カテゴリーアーカイブ:人生の達人

その場しのぎの繰り返し

2023年6月11日   岡本全勝

5月27日の朝日新聞オピニオン欄、大月規義・編集委員の「続く「その場しのぎ」回るツケ」から。

・・・汚染水と、放射性物質をおおむね抜き取った処理水は、地上タンクにため続けた。13年にはタンクからの水漏れが問題になる。それでも安倍晋三首相(当時)は、汚染水の状況を「アンダーコントロール」と世界に発信した。地元は現実との違いに落胆した。
そんな国と東電が、建屋に入る前の地下水を海に流すために漁業者の説得に使ったのが、処理水は「関係者の理解なしには処分しない」という15年の約束だ。実際は、タンクが敷地に満杯になるまでには「理解」が進むだろうという楽観に過ぎなかった。
3年後には処理水に、取り除かれているはずのストロンチウムなどが基準を超えて含まれていることが発覚。東電は情報をホームページには載せていたと釈明したが、処理問題を話し合う国の会議では説明を省いていた。信頼や理解が地元に根付かないのは、こうした経緯があるためだ。

当座をしのぐ対応は、他にもある。福島県内の除染で出た汚染土を、国は原発近くの双葉、大熊両町の中間貯蔵施設にためている。当初は最終処分場にするはずだったが、「中間貯蔵」と言い換え、「30年後に県外に運び出す」と約束し2町を説得した。その後、除染土の県外搬出は法律に明記されたが、見通しは全く立たない。
国は各地で原発の再稼働や新増設を進めようとしている。だが、増え続ける高レベル放射性廃棄物の処理など、深刻な問題から目をそらし続けた。そのツケが必ずどこかに回ってくることは、福島の現実が示している・・・

リーダーは組織ができない決断をする

2023年6月6日   岡本全勝

5月25日の日経新聞夕刊「私のリーダー論」は、星野佳路・星野リゾート代表の「組織ができない決断を」でした。

――コロナ危機からいち早く回復し、攻めに転じています。不安が大きい中、組織をどう動かしましたか。
「組織が決断できないことを決断するのがリーダーの仕事です。組織が決められないこととは、優先順位の変更です。コロナで生き残るために、基本の三大方針として順に『現金をつかみ、はなさない』『人材を維持し復活に備える』『CS(顧客満足)・ブランド戦略の優先順位を下げる』とみんなに伝えました」

「無駄遣いをしてきたわけではないのでコストを削減しましょうといってもできません。ところがトップがCSの優先順位を下げると決めた途端『ここも、あそこも削れる』とアイデアが出てきました。みんながアイデアを出してくれたからGo To キャンペーンが始まる2020年夏まで持ちこたえられました」

「優れたリーダーは、いわゆる『優秀な人』というより、チームをうまくまとめ、フラットな組織でスタッフの力をフレキシブルに活用できる人だと思います」

人事評価の公平性と透明性

2023年6月4日   岡本全勝

5月22日の日経新聞女性欄「昇進 周囲が納得の評価に 女性が活躍する会社資生堂1位」から。

・・・厚生労働省の21年度調査によると、企業における課長以上の女性管理職比率は12.3%。資生堂の37.6%(23年1月時点)は平均値を大幅に上回る。管理職となる女性本人の意識付けに加えて、同じ職場で働く周囲の社員への納得感を高める働きかけがカギのようだ。

23年1月、資生堂では30歳の女性管理職が誕生した。男性の管理職が多い部署での若手女性の抜てき。周りの社員はどう見るのか。上司にあたるストラテジープランニング室の大島洋視室長は「彼女の能力や成果が正当に評価された結果だ」と話す。
女性活躍は、女性だけの問題ではない。女性管理職を増やす際には同じ職場で働く社員たちの納得感が伴わなければ「数合わせ」「お飾り」などの評判が立ち、社員の士気も下がりかねない。

社員の納得感をつくるために肝となるのは人事評価の公平性と透明性だ。資生堂は16年から年に数回の「カリブレーション(基準合わせ)会議」を実施する。部内の管理職が15人ほど集まり、部下の評価と育成計画をすり合わせる。部下1人につき5分ほどの時間をかけて複数人で話し合うことで、個人の感情や人間関係といった属人的な要素が評価に入り込む余地を与えない。会議後には部下に直接フィードバックもする。
さらに、周囲の社員が肌感覚でも昇進に納得感を持てる仕組みも取り入れる。管理職候補には管理職試験と並行して、昇進後の業務負荷がかかる仕事を一定期間任せる。部署横断型のプロジェクトリーダーを務めるなど、難易度の高い仕事をこなす姿を周囲の社員にも見せる・・・

多くの組織で、管理職は部下を評価する訓練を受けていません。評価基準はあるのですが、具体に当てはめるとなると、難しいです。そして、ある人を、その上司一人で評価することが多いです。資生堂の複数人で議論すること、それを部下に直接伝えることは、よい方法です。

職場の害虫とカビ

2023年5月29日   岡本全勝

原発再稼働、組織風土を問題視」の続きにもなります。
職場の困りごとを議論していたときに、「害虫とカビ」という表現を教えてもらいました。指導者論や管理職の教科書には、部下を優秀に育てることは書かれているのですが、困った職員をどう扱うかについては記述が少ないです。でも、多くの上司は、それに困っています。研修でもあまり教えてもらえません。

で、「害虫とカビ」についてです。「2:6:2」の法則(仕事のできる職員、普通の職員、困った職員)は、『明るい公務員講座 管理職のオキテ』にも書きました。その困る職員と、困った職場についてです。
その中でも職場に悪影響を与える職員は、いわば害虫です。少々どぎつい表現ですが。害を与えないように指導する必要があり、場合によっては、「取り除く」必要があります。懲戒処分の対象です。

それに対し、特定の職員が悪いのではなく、職場の習慣が好ましくない場合があります。規律が緩んでいたり、規律違反が伝統になっているような職場です。職務怠慢、パワハラ・セクハラ、性能偽装、風通しのよくない関係・・・のような社風です。それを「職場にカビが生えている」と表現するのです。
「風通しがよい職場」とは、良く言ったものです。風通しのよい職場には、カビは生えません。
もっとよい表現があれば、教えてください。

在宅勤務の長所短所

2023年5月29日   岡本全勝

5月18日の朝日新聞オピニオン欄「在宅勤務、これからは」から。
鬼頭久美子さん(サイボウズ チームワーク総研コンサルタント)の「孤立感なくす多様な場を」
・・・サイボウズは10年以上前からテレワークを採り入れています。3年間のコロナ期間を経て、現在の出社率は15%程度になっています・・・
・・・職場の一体感を得る点では、やはりオンラインはリアルに勝てないなと感じています。オフィスという同じ空間にいると、「忙しそう」「ゆったりしてる」とか、共感してくれているのを感じるとか、同僚の様子や気持ちが伝わってくることがある。仕事を進める上で、相手の状況を理解しながら接することはとても大切です。
コロナ禍で在宅勤務が続く中、社内では業務直結のやりとりしかないことで、「寂しい」「承認されている感覚がない」といった声が聞かれました。これでは仕事のやる気にも悪影響が出かねません。
一方で、仕事上の議論をある程度深めたり、アイデアを出したりすることは、オンラインでも十分にできると感じています。私は企業向けにテレワークのお手伝いをする業務を担当していますが、テレワークの利点は、働く場所を柔軟に選べること。通勤や打ち合わせ場所への移動に時間を取られず、効率的です・・・

落合恵美子さん(京都産業大学客員教授)の「柔軟性が幸福度を変える」
・・・「ステイホーム」が呼びかけられ、学校も一斉休校となった2020年4月、「自分もしくは同居家族が新型コロナの影響により在宅勤務を経験した人」を対象に緊急のウェブ調査を行いました。
当時、学齢期の子がいる知人女性はみんな仕事と家事育児の両立に悲鳴を上げていたのに、政治家もメディアもそれがあまり見えていないようでした。公的な言論の場で、この状況が語られていないのはたいへんな見落としではないかと考えたのです。
在宅勤務で家事と育児の負担が増えた、とより多く調査に答えたのは、やはり子どもを持つ女性でした。「子どものいる女性」の36%が家事育児に「困った」と回答したのに対し、「子どものいる男性」では15%に過ぎなかった。自由回答によると、多くの女性が睡眠を削って仕事をこなしていました。
共働き家庭では、同じ在宅勤務なのに夫の仕事が優先されていた。仕事の邪魔なので外出してと妻子に頼んだ、という男性すらいました。日本の住宅事情も影響しているのでしょうが、海外でも在宅勤務は妻の負担を高めたという調査結果が出ています。

女性は不安定な雇用形態であることが多い上に、家族の感染でケアをする役割も回ってくる。コロナで一番割を食ったのは、在宅勤務ができない上に有給休暇も取れずに収入が途絶え、なかなか復帰もできなかった非正規雇用の女性たちでしょう・・・