カテゴリー別アーカイブ: ものの見方

そこに至るまで、どれだけ努力したか

1月22日の読売新聞夕刊「言葉のアルバム」、細谷雄一・慶應大学教授の「相手国 歴史含めて理解」から。

・・・気鋭の国際政治学者は、恩師である北岡伸一・国際協力機構(JICA)理事長のこの言葉を大切にしている。
「その時にどのような位置にあるかではなく、その時にどれだけの努力をするかによって評価することが大事」
北岡氏との出会いは1990年、立教大1年生の時に受講したゼミだ・・・
・・・ある日のゼミで、「米国が理想主義を掲げながら、国内に人種差別の問題を抱えるのは偽善的ではないか」と議論になった。北岡氏は、米国の偽善を批判する前に、「米国という国家が人種問題を乗りこえるために、どれだけの努力を払ってきたかにも目を向けるべきだ」と説いた。そして「それは人間を評価する時も同じだ」と付け加えた・・・

・・・恩師の言葉は国際政治の分析にもあてはまる。歴史を含めて相手国を理解する努力が外交の基本であり、国際関係を維持する重要な要素だ。戦争はその不足から生まれる。世界は今、そのことを忘れかけているのではないかと危惧している・・・問題が起きると、どうしても相手国の欠点や問題点を探してしまう。でも、どうしてその国がそういう行動をとるのか、偏見を持たず、もう少し粘り強く理解する。混迷する世界をそうした眼で見つめていきたいと考えている・・・

わかりやすいブルデュー

NHKテレビ「100分 de 名著」、12月は、ピエール・ブルデューの「ディスタンクシオン」です。
ブルデューは、このホームページでも取り上げたことがあります。「ブルデュー」「ブルデュー2」。「文化資本」という概念は、「地域の財産」「この国のかたち」を議論する際に、私なりに改変して使わせてもらっています。連載「公共を創る」第30回など。

放送は、12月7日からです。放送に先だって、テキストを読みました。大部の著書、難しい内容を100分で、本だと100ページで解説してくれます。わかりやすいです。お勧めです。

みんなの範囲

「みんな」「皆」と聞いて、あなたはどのような数を思い浮かべますか。国語辞典で引くと、「そこにいる人すべて。全員。また、あるもの全部。多くの人々に呼びかける語としても用いられる」とあります。

でも、「みんなが・・」という場合に、必ずしも全員でないこともあります。100人いて、そのうちそのうち80人が黒っぽい服を着ていた場合に、「みんなが黒っぽい服を着て」と言うことがあります。日常会話では、厳密に「100人のうち、80人ほどが黒っぽい服を着て」とは言いませんよね。

もう一つは、子どもが言う「みんなが・・」です。「あのおもちゃを、××ちゃんも、○○ちゃんも、みんな持っている」と言う場合、しばしば3人や4人で「みんな」と言うことがあります。よくよく聞いてみないと、まちがいます。笑い。

世界人口の予測

11月15日の読売新聞に「世界人口減 遠くない未来」が載っていました。

・・・20世紀に入ってから急増した世界の人口はいま78億人。一体どこまで増えていくのだろうか。
国連が昨年公表した予測によると、人口は当面伸び続けるが、2100年に109億人でピークに達する可能性がある。今世紀中に増加が止まる、あるいは減少に転じる確率も27%あるという。しかし、各国の研究者からは、人口減はずっと早く始まるのではないか、という予測が相次いで出されている。
例えば、米ワシントン大のチームは今年7月、グラフで示したように、人口のピークは2064年の97億人で、今世紀末には88億人まで減るとする試算を発表した。ピークはもっと早くて、2050年頃とみる専門家もいる。
人口の増加に急ブレーキがかかりそうなのはなぜか。最大の理由は、先進国だけでなく、多くの途上国、特にアフリカで女性が産む子供の数が予想以上の速さで減っていることだ。背景には、女子の教育や避妊の知識の普及がある・・・

記事には、各国の人口の予測だけでなく、「若さ」年齢中央値、「構成」人種なども載っています。日本の位置も。原文と図表をご覧ください。

位置づける

ある思想家とその時代、以前、以後」の続きです。かつて、「内包と外延、ものの分析」「内包と外延、ものの分析、2」を書いたことがあります。

・・・あるものごとを解説したり分析する際に、そのものごとの内部を深く分析します。これを内包的分析と呼びましょう。もう一つは、そのものごとが社会でどのような位置を占め、どのような影響を与えたかを分析します。これを外延的分析と呼びましょう・・・

周囲(社会)の評価。歴史上の意義。ヨーロッパにおけるキリスト教の意義を理解するのに、聖書と教会を研究しただけではわかりません。どのように社会に受け入れられたか、どのように社会に影響を与えたかの研究が必要です。
日本の官僚が、この30年間で地位を落としたことを理解するには、官僚と行政の中を研究してもわかりません。社会における役割や評価が変わったことを研究する必要があります。
内に向かって深く掘り下げてもその意味はわからず、広く外の世界の中に位置づけてこそ、その意義がわかるのです。