22日の読売新聞社説は、「地方分権要綱、権限移譲の監視が重要だ」です。・・地方分権改革に対する霞が関の抵抗の強さが、改めて浮かび上がった。政府が、地方分権改革の第1次推進要綱を決定した。5月末の地方分権改革推進委員会の第1次勧告と比べると、農地、道路、河川などの分野で、国から都道府県への権限移譲の表現が、いずれも後退した。
・・「ごね得」が許されるようでは、他の分野にも影響が出かねない。分権委が、政府の「検討」作業をきちんと監視し、随時、必要な注文をつけていくことが重要だ。要綱作成の過程では、福田首相の存在が、ほとんど見えなかった。勧告後、町村官房長官、増田総務相、若林農相による閣僚折衝は開かれたが、首相が調整に乗り出す場面はなかった。福田首相は4月に、「政治家としての判断をして分権改革に取り組んでほしい」と全閣僚に指示した。首相自身が今回、「政治家としての判断」を示し、指導力を発揮すべきだったのではないか・・
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分権政府方針・新聞社の評価
日経新聞21日の社説は、「分権改革の後退は許されない」でした。・・政府は20日、地方分権に関する要綱を決定した。地方分権改革推進委員会がまとめた第1次勧告よりも後退した内容だ。これでは福田康夫首相の意欲を疑わざるを得ない。我々は政府が勧告を全面的に実施するように求めてきたが、残念な結果である。地方分権は中央省庁から権限を奪う改革である。役人任せにすれば内容が玉虫色になるのはいわば当然だろう。自民党内でも族議員が改革に反発している。若林正俊農相のように福田内閣の一員にもかかわらず公然と異を唱える閣僚すらいる。だからこそ、福田首相の指導力がなければ前に進まない。これでは先行きが不安だ。今回先送りしたり、あいまいな表現にとどまった項目については、首相がその実現を改めて指示すべきだろう・・
別の記事では、「国道・河川管理、国と途方協議へ」を書いています。・・政府が地方分権改革推進要綱を20日決定したのを受け、権限移譲の具体策を詰める議論が本格化する。地方への権限移譲が小幅にとどまれば、国の出先機関の廃止や財源移譲をめぐる論議は勢いを失う・・
さらに別の記事では、中西晴史編集委員が「実態は先送り・時間稼ぎ」を書いておられます。・・政府の分権改革推進本部がまとめた推進要綱は「08年度中に結論を得る」「08年度中をめどに制度改正の方向を得る」「計画の策定までに結論を得る」のオンパレードだ。「分権先送り・時間稼ぎ」要綱とタイトルを変えた方がよい。・・全体として分権への熱意は感じられない。中央省庁の劣化が指摘されるほどに、権限死守の姿勢を強め、抵抗の岩盤を一段と硬くする。国道や河川の都道府県への権限移譲に一歩踏み出したかに見えるが、具体策はいずれも関係自治体と「調整を行った上で」とある。関係自治体との個別折衝に持ち込めば、「勝算あり」という自信さえ感じさせる・・
毎日新聞社説は「地方分権要綱、国の出先機関にメスを入れよ」でした。・・やはり先が思いやられる。政府は20日、国から地方への権限移譲の基本方針となる地方分権改革推進要綱を決定した。「地方分権改革推進委員会」が先月まとめた1次勧告を受けたものだが、焦点の農地転用許可に関する表現が後退するなど、完全実施から遠い内容となった。今後、分権委は国の出先機関の地方への移譲や統廃合という「本丸」の議論を本格化する。組織そのものの削減だけに中央官庁はさらに露骨に抵抗しよう。官製談合事件の舞台となった北海道開発局の解体的見直しも含め、ひるまず作業を進めねばならない。各省の抵抗で踏み込み不足の内容だった1次勧告だが、自民党族議員の反発に遭い、要綱はさらにトーンダウンした。首相が仮に消費税増税を探るのであれば、政府自ら身を削る姿勢を示すことは当然の前提だ。国の出先にメスを入れることは、避けて通れぬ関門である・・
朝日新聞は、「分権、霞ヶ関の壁。政府要綱、第1次勧告から後退」を大きく解説していました。・・内容は、省庁に丸められた。「分権は内閣の最重要課題」と首相は繰り返すが、省庁主導のままでは、このさきの国の出先機関の統廃合や税財源問題でも、多くの成果は望めない。分権がピンチだ。
「農地転用・国の許可権限死守」分権委の第1次勧告の一つの目玉は、農地転用問題だった。分権の歴史上、初めて担当省庁の合意を得ず、自治体への権限移譲を勧告したからだ。それが政府要綱では「移譲」の文字が消えた・・
「国道管理・出先機関守る思惑も」国交省は分権委との協議で、国道の15%相当、ひとつの県内で完結する1級河川(全国で53本)の約4割は都道府県に権限を移す方針を提示。これまでの全面拒否を初めて転換させた。道路財源の無駄遣いで世論の批判を浴び、分権論議でも守勢に立たされた結果といえた。だが、分権委側が求めてきた「国道の維持管理事務の一括移譲」を拒み、個別の路線ごとに移譲する手法にこだわった。これは、第2次勧告で全国の地方整備局(約2万1千人)の国道管理部門を丸ごと削減されるのを未然に防ぐ布石にも見える。
それぞれ部分的にしか引用できませんので、原文をお読みください。
政府の方針決定
20日に、政府の地方分権改革推進本部が開かれ、「地方分権改革推進要綱(第1次)」が決定されました。各紙が夕刊で伝えています。例えば、日経新聞は次のように書いています。・・同勧告は農地転用の許可権限や国道管理などの地方への移譲を求めたが、要綱は具体論には踏み込まなかった。最終的な分権計画策定へ向け、政府内の調整が難航するのは必至だ・・。
また、丹羽宇一郎地方分権改革推進委員会委員長がコメントを出しておられます。・・特に、第一次地方分権改革の時には進まなかった直轄公共事業の地方への移管や、市町村への権限移譲について要綱に明記されたことは、評価したい。・・また、今後「検討を行う」事項については、要綱にあるとおり、是非とも勧告の内容を踏まえた結論となるよう、各閣僚の御尽力をお願いしたい。委員会では、今後も審議を進め、8月初めにも国の出先機関の見直しについて中間報告を行い、年内には、法制的な仕組みの見直しなども含めて第2次勧告を行う予定である。
2008.06.19
19日の朝日新聞社説は、「地方分権要綱、首相の踏ん張りどころだ」でした。
・・地方分権改革への各省庁の抵抗が、自民党の族議員を巻き込んで激しくなっている。 丹羽氏の分権委と省庁側の意見が対立していた項目を見ると、原案は軒並み勧告から後退している。これに大きな役割を果たしたのが、本来は分権推進のために設けられたはずの自民党地方分権改革推進特命委員会である。
・・こうした議員の主張は、分権委での官僚の言い分と全く同じである。官僚と族議員が結託して権限を守ろうとしている構図が明らかだった。住民から遠い霞が関の役所が、縦割りのまま全国一律の政策を行っているのが現状だ。それよりも自治体に権限と財源を持たせた方が、地域の実情にあった行政を効率的に進められる。 弊害が現実のものになれば、知事や市長らは選挙で責任を問われるし、住民監査請求の制度もある。霞が関や出先機関の官僚と違い、住民が直接「ノー」を突きつけることができる。 首相にやる気があるのなら、霞が関が出してきた原案を突き返し、勧告通りの表現に直すべきだ。それが政権の改革への意志を示すことになる・・
2008.06.19
産経新聞は、18日から連載「分権の壁、第2部中央の抵抗」を始めました。第1回目は、「農水相、手放さぬ権限」でした。・・地方への影響力を温存するため、既得権限を手放したがらない農水省は組織を挙げて”抵抗”を強めていた・・(6月18日)
産経新聞連載「分権の壁、第2部中央の抵抗」、19日は、「消えぬ国管理神話」でした。・・丹羽(分権改革委員長)は、「役人たちは他の世界から完全に隔離された異星人」と舌鋒鋭く官僚批判を繰り広げている。・・丹羽は16日の講演で、「1次勧告は岩盤の厚い入り口に手を突っ込んでドアを開けた。これで終わりなんてとんでもない」と語った。