「仕事の仕方」カテゴリーアーカイブ

生き様-仕事の仕方

「第三者委員会」の現実

3月22日の朝日新聞オピニオン欄、「「第三者委員会」の現実」、円谷昭一・一橋大学教授の発言「背景に、株式持ち合い問題」から。

・・・企業が、不祥事の検証を第三者委員会任せにするのは、おかしなことです。まさにこうしたときに働くべき人として、監査役や、監査を担う取締役(監査等委員など)がいるからです。
監査役や監査等委員は株主総会で選ばれ、取締役の職務をチェックするために存在しています。第三者委は任意組織にすぎませんが、監査役や監査等委員には必要な法的権限が与えられているのです。
フジテレビの親会社でも、独立社外取締役である監査等委員3人は全員「法務・リスク」のスキルを持った人物であると株主に説明されています。いずれも大企業の元トップでもあります。こうした事態に対処できる人物として株主総会で選ばれているわけです。
にもかかわらず今回、第三者委が前面に出てきた。なぜ、独立性のある監査等委員が検証委員会を立ち上げないのでしょうか。検証委に外部の弁護士らを加えるとしても、主導的な役割を果たすべきなのは監査役や監査等委員です。

ではなぜ、本来動くべき人たちが動かず、第三者委任せになるのか。根幹にある原因は株式の持ち合い、つまり政策保有株式の問題だと私は考えます。
フジも多くの企業と株式を持ち合っています。仲間内の企業との間で持ち合う政策保有株式が多いため、株主総会で厳しい意見にさらされることが少ない。安定株主に支えられた会社ゆえに、ガバナンスの実効性が損なわれているのです・・・

・・・社外取締役や監査役が機能し、名実ともに変わり始めている企業もあります。フジでも今回、遅まきながら社外取締役が動き、臨時取締役会の開催を求めたのは良いことだったと思います・・・

第三者委員会報告書格付け委員会

「第三者委員会報告書格付け委員会」って、知っていますか。「委員会のホームページ」。趣旨は、次のように書かれています。

・・・21世紀に入ってから、企業不祥事の頻発に伴って世間の信頼を失った経営者の弁明に代わって、第三者委員会が利用されるようになった。しかし、第三者とは名ばかりで、経営者の依頼により、その責任を回避し、或いは隠蔽するものが散見されるようになった。これは多くの第三者委員会の主要な構成者となっている弁護士や弁護士会の信用を損なう結果になるとして、日弁連業務改革委員会は2011年3月に第三者委員会ガイドラインを公表した。

それ以後、多くの第三者委員会報告書はこのガイドラインに「準拠する」とか、「基づく」と表記して、委員会の独立性や透明性、説明責任の遂行に配慮するように改善されてきた。しかし、最近は、このガイドラインの重要な項目に配慮せず、或いは、それに反して「第三者委員会報告書」を僭称したと評価せざるを得ないような報告書が見受けられる事態が起きている。
そこで今般、このガイドライン作成に関わったメンバーを中心として、さらに研究者やジャーナリストの参加を得て、公共財としてのより良い「第三者委員会報告書」を世の中に送り出すために、当格付け委員会を設立することにした・・・

評価方法は、次の通り。
・・・委員会での議論に基づき、各委員が、A、B、C、Dの4段階で評価します。なお、内容が著しく劣り、評価に値しない報告書についてはF(不合格)とします・・・

で、その評価結果です。
九州旅客、高速線の安全運行、2024年12月=D7、F2
SONPOホールディングス、自動車保険金不正請求、2024年1月、D4、F4
厚生労働省、毎月勤労統計調査、2019年3月、F9

他の案件は、評価結果をご覧ください。
まあ、低い評価が並んでいます。名ばかりの第三者委員会だということですね。不祥事を起こした上で、さらに評価を下げているのです。
委員会は、評価の理由を公表しています。評価された会社や委員会は、どのような反論をしているのでしょうか。ぜひ、報道機関に検証してもらいたいです。

コンサルタントの有用性とは

2月7日の朝日新聞オピニオン欄は「コンサル頼み?」でした。
・・・今や人気就職先にもなったコンサルティング業界。企業経営を助けるプロというイメージの一方、玉石混交ぶりや「コンサル頼み」の弊害も指摘される。あなたの会社は、大丈夫?・・・

堀紘一さんの「成長には、目的と覚悟必要」から。
・・・コンサルタントがエリート大学生の人気職種だと聞き、隔世の感を抱きます。日本企業は自前主義で、経営の根幹に関わることを外に相談するなどという発想は希薄でした。
今やコンサル業界は百花繚乱です。かつては経営戦略を立案する戦略系が中心でしたが、2000年代後半以降は、ITシステムの開発・運用も支援する総合系、会計系の会社が規模を追い始め、多くの社員を抱えるようになります。
コンサルタントは一流の経営大学院を卒業した精鋭が就き、それでも7年後には2割以下しか生き残れない厳しい世界でした。企業も、社運をかけてコンサルを雇っていた。

今は全体的にビジネスモデルが戦略策定型から業務請負型へとシフトし、競争激化で価格破壊も起き、企業も気軽にコンサルを使う時代になりました。裾野が広がったことで、残念ながら質の低下は否めません。
やたらコストカットや人員削減を求める、理論を振り回す、教え諭すのがコンサルだと勘違いしている――こうした能力不足のコンサルによって、かえって会社が方向性を見失い、組織がガタガタになる事態が起きています。

これには企業側の問題もある。ある経営者に「あなたに頼むと、我が社にどんなメリットがあるの?」と聞かれて脱力したことがあります。コンサルに頼むからには、明確な目的がなければならない。そこが不明なのに安易に頼むのは失敗の元です。もちろんコンサルは万能ではありません。でも本来の価値と力を持つコンサルティングを受ければ、会社は大きく成長する可能性がある。それは経費ではなく投資です。

私の経験では、企業が自ら認識している問題が「真の問題」だったことはほとんどありません。営業力が弱い、と相談を受けて調べてみると、採用や人事に大きな問題が潜んでいる、といった具合に。
そして日本では、変革に最も有効だが痛みも伴うA案、効果は少ないが受け入れやすいC案、その折衷のB案を示すと、9割近くの企業が無難なC案を選びます。これでは、コンサルを頼む意味はない。使う方にも覚悟がいるのです・・・

社員が増えると上司は仕事を変える

2月6日の日経新聞夕刊「私のリーダー論」、日高光啓に「他人に任せ、違い楽しむ」から。

ラッパー・音楽プロデューサーの日高光啓さんが2020年に設立した音楽事務所BMSG(東京・港)。着実な成長を重ね、「日本発の音楽を世界に広めたい」という日高さんの思いは一歩ずつ実現に向かって進んでいる。

――事業規模が大きくなると、トップとして目が届かない部分も出てくるのでは。
「社員は約80人まで増えました。24年4月からは『C×O(チーフ×オフィサー=各組織の最高責任者)』を配置し、経営と執行を分けています。会社が小さかったときは自分が全てを見ていて、何の仕事をどのタイミングで人に渡せばいいのかも分からなかった。社員から『もっと雑に仕事を渡してください』と言われてから、仕事を任せることができるようになりました。今では進捗報告で『こういう企画になっていたのか』と驚くこともあります」
「考えてみれば社長として5年目で、自分も日々成長しているんですね。最近は、どうしても社長である自分が会わなければならない場合など、自分がやるべき仕事に集中できています。そもそも自分の専門的な領域は意外と狭いと思っているんです。他人に仕事を任せた時に自分とは違う決断が出たとしても、違いを楽しめるところがある。自分では思いつかないような意見が出ることも多いので、面白いですね」

――会社の事業展開が軌道に乗ってきて、リーダーとしてなんらかの変化は感じていますか。
「企業としての『成長痛』は社員が10人から20人に増えるときの方が大きかったんですよ。社員10人の時は『BMSG=日高』で、僕の考えていることが100%、BMSGと一致していた。でも20人になると組織になる。そうするとルールができる。手続きが必要になる」
「今までは同僚だったのに、上司と部下という人間関係に変われば感情面でも色々とあります。僕自身に対する不平不満もたまってくるだろうし、毎日が今まで経験したことのない変化でめまぐるしかった」
「その経験から、特に何かをスタートさせるときは、ルールは走りながらつくるようにと心がけています。立ち上がったばかりのアーティストにもよく言っていますが、メンバーやスタッフも含めて、最初からルールやマナーをしっかり決めてからスタートするなんて無理。とりあえずは走ってみて、小さな失敗でも繰り返しながら決めていけばいいと思っています」

管理と運営の違い2

管理と運営の違い」の続きです。
「管理」という言葉には、内部を管理するという印象がつきまといますが、外部の変化を見ることが必要です。その要素を加えて「運営」という言葉を使いました。

もう一つ「管理」に欠けていて、「運営」に含みたい要素があります。それは、目標を掲げること、未来を見ることです。
管理でも、日々に新しい出来事があり、それに対応する必要があります。前例通りではすみません。とはいえ、「維持管理」という言葉があるように、現状維持の印象がつきまといます。
しかし、組織を継続するためには、日々の出来事に対応するだけでなく、目標を持って長期的に考えることも必要です。短期的でなく長期の目で見るのです。「蟻の目と鷹の目」「ゾウの時間とネズミの時間」です。
受動的対応と能動的対応の違いでもあります。

役所の各課には「所管」はあるのですが、「目標」が定められていないことが多いです。これも、管理と運営の違いを生む原因でしょう。

船長に例えたこともあります、船長は船員を管理しているだけでは不十分で、目的地まで船を運航しなければなりません。潮流を読み天気の変化など外部の要素にも対応して、船を進めなければらならないのです。船内を見ているだけではだめで、外を特に前を見なければなりません。
官僚には法解釈学だけでなく立法学が必要だと、私は主張しています。それに通じます。「過去の分析と未来の創造と:官僚の限界