カテゴリーアーカイブ:人生の達人

3月19日に思う、災害対策の要点

2020年3月19日   岡本全勝

今日は3月19日。9年前のこの日から、東日本大震災被災者生活支援本部が本格的に活動を始めました。
時あたかも、新型インフルエンザが単なる病気を超えて、社会に大きな被害を与えています。9年前の経験を振り返って、いくつかの論点を書いておきましょう。

1 まず、体制です。
被災者支援本部では、官房副長官や大臣らと事務局幹部による本部会合と、官僚による事務局の2層制にしました。事務局は、各省から、一定の分野に土地勘のある官僚を集めました。
本部は、意思決定をする場です。事務局は、そこに提案する事案の整理と、決定された事項の実施です。
本部会合は、毎日時間を決め、集まれるメンバーで行いました。大臣たちは忙しく、こればかりにかかわっているわけにはいきません。ある程度、事務局に任せてもらわないと、仕事が回りません。

また、総理と政治のリーダーシップは重要なのですが、総理や与野党には、少し離れたところからこれら本部の動きを見ていていただき、欠けている点を指摘していただきたいのです。もちろん、マスコミも同じです。「ここが足りない」という指摘が、対策本部と事務局にはありがたいのです。

2 政策分野と優先順位
何をしなければならないか。それを整理することが重要です。前例がないことなので。
今回のウイルスも同じです。病気対策や蔓延対策だけでなく、外国との往来の制限、経済対策と(悲鳴を上げている)産業対策、学校対策、フリーランスや困っている弱者対策など、多岐にわたります。
それら課題と、何をするかを整理して、本部会合に示し、さらには国民に示す必要があります。
それを、一元的にする事務局とその責任者が必要です。

そこには、担当する役所がはっきりしている分野と、そうでない分野があります。フリーランスや困っている弱者対策は、担当する役所はないでしょう。セーフティーネットからこぼれ落ちる人たちを、どのように拾うかです。残念ながら、国の省庁は供給者側からできています。

3 緊急対策と長期見通しと
実施する対策には、いま急がなければならない対策と、中長期の見通しがあります。
対策は、きちんとしたものを決めることは困難です。走りながら考えるのですから。感度よく、そして柔軟に変える必要があります。そのためには、情報が上がってくるように、仕組みを整える必要があります。
被災者支援事務局では、各分野を担当する職員の他に、漏れ落ちた課題を拾い新しい部門をつくることを検討する(企画担当)職員と、その部門の職員たちを集める(人集め)職員も配置しました。

この次に何が起こるか、何が必要かを考えること。特に今回は、国民にそれを示す必要があるでしょう。
また、長期戦になるとするなら、その時間軸と、どのようにして次の段階に行くのか、また終了させるかも重要です。

コーチング、職員の能力とやる気を引き出す

2020年3月15日   岡本全勝

3月10日の日経新聞夕刊「Bizワザ」は「若手も学ぼう「コーチング」対話重ね、能力引き出す」でした。
・・・まもなく4月。新入社員の能力とやる気を引き出すには、若手でも「コーチング」を学ぶのが有効だ。相手の自発的な行動を促すコミュニケーション術は、自身の成長にも応用できる・・・
・・・コーチングとは相手の能力ややる気を引き出し、課題解決などにつなげるためのコミュニケーションスキルだ。相手との対話のなかで、効果的な質問をしたり助言をしたりすることで、目標達成のために必要な行動を促す。指導者に恵まれたスポーツ選手が、成績を大きく伸ばすことからヒントを得たとされる・・・

5つのステップが、別図で示されています。
1 相手を認める
2 話を聞く
3 質問する
4 相手に見えていない部分を指摘する
5 行動を促す

拙著『明るい公務員講座 管理職のオキテ』では、ティーチとコーチの違いをお教えしました。p89

・・・もう一つは、旧来型の職場内訓練(OJT)の限界だ。若手社員を短期間で成長させるには、先輩の背中を見せるだけでは不十分。指導側の意向を一方的に押しつけたり、できないことを責めたりすると、モチベーションの低下を引き起こしかねない。対話を重ねてやる気を高めることが、人材育成の現場で求められるようになった。
「何かを教え込むという姿勢はコーチングではない。話をよく聞いて質問することで、相手の能力を引き出すことが重要だ」・・・

・・・親近感を高める際に有効なのは「おうむ返し」のスキルだ。後輩社員から「最近あまり眠れていなくて」と相談されたら、「そうか、眠れていなかったんだね」と同じ言葉を繰り返すことで、安心感を抱いてもらえるという。
その上でコーチ役が質問を投げかけ、後輩社員の頭の中を整理して考えを具体化していく。さらに当事者以外の視点をフィードバックすれば、新たな気づきにつなげられる。「ここまでで信頼感を構築できていれば、ネガティブな意見も受け入れてもらいやすくなる」(大石氏)
最後は「それでは今週末までに企画書を仕上げてください」などと、具体的な行動をリクエストする。対話のなかで後輩社員の考えも十分に引き出した上での結論であれば、単なる命令とは受け取られずに相手の背中を押せる・・・

管理職、中間管理職、職員の区分、4

2020年3月9日   岡本全勝

しばらく間が空きましたが、「管理職、中間管理職、職員の区分、3」の続きです。

職員を職務別に採用せず、一括採用してから昇進させる方法は、「差別をせず平等に扱う」という、一見良さそうな面がありますが、欠点も多いです。
・職員には能力の差があります。それは持って生まれたもの以上に、本人の努力によるものもあります。採用時に同一に扱うということは、大学での勉学を評価しないということです。技術系は学んだ学問が評価されますが、それ以外は、採用の際に問われません。これでは、大学生活は壮大なムダです。
・職員が平等という考え自体が、無理です。会社にも役所にとっても、世間はそんなに甘くありません。能力ある者が能力を発揮しないと、会社は潰れ、役所は住民の期待に応えることができません。

・次のような悲劇も、起こります。
職種別の能力を問わない職場では、職場への忠誠心が評価の基準になります。その競争に、全員が巻き込まれます。それは、一面では全員が頑張るという活力を生みます。
しかし、仕事の成果という評価基準を用いないので、長時間働くこと、会社や上司の意向に沿うことが評価基準になります。
自分に与えられた仕事を処理しても、先に帰宅できないのです。
長時間労働や過労死は、この風土の中で生まれます。

・組織を効率的に運営し、社員や職員に能力を発揮してもらうためには、職種による区分と、階級による区分が必要です。軍隊(自衛隊)や警察、消防は、そのようになっています。

世界企業、日本支社は「仲良し過ぎる」

2020年3月2日   岡本全勝

世界企業、日本支社は最も長時間労働。原因は会議とメール」の続きです。
・・・業務時間が長い原因を調べてみると、会議に問題があることがわかった。
「1時間が標準で、召集メンバーも多い。そこで、ワーク・ライフ・チョイス・チャレンジが始まった7月の社員総会で『会議時間は30分を基本とし、人数は最大5名まで』・・・と呼びかけました」・・・

日本マイクロソフト、「会議は基本30分で5名以下」や「社内メールではなくチャットに」を全社員に通達」(2019年7月23日、Impress Watch)には、次のような文章もあります。
・・・具体例の1つ目は「会議設定は基本30分を標準」。同社社員が実施する会議の多くが明確な理由なく習慣的に60分間で設定されるケースが多く、社内調査からMicrosoftグローバルの平均と比べ30分間の会議が約半分しかないという。会議の内容や参加人数などで30分では不十分な場合もあるが、習慣的な「60分設定」を30分に変革していくことで、会議の時間の使い方改革に取り組むという。

2つ目は「会議の参加人数は、多くて5人で」。調査の結果、同社社員の実施する会議は、グローバル平均よりも11%参加者が多く、参加が必須ではない会議に多くの社員が参加しているという。とくに、日本ならではの特徴として会議に3階層(本部長/マネージャー/現場社員など)で出席したり、チームの同僚が複数名で同じ会議に参加したりするケースが多く見られ、この状況を改革するため、会議の参加人数は「多くて5人まで」を基本とする。
会議内容や生産性、創造性の観点から、あえて6名以上の会議を選択することも可能だが、全会議において主催者は参加必須者を明確にするという。会議通知メールにCCや「任意参加」で入れて「よろしければ参加を」のような招待も極力避けるという・・・

社員の言葉を借りると、「日本法人は仲良し過ぎる」というのです。
会議が長いことともに、参加者が不必要に多いのです。これは、役所にも当てはまります。電子メールのCCの数もです。
皆さんも、参考にしてください。

「取りやめさせていただきます」

2020年3月1日   岡本全勝

インフルエンザ対策で、いくつも催し物が中止になっています。先日、私にも、登壇を予定していた討論会を中止するとの連絡が来ました。
今日の話題は、その通知文です。「××の開催を取りやめとさせていただくことにしましたので、ご連絡致します」とあります。

主催者が責任を持って判断したのですから、「開催を取りやめとさせていただくことにしました」は、ないでしょう。なぜ簡潔に「××の開催を取りやめます」と言わないのでしょうか。「××の開催を中止致します」もよいでしょう。
「させていただきます」が、丁寧な表現だと思っているのでしょうか。丁寧に言うなら「××の開催を取りやめることと致しましたので、その旨ご連絡いたします」で、よいでしょう。

文化庁文化審議会答申の「敬語の指針」によると、次の通り(p40。一部省略)。
【解説1 】「( お・ご)……(さ)せて いただく」といった敬語の形式は,基本的には,自分側が行うことを,ア)相手側又は第三者の許可を受けて行い,イ)そのことで恩恵を受けるという事実や気持ちのある場合に使われる。したがって,ア ),イ)の条件を どの程度満たすかによって ,「発表させていた だく」など , 「…(さ)せていただく」を用いた表現には,適切な場合と,余り適切だとは言えない場合とがある。

【解説2】次の①~⑤の例では,適切だと感じられる程度(許容度)が異なる。
①相手が所有している本をコピーするため,許可を求めるときの表現
「コピーを取らせていただけますか。」
②研究発表会などにおける冒頭の表現
「それでは,発表させていただきます 。」
③店の休業を張り紙などで告知するときの表現
「本日,休業させていただきます。」
上記の例①の場合は,ア ) ,イ)の条件を満たしていると考えられるため,基本的な用法に合致していると判断できる 。
②の例も同様だが  , ア ) の条件がない場合には,やや冗長な言い方になるため ,「発表いたします 」の方が簡潔に感じられるようである。
③の例は,条件を満たしていると判断すれば適切だが,②と同様に,ア)の条件がない場合には「休業いたします 」の方が良いと言えるだろう。

参考「させていただく症候群
あなたは、変な日本語を使っていませんよね。