カテゴリーアーカイブ:人生の達人

野本弘文・東急会長の若き日の苦労

2024年3月13日   岡本全勝

日経新聞「私の履歴書」今月は、野本弘文・東急会長です。東急電鉄という鉄道会社に入社したのですが、「本流」でない住宅団地開発の部門に配属されます。その後も傍流勤めが長かったのですが、難しい仕事をやり遂げます。

7日の「入社」に次のような文章があります。
・・・父は無学だったが五島慶太翁のことを少しは知っていて、入社を喜んでくれた。入社前に福岡の実家に里帰りし、いよいよ東京に戻って社会人になるというとき。父の言葉をよく覚えている。
「どんな大会社でも小さな商店の集合体なんだよ。恐れることはない。しっかりとやって会社をもうけさせなさい。自分の給料は自分で稼ぐつもりでやりなさい」

商店主であった父の自負心がにじむ。この言葉をずっと大切にしながら仕事をしてきた。東急のような大組織の中にあっても、気持ちとしては自分の商店を開いているかのように、当事者意識をもつべしという教え。当時、新入社員の私は、東急内に新規オープンさせる「野本商店」をいかに経営していくか。経験が乏しいなりに考えていた・・・

8日の「厚木」には、次のような文章があります。小さな事務所に異動します。
・・・なぜここに配属されたのか。深く考えても仕方ない。「住宅開発については東急で一番になるぞ」。心の中で誓いを立てた。片道2時間ほどの通勤時間を勉強の場にして宅地建物取引主任者や測量士などの資格をとり、地主から信頼してもらおうと税金についても学んだ。工事現場の事務所にいつも顔を出し、問題があれば作業員の人たちと解決策を話し合った・・・
その後も、苦労されます。原文をお読みください。

NTT西の情報漏洩、自治体8割「流出元知らず」 

2024年3月11日   岡本全勝

先日紹介した、西日本電信電話の元社員による個人情報持ち出し事件「情報不正持ちだし、対策の不備と組織文化」。3月4日の日経新聞が、被害にあった自治体の8割が、漏洩元の企業を把握していなかったこと、知っていたのはゼロだったと伝えています。「NTT西系漏洩、自治体8割「流出元知らず」

・・・NTT西日本子会社から900万件超の個人情報が流出した問題を巡り、被害にあった自治体の8割超が漏洩元の企業を把握していなかったことが、日本経済新聞の調査で分かった。情報を取り扱う業者の監督は法律などで義務付けられているが、昨年10月の問題発覚後も実態を「把握すべきだった」と回答したのは3割にとどまった・・・
・・・同社に住民情報の取り扱いを委託した自治体側の対応についても、専門家は「個人情報の管理が企業任せになり、委託先の監督を義務づける法の趣旨が骨抜きにされている」と指摘する・・・

詳しくは原文をお読みください。皆さんの自治体、あなたの部署では、大丈夫ですか。

2学年4クラスを4人の教員で受け持つ「チーム担任制」

2024年3月6日   岡本全勝

日経新聞が「児童に好評「チーム担任制」 関わり多様、教員も負担減」を紹介しています(2月26日)。
・・・複数の教員が児童に接し、多様な関わりを生むのが狙い。三浦清孝校長は「固定担任制では閉鎖的になりがちな児童と教員の関係も、今は開放的。学校が過ごしやすい場所と思う子どもも増えた」と話す・・・

・・・メリットは、固定担任制では一方向だった教員と児童、保護者との関係に幅が出て、児童にとっては理解者が増えることだ。教員も互いを補い合うことができ、懸案も1人で抱え込まずに済む・・・通知表の評価もチームで会議を開いて判断している。
今年1月実施のアンケートでは、児童の85%以上がこの制度を肯定的に捉えていた。4年生の女子児童は取材に「自分のことを知ってくれる先生が増えて学校が楽しい」と笑顔で答えた。5年生の息子がいる保護者は「話をできる先生がたくさんいるのはありがたい」と話す・・・

これは、よい取り組みですね。若い先生が孤立して悩むことが少なくなります。先生との相性でうまくいかない生徒も、ほかの先生に相談できます。先生による暴力や性暴力も防ぐことができるでしょう。
簡単なことですが、なぜこのような取り組みがなされてこなかったのでしょうか。

私の履歴書の限界2

2024年3月5日   岡本全勝

私の履歴書の限界」の続きです。
ある人と話していたら、「私の履歴書には、面白い人と、そうでない人がいるね」とのこと。その話を要約すると、初めてのことに挑戦した人と、既存組織で出世した人との違いのようです。

企業家だと、自ら会社を興した人や、潰れそうになった会社を立て直した人が、興味深いです。2月に掲載された女性登山家の今井通子さんは、女性として初めての困難な登山をいくつも切り開いてこられました。それぞれに苦労をしておられます。かつてなら偉人伝に載るような人で、社会一般の人が読んでも勉強になります。

既存企業や役所で出世した人も、大変な努力をしておられ、後輩たちの参考になります。しかし、それは同輩中の競争の場合が多いです。新しいことに挑戦して組織を変えたとか、こんな苦労を乗り越えて組織を立て直したたという話なら、興味深いのですが。良いと言われる学校を出て、有名企業や官庁に就職し、出世しましただけでは、面白くないです。会社員や公務員には参考になりますが、社会一般の人が読んでもつまらないでしょう。

40年前に「私の履歴書」を読んだ頃は、戦中と戦後を生きてきた人たちの記録が多かったです。その方々は、とてつもない苦労を経験し、新しい事業や仕事を切り開いてきた人たちです。社会が安定すると、そのような人は少なくなるのでしょうか。

情報不正持ちだし、対策の不備と組織文化

2024年3月5日   岡本全勝

3月1日の各紙が、西日本電信電話の元社員による個人情報持ち出し事件の調査結果を報道していました。約930万件の個人情報を持ち出し、名簿業者に売っていた事件です。西日本電信電話株式会社の発表(2月29日)

・・・NTT西日本の子会社の元派遣社員が約930万件の個人情報を不正流出させた問題で、NTT西の森林正彰社長は29日、3月末に引責辞任すると表明した。社外の弁護士らを入れた調査委員会の調査では、情報流出の確認を求めた顧客への虚偽回答が判明。グループ全体の企業統治に課題が突きつけられた・・・(朝日新聞「NTT西社長、引責辞任 個人情報928万件流出 調査委「重大な不備」」

もちろん不正に持ち出した社員が悪いのですが、それを防げなかった組織、顧客から指摘を受けて行った調査の杜撰さが明らかになっています。そして、それを生んだ組織文化(社風)も。
調査報告書は、280ページに及ぶ大部なものです。社員に学習させるためにも、要約版をつくってほしいです。要点は次のようなものです。日本を代表する情報通信企業がこのような実態にあることは、唖然とします。

1 個人情報不正持ち出しを防ぐことができなかったことについて(23ページ、26ページ、29ページ)
・サーバーにアクセスするアカウントが共有されていた
・外部記録媒体への書き出しが禁止・制限されているのに、私有USBへの書き出しがされていた
・情報漏洩を監視するためログを定期的に確認することになっていたのに、行われていなかった
・犯罪を行った社員は上長による監視がなく、野放し状態

2 顧客の依頼で行われた社内調査での隠蔽(69ページ以降)
・USBで情報が持ち出されたのに、USBポートが「ない」と回答
・暗号化ソフトは未整備なのに、「整備済み」と回答
・ログを改変し隠蔽した上で、「問題なし」と回答

3 社内調査の評価(58ページ)
・社内調査では、調査担当者たちは不正持ち出しを発見することすらできておらず、問題点の見直しも行わず、不正持ち出しの継続を許していた。(本委員会は、社内調査担当者が隠蔽したのではないかと調査したが)隠蔽より問題がある。
・調査とは似ても似つかない杜撰な作業。事なかれ主義的対応を繰り返し、果てには虚偽回答まで至ったことは唖然とする

4 組織文化
・情報セキュリティ社内規則が守られていない(29ページ)
・自主点検において不正確な報告がなされている(35ページ)
・外部からの不正侵入への意識はあるが、内部不正による情報漏洩リスクへの意識が希薄(45ページ)
・顧客の依頼で行われた社内調査は、上司への状況報告(エスカレーション)が行われていなかった(67ページ)
・自主点検結果には○をつけなければいけないという「無謬性への執着」があった(182ページ)
・自己の責任範囲でなければ積極的に解決にあたらないという「自分事として捉えない行動様式」「前例踏襲」「事なかれ主義」「現場任せ」(182ページ)