カテゴリーアーカイブ:人生の達人

再雇用職員の戦力化

2024年2月16日   岡本全勝

1月31日の日経新聞経済教室、奥田祥子・近畿大学教授の「人事制度を現役並みに シニア層戦力化の課題」が勉強になりました。多くの職場で、悩んでおられると思います。詳しくは本文を読んでいただくとして。現役世代の給与体系を変えないと、解決しないようです。

・・・まず、定年後の働き方の現状を整理する。労働政策研究・研修機構の「60代の雇用・生活調査」(19年実施)によると、60〜64歳男性のうち「会社、団体などに雇われて」が最多で70.7%を占めた。雇用形態は非正規雇用が58.1%で、正社員(37.1%)の1.6倍である。
賃金と仕事内容はどうか。パーソル総合研究所が21年に行ったシニア従業員への調査によれば、定年後再雇用の人々(男性405人、女性186人)の年収は定年前と比べ、平均して44.3%低下していた。ところが半数が「定年前とほぼ同様の職務」(55.5%)で、「定年前と同様の職務だが業務範囲・責任が縮小」(27.9%)と合わせて8割強がほぼ同じ職務に就いていた。
再雇用の多くが1年単位の契約更新制の非正規社員だが、仕事が変わらないのに正社員と差をつけるのは、本来は「同一労働・同一賃金」の原則(パートタイム・有期雇用労働法)に抵触する。処遇に合わせて仕事の質や責任の程度を下げる企業もあるが、本末転倒な面は否めない。

筆者の長期継続インタビューを中心とする研究では、社会の中枢に位置する男性は、多くが「出世競争に勝たなければならない」「高収入を得て、社会的評価を得るべきだ」といった旧来の「男らしさ」のジェンダー(社会的・文化的性差)規範にとらわれている。その結果、年収や待遇の低下は、モチベーション低下に直結する。
定年前に部長など上位の役職を経験した人ほど不満を募らせ、働く意欲を喪失する傾向が強いことが、筆者の調査からも明らかになっている。具体的には、「元部下にあごで使われるのが我慢ならない」「定年までの実績を否定されたようでやる気が湧かない」といった声が聞かれた。
シニア層の意欲低下には、こうした人生やアイデンティティーに不安や葛藤を抱く「中年の危機(ミッドライフ・クライシス)」が長引き、定年を境に、抑うつ症状などの心理的危機の新たな波が押し寄せるケースが増えていることが背景にある。実際、「仕事にやりがいがない」「自らの働きが会社に認められていない」などの声があった。

この主因として挙げられるのが、定年後のシニア社員に対する人事制度である。定年に達すると、機械的に以前適用されていた職務や役割、能力によってランク分けする等級制度からは対象外となり、人事評価も行われないケースがほとんどだ。成果報酬、多面評価などを取り入れているような企業であっても、定年後は突如、通常の人事制度から排除される。
多くが定年前後でほぼ同じ業務に就いているにもかかわらず、期待される役割や責任が明確に示されず、報酬も激減する。どのように貢献すればよいのかわからないまま、期待役割を担い、会社の役に立っているという実感を抱きにくくさせていると考えられる・・・

仲間と離れると研究は進まない

2024年2月15日   岡本全勝

1月29日の朝日新聞夕刊に、「新しいアイデア、欲しいなら」が載っていました。

・・・コロナ禍をきっかけに定着したリモートワークは、創造的な仕事とは相性が悪いかもしれない。米国と英国の研究チームが、計2400万件に及ぶ学術論文と特許出願を調べ、そんな結論を出した。既存のアイデアを発展させることはできても、「破壊的な革新」にはつながりにくいという。

研究を発表する時は、その分野の過去の研究を参考文献として引用するのが通例だ。単独で引用されることの多い研究は、過去の蓄積に負うものが少ない革新的なものとみなせる。この基準でみると、メンバーが同じ場所で研究した論文は、革新的なものの割合が28%だったのに対し、メンバー間の距離が600キロ以上では22%に。特許でも同様で、67%から55%に下がった。

チームはまた、ほかのメンバーから離れた場所にいる研究者は、研究のアイデアを出したり学術論文を執筆したりといった創造的な仕事に関わる機会が減ってしまうことも明らかにした。この傾向は、有名研究者が若手と組んだケースで特にはっきり表れた。実績の少ない若手は、実験をしたりデータを分析したりといった技術的な作業を担うことが増えるという・・・

人生の意味は誰が決めるのか2

2024年2月12日   岡本全勝

人生の意味は誰が決めるのか」の続きです。
ここでの「意味」は、内容(の説明)とともに、価値(の評価)が含まれているようです。内容なら「××して生きた」と記述すればすむ話ですが、価値はそれがあったかどうかを評価しなければなりません。
その評価は、誰が何を基準にするのでしょうか。本人でなく社会が評価するとしたら、その人がそれぞれの立場でどれだけ社会に貢献したかを評価するのでしょう。では、本人は何を基準とするのか。

多くの人は、日々の生活で人生の意味を深く考えることはないと思います。私も自分で考えたことはなく、聞かれたらどのように答えるか悩みます。
かつて大学で教えていたときに、学生から「自分は何者かは、どうしたらわかるか」という問がでました。いわゆる「自分探し」です。
私は「今20歳前後のあなたたちが自分探しをしても、答えは見つからない。まだあなたたちは、細いラッキョウのようなもので、これから皮を増やしてタマネギになるのだ」と説明しました。「「わたし」とは何か」「タマネギの皮を増やす

人生とは「自己実現」と意味づける場合もありますが、最初から「自己」という目標があるのではなく、生きていく過程で見つける「自己発見」と見る方がわかりやすいでしょう。

評価の役割、育てる

2024年2月10日   岡本全勝

1月16日の日経新聞教育欄に、山内洋・大正大学教授の「「実学」としての文学 自己認識深め学生成長」が載っていました。

そこに、卒論指導の話が書かれています。学生が4年次の1年間をかけて卒論を書きます。秋学期には教員の助言だけでなく、学生間の相互評価や自己評価をするとのことです。

・・・かつて「評価」は、それぞれが在籍する学びの段階から次の段階へ向けての保証書・パスポートとしての意味が最も大切な役割だった。むろん今でも教育目標に照らして成績をつけることは授業者の責任である。
しかし、現在の教育改革の本旨が一人ひとりの「生きる力」を養い、この社会を支えていく基盤をつくることにあるなら、学生が教員評価や他者評価を通じて時に過剰な自己否定感や自己肯定感を、よりバランスのよいものに修正していく力をつけていくことこそが重要である・・・

「コメントライナー」2023年2月13日「人事評価、職場と職員を変える手法」で、人事評価の複数の機能を説明しました。
その一つが、職員の能力と業績について、足りない点を確認することです。
学校の入学試験は入学者を選別するためのものですが、期末試験は学生の到達度を測るものです。どこができなかったかを知り、その欠点を補習して、穴を埋めます。職員との期末面談は、この機能があるのです。

改革案を葬った人たち

2024年2月8日   岡本全勝

1月17日の日経新聞夕刊「こころの玉手箱」は、岐部一誠インフロニア・ホールディングス社長の「業績悪化を伝える新聞記事」でした。前田建設時代の話です。

・・・2008年3月、総合企画部にいた私は早期退職者募集の社長説明文案を作った。低採算の工事が重なった上に改革が不十分だったツケが回り、会社の業績は悪化を続けていた。
「452億円の最終赤字」と記された3月22日付の新聞記事の切り抜き。その後本社は2度移転したが、これは今も社長室の机の引き出しにしまっている。二度と早期退職者を募集するような事態を招かぬよう、自分に言い聞かせている・・・

岐部さんは、2003年に赤字の会社に危機感を持ち、会社や業界を分析し、経営陣への提案をまとめました。大晦日の夜中には、社長から慰労のメールももらいます。ところが、未完成の改革案が事前に広まり、複数の役員が激怒します。「岐部、謝罪の場を設けるから謝れ。もしくは会社を辞めろ」と詰め寄られます。発表は中止になります。
その後、記事にあるように、大幅な赤字になり会社は危機に陥ります。そこで、この改革案を生かすことになります。

さて、改革を止めた幹部たちは、その後の動きをどう見ていたのでしょうか。また、自分たちの判断と行動を、どのように振り返ったでしょうか。