カテゴリーアーカイブ:人生の達人

働きがい、仕事への意欲、2

2020年3月30日   岡本全勝

働きがい、仕事への意欲」の続きです。
働き蜂とまで言われた日本の会社員。なぜ、各国と比べて、意欲が低いのか。それは、雇用の仕組みにあると、私は考えています。
一括採用、年功序列、終身雇用という、これまで生産性を高めたとされてきた日本の雇用慣行が、逆機能を果たしているのです。

採用当初は、多くの社員は、意欲に燃えています。しかし、そのうちに、能力や適応力に差が出て、出世に差がつき始めます。先頭集団から漏れた社員は、意欲をなくします。「どうせ私は頑張っても、彼や彼女には追いつけない」と。
大学入試と同じ、偏差値による輪切りが生じます。それは、全員が同じ箱の中で、同じ競争をするからです。
そして、ますます差が開き、面白くなくなり、意欲が下がりと、悪循環に陥ります。
今の労働慣行では、これを治療する方法はありません。

これに対し、「私はこの技術分野で」「私はこの販売分野で」と職種が別れ、それぞれの目標があれば、その分野で頑張ることができます。
試験科目が同一でなく、目標とするところが違えば、全員が「偏差値による輪切り」にはなりません。法学部、医学部、IT学部、芸術大学、体育大学が、同じ土俵で競争をしないようにです。

社員を採用する際に、総合職で採るのではなく、職種別、技能別で採用するべきです。それぞれの職種の中で競争する。山登りにたとえれば、頂上は一つではなく、いくつもあるのです。
もちろん、それぞれの分野の中でも競争はあり、負けて意欲をなくすこともあります。しかし、総合職として一本で競争するより、たくさんの部門での競争に分散し、また評価がはっきりすると思います。すると、本人も納得しやすいです。
私は、このようなことが、他国と日本の労働者の、意欲の差を生んでいると考えています。参考「日立製作所の雇用改革、その2
この項続く

働きがい、仕事への意欲

2020年3月29日   岡本全勝

3月24日の日本経済新聞が「次は「働きがい改革」満足度など測り改善、生産性向上」を伝えていました。
・・・働きがいを意味する「エンゲージメント」を重視する日本企業が増えている。組織の「健康診断」を実施して職場風土を改善し、生産性アップや離職防止につなげる狙いだ。単なる働き方改革だけでは、労働意欲を高めにくい。経団連が旗を振り、三井住友銀行が全行で意識調査を始める。働きがい改革は、日本企業が競争力を取り戻す妙薬になるか・・・

企業が、社員のエンゲージメントやモチベーションを高めることに取り組んでいます。エンゲージメントとは、社員が企業に愛着を持ち、意欲を持って積極的に仕事をすることです。

この記事でも書かれていますが、日本人のこの意欲の低さは、各種の調査で明らかにされています。
拙著『明るい公務員講座 管理職のオキテ』でも紹介しました。p118。仕事ができない職員は、能力が欠けているのではなく、意欲が欠けているのです。
この項続く

会議が多いのではない、報告会が多い

2020年3月27日   岡本全勝

3月26日の日経新聞夕刊「私のリーダー論」、沢田道隆・花王社長の発言「本気問う会議、組織に活気」から。

・・・会議が多いという話が働き方改革で言われますが、本当の会議は少ないと思います。誰かがプレゼンをして誰も意見を言わなければ報告会です。報告会なら文書でもテレビ会議でもできます。集まるのならみんなで意見を出し、結論を出す。結論がまとまらなくても、議事録に残して次回のベースにする。さまざまな意見をぶつけ合うことが、組織の活性化につながります・・・

同感です。
えらいさんの集まる「会議」ほど、報告会になる傾向があります。しかも、上司の発言をつくるために、部下に不要な仕事が増えます。それが昂じて、部下は上司を気にするようになり、課題に向き合う時間が減ります。
儀式としての会議(報告会)の必要性を、私も否定はしません。しかし、それと機能する会議体とは別であり、儀式は仕事の邪魔をします。上司はそれを認識してください。
部下に仕事を任せて欲しい」というのは、この意味です。

予想外の出来事に対応する

2020年3月25日   岡本全勝

この夏に予定されていた東京オリンピックが、延期になりました。新型コロナウィルス感染症の世界的流行で、やむを得ません。
延期になって、その対応作業が多岐にわたり、関係者の方は大変な仕事になると予想されます。日程の再設定、関係競技団体との調整、施設の確保、宿泊施設の確保、費用分担・・・。

私は、次のようなことを、頭で体操をしていました。
もし、この感染症の流行が、オリンピック開催の1か月前だったらどうなるか。あるいは、オリンピック開催中に発生したらどうなるか。
今回は、4か月前に判断することができました。この期間でも、さまざまな混乱が出るでしょう。しかし、直前や開催中だったら、その比ではありません。
また、地震のように予期できず突然来る災害と、今回の感染症のようにじわじわとやってくる病気とでも、対応の仕方は変わってきます。伝染病でも、今回より強毒性のものだと、また違ってくるでしょう。

何を優先して、何を我慢してもらうか。責任者と関係者は、難しい判断を迫られます。「平時ではない」ので、多少の混乱は致し方ありません。
国民に、それを納得してもらう説明が必要です。

長時間労働是正の条件、その3

2020年3月24日   岡本全勝

3月20日の日経新聞経済教室「長時間労働是正の条件」、中原淳・立教大学教授の「業務・時間・意思疎通を透明に」から。

・・・残業発生のメカニズムは「集中・感染・麻痺・遺伝」という4つのキーワードにより説明できる。
1つ目の「集中」とは、一部の特定の優秀な人材に業務量が集中しがちなことだ。スキルが高い社員に残業が集中している。「優秀な部下に優先して仕事を割り振る」と答える管理職は6割を超える。短期的な成果を追求するには、優秀なメンバーに仕事を割り振る方が効率的というわけだ。

2つ目の「感染」とは、職場でまだ働いている人がいると帰りにくいという雰囲気だ。先に帰ってはならないという同調圧力が最も残業に影響している。こうした同調圧力は若い人ほど感じやすく、20代は50代の2倍近くも帰りにくさを感じている(図参照)。また上司の残業時間が長くなるほど、上司のマネジメントの質が低いほど、部下の帰りにくさは増していく。

3つ目の「麻痺」とは、心理的状況と身体的状況がちぐはぐになり、客観視できなくなる状況だ。月60時間未満までは残業時間が増えるほど主観的幸福感が低下していくが、60時間を超えると幸福感の増加に転じることが明らかになった。残業への没入感、他者から頼られているという実感がそれに関係する。

4点目の「遺伝」とは、上司の過去の残業経験が部下の残業時間に強く影響するということだ。新卒入社時に残業が当たり前という文化に染まっていた人は、上司の立場になっても部下に残業をさせやすい。こうした傾向は転職後の会社でも消えずに残る。つまり残業習慣は上司と部下という世代だけではなく、組織さえまたいで受け継がれる。

多くの企業では既に残業そのものをやめさせたり、残業時間に制限をかけたりしている。こうした時間制限型の施策は、個々人の残業習慣、つまり残業麻痺や残業代依存には対症療法的な効果を期待できる。
だがこの方法の効果は限定的で、否定的な影響も及ぼす。残業施策を打ち出すと社員の37.1%が効果に疑問を持ち、23.2%が施策に従わない方法を考え、「経営や人事は現場を分かっていない」との不信感を持つようになる。また時間制限型だけの施策ではストレス・健康不安が高まり、働きがいや組織への愛着が減少し、離職意向も高まる・・・

かつての私の経験にも、思い当たることがあります(反省)。対策も書かれています。原文をお読みください。