カテゴリー別アーカイブ: 地方行財政

地方行財政

2006.02.03

3日の日経新聞経済教室「道州制への視点」は、岩崎美紀子教授の「分権型国家を目指せ。焦点は権限移譲、全国一律規制を見直し」でした。「以前の道州制論は、効率化と広域行政がその積極的支持理由となっており、分権は官治分権が暗黙の了解となっていた。これに対して現在の道州制論議は市町村合併の進展が一つの契機となって浮上し、府県の区域が狭小であることへの問題意識は継続しているが、その中心テーマとなっているのは自治分権である」
「日本は先進諸国のなかで最大の単一制国家である・・。国土は南北2千キロメートルに及ぶ列島や離島により構成され、地域により自然や気候が異なっている。しかしどこに行っても同じような街並み、同じような教育システムで、個性に満ちた魅力的空間とはなっていない。その一方で東京一極集中は加速を続け、東京都それ以外というゼロサムゲームのなかで地方は疲弊している。これらの原因が単一制にあるならば、解決するには連邦制への移行が必要となるが、日本の問題は単一制度にあるわけではなく、中央省庁の省令などによる全国一律の画一的規制の強さにある。これが閉塞感をもたらし創造力をそいでいる」
連邦憲法を制定せずとも、分権国家を実現することは可能である。道州制はそのような国家刷新改革の切り札ともなるべきものであり・・」

破綻法制

30日の毎日新聞社説は「自治体破綻、法制化の前に自治の確立を」書いていました。
「地方自治が確立された場合には不可欠な法制だ。しかし、税源も権限も地方に移譲しないままで、自治体首長の責任ばかりを問うのであれば、国の責任を転嫁する行為と言わざるを得ない」
「自治体に税源や行政権限が十分に移譲され、地方自治が確立されれば、総務省など中央省庁の権限は大幅に減少する。自治体が経営について全面的に責任をもつことが必要になる。そうした段階に至れば、自治体の破たん処理は総務省に任せるのではなく、法制に基づいて処理する必要が生まれる。その意味で、将来的に自治体の破たん処理法制は必要である。
ただし、自治体への税源、権限の移譲は始まったばかりだ。中央省庁はそれらを一向に手放そうとはしない。現状は地方自治の確立からはほど遠い。そうした現状で自治体首長の責任を問うことは、国の理不尽な責任転嫁である。自治体の破たん法制の整備は必要だが、それ以前に地方への税源、権限の移譲を大幅に進め、地方自治を確立する必要がある」

2006.01.05

遅くなりましたが、12月31日の読売新聞国際面に「イタリア市議会、移民の代表『議員補』続々」「不満を代弁、行政とのパイプ役」が載っていました。イタリアでは、市議会が、外国人に地方選挙への参政権を与えるために条例改正しようとしました。しかし、政府は、法律を変えない限り無効だとと宣告しました。そこで、次善の策として、5年以上の合法的滞在者が、独自選挙で議会に代表を送る制度をつくりました。いくつかの市に、広がっています。議会での表決には加わらないものの、移民の声を代弁する補完的制度だそうです。
補足ですが、欧州連合(EU)では、加盟国民は他国でも地方参政権があります。ここで言う外国人は、EU以外の出身者です。興味深い制度です。もっとも、議会が何を決めるかによって、その機能は違ってきます。

三位一体改革(補助金改革・税源移譲)金額内訳

16年度から18年度まで
補助金改革 4兆6,661億円
(H15年度改革分を除く)
税源移譲額
3兆94億円
内訳
年度
スリム化・
交付金化
1兆7,829億円
税源移譲に結びつく
補助金改革額
3兆1,176億円
(15年度改革分を含む)
(H15改革分
2,344億円)
H15決定
(H16分)
1兆314億円
5,565億円
スリム化4,235億

交付金化1,330億
(H15改革分義務教育共
済等2,344億円)

H16改革分4,749億円
公立保育所等2,440億円
義務教育(退手等)2,309
億円

6,559億円

義務教育共済等H15改革分
2,051億円
公立保育所等2,198億円
義務教育(退手等)2,309億

H16決定
(H17・18分)
2兆3,980億
6,441億円
スリム化3,011億

交付金化3,430億
1兆7,539億円
 
公営住宅家賃補助、養護
老人ホーム等2,211億円
国民健康保険6,862億円
義務教育8,467億円
1兆7,429億円
公営住宅家賃補助、養護老
人ホーム等2,101億円
国民健康保険6,862億円
義務教育8,467億円
H17決定
(H18分)
1兆2,367億
5,823億円
スリム化2,640億

交付金化3,183億
6,544億円

公営住宅家賃補助、児童
手当等5,854億円
公立学校施設等690億円

6,106億円
公営住宅家賃補助、児童手
当等5,761億円
公立学校施設等345億円

(作成協力 森山正之さん)

税源移譲に結びつく国庫補助負担金の改革(3兆1,176億円)の内訳
平成16年度税源移譲に係るもの:計7,093億円
・義務教育費国庫負担金及び公立養護学校教育費国庫負担金
(うち共済長期給付負担金及び公務災害補償基金負担金) (2,184億円)
(うち退職手当及び児童手当) (2,309億円)
・児童保護費等負担金(うち公立保育所運営費) (1,661億円)
・介護保険事務費交付金( 305億円)
・軽費老人ホーム事務費補助金( 167億円)など
平成16年政府・与党合意(H16.11.26)に係るもの:計17,539億円
・義務教育費国庫負担金及び公立養護学校教育費国庫負担金(8,467億円)
・国民健康保険国庫負担(6,862億円)
・養護老人ホーム等保護費負担金( 567億円)
・在宅福祉事業費補助金(うち介護予防・地域支え合い事業(緊急通報体制等整備事業等)等) ( 125億円)
・公営住宅家賃対策等補助(うち公営住宅家賃収入補助) ( 641億円)
・協同農業普及事業交付金(うち職員設置費の一部) ( 146億円)
・小規模企業等活性化補助金(うち小規模事業経営支援事業費補助金等) ( 96億円)
・消防防災設備整備費補助金(緊急消防援助隊関係設備分を除く) ( 61億円)など
平成17年政府・与党合意(H17.11.30)に係るもの:計6,545億円
・児童扶養手当給付費負担金(1,805億円)
・児童手当国庫負担金(1,578億円)
・介護給付費等負担金(うち施設等給付費に係るもの) (1,302億円)
・地域介護・福祉空間整備等施設整備交付金(うち都道府県交付金) ( 390億円)
・公営住宅家賃対策等補助(うち公営住宅法に基づく国庫負担金分等) ( 620億円)
・公立学校等施設整備費補助金(うち不適格改築の一部等) ( 170億円)など
地方交付税改革については三位一体改革・交付税改革

三位一体改革の経緯(簡略版)

詳しい経緯は地方財政改革の経緯
年 月
決定・実施事項
14年6月




15年度予算


「骨太の方針2002」閣議決定。
国庫補助負担金、交付税、税源移譲を含む税源配分のあり方を三位一体で検
討し、それらの望ましい姿とそこに至る具体的な改革行程を含む改革案を、今後
1年以内を目途にとりまとめる。
三位一体改革の芽だし
・国庫補助負担金5,625億円の削減
・義務教育費(共済長期給付、公務災害補償)2,334億円の一般財源化(1/2
を特例交付金、1/2を交付税)
15年6月



16年度予算









「骨太の方針2003」閣議決定
「改革と展望」の期間(18年度まで)に、国庫補助負担金については、おおむね
4兆円を目途に廃し、縮減等の改革を行う。

1兆円の補助金改革
・税源移譲に結びつく改革 4,749億円
(公立保育所運営費 2,440億円、義務教育退職手当等 2,309億円)
・スリム化、交付金化    5,527億円

税源移譲等
・所得譲与税       4,249億円
(公立保育所運営費 2,198億円、義務教共済長期等15年度改革分 2,05
1億円)
・税源移譲予定交付金 2,309億円
(義務教育退職手当・児童手当)
16年6月






8月



9~11月


11月







17年度予算

「骨太の方針2004」閣議決定
平成17年度および18年度に行う3兆円程度の国庫補助負担金改革の工程
表、税源移譲の内容および交付税改革の方向を一体的に盛り込む。
そのため、税源移譲は大旨3兆円規模を目指す。その前提として地方公共団体
に対して、国庫補助負担金の具体案を取りまとめるように要請し、これを踏まえ
て検討する。

地方の改革案を政府に提出
・税源移譲 21年度までに8兆円程度、18年度までに3.2兆円
・国庫補助負担金の見直し 21年度までに9兆円程度、18年度までに3兆円

国と地方、政府部内、政府与党の調整
国と地方の協議の場 7回、四大臣会合 17回、政府与党協議会 4回

政府与党合意「三位一体の改革の全体像」
概ね3兆円規模の税源移譲を目指す。
その8割方(24,160億円)について次のとおりとする。
・義務教育費(暫定)      8,500億円
 (17年度分  4,250億円)
・国民健康保険、公営住宅等 9,100億円
・16年度分            6,560億円

補助金改革 1.8兆円
一般財源化 1.1兆円
(所得譲与税化7千億円、税源移譲予定特例交付金化4千億円)
17年4月

6月


7月

10~11月

11月

18年度予算

総務大臣から地方6団体に対し、残る6,000億円の改革案検討を依頼

「骨太の方針2005」閣議決定
残された課題については、平成17年度秋までに結論を得る。

地方6団体改革案(2)を政府に提出
・18年度移譲対象補助金(9,973億円)を選定
・19年度以降「第2期改革」
・「国と地方の協議の場」の制度化

国と地方、政府部内、政府与党の調整
国と地方の協議の場 4回、四大臣会合 12回、政府与党協議会 2回

政府与党合意
追加補助金改革(税源移譲対象) 6,540億円(昨年度までの決定分3.8兆
円に加え、4兆円を上回る国庫補助負担金改革を達成)
・義務教育 小中学校を通じて負担割合を3分の1とする(8,500億円)。
・児童扶養手当(3/4→1/3)、児童手当(2/3→1/3)。生活保護の適正化
に取り組む(負担率引き下げは行わない)。
・施設費 5割の割合で税源移譲対象とする。
今回の補助金改革(税源移譲6,100億円)を含め、合計3兆90億円程度の税
源移譲を行う。18年度は全額を所得譲与税とし、18年度税制改正で所得税か
ら個人住民税へ移譲する。

補助金改革 1.2兆円
税源移譲額 0.6兆円
(税源移譲総額3兆円、18年度は全額を所得譲与税(都道府県2兆1,794億
円、市区町村8,300億円)、19年度に住民税へ。)

(作成協力 森山正之さん、鈴木雄介さん)
(最終加筆2006年1月2日)