カテゴリー別アーカイブ: 地方行財政

地方行財政

地方消費税拡充議論

22日の毎日新聞社説は、「地方消費税拡充 これを機に抜本改正論議を」でした。
菅義偉総務相が、地方消費税の拡充を問題提起した。現在、5%のうち1%分が配分されている消費税の地方取り分の拡充を、6月に策定する「骨太の方針」に盛り込むべきだというのだ。菅総務相はその見返りとして、法人事業税と法人住民税の国税への移管を提案している。
菅提案が経済財政諮問会議の場で取り上げられれば、安倍晋三政権下で封印されてきた消費税率引き上げ問題や税制の抜本改革を巡る論議が、再度動き出すことになる。参院選に向けて国、地方を通じた財政再建や地方分権を進めていく上で避けることのできない税制の抜本改革が隠されたままという、異常な状況に終止符が打たれるということだ・・
詳しくは、原文をお読みください。

2007.04.07

林宏昭先生と橋本恭之先生の「入門地方財政」第2版(中央経済社、2007年3月)が、出版されました。地方財政のわかりやすい教科書です。さらに、財政理論や地方財政の仕組みだけでなく、三位一体改革、道州制、民間活力の利用など、最新の状況も紹介されています。コンパクトでバランスの取れた、最も優れた教科書の一つでしょう。お勧めします。(2007年3月2日)
(地方財政学の理論書)
中井英雄近畿大学教授が、「地方財政学-公民連携の限界責任」(2007年3月、有斐閣)を出版されました。これまでの地方財政の教科書と違い、財政学でなく、地方財政学固有のテーマを取り上げておられます。
すなわち、足による投票、全国平均の行政水準保障と地域ごとの受益と負担、地方政府組織の選択、福祉給付の引き下げ競争、財政調整などです。それらが、制度解説でなく、経済学の理論、数式と図表で解説されます。その意味で「地方財政解説」や「財政学の地方適用」でなく、本当の地方財政学となっています。
さらに、コミュニティ・NPOなどを「私的プロバイダー」と位置づけ、国・地方団体だけでない地域のサービス提供主体を含めた、地方財政学となっています。副題の「公民連携の限界責任」がそれを示しています。そして、その観点から、イギリス・ドイツ・日本が、類型化されています。すると、地方財政は、世界各地で標準化されるモデルでなく、各地域の社会構造に規定されたものになります。
私は、この点に、とても納得します。経済学・財政学は、ものごとをモデル化・純化し、世界中で適用されると主張します。お金やモノの取引は、そうなのでしょう。しかし、私たちの暮らしを見たら、決してそうではありませんよね。
これまでの教科書を超えた、意欲的な本です。数式の部分はとっつきにくいかもしれませんが。冒頭に、リーディング・ガイドがついていて、全体像が分かるようになっています。ご関心ある方に、お勧めします。

分権改革推進委員会

5日の読売新聞は、丹羽宇一郎分権委員会委員長のインタビューを載せていました。
・・・3年間と時間が限られているが、5月末までに分権改革の基本方針を決める。柱は、「骨太の方針」に入るだろう。
分権とは、住民がゆとりと豊かさを実感できるような地域づくりや、安心して暮らせる社会を、実現するためではなかったか。なぜこれまで、うまくいかなかったかにメスを入れ、実行力ある分権改革を目玉にする。時の利、人の利、地の利がそろった。少子高齢化や経済のグローバル化が進み、戦後の仕組みが制度疲労を起こしている今を逃したら、新しい国のかたちを議論する機会を失う。地方分権は、自己決定、自己責任、自己負担が原則だと思う。首相の指導力は、極めて重要だ。ただ、官僚が動かなければ、改革はできない・・

地方分権改革推進委員会の道筋

4日の日経新聞社説は「首相主導で地方分権実現を」、朝日新聞社説は「丹羽流で役所に切り込め」でした。それぞれ、分権への応援をしてくださり、ありがとうございます。しかし、これらの社説を読んで、今一つパンチがないと感じたのは、私だけでしょうか。第一次分権(前回の諸井分権委員会)と三位一体改革、さらには結果を出せなかった西室分権会議を経験して、この10年間で多くの知識が得られました。それは、次のようなことだと思います。
1 分権は、民間有識者が提言しただけでは進まないこと
有識者会議が提言し、霞ヶ関が同意する内容は、すでに実現しました(昨日の西尾先生の記事)。
2 官僚に任せていては進まないこと
これは、三位一体改革の過程と結論が示しています。地方団体の提言に対し、霞ヶ関は徹底して抵抗しました。小泉総理の指示にも、抵抗しました。
3 分権は行政改革でなく、この国のかたちを変えることであること
中央集権の担い手は、官僚であることが、三位一体改革の過程でよく分かりました。地方団体が「いらない」といった補助金を、各省が「受け取れ」と主張するのですから。これまで日本国の企画部であった官僚が、分権では機能しないだけでなく、抵抗勢力になります。三位一体改革の補助金廃止は、地方団体が提言し進みました。
4 政治主導でないと、総理が主導しないと進まないこと
三位一体改革は、審議会なしで進みました。それは、総理が指示を出し、片山総務大臣・麻生総務大臣が知恵と技を出されたからです。
これらについては、これまで新聞も指摘したことです。私は、「続・進む三位一体改革」に整理しました(うーん、やっぱり単行本にしておけば良かったですね)。これを踏まえると、今回は、分権のうち具体的に何に取り組むのか、それはどのような工程で進めるのかが、重要なのです。残念ながら、これらの社説では、それが見えてこないのです。