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地方行財政

2006.05.29

28日の東京新聞サンデー版は、見開きで道州制を解説していました。西尾勝先生が、「分権改革の流れを促進」を書いておられます。
「自民党の調査会では、新しい道州を国の各省庁の地方総合出先機関であると同時に、これまでの都道府県に代わる広域自治体の性格をも併せ持つ団体にしようとする意見が幅を利かせています。しかし、これでは戦前の府県に似た不完全自治体の復活で、戦後改革以来の民主化の流れに逆行し・・」
「地方制度調査会答申は、このような危機感に立ち、本気で道州制を実現しようとするのならば、道州はこれまでの都道府県に代わる純然たる広域自治体でなければならないと強く主張し」
「2000年施行の地方分権法では十分に実現されなかったこと、すなわち国から広域自治体への大幅な事務権限の移譲と、広域自治体から基礎自治体への大幅な事務権限の移譲とを、この際に併せて一挙に実現しようとしているからです。・・しかし、それだけに、実現は決して容易ではありません」

三位一体改革71

(地方交付税という言葉)
財政再建議論で、「地方交付税」がよく出てきます。何か複雑だという印象で、分かりにくいものだというラベルが貼られています。そんなに難しいものではないのですが。もう一つ、これらの議論が混乱するのは、「地方交付税」という言葉を、いくつもの意味に使うからです。
①地方財政計画の仕組みを指して使われる場合
「交付税は、地方団体の財源不足を補う仕組みである」と言われる場合は、交付税とは「地方財政計画」と、計画による財源保障を指しているようです。地方財政計画によって、地方団体全体(マクロ)の収支が合うかどうかを判定し、不足するときは主に交付税で穴埋めします。
すなわち、この場合は、地方財政計画による、地方団体全体の財源保障の仕組みを指しています。
「地方の歳出が多いので、あるいはムダがあるので交付税を減らすべきである」と言われる場合も、この意味だと思います。
②各地方団体へ配分する仕組みを指す場合
これは、地方交付税の算定を指して言う場合です。この場合は、個別団体に対する財源保障の仕組みを指しています。「算定方法が複雑だ」とか、「不交付団体が少ない」と言う場合は、これを指しているようです。
③地方交付税総額を指す場合
上の2つが、仕組みを指しているのに対し、金額を意味する場ありもあります。
まず、総額を指す場合があります。この場合にも、二通りあります。一つは、国の一般会計歳出に計上される金額。もう一つは、地方団体が受け取る総額です。国の特別会計で加算する場合があるので、二通りの数字があります。
なお、このほかに、国税5税の一定割合が、最も狭義の交付税総額です。この金額に特例が加算され、前者の総額になります。最も広い意味では、交付税の身代わりである臨時財政特例債を含めて、交付税総額と言う場合があります。
④各団体への交付額を指す場合
これは、各団体が受け取る額です。
⑤財政需要額を指す場合
交付税を計算する場合は、全団体の場合も各団体の場合も、地方団体が必要とする額(基準財政需要額)を決め、そこから入るであろう税収など(基準財政収入額)を差し引いて、交付税必要額を算出します。しかし、この場合の財政需要額を、交付税という場合があります。「交付税措置がある」というのは、これです。
この場合、ある事業に交付税措置があっても、不交付団体は交付税が配分されません。
また、「地方債に交付税措置がある」という場合は、マクロでは地方財政計画歳入に計上された地方債は、その元利償還金が後年度に地方財政計画歳出に計上されます。その意味で、交付税措置があります。地方債はその年度は歳入ですが、実質的な財源ではなく前借りですから、その償還金の財源を手当てしないと財源手当になりません。
一方、それぞれの団体が発行した地方債に、個別に交付税措置があるかどうかは、これとは別です。多くの場合、その意味での交付税措置はありません。発行した額に従って交付税配分額を増やすと、地方団体は地方債を発行した方が交付税を多く配分してもらえることになるからです。地方財政計画歳出に計上され、各団体に地方債発行額に応じて配分していない元利償還金は、人口や面積で配分しています。(5月18・19日)
22日の朝日新聞社説は「交付税改革 分権進めて『共有税』に 」でした。「地方交付税といわれて、ピンと来る人がどれだけいるだろうか。『そんな税金を納めていたかな』といった反応が一般的かもしれない。その交付税に注目が集まっている。政府の歳出・歳入一体改革のなかで、財務省などが大規模な削減を唱えているからだ。交付税制度が果たしている役割を考えると、『まず削減ありき』の議論は乱暴すぎる。税源も権限も自治体に移し、その結果として交付税が抑えられる。そうした分権の手順を踏むのでなければ、国のツケを回すだけに終わる」
「昨年までの三位一体改革では、三本柱の一つとして交付税に関しても5兆円余が削られた。しかし、政府内部には、さらに切り込む意見が根強い。たとえば、財政制度等審議会は『5税の法定率引き下げ』を唱える。自治体はむだ遣いが多く、まだまだ絞れる。そんな地方への不信が根底にあるようだ。 だが、自治体の仕事の大部分は、政府の法令などで決まっている。国が権限を握ったまま交付税だけを削れば、貧しい自治体ほど身動きが取れなくなる」
「交付税改革は金額の話だけでは済まない。めざすべき地域社会の姿を描き、その実現を支える仕組みであるべきだ」。 (5月22日)
21世紀臨調が、「日本の将来と国・地方のあり方に関する国会議員・知事・市長緊急アンケート」の調査結果を公表しました。以下、抜粋です。詳しくは、原文をご覧ください。
「中央集権型から地方分権型に国のかたちを大きく転換することが簡素で効率的な行財政システムを構築し、財政規律を確立する道だという意見もあるが、どう思うか」という質問には、知事79.5%、市長64.9%が「そう思う」と回答。国会議員は46.4%が賛成、51.2%が「一概に言えない」と回答。
「三位一体改革の目的について、国と地方との間でどの程度の合意が形成されていると思うか」については、国会議員51.5%、知事86.4%、市長58.8%が、国と地方の間でしっかりとした合意は形成されてこなかったと回答。
三位一体改革の決着内容を現時点でどう評価しているかについては、国会議員は52.8%が「評価している」、43.6%が「評価していない」。知事の63.7%、市長の44.8%が「評価していない」と回答。
「地方分権改革はポスト小泉内閣の最重要課題の一つか」については、国会議員の82.7%、知事の95.5%、市長87.7%が「そう思う」と回答。
税源配分を国と地方の最終支出の実態に即した形に見直していくため、地方への更なる税源移譲が必要かどうかは、国会議員79.4%、知事95.5%、市長92.7%がそう思う(必要)と回答。また、第2期改革でもさらなる国庫補助負担金を廃止すべきかどうかを質問したところ、国会議員の79.7%、知事の72.7%、市長の75.3%が「そう思う」と回答。
「国と地方の協議の場」は今後どうあるべきかを質問したところ、国会議員の43.9%が「法制化などさらに制度として確立すべきだ」と回答、43.3%が「現在の協議の場をこれまで同様に継続すべきだ」と回答。「今後、協議の場は必要なし」と回答した議員は1名にすぎない。
これについてのコメントです。
佐々木毅 21世紀臨調共同代表(前東大総長)
政治システム全体にとって地方分権改革の持つ意味合いについて、国会議員と首長との間で基本的に共通の認識があることが分かった点が何よりも興味深い。また、これまでの三位一体改革の成果についてはなお不十分であり、今後も最重要課題であるという点についても概ね共通の理解が見られた。地方交付税などの扱いや地方の行財政改革の進捗状態については相違が見られるが、これは立つ位置の違いに帰せられよう。厳しい財政状況の中で中央・地方両政府が共倒れ的に衰弱し、弱体化するのを防ぐためには早急に中央・地方政府の役割を明確にする作業を基礎とした大胆な改革が必要である。そのためには先ず公務員制度改革を含め中央政府のあり方について政治がもっと積極的な構想力を発揮することが不可欠であり、問題解決を中央・地方の綱引きに任せていることの限界を改めてはっきり認識することから新たに出発し直すべきである。
西尾 勝 21世紀臨調共同代表(東京市政調査会理事長)
1)三位一体改革関係の設問に対する回答では、知事の回答と国会議員および市長の回答との間にかなりの開きがある。この改革に賭けた知事たちの熱意と真剣さ、そしてその帰結に対する失意の深さに比べ、国会議員および市長の態度はまだ多分に傍観者的である。
2)知事および市長の約半数は第2期三位一体改革の遂行を当面の最優先課題としているのに対して、国会議員では早くも三位一体改革と道州制論議とが混線し始めていて、当面の改革の道筋についてのコンセンサスが崩れて来てしまっている。憂慮すべき事態である。
3)知事および市長の回答と国会議員の回答の間に大きな落差があるものは、地方行革の進捗度合の評価、地方交付税問題、国と地方の協議の場の法制化等々少なくないが、なかでも地方議会・地方議員の改革を必要とする国会議員が88.8%にも達していることは目を引く(知事では54.5%、市長では75.7%)。これを政党別にみると、民主党96.4%、自民党85.7%、公明党81.3%で、地方議員を後援会組織の中核にしている自民党国会議員においてさえ、地方議会・地方議員を見る目は冷たい。国会議員と地方議員の間で率直な徹底討論が行われるべきではないか。
4)ローカル・マニフェスト運動の効果については知事および市長よりもむしろ国会議員の方が高く評価していて、首長選挙におけるビラの頒布解禁に賛成する比率も国会議員の方が高く、70.6%に達していることは、マニフェスト選挙の普及と発展に希望を抱かせる。
(5月22日)

三位一体改革70

28日の朝日新聞連載「小泉時代」は、松田京平記者らによる「3地方は豊かになったか」でした。公立保育所運営費国庫補助金が廃止され、市が実情にあった予算配分が可能になった例、義務教育国庫負担金について使い方が弾力的になった例を挙げていました。(4月28日)
経済同友会が、「基礎自治体強化による地域の自立-一律的・画一的から多様化・個性化推奨の地域行政へ -」(2006年4月25日)を発表しました。地方行財政改革、第2期三位一体改革、道州制などを提言し、「国民は地域経営に関心を高めよ」と結んでいます。全ての内容に賛同するわけではありませんが、方向は正しく、またこのように関心を持っていただけるのはありがたいことです。マンガもわかりやすいです。
この提言は、中里透先生に教えてもらいました。(5月7日)
8日の日経新聞社説「活力ある成熟国をめざして5」は「分権・自由化で意欲に満ちた教育の場を」でした。
「いったい、何が公教育を疲弊させているのだろうか。大きな問題点は、国による画一的統制の下で、地方や学校で十分な創意工夫ができない現状があることだ。文部科学省は戦後、学習指導要領で教育内容を細部に至るまで拘束し、教科書検定では記述を厳重にチェックしてきた。教員の養成は教育学部系大学の養成課程と免許制度によって一元化している。同時に、義務教育費国庫負担金制度によって地方が独自の学校づくりをする裁量を限定してきた。
高度成長期までは、こうした護送船団方式にも意味があったかもしれない。しかし子供を取り巻く社会の価値観が多様化し、情報化が進み、「知」の国際水準が向上するなかで、中央からの画一的教育は実情と齟齬(そご)を来している。
この状況を変えるために、学習指導要領を思い切って簡素化・大綱化し、文科省は最低基準を示すだけにすることをまず提案したい。これにより現場に大きな裁量が生まれ、子供の個性、能力、習熟度、地域特性などに合わせた授業が展開できるようになるはずだ。教科書検定も少なくとも高校では廃止すべきだ。地方への教育財源移譲もさらに進め、分権の土台を整える必要がある。同時に求められるのは、学校選択制の拡大と、学校への外部評価導入である」(5月8日)
遅くなりましたが、1日の日経新聞「インタビュー領空侵犯」では、住明正東大教授の「気候学者も勧める道州制」が載っていました。「人口が密集している東京圏はエネルギー効率が高いという誤解があります・・・東京へすべてが吸い寄せられるために、非効率がたくさん存在するのです」(5月8日)
8日に、地方6団体の研究会が、中間報告をまとめました。概要版のp1が簡潔です。主な提言は、次の通り。
1 国と地方の協議の場を法定化
2 地方交付税を地方共有税に。特例加算や特会借り入れを廃止
3 国庫補助金の半数廃止
4 新地方分権推進法の制定
地方団体がまとまって、このような提言をまとめることは画期的です。今後これを、どのように具体化していくかです。
9日の朝日新聞社説「分権改革、新たな一歩になるか」は、これを取り上げていました。
「中途半端に終わった「三位一体改革」の反省を踏まえ、分権の必要性とその具体化への道筋を示す」「提言を貫いているのは、国と地方の関係を見直す視点だ。分権一括法で「上下・主従」から「対等・協力」になったはずなのに、これまで政府主導でことは進んできた。「地方行財政会議」を提唱した背景には、昨年までの補助金廃止の論議で、自治体側の意見は聞き置かれただけという不信感がある」
「交付税は所得税や消費税など国税の一部を充てている。本来は自治体が共有する固有財源と位置づけられるが、「交付」という用語から、国が恩恵的に与えていると受けとられがちだ。
名は体を表すという。制度の見直しに向け、まず名称に目を付けたわけだ。話題作りに終わらせないためには、この税の仕組みが自治体の「連帯」や「自立」の精神に基づくものであるとの理解を浸透させることがカギになる」
日経新聞は地方面で「共有税、分権委が提言。政府の攻勢に地方が対案」を解説していました。東京新聞も社説「交付税削減、ツケを地方に回すな」を主張していました。
読売新聞解説欄には、青山彰久記者による、本間正明阪大教授と神野直彦東大教授のインタビュー「地方財政と交付税の行方」が載っていました。(5月9日)
10日の日経新聞経済教室「財政、経済が問う2」は、林宜嗣教授の「国と地方、役割明確に」でした。
「歳出見直しの中のプライマリーバランス(基礎的財政収支)の議論を見ると、『マイナス幅が大きい国VS相対的に”健全”な地方』という構図のもと、ともすると国から地方への負担の押しつけになりがちで、真の財政再建とはほど遠いものになる恐れがある」
「歳出見直しの一大争点である地方交付税についても、総額が膨張した背景を検証せず、『まずは縮減ありき』という乱暴な議論が目につく。仮に国のプライマリーバランスが改善しても、地方の側で悪化したのでは意味がないのだ」
「国民の満足が最大になるような予算配分の答えを最初から見つけることは、理論上はともかく現実には不可能である。しかしながら、政策の意思決定や実施方法の改革によって、歳出を望ましい方向に導くことはできる。それが『国から地方へ』『官から民へ』の流れを徹底させることであり、そのためのルールづくりである」
「国の政策形成で、これまで大きな役割を果たしてきたのがパターナリズム(父親的温情主義)だ・・・だがパターナリズムは、基礎的で必需的な行政が中心で、自治体の行政能力が乏しかった時代の産物である・・」
「『奨励補助金をまず削減すべき』という主張があるが、誤りである。奨励補助金は国の財政状況と奨励効果を勘案して国が主体的に判断すべきで、仮に存続したとしても、『補助金は不要だ』と考える自治体が受け取りを拒否できるような環境を作り出せばよい」
参考になる主張が、いくつも書かれています。ぜひ、原文をお読みください。(5月10日)
10日の毎日新聞社説は、「地方交付税改革、元気が出る分権が大事だ」でした。「6団体の検討委が打ち出した地方共有税構想は、国からの財政調整という交付税の発想の転換という点で、評価できる」
「地方自治体への国の直接的関与を軽減していくことは、分権改革の基本であるが、それを本物にするためには財政的裏付けが欠かせない。共有税構想は将来的には地方団体が管理する水平的な財源調整への展望も描くことができる。
自治体が自ら財政改革に取り組むと同時に、自主性を発揮し経済活性化を図ることができれば、国の財政再建にも寄与することになる。これまで、削減金額のみに関心が向いていた補助金削減でも、分権の趣旨に立てば、補助率の引き下げによるつじつま合わせはやめるとともに、件数自体を減らすことは正しい。これは国の事務削減にもなる。財政再建という観点からは、国も、地方もそろって進んでいくことが理想の姿である。地方団体が交付税見直しに動いたことの意味は大きい」(5月10日)
10日の毎日新聞「小泉時代と改革された私10」は、「三位一体改革、自立迫られた地方」でした。(5月10日)
8日に地方6団体の研究会がまとめた案が、11日に「中間報告」として確定しました。先日紹介したのと、骨格は変わっていないようです。
10日の経済財政諮問会議では、竹中大臣と民間議員から、地方財政改革の案が出されたそうです。(5月11日)
21世紀臨調が、地方財政自立改革提言第5弾をまとめました。ポイントは、次の通り。
「三位一体改革第1期改革は、内容的には極めて不十分な形で終わってしまった。改革の成果を国民が手にすることができなかったという意味で、第1 期改革は不満の残る内容だった。
補助金改革で、各省庁に丸投げをした結果、本来の改革の意義は骨抜きにされ、補助負担率の引き下げなど、数字合わせに終わってしまい、地方の自由度や裁量の拡大につながらないものとなってしまった。
『国と地方の協議の場』は、関係大臣は、官僚の作成した文章を読み上げ、省益を主張するのみであり、協議の場は、実質的に機能してこなかった。
住民に身近な問題は、できるだけ住民に近いところで決定する。そして、住民がその決定過程に参画していく。分権が進めば、ムダを省き、地方の知恵と工夫により、少ない金額で事業を実施することにより、財政再建にも貢献できる。」
具体的には、
・「国と地方の協議の場」を法定化
・分権改革推進のための新たな法整備
・地方交付税制度は「地方共有税」制度に転換
・国庫補助負担金は、最終的には全廃すべき。当面、現在約400 件ある総件数の半分(約200 件)を廃止
・国の地方支分部局の全廃
ロードマップも載っています。(5月18日)

2006.05.05

4日の日経新聞社説は、「活力ある成熟国をめざして2、分権進め地域が成長を競う時代に」でした。
「潜在力発揮へ道州制を」「経済のグローバル化や人口減少社会の到来など、地域経済を取り巻く環境は厳しい。しかし悲観することはない。全国を東北、関東などブロック単位でみればそれぞれ欧州一国並みの経済規模や人口がある。」
「各地域の潜在力はもともと大きいが、それを生かし切れなかった背景には中央省庁による画一的な経済振興策があった。国土の均衡ある発展を掲げた全国総合開発計画も公共事業への地方の依存体質を強め、かえって地方経済の足腰を弱めた。
地域経済を立て直すには経済振興策の権限を全面的に地方に移し、補助金も廃止して税源移譲する必要がある。インフラ投資も地方に委ねれば、類似施設を幾つも造るような無駄は許されなくなる。政府の地方制度調査会が2月末に道州制導入を答申したが、道州制に移行すれば、経済産業省や国土交通省はほとんどいらなくなるだろう。道州制導入には時間がかかるが、景気が回復している今こそ、地域が競い合いながら独自の成長戦略を探る好機である。」
「特性いかし経済自立へ」「小規模な市町村の活性化も急務である。人口減少で集落の維持が難しい地域が増えるなど先行きは楽観できないが、生き残りのモデルは各地で芽生えている。」
「地域経済を復権するモデルは幾通りもある。自らにふさわしい姿を地元企業や住民が探り、中央から権限を移譲された自治体が側面支援してこそ、真に自立する道が開ける。」

三位一体改革69

28日の読売新聞「時代の証言者」石原信雄さん「国と地方」は、「功罪あったふるさと創生」でした。
「たしかに、ふるさと創生事業には功と罪があります。補助金中心でやってきた自治体には、自分の発想で地域づくりをする習慣に乏しかったが、この政策が、地域の問題を自分たちで考えるきっかけになりました。しかし、この財源で金塊を買ったり温泉を掘るだけになったりしたところもあります。地方に希望を与えたと同時に、やりすぎてしまったのです。結局、その後、地方交付税に依存して無駄遣いを助長したと批判されることになりました」
ふるさと創生については、当時「地方交付税-仕組と機能」p235~に方法と意義を解説しました。また、「新地方自治入門」p58にも、少し評価を書きました。私の考えは、日を改めて書きましょう。(3月28日)
30日の日経新聞経済教室は、神野直彦教授の「分権時代の交付税、地方共有税への刷新急げ」でした。
「・・・地方財政にとっての固有財源であり、間接課徴形態の地方税ともいわれてきた交付税は、地方自治体が相互協力のもとに財政力の地域間格差を是正する地方自治体の『共有』財源として明確に位置づけられなければならない。つまり、交付税は『地方共有税』に改め、地方『共有』財源を管理するために新設する『地方共有税特別会計』に直入すべきである。さらに、地方共有税をそれぞれの自治体に配分するにあたっても、地方自治体の参加のもとに決定される必要がある」
詳しくは、原文をお読みください。
29日の経済財政諮問会議に、竹中大臣が資料を提出されました。30日の朝日新聞で、松田京平記者が解説していました。
「竹中総務相は・・・地方交付税の削減目標として、2011年度までに最大6兆円程度の削減が可能との試算を示した。06年度に交付される地方交付税の総額は15兆9千億円で、最大4割近いカットとなる。地方の意見を代弁してきた総務相が厳しい数字を示したことで、大幅削減の方向で論議が進む可能性が出てきた。・・・地方自治体や総務省は反発しているが、竹中氏の提示をきっかけに、財務省が削減を強く主張することは確実だ」(3月30日)
3月29日の経済財政諮問会議の議事要旨が、HPに載っています。竹中大臣の資料についての説明は、p10からです。(4月5日)
30日に、地方6団体の第5回新地方分権構想検討委員会が開かれました。「分権型社会の実現に向けた具体的手」が議論されました。項目は、次の通り。詳しくは、原文をご覧ください。
1地方税の充実強化 、2地方交付税の改革、3国庫補助負担金の見直し、4財政規律を促す規制の強化、5(仮)地方行財政会議の設置、6国・地方を通じた行財政改革の推進、7(仮)新・地方分権推進法の制定
(3月31日)
 
3日の日経新聞で中西晴史編集員が、「分権改革第2ラウンド」「交付税議論ヤマ場へ。地方苦戦、政治の場に活路」を書いておられれました。「竹中資料に騒然」「及び腰の自治体」「世論喚起が課題」という中見出しです。(4月3日)
紹介が遅くなりましたが、東京大学社会科学研究所編「失われた10年を超えてⅡ:小泉改革への時代」(東京大学出版会、2006年2月)が出版されました。第6章に、北村亘先生の「三位一体改革による中央地方関係の変容-3すくみの対立、2段階の進展、1つの帰結」が載っています。
三位一体改革のプロセスについての、政治学からの分析です。ポイントは、
1 今回の改革が、従来の日本政治や行政から見て極めて異質であること。
2 「地方6団体と総務省が反対する地方交付税改革・削減」「族議員と事業省庁が反対する国庫補助金削減」「財務省が反対する税源移譲」という三すくみの構図が打破された。
3 それは、交付税改革・削減については経済財政諮問会議を利用することで、国庫補助金削減と税源移譲については地方団体を協議の場に引き入れることで進んだ。
4 それらの前提として、与党議員に対する首相の優位が選挙制度改革で進んでいたことなどを、指摘しています。
ご関心ある方は、是非ご一読ください。小生も資料提供者として、名前を挙げていただきました。先生、ありがとうございました。(4月5日)
8日の毎日新聞社説は、今松英悦論説委員の「不健全な財源で地域の自立はできない」でした。
「三位一体改革などで税源移譲は進められてはいるが、大半の自治体の財政力は十分ではない。04年度決算では地方交付税不交付団体が全体の約4%に過ぎない。地方の自立性を高める改革が魅力的なのは当然だ。国が徴収する基幹的な税目から、ある割合を財源が不足している自治体に分配する仕組みを、財政調整という。地方財政改革はこの財政調整の必要性を低下させることに狙いがある。では、一連の改革で将来的に自治体が補助金や地方交付税に頼らないですむだろうか。それは不可能だろう」
「そこで、まず、やらなければならないことは、三位一体改革の核心である地方に権限を移譲した事務にかかわる財源移譲である。憲法が保障している社会サービスや行政サービスの財源保障も、財政力の弱い自治体には不可欠だ。ただ、その調整の手法は国から地方という流れである必要はない。「地方にできることは地方に」という以上、広範な税源の移譲を行い、広域地域ごとに地方共同税として徴収、留保し、自治体の財政状況に基づき、配分する方が分権の実を上げられる・・・」(4月10日)
11日の日経新聞連載「財政、見えてきた争点」中は、「すくみあう国と地方。財源争奪、制度論置き去り」でした。(4月11日)
13日の日経新聞は、「交付税配分巡り対立。地方、共有税化を提言。政府、総額圧縮に重点」を解説していました。(4月13日)
日本地方財政学会の今年度の大会は、5月27、28日に東洋大学で開かれます。そのプログラムが発表になりました。会員でなくても参加できます。今もっとも熱い学問分野の一つでしょう。どうぞご参加ください。(4月7日)
地方6団体の「新地方分権構想検討委員会」は、17日に「分権型社会のビジョン」の中間報告素案を議論しました。
18日の朝日新聞では、松田京平記者が、「問われる国の仕送り。地方交付税改革、分権論議の柱に」を大きく解説していました。「全国均一サービスのための格差調整」「色濃い第二補助金の役割」「改革のカギ握る税源移譲」など、現在議論になっている点を、明確に分析していました。小規模町村の状況、大都市の状況、交付税の必要性・機能などをわかりやすく説明しています。
これだけの紙面があれば、正しくまたわかりやすく、実例を入れて記事が書けますね。もっとも、これだけを一人で書くのは、大変だと思います。ありがとうございます。記者クラブにいて、省庁の出す資料をもとに、「ご用記事」を書くのとは大違いです。
ただし、一か所、間違いがあります。最後の部分で「・・交付税の財源について、自治体間の格差が開きやすい法人関係税から消費税に重点を移す・・」とあるのは、「地方税について、自治体間の格差が開きやすい法人関係税から消費税に重点を移す」、あるいは「交付税の財源について、消費税から自治体間の格差が開きやすい法人関係税に重点を移す」の間違いでしょう。(4月18日)
「地方財政の資料」
平成18年度版「地方交付税のあらまし」(地方財務協会、税込み800円)ができました。地方交付税と地方財政について、最新の数字を入れて解説した図表・資料集です。三位一体改革など最近の議論も、盛り込んであります。(4月23日)
小泉政権5年を迎え、各紙がその評価をしています。26日の朝日新聞では、星浩編集委員が「まわした歯車、成果と誤算」を書いておられました。「確かに、時代の歯車を回した。が、進路が定まらずに軌道を外れた歯車もある-小泉政権の5年間を、こう評することができる」
「・・・地方分権の三位一体改革は悲惨な結末だった。中央官庁の抵抗で、税財源の移譲は大きな進展がなかった。増田寛也岩手県知事はこう分析する。『首相は分権という総論を唱えたが、各論は丸投げだった。官僚たちは各論で小競り合いに持ち込めば、改革を骨抜きにできるという手法を覚えた。地方自治体には疲労感が漂っている』」(4月26日)