意識を変えることは容易ではない。その前提に立ち、強固に構築された考え方に風穴を開け、気づきを提供する必要がある・・・

連載「公共を創る」にも書きましたが、この30年間の停滞で、企業も役所も「新しいことに挑戦して成功した」体験を持っていない人たちが幹部になっています。個人の経験と意識、職場の風習(社風)、社会の意識が与える影響が大きいです。