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地方行財政

三位一体改革75

5日の読売新聞「ポスト小泉を考える・地方分権」は、新藤宗幸教授と浅野史郎前知事でした。
「一部に、95年の地方分権推進法にならった法律を制定し、内閣府に諮問委員会を設けて取り組むべきとの意見がある。だが、次期政権に政治主導体制への熱意があるならば、10年も前の方式をとる必要はない。首相自らが長となり主要閣僚ならびに地方代表からなる改革会議を設置して、国庫補助負担金の廃止や国税の地方移譲、新たな中央・地方財政調整システムの改革に取り組むべきである」
「総裁選に出馬する3人の言葉を聞く限り、地方分権が、いつの間にか『地方間の格差縮小』に変わってしまったかのように見える・・」
このほか、いろいろな論点が指摘されています。(9月5日)
全国知事会は、自民党総裁選候補者に公開質問状を出し、9月14日に回答を公開しました。
また、15日には地方6団体が地方分権改革推進法」(骨子案)を総務大臣に提出しました。(9月16日)
18日の日経新聞社説は、「06総裁選政策課題を問う。柔軟な発想で公教育の再生を図れ」でした。
「教育改革をめぐるもう一つの大きな論点は、国が責任を持つ部分と現場の裁量に任せる部分をどう切り分けるかである。
戦後、文科省は学習指導要領で教育内容を事細かに拘束し、教員養成も一元化してきた。この結果、教育界には画一主義がはびこり、地域や学校の創意工夫を阻害している。私たちはこうした認識から、指導要領の簡素化・大綱化などにより現場での競い合いを促すべきだと提唱してきた。どんな教育改革を進めるにせよ、分権の方向性は時代の要請であることを強調しておきたい・・・」。
長くなるので、原文をお読みください。(9月18日)
18日の毎日新聞「闘論」は、松沢成文神奈川県知事と、片山善博鳥取県知事の「地方から見た小泉改革」でした。松沢知事は、国と闘う姿勢促した、既得権益破壊も意義という主張で、片山知事は、理念先行のまがい物、地域格差の拡大招くという主張でした。(9月19日)
19日の日経新聞社説は、「16年総裁選政策課題を問う」「道州制の導入含め、地方分権に本腰を」でした。原文をお読みください。(9月19日)
(分権の進捗と交付税の機能)
 地方分権が進むと、交付税(財源調整機能や財源保障機能)がなくなるかのような議論をする人がいます。ちょっと待ってください。地方団体の財政の自由度を上げるために、財源調整や財源保障をゆるめることは正しいです。しかし、分権が進んでも、この機能はなくならないのです。それは、次のようなことです。
現代の福祉国家にあっては、教育、福祉、衛生、安全などの分野において、国は国民に対し、等しくサービスを提供する義務を負いました。それを国が直接執行するのなら、交付税制度は要りません。国立学校には、交付税措置は要らないのです。しかし、分権によって、多くの事務を地方団体を通じて行うことになります。
各地方団体が、その経費を自前でまかなえれば、問題はありません。税源移譲や地方税の増税で、不交付団体が増えます。交付税に頼らない団体が多くなります。しかし、すべての団体が地方税で運営できるようになることは、今の日本の地域経済の状況では、無理でしょう。
そのような経費が増加する一方で、経済は、ますます偏在的に発展します。すると、責任者である国は、地方団体に対し、それらの事務にかかる経費を、財源保障する必要があります。このように、福祉国家において地方分権が進展すると、交付税の必要性はなくならないのです。
もちろん、連邦制になって、福祉の基準も税の基本も各州が決めるようになると、連邦と州との財政調整は要りません。でも、州政府と市町村との間の、財政調整が必要です。(9月21日)
先日に引き続き、分権と財政についての考察です。
(国の役割再考-ナショナル・ミニマムの内容)
国庫補助金の役割を見直していくと、地方団体が行う事務に対する国の関与の問題に行き着きます。国が関心を持ち、責任を持つ部分が、「ナショナル・ミニマム」です。この言葉も、あいまいです。しかし、事務を分類する考え方としては有用だと思います。
ところで、これまでは、どの事務がナショナル・ミニマムで、どの事務はそうでないか、対象事務の切り分けが、議論の中心でした。わたしは、これからは、ナショナル・ミニマムの内容を議論すべきだと思います。すなわち、ある事務がナショナル・ミニマムだとして、国家が国民に対して何について責任を持つかということです。
(何を保障するか)
義務教育で、考えてみましょう。これは、ナショナル・ミニマムでしょう。では、国家が保障すべき義務教育とは何でしょうか。これまでは、教職員の数と給与、校舎の建設でした。しかし、これが「国家が保障する教育」でしょうか。私は、違うと思います。国民が期待するナショナル・ミニマムとしての教育は、教育を受ける機会均等とその内容でしょう。教職員の給与は、機会均等のための一つの手段でしかありません。
発展途上国であって学校がないとか教員がいないというなら、教員と施設を整えることが、国家に期待されるでしょう。しかし、それらを整えた場合、国家に期待されることは、教育の内容でしょう。かつては、教員と施設をそろえることが、ナショナル・ミニマムでした。しかし現在では、そうではないのです。国民が教育に期待しているのは、先生の給料をどう払うかでなく、どのような教育を子弟に授けてくれるかです。
ここには、ナショナル・ミニマムに関して、3つの間違いがあります。一つは、国家が保障すべきはお金でなく、教育内容であるということ。もう一つは、保障する相手は地方団体ではなく、生徒や保護者であること。そして最後に、予算という入力でなく、教育結果という結果で測る必要があるということです(これは「続・進む三位一体改革」に書きました)。
(行政の役割変化)
この議論の基底には、行政の役割変化があります。一つは、行政の目的が、金でできることからよりソフトなものになったこと。二つは、対象者が、業界でなく消費者になったこと。三つに、評価は、インプット(予算)でなくアウトカム(品質)で測るべきであるということです。(9月23日)
25日の日経新聞は、「安倍政権あす発足。地方分権どう描く」「具体論、所信表明を注視」を大きく書いていました。(9月25日)
3日の読売新聞「安倍新政権に望む」は、高橋はるみ北海道知事の「国と地方、役割分担に道筋を」でした。
地方交付税の改革で、安倍首相は定年退職者の活用など、地方の努力に応じて交付税の配分を積み増す考えを示しているがとの問に対して、
「地方交付税は、地域の活性化のために地方が自由に使っている財源だ。安倍首相は(配分の算定基準などで)いろいろアイデアがあるようだが、できる限り地方の裁量に任せてほしい。算定方式は客観的な指標を中心とし、国民誰でも理解できるものにするべきだ」
「国の歳出削減のため交付税の総額をいかに減らすかという議論がさかんに行われているが、『ちょっと待って』と言いたい。10年ほど前に景気対策と称して公共事業をたくさんやった時、国は地方にも借金するように求め『返済は交付税で面倒見る』と言った。それを受けた地方にも責任はあるが・・・」
「・・・ムダな補助金の事業をやめれば歳出削減の余地はまだまだある。地方は『国が補助してくれるのだからちょっとムダがあっても』と考えてしまう。国と地方は補助金のやりとりの過程でモラルハザードを起こしている。歳出削減が地方分権の目的ではないが、地方分権を進めれば歳出は削減できる」(10月3日)
5日の日経新聞経済教室「政治の統治改革考」は、新藤宗幸教授の「三位一体改革第二次を」「真の分権国家創造。霞ヶ関、高次の課題に特化」でした。
「1990年代初頭から、政官関係の見直しが、政治のアジェンダとされてきた。2001年1月の行政改革にもとづく内閣法4条改正による首相発議権の法制化、内閣府新設、内閣官房機能の強化などは、こうしたアジェンダに応えたものだ。とはいえ、割拠的な各省官僚機構の改革は手つかずのままである」
「問われているのは、官から民へなどのスローガンのもと政府事業の一部を民営化することではない・・・官のリストラと再チャレンジ社会の創造は、どちらも地方分権改革と表裏の関係にある・・・官僚機構の役割を高次の政策課題に関する政権の補佐・補助機能に純化し、内政事項の多くを自治体に移管する分権改革こそが、官のリストラを促進する」
「改革続行をいう政権は、こうした結果を総括した上で、第2期三位一体改革に着手すべきである・・だが、大規模な国庫補助負担金廃止は、機関委任事務制度の廃止以上に官僚機構の抵抗が伴う。それだけに安倍政権は、95年の地方分権推進委員会のような外部の学識者からなる諮問機関を設置し、その検討に委ねるのでなく、政権主導で立ち向かわねばなるまい」(10月5日)
同じく日経新聞「安倍政権、経済政策の課題」は「揺れる地方財政。カギは分権、壁は中央」でした。「がんばる地方応援プログラム・・・少子化対策などで一定の成果をあげた自治体に交付税を上乗せ配分する案が有力だ。交付税に一種の成果主義を採り入れる試みだが、手法次第では新型交付税で収入が減る自治体への穴埋めに使われる恐れがないわけではない。国による政策誘導の色が強まれば、交付税が第二の補助金と化し、地方の自由度がかえって低下する可能性もある」
「これまでの分権改革は中央省庁の抵抗で骨抜きになった歴史の繰り返し。小泉政権での国と地方の税財政改革(三位一体改革)も霞ヶ関との利害対立で中途半端に終わった。地方の悲鳴に揺れる地方財政改革だが、最大の壁は中央にあるのかもしれない」(10月5日)

2006.09.07

2日の読売新聞では、青山彰久記者が「自治体の破たん法制。国と地方の関係、包括的な議論で」を書いておられました。
「自治・分権の原則が、自分たちのまちのことは自分たちで決めるという自律と自己統治にあるとすれば、破綻法制を検討することにも意味はある・・。しかし簡単ではない」
「そもそも、地方に自己責任を求めるなら、それに見合う形で、地方が今以上に仕事を自由に効率的に行う権限も広げなければならないという論理も成り立つ。法律や政令・省令で仕事の基準や方法まで定める現行制度を変え、税源移譲も拡大すべきだろう」
「破綻法制だけを独り歩きさせず、国民が納得できるように包括的に設計できるかが焦点といえる」
6日から日経新聞経済教室で、「地方財政、破綻処理を考える」が載っています。「破綻処理」とは、センセーショナルな見出しですね。
今の法制度では、自治体も国も「破産」はできません。破産は法人=法律が作った人を「殺す」制度ですから、作るときに法律が必要なのと同じく、殺すときも法律が必要なのです。そのような法律はないので、国も自治体も破産はできません。第3セクターの多くは株式会社ですから、破産できます。民事再生法の処理もできます。
破綻は、一般的な用語で定義されていないので、定義してからでないと議論が混乱します。日本国債が格付けを引き下げられ、アフリカの某国なみになったのは、まだつい最近のことでした。この時も、日本の財政は破綻していると言われました。その後も借金残高は増えて、「国家財政は破綻している」という人もいます。
夕張市が巨額の借金を抱えたのは事実です。しかしこれは、「粉飾」をしたのであって、一般化されては他の自治体が困ります。国として自治体が行わなければならない事務(教育・福祉・消防など)の財源は国が保障しています。自治体が借金する際も、これまでは国の許可が要りました。変なことをしない限り、破綻しようがなかったのです。また、粉飾しないように監視するために、議会があり、監査委員がいるのです。
国と地方が巨額の借金を抱え「破綻している」ことと、粉飾した夕張問題とは、別です。対処方法も別々です。地方団体の借金が多いので「破綻処理」を考える必要があるというのなら、国家財政の方がひどいのですがね。

三位一体改革74

1日の朝日新聞連載「検証構造改革」は、辻陽明記者の「地方分権かけ声倒れ、ムダ生む構造なお温存」でした。
補助金削減といっても、国の権限を残したまま補助率を引き下げたりで、自治体の裁量範囲はほとんど広がらなかった。地方への負担の押しつけもあった。
所得税が3兆円税源移譲されたが、交付税率を変えなかったので、交付税は1兆円削減となっている。補助金削減4兆円と税源移譲3兆円との差額1兆円と併せ、地方は2兆円損をした、との解説です。
「歴代政権が手を付けなかった難題に数値目標を設けて挑もうとした首相に、地方自治体は当初、期待した。だが、最終局面で詳細な設計を官僚任せにした改革は、不発に終わったと言ってもいい」と厳しい評価がされています。こう言われても仕方がない部分もありますが、3兆円の税源移譲は評価して欲しいですね。どうでしょうか、辻さん。
6月7日の経済財政諮問会議。地方6団体の代表からの意見聴取後、改革を振り返った小泉首相の発言は、敗北宣言とも受け取れるものだった。「地方が自由にできることをやってあげないといけないが、全部の府省が抵抗している」との記述もあります。重い発言ですね。
東京新聞1日の社説は、「地方分権、流れを止めてはならぬ」でした。(8月1日)
4日の産経新聞は、「ポスト小泉、三位一体改革どう継承」を書いていました。「破綻への道?新型交付税、危ぶむ地方」「参院選で一人区反乱?おびえる自民」です。(8月4日)
(今後の進め方)
三位一体改革の今後の進め方を、学陽書房の本(9月刊行予定)に書きました。詳しくはそれを読んでもらうとして、ここでは少し違った角度から、政治学的に分析してみましょう。
三位一体改革には、二つの意図がありました。「財政の分権」と、「財政の再建」です。この二つは、全く方向の違ったものですから、別々に考える必要があります。そして、それぞれ、「主たる担い手」「内容」「手続き」を考える必要があります。
1 担い手
まず、担い手です。分権は、国(各省)は反対です。総務省の力だけでは、無理でしょう。進めるとしたら、地方から働きかけるしかありません。
再建は、地方も担う必要があります。しかし、交付税と地方歳出削減によって国の歳出削減を進めようとするなら、国が地方に働きかける必要があります。
2 内容
次に、実現を目指す内容、すなわち相手方に提案する内容です。
(分権ー具体リスト)
分権にあっては、廃止する補助金リストと金額、移譲してもらう税源の税目と金額を、地方から提示しなければ進みません。もちろん、このような補助金廃止・税源移譲といった財源の分権でなく、規制の緩和を当面の目標にすることも考えられます。その場合は、どのような項目について規制を廃止・緩和してもらいたいのか、そのリストを提示する必要があるでしょう。いずれにしても、具体的項目を提示しないと、議論は進みません。
(再建ー国が率先して行革)
再建にあっては、国と地方を含めた、歳出削減項目と金額(削減割合)を、国が提示すべきでしょう。この点、「骨太の方針2006」では歳出歳入一体改革を示し、2011年までに必要な対応額(歳出削減か、さもなくば増税)を示しました。今後、それぞれの歳出項目で、具体化されるでしょう。
その際に、「地方歳出を削減せよ」と言っても、地方団体は納得しません。地方団体は、国以上に職員数削減や給与カットをし、国がやっていない配置転換や出先の統廃合もしています。「国は地方を見習って、もっとやったらどうですか」という首長も多いです。全体的には、「国と同一歩調で進めます」がせいぜいのところでしょう。国は「国はこれだけも削減したから、地方もつきあってくれ」と範を示すべきだと思います。
3 手続き
(分権ー政治主導)
分権については、地方団体は意見書「七つの項目」を内閣と国会に提出しました。今のところ、はかばかしい回答ではないようです。その中で、「新分権推進法」が具体化に入っています。これがどのようなものになるか。もっとも、力学的には、総務省をのぞく全霞ヶ関が反対ですから、通常の法案作成手順では実のある内容は期待できません。三位一体改革は、官僚をパスし、政治主導で進んだのです。どのような政治主導が発揮されるか、そのような道筋をつけるかが課題でしょう。
(再建ー信頼と参加)
再建については、地方団体をどれだけその気にさせるかです。もちろん、地方団体の意向を無視して進めることも可能でしょうが、長期的に見て良い手法とは考えられません。政治的には愚策です。一回は強引に進めることができても、次が進みません。相手が喜んで取り組むことは無理としても、「信頼関係」の上に進める方が上策です。
その際には、内容以上に手続きが重要です。簡単に言えば、「発言と責任」です。歳出削減と増税は、誰だっていやなことです。どんな内容であっても、反対者がでるでしょう。その際には、その決定過程に地方団体にも参加してもらうのです。
内容に不満があっても、手続きに参加したら、人間は納得します。内容による正統化以上に、手続きによる正統化が重要だと思います。これは、民主主義の基本であり、負担の配分の際の王道です。「代表なくして課税なし」です。具体的には、「国と地方の場」の格上げでしょう。(8月24日)
昨日、今後の進め方を書きました。その続きで、分権推進法について書きます。平成7年に分権推進法が定められ、その一部は第一次分権改革として成就しました。今回、新分権推進法を定めるとすると、どのような点がポイントとなるかです。
私は、旧分権法の功績は、分権の理念を法律に定めることで分権を国家の政策と定めたこと=動かなかった分権を動かしたこと、そして推進委員会で基本計画を定め機関委任事務を廃止したことだと思います。では、これと比べると、新分権法はどうか。
分権の理念は、その後分権が進んだこともあり、共有されています。事態は進展して、理念から実行の段階を進んでいます。地方六団体は、「7つの提言」をまとめ、国に意見書として出しました。この項目を、どれから順に、どの程度実現するかが問題となっています。
次に、第三者機関=審議会方式です。第一次分権はこの方式で成功したのですが、その後継機関である地方分権改革推進会議は、失敗でした。三位一体改革の過程で見えたのは、官僚に任せては進まない、第三者機関でも進まない、責任ある政治家が決断しないと進まないと言うことでした。
新法をつくるには、旧法のうち何が残されているのか、項目を洗い直すことと、どのような手法をとったら進むのかを検討すること、この二つが重要になると思います。(8月26日)
19年度地方財政計画の試算が発表されました。現時点での見通しです。骨太の方針に則り、いくつかの推計を置いた数字です。うーん、これが総務省の地方財政のHPからは、たどり着かないのですよね。(8月31日)
9月1日の朝日新聞社説は「自治体の破綻、自己責任を問うなら」でした。
「自己責任を問うのならば、やるべきことがある。 まずは自治体に権限や税源をもっと移し、自立できる基盤をつくることだ。それなしに責任だけ求めるのでは筋が通らない。分権を進めつつ、自立に見合った責任を問う破綻(はたん)処理策をつくってゆく手順が欠かせない。 自治体の場合、破綻したからといって日々の行政サービスを止めるわけにはいかない。会社更生法のような再生型の制度にするのは当たり前だ」 (9月1日)
持田信樹先生編の「地方分権と財政調整制度-改革の国際的潮流」(東大出版会)が出版されました。財政調整制度改革の動きが先進国共通の潮流であり、交付税改革もその中で位置づけるべきだという考えから、編まれた論文集です。10か国との比較と、それを踏まえた地方交付税のあり方が論じられています。
日本の交付税改革では、国の歳出削減のための改革論や、事務の義務づけを無視した人口面積での配分を論じる人がいます。私は「諸外国を学べ」という主義者ではありません。しかし、世界的な、21世紀の福祉国家、新自由主義主潮の中に交付税を位置づけ、相対化して考えるのは良いことだと思います。そうすることによって、単純に歳出削減のために交付税を改革するという主張がおかしいこと、逆に交付税を「死守する」という発想もおかしいことがわかると思います。
私も、少しだけお手伝いをしました。ご関心ある方は、お読みください。(9月3日)

地方財政改革の経緯

平成13年
6月14日 地方分権推進委員会「最終報告
6月21日 経済財政諮問会議「骨太の方針」
8月30日 諮問会議で「片山プラン」発表(段階補正・事業費補正見直し、留保財源率検討)
11月2日 諮問会議で片山プランの具体案公表

平成14年
1月 全国総務部長会議で段階補正・事業費補正見直し説明
5月21日 諮問会議で「片山プランⅡ」(税源移譲案)発表
6月21日 諮問会議「骨太の方針2002」(国庫補助負担金・税源移譲・地方交付税の三位一体改革)
7月26日 平成14年度普通交付税額決定(段階補正・事業費補正見直し実施)
8月28日 諮問会議「片山ビジョン」(県分留保財源を平成15年度から5%引き上げ表明)
10月30日 地方分権改革推進会議意見(国庫補助負担金の見直し等)
10月31日 諮問会議での議論(片山大臣の批判)
12月     15年度予算案(一般財源化の芽だし)
3月26日 地方交付税法改正成立(県分留保財源5%引き上げ)
4月 1日 経済財政諮問会議で、小泉総理からハッパがかかる。
5月中旬 地方分権改革推進会議水口試案騒動
5月23日 地方制度調査会意見概要意見
6月18日 小泉総理三位一体改革決断(3年間で4兆円の国庫補助金削減。相当額を基幹税で税源移譲)
6月26日 経済財政諮問会議「骨太の方針2003」(3年間で4兆円の改革) 
7月25日 平成15年度普通交付税額決定(県分留保財源5%引き上げ)
11月18日 諮問会議で総理から「16年度予算で1兆円の補助金削減・縮減や税源の移譲を目指す」との指示
11月28日 経済財政諮問会議で、麻生大臣「交付税改革」を発表
(総額の削減加速、算定方法の大幅簡素化、地方団体の不安解消)
12月10日 16年度分の国庫補助金削減案決定
(児童保護費負担金(公立保育所)などは一般財源化、義務教育費負担金(退職手当等)は「税源移譲予定交付金」に、その他は事務の廃止縮減)
12月18日 平成16年度地方財政対策決定
(一般財源化分は「所得譲与税」で、暫定分は「税源移譲予定交付金」で。交付税総額は1.2兆円減少)
4月26日 麻生大臣「三位一体改革のプラン」を発表
(①所得税から個人住民税への税源移譲(3兆円)の先行決定、②残り3兆円の国庫補助負担金改革、③17年度の一般財源(地方税・地方交付税等)総額を前年度と同水準に)
5月28日 総理「3兆円税源移譲」指示
6月 3日 経済財政諮問会議「骨太の方針2004」決定
(18年度までに3兆円の税源移譲。補助金削減案は地方団体に作ってもらう)
8月19日 全国知事会「補助金削減案」を決定。6団体合意。
8月24日 6団体が総理に「案」を提出。経済財政諮問会議に提出。
9月14日 閣僚と地方団体代表との協議会(その後継続)
11月26日 政府・与党全体像「三位一体の改革について」決定
12月18日 17年度地方財政対策決定(交付税総額は横ばい、臨時財政対策債は1兆円削減。所得譲与税化は7千億円、税源移譲予定特例交付金化は4千億円)
4月28日 「国と地方の協議の場」で、麻生大臣から知事会長へ、残り6,000億円の補助金改革案提出を依頼
5月18日 麻生大臣「地方税財政改革の推進」公表
6月20日 経済財政諮問会議「骨太の方針2005」決定
7月13日 知事会、1兆円の補助金改革案決定
10月 4日 地方6団体代表が経済財政諮問会議に出席
10月12日 国と地方の協議再開
10月17日 各省ゼロ回答
10月26日 中教審答申、1/2の国庫負担金制度は維持するべき。
11月 8日 各省へ目標額を割り当て(合計6,300億円)。各省からは最終的に1,178億円の回答。
11月25日 生活保護協議会打ち切り、厚生労働省案は地方の合意を得られず。
11月30日 政府与党協議会、残る6,000億円の補助金改革を決定。合計3兆円の税源移譲達成。
12月     18年度予算案。税源移譲は6,106億円。16~18年度の総額は3兆94億円。
平成18年
1月 地方6団体が「新地方分権構想検討委員会」を発足
   竹中総務大臣の「地方分権21世紀ビジョン懇談会」発足
5月 8日 地方6団体研究会が、「分権型社会のビジョン(中間報告)」を発表
6月 7日 地方六団体が、地方自治法第263条の3第2項の規定に基づき、内閣と国会に対し「地方分権の推進に関する意見書」を提出。地方6団体代表が経済財政諮問会議に出席
7月 7日 「骨太の方針2006」閣議決定
7月 21日 内閣から意見書に対する回答書
より簡単な年表は、三位一体改革の経緯(簡略版)を、
さらに簡単な数字の表は「三位一体改革の目標と実績」を
簡単な解説は「三位一体改革の基本解説」をご覧ください。
地方団体の主張などは三位一体改革推進ネットをご覧ください。
経済財政諮問会議への提出資料は自治財政局のHPに載せてあります。

三位一体改革の目標と実績

                                    (単位:兆円)
補助金改革
税源移譲
交付税改革
平成14
年度
交付税総額0.8減
段階補正・事業費補正
縮小開始

「三位一体改革の方針決定」
(骨太の方針2002)
15年度
 芽だし 0.6

「目標設定 4.0」
(骨太の方針2003)
              0.2
総額1.5減
県分留保財源引き上げ
16年度
           1.0


「地方に案を考えても
らう」
(骨太の方針2004)


「H17・18分地方案3.2」
政府案2.8
             0.5
    
 

「目標設定 3.0」
(骨太の方針2004)

「H17・18分地方案 3.0」
「政府案1.7+α
総額1.2減
臨時財政対策債を含め2.9の減
17年度
1.8
「残る0.6分の地方案1.0」
「政府案1.2」
1.1.
「政府案0.6」
総額は前年並み
臨財債含め1.0の減
計画と決算の乖離是正
18年度
1.8
(H16決定分0.6、
H17決定分1.2)
1.2
(H16決定分0.6、
H17決定分0.6)
総額は1.0減
臨財債含め1.3の減
計画と決算の乖離是正
合 計
           4.7
(15年度分を含まない)
          3.0
(15年度分を含む)
5.1抑制
(16~18年度、
臨時財政対策債を含む)
補助金改革と税源移譲については、順次、数値目標が設定されたが(表中「」で示した)、交付税改革には数値目標は設定されていない。
税源移譲は、平成19年度に所得税から住民税へ移譲され、それまでは所得譲与税、税源移譲予定交付金で一般財源化されていた。
総務省の発表では、平成16~18年度の国庫補助負担金改革総額は、4兆6,661億円(平成15年度分を除く)。税源移譲に結びつく補助金改革額は3兆1,176億円(平成15年度改革分を含む)。税源移譲額は3兆94億円、となっている。