カテゴリーアーカイブ:人生の達人

私の履歴書の限界

2024年3月4日   岡本全勝

日経新聞朝刊の最後のページに、連載「私の履歴書」があります。毎月、お一人の人生を取り上げています。経済界だけでなく、文化・芸術・スポーツ関係の方、政治家、官僚もあります。
先達がどのようにして生きてきたか、仕事をしてきたかの教科書として、若いときから読んでいます。

若いときは、登場される方すべてが、勉強になりました。私の知らない世界ばかりでしたから。その後に経験を積んだことで、より客観的に読むことができるようになりました。時に感じるのは、「そんな、うまくいったことばかりだったのですか」という疑問です。
自叙伝ですから、都合の悪いことは書かないのでしょうね。忘れているのか、覚えていても書かないのか。私もこのホームページに、笑い話ですむことは書きますが、不都合なこと(特にほかの人に迷惑がかかるような話)は書きませんから同じです。

その人の評価は、本人ではなく、別の人が行うことなのでしょう。聞き書き(オーラルヒストリー)もありますが、都合の悪いことは質問しにくいし、本人も話さないでしょう。これも限界があります。
本人が話さない「都合の悪いこと」のほかに、その人が周囲からどのような評価を受けていたかも、本人はわかりません。特に悪い評判です。
そして、本人が社会や組織でどのような役割を果たしたのか、果たさなかったのかもです。
この項続く。

仕事をしない大企業幹部

2024年3月2日   岡本全勝

半導体大手エルピーダメモリの社長を務めた坂本幸雄さんが亡くなられました。2月28日の日経新聞、西條都夫・編集委員の「坂本幸雄氏死去 世界標準の半導体プロ」に、次のようなことが書かれています。

・・・「知る人ぞ知る存在」から、一躍脚光が当たったのが2002年に経営危機にひんしたエルピーダメモリに再建の切り札として招かれ、社長に就任した時だ。同社はもともとNECと日立製作所のDRAM事業が統合して発足。その後、三菱電機の同事業が加わり、寄り合い所帯感が強かったが、坂本氏の剛腕で組織に心棒が通った。

「大企業出身の幹部は何がダメといって、まず仕事をしない。朝来るとお茶を飲みながら同僚と雑談したり、新聞を読んだりする。外資系の長い私にとって、日本企業にはこういう手合いが一定数いて、しかも組織のなかで比較的大きい顔をしていることが新鮮だった」と後々振り返った・・・

皆さんの職場にも、こんな上司がいませんか。

管理職が管理職の仕事をしない

2024年2月28日   岡本全勝

職場の悩みは人間関係」の続きです。豊田自動織機の調査報告書では、次のようなことも指摘されています。豊田自動織機「調査報告書(公表版)」2024年1月29日

・・・当委員会のヒアリングにおいて、これらの管理職は、「設計グループ出身であり、適合業務の経験がなかったため、適合業務に詳しい適合グループの担当者らや高浜工場の担当者を信頼し、劣化耐久試験に関する業務を一任していた。」、「船舶用エンジンの出身なので、フォークリフト用エンジンのことは分からない。」、「適合業務に関する知識や経験がなかったため、適合業務の担当者に対して、日程に関するコメントや設計者の視点からのコメントはしていたものの、基本的には担当者に劣化耐久試験を含む適合業務を一任していた。」等と述べ、自身が経験してこなかった業務やエンジンについては、知見・経験がないため、管理職としてのチェック機能を果たせていなかったと述べている。
しかし、管理職のこれらの発言は、管理職としての責任を全く自覚していなかったことを自認するに等しいものである。
管理職が自らの所掌する業務を全て担当者として経験することは、むしろ稀である。その上で、管理職としては、所掌する業務の基本的な知識や管理上の要諦を身につけ、部下からの報告の内容に耳を傾け、問いを発するなどして問題の有無の発見に努め、適正な業務執行がなされるよう管理する必要がある・・・(169ページ)

「管理職のこれらの発言は、管理職としての責任を全く自覚していなかったことを自認するに等しいものである」という指摘は、厳しいですね。しかし、指摘の通りでしょう。
「管理職が自らの所掌する業務を全て担当者として経験することは、むしろ稀である。その上で、管理職としては、所掌する業務の基本的な知識や管理上の要諦を身につけ、部下からの報告の内容に耳を傾け、問いを発するなどして問題の有無の発見に努め、適正な業務執行がなされるよう管理する必要がある」とは、当然のことです。
これまでは「部下に任せる上司」が、よい上司と考えられてきました。しかし、それでは、いてもいなくても一緒です。

職場の悩みは人間関係

2024年2月22日   岡本全勝

日本を代表する企業であるダイハツ工業と豊田自動織機が、トヨタ自動車向けの車種やエンジンで不正を行っていました。豊田自動織機の調査報告書では、次のようなことが指摘されています。豊田自動織機「調査報告書(公表版)」2024年1月29日

・・・当委員会がヒアリングしたエンジン事業部の従業員の中には、「開発スケジュールが厳しいことを上司に伝えても、上司が L&F に対しスケジュールの見直しを申し出ることはなく、むしろ、決められたスケジュールに間に合わせるよう指導を受けるのみであったため、スケジュールが厳しくても、上司に相談することはしないようになった。」などと述べる者もいた・・・(164ページ)

ここから読むことができるのは、不正が起きた、そしてそれが是正されなかった原因は、人間関係だということです。
部下は悩んでいる、しかし上司に言っても無駄だとあきらめている。上司は部下の悩みを聞くどころか、その原因になっているのです。
拙著『明るい公務員講座』で、職員の悩みは人間関係だと説明しました。仕事に悩んでいるのではなく、人間関係に悩んでいるのです。
管理職が管理職の仕事をしない」に続く。

自分で市場価値を高める社員

2024年2月22日   岡本全勝

2月5日から、日経新聞2面に「ワクワク働いていますか」という連載が載っていました。6日の第2回は「働くZ世代「頼れるのは自分」 市場価値向上に貪欲」でした。

・・・都内のシステム開発会社に勤めるエンジニアの日高僚太(24)は午後7時半に仕事を終えた後、再びパソコンに向き合う。ここからは副業の時間。クラウドを使って働きたいエンジニアのメンターとして、IT(情報技術)スキルを教えている・・・本業ではプロジェクト責任者として働く。
「社内外で多くのことを吸収し、成長するのが喜び」と日高。目まぐるしく必要な技能や知識が変わるITの世界で「頼れるのは自分」とも強調する・・・

・・・若者は仕事で何に成長を感じるのか。取材班が働くZ世代(1990年代半ば〜2010年代初頭生まれ)50人に聞くと、「知識や経験値が増えること」と「結果を残すこと」との回答がそれぞれ約3割にのぼった。
Z世代は多感な時期にリーマン・ショックや東日本大震災を経験した。最近は新型コロナウイルス禍が起き、経済や社会の不安定さを目の当たりにした。芽生えたのは組織に身をすべて委ねることへの不安。目に見える実績や数字を追い求め、自分の市場価値の向上に貪欲だ・・・

・・・機能性衣料品を手がけるスタートアップ、TENTIAL(テンシャル、東京・中央)で働く石川朝貴(28)は中国の消費者に熱心に問いかける。石川は同社の海外展開の責任者。現地の消費者のニーズを聞き取る市場調査に奔走する。「自分にしか出せない結果を残したい」と目を輝かせる。
販売職で入った前職の大手メディアは残業がないなど職場は「ホワイト」だった。うんざりしたのは何をするにしても色々な上司の承認が必要な「はんこリレー」。仕事のスピード感が遅く3カ月で退職した・・・

・・・今の若者は成長に「タイムパフォーマンス」(時間効率)も求める。
転職サービス「doda(デューダ)」では、入社直後の2023年4月に転職サイトへ登録した新社会人が11年から23年にかけて約30倍に増えた。スキル向上や責任ある仕事の機会を与えなければ、熱意ある若者は企業から去っていく・・・