先日の地方制度調査会の道州制答申は、「自治体の再編だけでなく、政府全体の再構築でもある」と指摘されています。私は、さらに日本社会の変更だと考えています。
(東京一極集中打破)
これまで、東京一極集中の弊害が指摘されてきました。しかし、いっこうに良くなりません。47都道府県が競っても、東京には勝てないのがわかりました。この際、47県を8くらいの州にして、州都で東京と戦うことで、少しは勝ち目が出てくるのではないでしょうか。
九州で、オランダくらいの経済力があります。これなら、東京に勝てないとしても、かなり一極集中は是正できると思います。また、戦う相手は東京でなく、アジアの各国になります。どのような産業で競うか、観光客を呼び寄せるか。日本国内でパイの奪い合いをしていても、ゼロサムゲームです。目を海外に向けましょう。それが、結果として東京との戦いに勝つことになるのです。
(霞ヶ関分割)
日本の政治行政の問題点として、官僚支配・中央集権が指摘されています。しかし、分権もなかなか進まないことが分かりました。この際、道州制を導入し、霞ヶ関を分割することが、官僚支配・中央集権打破の良い方法です。すなわち、道州制によって、内政の多くは中央政府(霞ヶ関)から、各州に移譲されます(移譲しないで決定権を霞ヶ関が持ったままでは、単なる県の合併でしかありません)。その権限移譲に合わせて、霞ヶ関官僚も各州に分配するのです。そうすれば、もう優秀な若者が、みんな東京を目指さなくても良いのです。
「岡本君、官僚は東京を離れるのはいやがるよ」と指摘する人がいます。そういう官僚もいるでしょう。でも、国鉄の分割を想像してください。あれが成功したように、うまくいくと思います。
(発展途上国を超えて)
アメリカやドイツでは、一極集中が起きていません。首都への一極集中が起きるのは、発展途上国です。ソウル、メキシコシティー、マニラ・・。先進国に追いつくため、先進国から得た情報を首都から全国に配分します。また資源を首都に集中し、中央から再配分するからです。その点で、日本は世界で一番、追いつき型の経済社会発展に成功しました。それは、世界で一番、中央集権であったということです。
経済は、経済の論理で動きます。経済面での東京一極集中は、止まらないでしょう。製造業から情報産業に主役が移行した今、工場の分散政策では、産業の地方分散はできません。経済の論理を政治で無理にゆがめると、非効率が生じ、国際競争力もなくなるでしょう。
政治と行政を分散することが、東京一極集中を是正し、豊かな社会をつくる方策なのです。
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地方行財政
道州制
2月28日に総理の諮問機関である地方制度調査会が、道州制の答申を総理に提出しました。詳細は、原文や新聞報道を読んでください。今回の道州制は、地方制度のあり方を超え、日本の政治行政のあり方の改革です。
1日の朝日新聞社説は、「国の事務を『できる限り道州に移譲する』という姿勢は評価したい。道州制は自治体の再編だけでなく、政府全体の再構築でもある」「地方制度調査会にすれば、90年代からの分権改革の集大成として道州制の基本設計を示したということだろう。道州制になれば、各省庁は解体にも等しいような圧縮を迫られる」「一方の各省庁は、権限と人員が削られるのを警戒して論議に背を向けたままだ」。
日経新聞社説は「道州制の狙いは統治構造の変革にある。国は外交・防衛など国でしかできないことに専念し、内政の大半は地方に委ねようというものだ。目指すのは分権と効率化である」「もし国の出先機関が原則廃止され、都道府県とともに道州に吸収されれば、両者の業務の重複は解消し、大規模なリストラも可能になろう。国・地方を通じた小さな政府の実現には有力な改革になる」。
読売新聞解説欄では、青山彰久記者が次のように書いておられました。「もし、国がこれまで通りに政策立案の権限を握ったまま、出先機関の仕事の執行権限を移すだけの道州制ならば、道州は、国が決めた仕事を行うだけの『巨大な国の総合出先機関』にしかならない」「都道府県を競わせて『国土の均衡ある発展』を図るのではなく、『国際競争力のある地域の個性ある発展』を目指す時代だろう。だが、大規模な権限移譲を実現できるような強力な政権の力と、都道府県行政の広域化の実績が合流しなければ、絵に描いた餅にしかならない」
2006.02.10
10日の朝日新聞「私の視点」は、井戸敏三兵庫県知事の「地方分権、道州制より府県に任せよ」でした。「その際、大切なことは一つの事業を国と地方が重層的に分担する成長時代のシステムを改め、一つの事業は一つの主体が権限と財源と責任を持って担う「分配自立型」に転換していくことだ」「ところが、現在の道州制論議は中央省庁を巻き込んだものになっていない。昨年の三位一体改革の決着から明らかなように、既得の権限に対する中央の執着は強い。現状のままで道州制を導入しても、国から地方への事業や財源の移譲が進む保証はなく、集権構造を温存したまま、府県合併が進むことになりかねない」。
三位一体改革67
2006.02.04
3日の日経新聞夕刊「ニュースの理由」は、中西晴史編集委員の「道州制導入、月末に答申。省庁の権限縮小、曲折も」でした。
「単に都道府県より広域の自治体をつくるのが狙いではない。道州に国の権限、財源を移すことが最大の眼目だ。国道、一級河川の管理や整備など国は複数の権にまたがるのを理由に権限を死守してきたが、道州になると、そんな理屈は通用なくなる」
「『国の地方出先機関に勤務する22万人の国家公務員をどうするか』だけではなく、霞ヶ関の本省の仕事も補助金配分業も含めて大幅に縮小される。国土交通省など多くの仕事が道州に移管されると、省自体の存在意義が問われる」
「国の縦割り画一行政から脱し、道州がブロック単位で東京を経由することなく地域経済活性化など様々な独自政策を競う。国は外交、防衛、マクロ経済政策などの仕事に純化する。国の官僚主導の統治構造を180度転換する引き金になるだけに、縮小を迫られる各省庁の抵抗は必至だ」