「ものの見方」カテゴリーアーカイブ

人文知応援フォーラム

人文知応援フォーラムが、2月28日に、第1回人文知応援大会「コロナという災厄に立ち向かう人文知」を開催します。オンラインで見ることができます。ご関心ある方は、お申し込みください。

佐々木毅先生の基調講演「ポピュリズムとコロナ禍の社会の中で」のほか、五百籏頭眞先生の「コロナ危機と国際政治~リベラルデモクラシーは普遍的価値たり得るか~」、福岡伸一先生の「科学技術にとって人文知とはなにか」などが予定されています。

岡本行夫著「日本にとって最大の危機とは」

岡本行夫著「日本にとって最大の危機とは?」(2021年、文藝春秋)を、お勧めします。去年4月にコロナで亡くなられた岡本行夫さんが、2017年から2019年にかけて行った講演をまとめたものです。
行夫さんが亡くなられた後、岡本アソシエイツ(行夫さんの会社)の方が、行夫さんの若者への熱い思いを何とか形に残したいとの思いで、企画し原稿を整理して、出版されたそうです。よい本を作って下さって、ありがとうございます。

1990年、湾岸戦争時の岡本さんの活躍、四輪駆動車を日本から運ぶ際の話は有名です。私もすごい先輩がおられるのだと感激し、ファンになりました。その後、大震災で、親しくしてもらうようになりました。漁港の復旧を待たず(待てず)、冷凍コンテナを贈ってくださったのです。拙著にも書きましたが、行夫さんのアイデアと実行力に、私たち役所が「負けた」のです。
この本には、そのほか、ご自身の経験や見聞による知見がたくさん載っています。

若い人たちには、ぜひ読んでいただきたい。特に、第Ⅱ章日本の国際化のために必要なこと、第Ⅲ章個人の国際化、第Ⅳ章皆さんに贈る言葉、を読んでください。
表題にあるように「日本にとっての最大の危機」を憂い、問題点と解決の方向を述べておられます。毎日、ニュースやインターネットで多量のかつ細切れの問題が伝えられますが、それは「消費財」のように垂れ流されます。官僚、企業の幹部候補生をはじめこれからの日本を背負って立つ若者たちは、日々の仕事に忙しいでしょう。本書を読んで、立ち止まって、広い視野から考えて欲しいです。

国際人に必要な資質として他人への優しさ、そして組織として多様性の重要性が、具体事例を挙げて説かれます。「寧ろ牛後となるも、鶏口となるなかれ」(国語の試験では間違い)「欲窮千里目 更上一層楼」は、なるほどと思います。

講演録で、読みやすいです。分量も多くありませんが、読み終えて熱くなります。日本を思う気持ち、世界の困っている人を思う気持ち、思うだけでなく実行する行動力。
私には、「全勝君、まだまだ若いのだから、頑張ってよ」という、行夫さんの声が聞こえてきました。「追悼、岡本行夫さん

五百旗頭真ほか編「岡本行夫 現場主義を貫いた外交官」(2020年、朝日文庫)もお勧めです。

そこに至るまで、どれだけ努力したか

1月22日の読売新聞夕刊「言葉のアルバム」、細谷雄一・慶應大学教授の「相手国 歴史含めて理解」から。

・・・気鋭の国際政治学者は、恩師である北岡伸一・国際協力機構(JICA)理事長のこの言葉を大切にしている。
「その時にどのような位置にあるかではなく、その時にどれだけの努力をするかによって評価することが大事」
北岡氏との出会いは1990年、立教大1年生の時に受講したゼミだ・・・
・・・ある日のゼミで、「米国が理想主義を掲げながら、国内に人種差別の問題を抱えるのは偽善的ではないか」と議論になった。北岡氏は、米国の偽善を批判する前に、「米国という国家が人種問題を乗りこえるために、どれだけの努力を払ってきたかにも目を向けるべきだ」と説いた。そして「それは人間を評価する時も同じだ」と付け加えた・・・

・・・恩師の言葉は国際政治の分析にもあてはまる。歴史を含めて相手国を理解する努力が外交の基本であり、国際関係を維持する重要な要素だ。戦争はその不足から生まれる。世界は今、そのことを忘れかけているのではないかと危惧している・・・問題が起きると、どうしても相手国の欠点や問題点を探してしまう。でも、どうしてその国がそういう行動をとるのか、偏見を持たず、もう少し粘り強く理解する。混迷する世界をそうした眼で見つめていきたいと考えている・・・

わかりやすいブルデュー

NHKテレビ「100分 de 名著」、12月は、ピエール・ブルデューの「ディスタンクシオン」です。
ブルデューは、このホームページでも取り上げたことがあります。「ブルデュー」「ブルデュー2」。「文化資本」という概念は、「地域の財産」「この国のかたち」を議論する際に、私なりに改変して使わせてもらっています。連載「公共を創る」第30回など。

放送は、12月7日からです。放送に先だって、テキストを読みました。大部の著書、難しい内容を100分で、本だと100ページで解説してくれます。わかりやすいです。お勧めです。

みんなの範囲

「みんな」「皆」と聞いて、あなたはどのような数を思い浮かべますか。国語辞典で引くと、「そこにいる人すべて。全員。また、あるもの全部。多くの人々に呼びかける語としても用いられる」とあります。

でも、「みんなが・・」という場合に、必ずしも全員でないこともあります。100人いて、そのうちそのうち80人が黒っぽい服を着ていた場合に、「みんなが黒っぽい服を着て」と言うことがあります。日常会話では、厳密に「100人のうち、80人ほどが黒っぽい服を着て」とは言いませんよね。

もう一つは、子どもが言う「みんなが・・」です。「あのおもちゃを、××ちゃんも、○○ちゃんも、みんな持っている」と言う場合、しばしば3人や4人で「みんな」と言うことがあります。よくよく聞いてみないと、まちがいます。笑い。