カテゴリーアーカイブ:人生の達人

看板と学歴にこだわる

2023年5月21日   岡本全勝

川北英隆・京都大学名誉教授のブログは、しばしば鋭いことが書かれていて、勉強しています。先生の趣味の山歩きも楽しみです。5月19日は「上場企業のメリットとは」でした。

・・・上場にこだわる企業があるそうだ。不思議だ。上場にこだわる企業はむしろダメ企業である。その典型例が東芝だった。それはともあれ、学生に人気のある職業は何か。上場しているかどうかではなく、自分自身の能力や夢に近いかどうかではないのか・・・
・・・そんな中、東京証券取引所の上場市場の再編時(プライムとスタンダードの区分時)に、「東証第一部に上場していると優秀な学生が集ってくる」と発言した企業経営者がいたらしい。本末転倒である。学生を馬鹿にしている。
非上場のサントリー、竹中工務店、YKKなどに失礼ではないか。もっというと、農業や漁業に従事する者にも失礼である・・・

でも、一番紹介したいのは、次のくだりです。
・・・アメリカの大学で学んだ友人が言うには、何々大学卒業とか、学士か修士か博士かという学位は、アメリカでは数年は保つけれど、その後は何の意味もないと。むしろ「昔は勉強したのやろけど、その割に今は怠け、アホになったやん」と、落差に感心されるだけだとか・・・

ジョブ型が迫る管理職改革

2023年5月16日   岡本全勝

平等社会の負の機能3」の続きにもなります。5月3日の日経新聞オピニオン欄、半沢二喜・論説委員の「ジョブ型が迫る管理職改革」から。

・・・「管理職はつらい」という声を以前にも増して聞くようになった。働き方改革などへの対応で仕事は増え、パワハラを恐れて若手との接し方も難しくなっているという。ストレスを抱え、悩む管理職は少なくない。
リクルートマネジメントソリューションズが2022年6月に実施した調査では、組織の課題として「ミドルマネジメント層の負担が過重になっている」と答えた人が、管理職と人事担当者の双方で約6割にのぼった。背景には役割が曖昧な日本独特の管理職像がある。
産業能率大学総合研究所が21年に行った上場企業の部長・課長へのアンケートによると、9割超が営業などの実務をこなしながら労務管理も手がける「プレーイングマネジャー」だった。部下の育成が主体の欧米企業とは異なる。

「管理職に求められる能力は高度化しているが、実際は能力のない上司が増えている」。人事経済学が専門の早稲田大学の大湾秀雄教授は指摘する。「日本企業は給料よりも昇進を主なインセンティブにしてきたからだ」という。
平社員として活躍し貢献した人には管理職への昇進で報いる。プレーヤーと管理職では、必要な能力や役割が大きく異なるにもかかわらずだ。長期雇用を前提にしたこの仕組みは、かつては働き手のモチベーションを維持するうえで効果はあったが、必然的に多くのプレーイングマネジャーを生むことにもなった。

管理職の能力を見極め、負担を軽減するためにも、役割を再定義する必要がある。ジョブ型人事制度の導入はそのきっかけになる。職務ごとに必要なスキルを明確に定め、働き手にキャリアを自律的に考えてもらうのがジョブ型の狙いの一つだ。上司は今まで以上に部下の育成に力を注ぐ必要に迫られる。
「部下のキャリアの導き方やモチベーションの上げ方が分からない」「時間・権限・リソースが不足している」。ジョブ型人事を導入した日立製作所が管理職にアンケート調査したところ、こんな声が上位に並んだ。「自分たちはそういう育て方をされておらず、かなり悩みはある。管理職への支援が重要になる」と田中憲一執行役常務は話す・・・

日本の平等志向は、管理職教育をしてきませんでした。

必要な新しい技能

2023年5月14日   岡本全勝

5月2日の朝日新聞オピニオン欄「リスキリングの圧」、小島慶子さんの発言「自ら家事するスキルが先」から。

・・・私は、いま日本社会に「家事を自分でする」というスキルが欠けていると思っています。家事ができなければ衛生を保てず、おなかもすきます。それでは元気に働けません。家事や育児を私的な雑用とみなし、仕事よりも価値が低いとする考え方が今も根強い。特に男性は、母親や妻がやってくれるものと思いがちです。この発想を捨てなければ日本は変わりません。
加えて、「他者のケアをする」というスキルも大切です。ケアには自身の育児や身内の介護だけでなく、病気や障害のある人と共に働く、子育て世帯を社会で支えるなど、様々な形があります。人には支えが必要で、そのための仕組みが必要だという合意形成が重要です・・・

話し方のコツ

2023年5月10日   岡本全勝

NHKウエッブニュースに「心をつかむ話し方」が載っています。「(1)伝えたいことがうまく相手に届かない…こんな時はどうしたらいいですか?」「(2)私の話って長すぎる?限られた時間で「自分を伝える」コツ
これは、就職活動中の学生向けの記事ですが、社会人にも役に立ちます。

人前で、あるいは人に向かって話すことは、難しいことです。自分ではうまくしゃべっているつもりなのに、相手に通じていなかったり。自分の話し方の欠点は気がつきませんが、相手の話し方の欠点はよくわかるものです。
学校で本を声に出して読むことは学びましたが、自分の意見を言うこと、相手の話を聞くことは、十分に訓練を受けていません。上達する方法は、場数を踏むことです。引っ込み思案にならず、話してみましょう。

内を掘る、外から見る

2023年5月6日   岡本全勝

したこととしなかったこと」の続きにもなります。
あることを研究する際に、そのものを深く調べることと、そのものがおかれている環境で見ることの、二つの視角があります。ある商品が売れないときに、その物のどこが悪いのかを調べるのが、前者。競争相手の商品や消費者がどのように評価しているかを調べるのが、後者です。太平洋戦争の敗因を調べる際に、日本陸海軍の組織内の長所と欠点を調べるのが前者。アメリカ軍との比較や戦い方を調べるのが、後者です。

失敗を調べる際には、内を深く調べても限界があり、外との関係を見ざるを得ません。ところが、うまくいっているときは後者を忘れて、「我々が優秀だからだ」と自己満足に陥る恐れがあります。
日本が戦後、驚異の経済成長を遂げたときに、日本人論や日本経営論が流行りました。「日本は優秀だ」と自尊心をくすぐられました。それが間違っていたこと、あるいは一面でしかなかったことは、平成の停滞が証明しました。もちろん、日本には優れた点もあるのですが、「優秀」だけで成功したのではありません。
鎖国状態ではないので、国際環境の中で分析しないと不十分です。当時の日本の一人勝ちは、先進国を追いかける優位さと、後発国が追いかけてこないという条件があったからです。

管理職の仕事の仕方も、同じです。組織内ばかり深掘りしていても、社会の期待には応えることはできません。置かれた立場と、期待されている役割を認識して、それに応えることができる組織を作る必要があります。
この点を、管理職研修では「深掘りと周囲確認」として説明しています。