カテゴリーアーカイブ:人生の達人

「ビジネスマンの父より息子への30通の手紙」

2021年8月24日   岡本全勝

キングスレイ・ウォード著『ビジネスマンの父より息子への30通の手紙』(1987年、新潮社。文庫版1994年)を読みました。ベストセラーですから、読まれた方も多いでしょう。

私も、出版されたときに手に取ったのですが、その頃は読もうとする気が起きませんでした。もっとほかに読まなければならない本、読みたい本がたくさんありましたし。ひょんなことから、今回、ページをめくってみました。そして、一気に読了しました。
よいこと、役に立つことが書いてあります。もちろん、社長が後継者として息子を育てるために書いたので、すべての項目が読者である社員や職員に当てはまるわけではありません。しかし、「そのとおり」「悩んでいる若者には、よい助言だな」と思うことが多いです。「私ならどのように助言するか」と考えながら読みました。

このような本は、「もっと早く、若い時に読んでおけば良かった」と思うことがしばしばあります。ところが、若くて血気盛んなときには、先輩の忠告はしばしば頭に入りません。ある程度の経験を積んだ人が、振り返って「そうだよな」と思う本なのかもしれません。
職業人としての「教科書」はないので、若い人は参考書となるものを探します。この本も、読んでいくつかのか所が役に立てば良いのでしょう。そして、どのか所が役に立つかは、読む人の状況によって異なるのでしょう。
管理職の参考書としては、佐々木常夫著「そうか、君は課長になったのか。」(2010年、WAVE出版 。2013年、新書版)も読まれています。

ところで、仕事の作法の助言は後輩には言いやすいですが、息子や娘には、なかなか直言しにくいものです。手紙という形で伝えた著者は、偉いですね。さて、息子さんは、どのように父の忠告を聞いたのか。気になります。「社会人先輩の反省

職場で孤立させない

2021年8月22日   岡本全勝

8月20日の朝日新聞ひと欄に、植田陽子さんの「学校看護師の「豊中方式」を全国に広げる」が載っていました。

・・・「学校で働く看護師が辞めないようにしてほしい」。そう上司から言われたのが20年前。大阪府豊中市立病院の看護師から畑違いの教育委員会に異動になった時だ。
豊中市では、人工呼吸器などの医療的ケアが必要な子どもを地域の小中学校で受け入れ、学校に看護師が配置されている。だが、その離職率が高かった。
「異質な環境で相談相手がいなくて孤独だった」と分析し、看護師を集めて意見を聴くことから始めた。どの子でも担当できるようにマニュアルを整え、日替わりで教委から学校に派遣するやり方に変えた。看護師の負担が減り離職率も低下。「豊中方式」として注目されるようになった・・・

なるほど、良い方法ですね。たくさんの人が働く職場でも、さまざまな職種がいてそれぞれの職員が少ないところもあります。その人たちを孤立させないことは重要です。
東日本大震災での復興の際に、地方の中小企業に採用された社員が、同期や同年齢の社員がいなくて孤独だという問題を聞きました。その問題に取り組んでいるところもあります。人手不足解消は、採用活動だけでなく、採用後の定着も重要です。「マチリク、町ぐるみで採用する

デザイン思考、あるいは商品としての言葉

2021年8月19日   岡本全勝

「デザイン思考」という言葉や考え方が、よく使われるようになりました。この20、30年間のようです。興味を持っていたのですが、深く勉強しませんでした。ようやく、このようなことを主張しているのだと理解できました。

デザインと聞くと、商品の色と形を意味すると考えます。日本語にすると、意匠です。デザイナーは、商品の形や色を考える人、そしてどうしたら売れるかを考える人です。
これに対しデザイン思考は、商品(物)に限らず、サービスや事業などをも対象とします。それは色と形を考えるのではなく、どうしたら効率化できるか、よりよいサービスを提供できるかなどを考えます。課題解決と言い換えたらよいでしょう。

この思考自体は良いことだと思いますが、目新しい話ではありませんよね。「デザイン思考」と言われると、何か高尚なものかと思ってしまいます。これがカタカナ語を使う落とし穴ですね。
中国語では、デザインを「設計」と訳すそうです。田中一雄著『デザインの本質』(2020年、ライフデザインブックス)15ページ。これなら、デザイン思考が課題解決という意味であると理解できます。ものの形だけでなく、さまざまな業務に適用できます。

反対語は、成り行き任せ、前例通り、何も考えずに取り組むことでしょうか。
課題解決あるいは設計なら、経営者も管理職も、あるいは課題を与えられた社員も、みんな実践しています。でも、それでは売れないので、「デザイン思考」と名前をつけて、本や講演、コンサルタント業を売るのでしょうね。
売られるのは、店に並ぶ商品だけではありません。このようにアイデアを新しい言葉で売る人たちも、新しい理論を売る学者もいます。ところで、低下する日本の国力を嘆く人は多いのですが、次の日本のあり方を売る人が見当たらないことが心配です。

業績を左右する社風

2021年8月17日   岡本全勝

会社にしろ、役所にしろ、あるいは学校にしろ、その会社の概要説明や内部規則だけでは、それぞれの組織の「体質」はわかりません。同じ業種でも会社が違えば、社風が異なります。霞が関の各省でも、社風が違います。それによって、楽しい職場であったり、業績が上がったりします。その逆もあります。企業風土、企業文化とも言われます。社風やお国柄が組織や国を強くすることは、私の研究対象の一つです。参考「組織の能力5。仕事の仕方と社風を作る」「福澤武さん、社風を変える2

週刊『日経ビジネス』8月16日号は、特集「良い社風、悪い社風 不祥事の根源か、改革の妙薬か」です。日経ビジネス電子版には、「三菱電機、みずほ、不祥事企業「誌上覆面座談会」 原因は社風に?」が載っています。覆面座談会は信憑性に疑いがあるのですが、一部を紹介します。これを読んでも、社風を変えることは大変でしょうね。

・・・日経ビジネスは不祥事を繰り返す企業の現役社員のインタビューを実施した。登場してもらうのは、2021年6月に長期にわたる組織的な検査不正をしていたことが発覚した三菱電機、2月から3月にかけて3度目となる大規模なシステム障害を起こしたみずほ銀行、15年に不正会計、20年以降には経済産業省と共同で株主に圧力をかけた問題が指摘された東芝の現役社員だ。自らが勤める会社の社風をどう捉えているのか・・・

ー企業で不祥事が起きると、根底には「あしき社風」があると指摘されます。勤務している企業の社風をどう捉えていますか。
三菱電機社員のDさん(40代):上司に意見を言わない風土はある。事業本部だと、担当、課長、部長、事業部長、本部長という序列があるが、トップである本部長は神のような存在だ。部長が本部長に直接話すと、間にいる事業部長はいい顔をしない。
本部長は(年度によって異なるが)いわゆる「1億円プレーヤー」だ。報酬の高さからこのポジションを目指す人は多く、上への忖度が半端ない。顧客と話していても「三菱電機は管理職の権限が強すぎる」とよく言われる。これが(経営陣も会見などで指摘している)「上にものが言えない風土」なのかなと。

東芝幹部社員のTさん(40代):よく言えば真面目、悪く言えば従順かな。仮に変だと思っても上が決めたことをやってしまう風土がある。
ただ、事業部門によって文化は違う。もう手放したけど、パソコンや半導体メモリー事業は動きが速く、自ら市場を開拓するためガツガツした感じだった。一方で重電はややのんびりしている。官公庁向けの業務も多く、顧客を見て仕事をしている雰囲気だ。

ーみずほ銀行はどうですか。第一勧業銀行、富士銀行、日本興業銀行の3行が合併して生まれましたが、どこかの社風を引き継いでいるのでしょうか。
みずほ銀行行員のMさん(50代):うーん、どこの社風というのは正直ない。ただ、興銀系のエリート意識はまだどこかに残っている。あとは縄張り争い。リテールが強かった一勧と富士で、それぞれ負けん気を出して行内で競い合った。そのパワーを外に向ければいいのに、内々の競争に使うんだから競合に勝てない。さんざんトラブルを起こしてきたシステム障害もこういった風土が影響していると感じている。
結局、「対等合併」という美名の下でくっついたのが良くなかった。主従がはっきりしていれば、内外から見てもわかりやすい。ところが、対等なんて適当なことを言うから、その後の縄張り争いにつながってしまった。今の社風を端的に表すなら「3行の悪いところだけ足し合わせた」という感じかな(笑)。

 

非認知能力

2021年8月16日   岡本全勝

「非認知能力」って、ご存じですか。
時々目にするので、何のことか気になっていました。インターネットで検索すると、いくつか参考になる記事が見つかります。これだという記述は、見つからないのですが。

学力テストなどで測ることができない個人の能力です。意欲、忍耐力、自制心、協調性、コミュニケーション能力などがあげられています。
学術研究によって、非認知能力の高さが、学歴や収入に影響することが明らかになっています。また、学力のように1人で身につけられるものではなく、集団行動を通じて養われるものが多いといわれています。

えらく難しいことをいっているようですが、私たちがふだん経験し、知っていることですよね。
勉強ができるだけでは、職場ではよい成績を上げることができません。忍耐力や自制心は、ある程度は学力に伴うことがあるでしょう。勉強を続けることができたのですから。しかし、自己中心的で協調性のない人、ある案に対して批判するのは得意だけど代案を出さない人・・・私の若いときは、そのような人は「天動説」「学者」と批判されました。

採用面接は、それを見抜こうとしています。体育会系の部活動出身者が高く評価されるのは、それに取り組もうとした意欲、続けた忍耐力、集団行動ができる協調性があると評価されるのです。もちろん、認知能力(頭の良さ)を備えた上でのことです。
小学校ではしばしば、「知育、体育、徳育」の三つを教育の目標としています。この点を踏まえたことでしょう。
頭ばっかりでも、体ばっかりでも、ダメよね」は、プチダノンの宣伝でした。

ところで、非認知能力という表現では、内容がよくわかりませんね。子どもや子どもを持つ親にもわかるような、もっとよい表現はないのでしょうか。