カテゴリーアーカイブ:人生の達人

人の話を聞いて自分の間違いを知る

2021年8月3日   岡本全勝

7月29日の日経新聞夕刊「私のリーダー論」菰田正信・三井不動産社長の「厳しい時こそ夢あるビジョン」から。

――軸がぶれない点はリーダーの資質でしょうか。
「気をつけないといけないのが自分の信念が間違っている時です。軸がぶれないことは大事ですが、間違っていた場合は会社として最悪な状況になります。自戒を込めて振り返ると、働き方に対する考えは改める必要性がありました。かつては私自身も、24時間365日、家庭を顧みずに仕事をすることが当然という社風の中で働いていました」
「社長に就いて2~3年目のとき、ある方の講演を聴きました。人口減少時代では、少ない人材でも一人ひとりが最大限の能力を発揮できることを考えるべきだと説いていたのです。私は働き方を変えないと駄目だとその場で学び、自分自身の信念を変えました」

――自分の信念を変えるのは簡単でありません。
「私も素直に変えられる方ではないです。ただ、経営者として人の話をよく聞くことを心がけています。取締役会や幹部会を含め、大きな事業を決める時ほど人の話を聞くようにしています。自分を変えることは難しいです。しかし、人の話に謙虚に耳を傾けることで、ひょっとしたら自分は間違っているのではないかと気付くことができます。自己のリスク管理のためにも重要だと思っています」

関西人は笑わすのが得意

2021年7月29日   岡本全勝

朝日新聞土曜日朝刊別刷りの投稿欄「いわせてもらお」、読者の身の回りの笑い話が載っています。毎週楽しみにしています。7月24日に、次のような投稿が載っていました。

・・・このコーナーを毎週楽しみに拝読していますが、投稿が採用されているのは関東以西の人ばかり。北陸や東北からの投稿はないのでしょうか。そんなわけはないから話題がないのか、文才がないのか。はたまた新聞が配達されていないのか。毎週悩んでおります。(新潟県村上市・北陸、東北勢がんばろう!・62歳)・・・

遠隔講義の課題

2021年7月11日   岡本全勝

7月7日の日経新聞、「遠隔講義、満足度に腐心」から。
・・・新型コロナウイルス禍で遠隔授業が大学で導入されるなど、講義風景が一変してから1年以上が過ぎ、新たな課題もみえてきた。オンラインに慣れた学生の満足度を上げるにはどうしたらいいか。入国できない海外の学生にどう配慮すべきか。海外留学が難しいなかで国内で英語力をいかに向上させるか。変化が続く授業の取り組みを追った・・・

・・・東芝に勤める傍ら日本大学で非常勤講師としてキャリア教育を講義する岩瀬慎平さんは、2021年度の遠隔授業の学生満足度の結果に手応えを得た。20年度は40%だった10点満点が、88%と倍以上に増えた。
「他の先生からも満足度向上の理由を聞かれる」と語る岩瀬さんは、遠隔講義に対して学生が抱く不満点の多くを解消したことが功を奏したと分析する。
「説明資料と音声のみの動画を視聴する講義が大半で単調」「パソコン備え付けのカメラは画質が悪い」「臨場感がなく一方的に話を聞くだけで飽きる」「資料の切り替えに時間がとられテンポが悪い」。こんな学生の不満が岩瀬さんに寄せられていた。

「投影資料や話し方を工夫しているだけでは限界がある」(岩瀬さん)。一眼レフなど複数台の高画質カメラを同時に接続し簡単に切り替えることができれば、テレビ番組のような動きのある高品質の映像を学生に届けられる。最近のウェブ配信技術を駆使することで、対面講義と同等またはそれ以上の臨場感のある講義ができるのではないか。
プロ並みの高音質なライブ配信を手ごろな価格で可能にすると評判の豪ブラックマジックデザイン社のライブスイッチャーを導入したところ「質の高いオンライン授業が可能になり、学生の集中力がとぎれず評判がいい。満足度向上につながった」とみる。

沖縄県を除き緊急事態宣言が解除されたとはいえ、海外の留学生は日本にまだ入れない。白板を背に説明する対面授業を動画として配信する大学も増えているが「学生の満足度は必ずしも高くない」(早稲田大学)との声もある。映像に動きが少ない動画だと、授業に集中させる力も弱まる・・・

映像を工夫すると、学生の関心も高まるのは理解できますが。授業をすべて、そのような映像を使って行うことは難しいでしょう。そして、映像で学生の興味を引くことと、理解し覚えることとは別だと思います。
京都大学の鎌田浩毅先生は、映像の限界を考え、授業では紙の資料を配っておられたようです。「鎌田浩毅先生の最終講義」ビデオの7分40秒あたりで、その説明があります。

管理職、しんがりの役割も

2021年7月10日   岡本全勝

連載「公共を創る」を書いていて、行政の役割として、これまでの前衛の役割だけでなく、後衛の役割が重要になっていることを指摘しています。

かつて「前衛の思想、後衛の思想」を書いたことがあります。
・・行政に関して言えば、明治以来西欧に追いつくために、インフラや公共サービスを整備することに重点を置いてきました。遅れた社会を、行政が先頭に立って発展させるのです。これも前衛の思想でした。他方で、その変化についていけない人を支援することも、行政の役割です。それは、後衛の思想です・・・

先進国に追いつく際には、官僚は前衛の役割でした。これからも、社会の変化に対応して、あるいは社会を変えるべく、前衛の役割は重要です。他方で、理想を追い求めるだけでなく、取り残された人たちを救うという後衛の役割も重要になりました。「坂の上の雲」とともに「坂の下の影」も見る必要があります。

前衛は先駆けであり、後衛はしんがりです。この思考は、組織の管理論にも当てはまります。鷲田清一さんが『しんがりの思想 反リーダーシップ論』(2015年、角川新書)で指摘されていて、参考になりました。
与えられた目的に向かって、先頭に立って職員を率いていく。これは、先駆けの役割です。他方で、組織内には、それについて来られない職員も出てきます。この職員たちを脱落させないこと。その気配りも、必要です。それが、しんがりの役割です。

私の課長経験では、課長補佐や係長が、このしんがりの役割を担ってくれたことが多かったです。私が若く、経験不足だったこともあります。経験豊富な(私より年上の)部下が、調子の悪い若手職員の面倒を見てくれることがあったのです。その職員からの報告で、初めて困っている職員がいることを知ったこともありました。

設計の3段階

2021年7月8日   岡本全勝

7月1日の日経新聞経済教室「国産半導体復活の条件」、藤村修三・東京工業大学名誉教授の「顧客は確保できているのか」から。前段部分を紹介します。本論は、20年前の国主導の半導体開発計画の失敗についてです。その部分は、記事をお読みください。

・・・設計論の文献によると、設計と生産が分かれたのは110から130年前とされる。それまでは、作っては評価し手直しし再び評価するという、生産と評価・修正を繰り返して完成させる方法が一般的だった。生産対象が複雑になるに従い、性能の追求と期間内での実現という相反する課題を解決することと、確実で効率のよい生産プロセスを確立することに対する必要性が生じ、設計と生産は分離することになった。
工学者ジョセフ・ブルムリッチは1970年の論文で、ハードウエア製品を対象に設計を3つのステップに分けた。第1段階はアイデアをコンセプトにする段階だ。製品の実現に有効と思われるアイデアを基に、実現可能性を検討する。第2段階では製品の構成要素とそれらが果たすべき機能を確定し、実現方法を確定する。製品の機能構造を決定する段階である。そして第3段階を、確定した機能を実現するために具体的な図面を作製する段階とした。その上で、設計者が最も喜びを感じる、言い換えれば、腕前を発揮できるのが第2段階であるとした。

これはハードにとどまらず、すべてのシステム設計に当てはまる。システムとはそれぞれが独自の役割を持つ複数の構成要素から成り、それらの要素の相互作用により、システム全体として何らかの作用を実現する人工物のことである。質量を伴うモノとは限らない。コンピューターのプログラムは質量を伴わないがシステムである。
また、全体も構成要素も静的なものとは限らず、動的であってもそれらの要素が連携して、全体として何らかの作用を実現する場合はシステムである。複数の異なる役割を持つ部署から成る企業もシステムであり、企業が行うビジネスも各部署が行う活動が連携して社会への作用を実現するので、システムである。同様に、日本政府が行うプロジェクトも動的なシステムと考えることができる・・・