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地方行財政-地方行政

西尾勝先生の時代の証言者

読売新聞連載「時代の証言者」は、9月11日から、西尾勝先生の「地方分権の夢」が始まりました。先生が参画された分権改革が、どのように進み、どこが進まなかったかは、この連載をお読みいただきましょう。
元自治省の役人としては、いろいろと思い返すことがあります。このホームページでも、分権改革三位一体改革を「同時中継」しました。三位一体改革については、いくつか文章を書きました。また、雑誌に連載もしました「進む三位一体改革」「続・進む三位一体改革」。一冊の本にしておかないと、残りませんね。反省。
西尾勝先生から、「必要があって、岡本君が書いた『進む三位一体改革』を読んだけど、やたらと長かったね」とのおしかりをいただいたことも、懐かしい思い出です(2007年6月1日の記事)。
社会を動かす、改革を進めるには、アイデア、担ぐ人(研究者、官僚、マスコミ、政治家)、そして世論の後押しや時代背景など、さまざまな要素と人が必要だと学びました。社会改革や行政改革を、一つのプロジェクト(企画)として組み立てる(見る)ことも、学びました。官僚は、その「職人」であるべきです。
全てが実現したわけではありませんが、戦後半世紀動かなかった分権改革が進んだことは、すばらしいことだと思います。残念ながら、その後、大きな動きは止まってしまったようです。もう一度動かすには、さまざまな仕掛けと、大きなエネルギーが必要でしょう。

地方議会のあり方

朝日新聞8月5日のオピニオン欄は、「地方議会はいらない?」でした。砂原庸介大阪大学准教授の、「政党主体の選挙制度を」では、先日紹介した砂原准教授の主張が簡潔に語られていました。聞き手は曽我豪編集委員(前政治部長)です。
・・衆院の小選挙区制は候補者中最多の支持がないと勝てない。だから政党は自身のブランド維持に必死になる。ところが都議会の多くが中選挙区制で、あえていえば有権者全体の数%の票で当選できてしまう。これでは守るべきブランドも、権力を失うといった緊張感もない。
主権者である有権者からすれば、選挙で議員や政党をコントロールできない。地方議会の問題は何より選挙制度の欠陥にあり、国政と地方政治で性格の異なる制度が併存していることにあります・・
詳しくは原文をお読みください。
私は、地方議会のありようを論じる際には、次のような切り口が必要だと思います。
・どのような目的で、設置されているか。何が、期待されているか。
・その目的のために、必要な選ばれ方がされているか。
・その目的に沿った運用がされているか。
・どのような成果を、発揮しているか。
・かかっているコストは、それに見合うものか。
・代案はあるか。

地方議会の改革

7月29日の日経新聞経済教室「問われる政策決定」は、砂原庸介・大阪大学准教授の、「地方議会政党軸に再生を。決定責任 所在明確に。国政の基盤安定の効果も」でした。
1990年代の衆議院の選挙制度改革は、中選挙区制のもとでは、政党ではなく候補者個人間の競争が激しくなるので、政党間の政策競争を促すために、小選挙区制に変更したものです。そのことを踏まえた上で、次のように書き出します。
・・他方、地方議会では「どのように民意を吸収するか」という問題意識から選挙制度が検討されたことはない。そこでは、依然として個人間の競争が中心で、この競争のあり方が地方政治だけでなく、国政での有権者の選択に弊害をもたらしていると考えられる・・
ポイントは次の通り。
・地方議会は政党内競争が激しく、候補者が乱立する
・選挙制度を改革し、政党の存在感を高めよ
・それが、国政での安易な離合集散を防ぐことにもなる
原文をお読みください。

大阪の課題とは

今日の放課後は、旧知の関西の方との意見交換会。最近の情勢をお互いの視点から分析した後、関西の課題、10年後の大阪について議論しました。
私は、拙著『新地方自治入門』で、自治体が取り組まなければならない課題を、「役所内の課題」と「地域の課題」に分けて議論しました。行革や分権、役所の効率化は、市役所としては重要な課題です。しかし、住民からすると、暮らしが良くなって「なんぼ」です。自治体の効率化は、その手法なのです。
住民の安心など地域の課題はたくさんありますが、東京から見ると、関西・大阪の課題の第一は、「地盤沈下」をどうするかでしょう。関西復権は、経済界の復権です。東京都知事はそんなことは考えなくても良いのですが、大阪市長と府知事の一番の仕事は、10年後の関西経済の復権です。そしてそれは、役所だけではできません。どのように、経済界、マスコミ、住民を巻き込むかです。そして、4年や5年では出来ません。

分権改革の総括、その2

・・要するに、国の側も自治体の側も、急速に、所掌事務拡張路線に属する改革へと舵を切り始めているのである。地方分権改革が混迷し始めた最大の原因はこの点にある。
所掌事務拡張路線に属する改革は、国と自治体の間の意見対立、都道府県と市区町村の間の意見対立が先鋭化せざるを得ない改革である。それだけに、この路線に属する改革を進める際には、殊更に慎重かつ綿密な検討が求められる。にもかかわらず、戦前から繰り返し浮上しては消える特別市構想や都制構想、そして道州制構想は、いつまでたっても素朴な着想の域を出ない。これを実現すれば、あらゆる懸案事項を一挙に解決できるといった万能薬のような制度改革構想など存在しないのである・・
・・現在の第二次安倍内閣には、震災復興の促進、エネルギー政策の再構築、「アベノミックス」の推進、TPP交渉等々、きわめて多くの大きな課題への対応が課せられているので、これらに加えてさらに、地方分権改革に大きなエネルギーを割く余裕があるとは思えないので、地方分権改革については、当面は従前から継続している課題に着実に取り組むこととし、道州制基本法の制定は先送りすべきである・・

なぜ、あの時期に第一次分権改革が成功し、三位一体改革が挫折と言われながらも一定の税源移譲を実現したか。関係者の主張や陳情だけでは物事は動かず、時代の背景、政治の状況、関係者の努力、理論的裏付け、マスコミの支援などが重要であることが改めてわかります。
その点で、同じ会議で、谷隆徳・日経新聞編集委員が、「メディアは地方分権に飽いてきている?」と指摘しておられます。
なお、月刊『地方財務』(2013年11月号)で、小西砂千夫・関西学院大学教授が、「地方分権改革はどのように進んで来たか、どこへ行くべきなのか」と題して、西尾先生の資料を解説しておられます。