カテゴリーアーカイブ:人生の達人

賢人の知恵、離れて見る

2021年5月10日   岡本全勝

5月4日の朝日新聞、デイビッド・ブルックスさん(ニューヨークタイムズ)の「賢人が持つもの 自己を引いて見つめる力」から。
ブランダイス大学社会学教授モリー・シュワルツ氏と、かつての教え子ミッチ・アルボムと対話、『モリー先生との火曜日』について。ちなみに同書は、1500万部以上売れたそうです。

・・・シュワルツ氏の鋭い洞察に目を向けると、実はそれほど特別なことは言っていない。「できることもできないことも素直に受け入れよ」。シュワルツ氏が素晴らしかったのは、注意力の質だった。私たちはみんな、今を生きるべきで、瞬間の充足感を味わうべきだと知っている。だがシュワルツ氏は、それを実行できる人だった・・・
・・・私が実際に出会った賢人たちも、みんな似ている。人生を変えるような言葉を発するのではなく、他人をどのように受け入れるかが大事なのだ。知恵といえば、人里離れた所にいる近寄りがたい年老いた賢者を思い浮かべることが多い・・・しかし、私が体験したのは、知識体系よりも、人との向き合い方だった。秘密の情報を授けてくれることよりも、自分自身で気づきが得られるようにしむけてくれるような関わり方なのである。

知恵は、知識とは違う。フランスの思想家モンテーニュは、他人の知識で物知りにはなれるが、他人の知恵で賢者になることはできないと指摘した。知恵には、具現化した道徳的要素が含まれる。自分自身がもがき苦しんだ経験から、他者の弱さに対する思いやりある配慮が生まれる。
賢人は、何をすべきか教えるのではなく、物語を見つめることから始める。私たちの話や理屈を聞き、価値のある苦闘をしている存在として見てくれる。私たちの心の内側と、自分では見えない外部からの両方の視点から見る。私たちが「親密」と「自立」、「管理」と「不確実性」といった人生の弁証法的問題にどう取り組んでいるかを見て、現状が長く続く成長における一つの地点であることを理解してくれる・・・

・・・人は、自分が理解されたと感じて初めて変わることができる。本当に信頼でき、知恵を求める相手は、賢人よりも編集者に似ている。彼らはあなたの物語を理解し、あなたが過去と未来との関係を変えられるように再考を促す。あなたが本当に望むものは何か、あるいはどのような重荷をおろしたいと思っているのか、などを明らかにしようとする。そして、あなたがその人に相談した表面的な問題の根底に横たわる、深い問題を探るのだ。
自分自身の結論へと歩む、巧みで忍耐強いプロセスこそが知恵と感じられるものだ。おそらく、だからアリストテレスは倫理を「社会的行為」と呼んだのだろう。

結果として得られる知識は個人的であり、文脈的だ。一般論ではなく、名言集に載るような格言でもない。このような視点に立てば、プレッシャーから自由になり、自分が置かれている状況から少し距離をとり、希望を持てるようになる。
シュワルツ氏のような賢人が感銘を与えるのは、沈着冷静ですばらしい自己認識をもっているからだろう。彼らは他者を観察することでそれを身に付けたのではないだろうか。他人のために判断を下す方が、自分のために何かを決めるより簡単だ。賢人は、第三者として考えるスキルを身に付けて、鏡にうつる自分という相手にそれを適用しているのかもしれない。たぶん、自己認識とは、内面での熟考ではなく、自分のことを誰かほかの人のように見ることで大部分ができているのではないか・・・

ミス、フォロー、クリア

2021年5月6日   岡本全勝

このホームページ定例のカタカナ語批判です。
法案の記載誤り」を書いていて、気づいたのですが。最初は「法案ミス」と書きました。しかし、これだと広すぎると気がつきました。
すなわち、法案に間違いがあるといっても、いろんな場合があります。
・法案の内容に間違いがある場合
・対象条文や引用条文を間違う場合
・日本語がおかしい場合
・改正文(改め文、かいめぶん)が現行法に溶け込まない場合などなど。
「ミス」と言っておけば、全て含まれて間違いないなあ、とも思ったのですが。この言葉が、いかに曖昧かを示しています。

「フォローする」も曖昧です。
「ある案件をフォローする」と言った場合、具体的には何をするのでしょうか。(後をついていって)見守る、(後ろから)支える、(補って)片付ける。どれもありそうです。でも、見守るだけと、片付けるでは意味が違ってきます。
「フォローしておいてね」と部下に指示しておいたのに、その後聞いたら、何も進んでいません。「何もやってないじゃないか」と指摘したら、「ちゃんと見ていましたよ」と返される可能性があります。

「クリア」も、ええ加減な言葉です。
ハードルを跳び越える意味からは、課題や障害を通過することです。サッカーでボールを味方陣内から蹴り返して危機を脱することや、計算器をゼロの状態に戻すことからは、きれいに片付けることです。
書類を置いて「これをクリアしておいてね」と指示したら、課題を解決するのではなく、ゴミ箱に捨てられたとか。

このような言葉は、気をつけないと、ついつい使ってしまいますね。「これでも日本語、NHK」とは違った問題です。

専門家でも難しいオンライン会議接続

2021年4月30日   岡本全勝

4月23日の朝日新聞夕刊に、「あっ「マイクがミュート!」 気候変動サミット、トラブルも」が載っていました。
・・・世界40カ国・地域の首脳らが参加する、気候変動サミットが22日、始まった。会議はコロナ禍のため、オンラインの開催だ。冒頭に行われたあいさつでは、各国・地域の首脳らが画面の切り替えやマイクのオン・オフなど、オンライン会議ならではのトラブルに見舞われる一幕もあった。
サミットは冒頭、ハリス米副大統領のあいさつから始まった。だが、マイクの不調のせいか、音声が二重で聞こえてきた。次いでバイデン米大統領が登壇。音声の不調はあいさつの開始50秒近くまで続いた・・・

・・・ドイツのメルケル首相があいさつをしている際、画面が突如切り替わり、25の小さな画面が表示された。映し出された参加者はメモを取ったり、タブレットを触ったり。マスクはつけている参加者とつけていない参加者に分かれた。空席となっている画面もあった。菅義偉首相はすでにあいさつを終えた後だったからか、日本の画面には別の人物が映っていた。
再度、別の首脳のあいさつの時に複数画面に切り替わると、スマートフォンをいじる人の姿もあった。

画面の切り替えトラブルに見舞われたのは、フランスのマクロン大統領とインドネシアのジョコ大統領、ロシアのプーチン大統領だ。録画してあったマクロン氏のあいさつが流れる途中、突然ジョコ氏が映し出された。その後、画面はマクロン氏に戻ったものの、あいさつ動画は途中で終了。
次いで順番が回ってきたのはプーチン氏だ。司会者の音声がうまく伝わらなかったのか、1分半近く無音で画面に映り続けたが、何事もなかったかのようにあいさつを始めた。
豪州のモリソン首相はマイクのスイッチを切ったまま発言を始めたようだ。主催する米国の担当者とみられる人が「マイク! マイク!」「(マイクが)ミュートになってる!」と焦る音声が漏れ聞こえてきた・・・

在宅勤務やインターネット検索では出てこない企画案

2021年4月27日   岡本全勝

4月20日の日経新聞夕刊「Bizワザ」は、「企画案が浮かぶ思考整理法」でした。

・・・企画・アイデアを提案したいのに、考えがまとまらないときがあるだろう。リモートワークで出会いや雑談が減り、ヒントも得にくい。そんなとき一定の手順に沿って思考を整理し、新たな発想につなげる手法が知られている・・・
・・・連想ゲームのようにマス目を埋めながら考えを整理していく「マンダラート」は気軽に取り組める代表的なもの。まずは縦横3マスずつ、計9マスからなる表を用意する。中心のマスに何かキーワードを書き込み、そこから連想される言葉で周囲の8マスを埋めていく。さらにその8マスの言葉を別の9マスのそれぞれの中心に転記し、再びそこから連想を展開する・・・
図も載っています。

出社するのと在宅勤務とは何が違うか。新規事業・アイデア創出に詳しい東京大学教養学部特任教授の宮沢正憲さんの説明です。
――なぜリモートワーク中はアイデアが浮かびにくいと感じるのでしょうか。
「無意識のうちに通勤中や勤務の合間の雑談からアイデアの種を得ている人が多いからだと思う。家にこもると、そうした情報源が一気になくなってしまい、何もひらめかないと感じるのではないか。リモートワーク環境においては自ら意識的に情報を取りにいく姿勢が重要になる」

――リモートワークをしていると、雑談での情報収集がしにくくなります。
「リモートでの会議は決められた仕事をこなすという面では非常に効率がいい。ただ一見無駄にみえる雑談のような時間は削られてしまいがちだ。意図的に雑談の時間を設定するのも大事だと考える。例えば雑談だけ1時間する会合を定期的に設けたり、会議中に雑談のための時間をつくったりするのもいい」

――雑談以外でどのように情報収集するといいですか。
「情報収集というと、インターネットでの検索が思い浮かぶと思うが、あまりおすすめできない。ネットでみつかるものは既にある程度広まっている場合が多いからだ。リモートでも何でもいいので、他人と話すなど手軽でない、手間がかかる情報収集に挑んでみてほしい。そうすることによって、自分の頭の中になかった新たな発見や情報が集まってくることになる。自ら動くこと。徹底的に情報を取りにいくことがアイデアを生む早道になる」

企業の受付対応、2

2021年4月24日   岡本全勝

企業の受付対応」(4月20日掲載)に、読者から反応がありました。一部改変して、紹介します。出てくるA社は、私も知っている会社です。

・・・「企業の受付対応」を拝読しました。全く、同感です。
A社の受付は委託ですが、しっかりと訓練されており、レベルは高いと思います。
私が部長をしている職場では、来客者を入口でお出迎え、お見送りをする習慣がなかったので、私が率先して、お出迎えお見送りをするようにしました。
お客様からは、他の会社では、こういう対応はなかったと評価いただきました。
会社に対する好感度向上のためには、商品やサービスだけでなくこういうことの積み上げも大切だと思いました。
これが、当たり前の文化として定着してくれることを願うばかりです・・・

市役所の評判を高めるには、政策の善し悪しとともに、職員の接客態度が重要だと、拙著『明るい公務員講座』171ページに書きました。