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地方行財政

2010年地方財政学会

今日は、大学院で講義した後、地方財政学会に行ってきました。青山学院大学・青山キャンパスです(プログラム)。私の「本籍」は地方財政で、かつて何度も発表の機会(2003,2004)をいただきました。最近は直接の仕事を離れたことなどから、ご無沙汰していました。久しぶりに顔を出すと、たくさんの旧知の先生方にお会いすることができました。「テレビではよく見ていたけれど、元気にしていたか」といった心配から、「今度、大学に話に来てね」といった講義依頼まで、声をかけてもらいました。さらに、懇親会の最後には、締めの挨拶をせよとの、温かいご配慮も(?)いただきました。
地方財政学会は会員460人余り、今日の全体セッション参加者は270人余りだそうです。発表も多く、相変わらず大盛況でした。この学会は、学者、研究者、国家公務員、地方公務員といった、研究者から実務家までの幅広い参加者があります。理論だけでなく地方行財政の現場が近くにあり、様々なテーマや角度から研究できる学問分野だと思います。また、分権、地域間格差、財政再建、地域の問題解決など、ホットな課題も多いのです。
学問が行政を変える実践の場でもあります。近年でも、地方消費税の導入、国から地方への3兆円の税源移譲などは、研究者の先生方の理論的支えによって実現したものです。ありがたいことです。

新しい地方財政論

中井英雄先生、齊藤愼先生、堀場勇夫先生、戸谷裕之先生が、『新しい地方財政論』(2010年、有斐閣)を出版されました。コンパクトな本ですが、地方財政制度の解説・自治体の経営・公共経済学の理論・地域づくりなどの実証、という4つ分野を含んでいます。多面的な視野から地方財政を分析しておられて、類書がないと思います。詳しくは、リンク先の目次をご覧ください。良い入門書だと思います。これだけの内容を、コンパクトにまとめるには、かなりご苦労があったと思います。

分権の覚悟・石先生の意見

10日の朝日新聞「異議あり」は、石弘光放送大学校長の「地域主権?覚悟はあるのですか」でした。「ようやく地方分権が進みそうです」という問いに対して、次のように発言しておられます。
・・いや、ぼくは懐疑的です。戦後の流れをずーっと見てください。この問題はね、たえずアドバルーンが掲げられてきたんですよ・・ぼくは地方制度調査会に長くいたからわかるんだけど、新しい概念や言葉が出て、議論して、何度も何度も答申を出した。でも、何か具体的なアクションがありましたかね。みんなでずっと踊ってきたような気がするなあ・・
・・一つは、中央省庁の役人が本音では大反対していること。自分たちの権限を持っていかれるのは嫌だからね。もう一つは、これもマスコミではあまり言われないんだけど、知事や市町村長が必ずしも「ウエルカム」ではないこと。国からの交付金や補助金に乗っている今の方が楽だというのが、彼らの本音です・・
・・覚悟が必要なんですよ・・民主党は国の出先機関を廃止すると言っていますね。ならば当然、職員も地方自治体に移さなければいけない。国家公務員30万人のうち20万人ぐらいを地方公務員にするわけです。どんなに反対があっても、ね。また、政府は補助金を廃止して一括交付金化するという。それはぼくも賛成だけど、実行すれば農林水産省や厚生労働省などの、かなりの部署が不要になりますね。その人たちは当然いらなくなるか、あるいは地方自治体に行ってもらう。権限と財源だけでなく、人も整理するか地方に出す。政府に必要なのはそういう覚悟です・・

分権改革の歴史

平成5年(1993年)以来の地方分権改革の歴史を、簡単な年表にまとめました。(2009年12月20日)
【第一次分権改革】(宮沢内閣~小泉内閣)
平成 5年 6月 地方分権の推進に関する決議(衆参両院)
平成 7年 7月 地方分権推進法施行、地方分権推進委員会(諸井委員会)が発足
平成10年5月  地方分権推進計画を閣議決定
平成12年4月  地方分権一括法施行(国と地方を対等に、機関委任事務制度を廃止)
平成13年6月  地方分権推進委員会が最終報告
平成13年7月 地方分権改革推進会議(西室委員会)が発足
【三位一体の改革】(小泉内閣)
平成14年6月  「基本方針2002」(三位一体で改革を進めることを決定)
平成16年6月  地方に、改革の具体案取りまとめを要請
平成16年8月   地方の改革案を政府に提出(1)
平成16年9月  国と地方の協議の場が発足
平成16年11月  三位一体の改革の全体像の取りまとめ
平成17年7月   地方の改革案を政府に提出(2)
平成17年12月  「三位一体の改革について」閣議決定
平成19年度   所得税(国税)から住民税(地方税)へ、3兆円の税源移譲
【現在の取り組み】(安倍、福田、麻生、鳩山内閣)
平成18年12月  地方分権改革推進法成立
平成19年 4月  地方分権改革推進委員会(丹羽委員会)が発足
平成20年 5月  「第1次勧告」(「地方政府」の確立)
平成20年 8月  「国の出先機関の見直しに関する中間報告」
平成20年12月  「第2次勧告」(地方の役割と自主性の拡大)
平成21年10月  「第3次勧告」(自治立法権の拡大)
平成21年11月  「第4次勧告」(自治財政権の強化)

2009.11.23

日経新聞経済教室「鳩山政権と地方分権改革」、23日は、持田信樹先生の「税・財政論議から逃げるな」でした。先生は、国と地方の税財政制度について、現在の「集権的・融合システム」から「分権的・融合システム」に変えることが、分権改革のゴールであると主張しておられます。登山にたとえれば、現在は五合目であり、
一つ、地方の歳出と税収との乖離を縮小する方向で、地方税を充実確保すること。
二つ、補助金改革は、補助率削減ではなく、根本的に制度面からの仕切り直しを行うこと。
三つ、地方交付税の決定プロセスから恣意性を排除すること、を述べておられます。