24日に、第3回の地方分権改革推進委員会が開かれました。前回の地方分権推進委員会を担われた西尾勝先生が、「第1次分権改革を回顧して」をお話になりました(議事要旨)。
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地方行財政
地方消費税拡充議論
2007.04.07
中井英雄近畿大学教授が、「地方財政学-公民連携の限界責任」(2007年3月、有斐閣)を出版されました。これまでの地方財政の教科書と違い、財政学でなく、地方財政学固有のテーマを取り上げておられます。
すなわち、足による投票、全国平均の行政水準保障と地域ごとの受益と負担、地方政府組織の選択、福祉給付の引き下げ競争、財政調整などです。それらが、制度解説でなく、経済学の理論、数式と図表で解説されます。その意味で「地方財政解説」や「財政学の地方適用」でなく、本当の地方財政学となっています。
さらに、コミュニティ・NPOなどを「私的プロバイダー」と位置づけ、国・地方団体だけでない地域のサービス提供主体を含めた、地方財政学となっています。副題の「公民連携の限界責任」がそれを示しています。そして、その観点から、イギリス・ドイツ・日本が、類型化されています。すると、地方財政は、世界各地で標準化されるモデルでなく、各地域の社会構造に規定されたものになります。
私は、この点に、とても納得します。経済学・財政学は、ものごとをモデル化・純化し、世界中で適用されると主張します。お金やモノの取引は、そうなのでしょう。しかし、私たちの暮らしを見たら、決してそうではありませんよね。
これまでの教科書を超えた、意欲的な本です。数式の部分はとっつきにくいかもしれませんが。冒頭に、リーディング・ガイドがついていて、全体像が分かるようになっています。ご関心ある方に、お勧めします。
分権改革推進委員会
5日の読売新聞は、丹羽宇一郎分権委員会委員長のインタビューを載せていました。
・・・3年間と時間が限られているが、5月末までに分権改革の基本方針を決める。柱は、「骨太の方針」に入るだろう。
分権とは、住民がゆとりと豊かさを実感できるような地域づくりや、安心して暮らせる社会を、実現するためではなかったか。なぜこれまで、うまくいかなかったかにメスを入れ、実行力ある分権改革を目玉にする。時の利、人の利、地の利がそろった。少子高齢化や経済のグローバル化が進み、戦後の仕組みが制度疲労を起こしている今を逃したら、新しい国のかたちを議論する機会を失う。地方分権は、自己決定、自己責任、自己負担が原則だと思う。首相の指導力は、極めて重要だ。ただ、官僚が動かなければ、改革はできない・・
地方分権改革推進委員会の道筋
4日の日経新聞社説は「首相主導で地方分権実現を」、朝日新聞社説は「丹羽流で役所に切り込め」でした。それぞれ、分権への応援をしてくださり、ありがとうございます。しかし、これらの社説を読んで、今一つパンチがないと感じたのは、私だけでしょうか。第一次分権(前回の諸井分権委員会)と三位一体改革、さらには結果を出せなかった西室分権会議を経験して、この10年間で多くの知識が得られました。それは、次のようなことだと思います。
1 分権は、民間有識者が提言しただけでは進まないこと
有識者会議が提言し、霞ヶ関が同意する内容は、すでに実現しました(昨日の西尾先生の記事)。
2 官僚に任せていては進まないこと
これは、三位一体改革の過程と結論が示しています。地方団体の提言に対し、霞ヶ関は徹底して抵抗しました。小泉総理の指示にも、抵抗しました。
3 分権は行政改革でなく、この国のかたちを変えることであること
中央集権の担い手は、官僚であることが、三位一体改革の過程でよく分かりました。地方団体が「いらない」といった補助金を、各省が「受け取れ」と主張するのですから。これまで日本国の企画部であった官僚が、分権では機能しないだけでなく、抵抗勢力になります。三位一体改革の補助金廃止は、地方団体が提言し進みました。
4 政治主導でないと、総理が主導しないと進まないこと
三位一体改革は、審議会なしで進みました。それは、総理が指示を出し、片山総務大臣・麻生総務大臣が知恵と技を出されたからです。
これらについては、これまで新聞も指摘したことです。私は、「続・進む三位一体改革」に整理しました(うーん、やっぱり単行本にしておけば良かったですね)。これを踏まえると、今回は、分権のうち具体的に何に取り組むのか、それはどのような工程で進めるのかが、重要なのです。残念ながら、これらの社説では、それが見えてこないのです。