「明るい課長講座」カテゴリーアーカイブ

生き様-明るい課長講座

佐藤 直子著『女性公務員のリアル』

佐藤直子著『女性公務員のリアル なぜ彼女は「昇進」できないのか』(2023年、学陽書房)を紹介します。
次のような話が紹介されています。
「やる気、体力、時間があるときに、仕事をすることの楽しさを実感できる仕事を任されず、雑用に真面目に従事する。その後も、子どもを産み育てている間に、もしくはほかの仕事があると知らずに雑用だけやっている間に、考える頭と体力を失い経験・知識不足に陥り、自信を喪失。40近くで現状に気付き、退職までの十数年をいかに無難に過ごすかが一番の関心事となる。今から昇任しても雑用の長になるだけだから、なりたくないと思ってしまう。(40代前半・主任・女性)」

男女共同参画がようやく進み、採用試験でもその後の配属でも、男女差はなくなりつつあります。しかし依然として、女性管理職は少ないです。その理由は、これまで女性職員を男性と同じように育ててこなかったことがあります。庶務や定型業務に従事させて、企画、財政、人事など基幹的な部署に配属せず、その後の管理職への登用が難しかったのです。私は、富山県総務部長の時(1994年~98年)に、気がつきました。

ところで、このような議論ができるようになったのは、ここ最近のことです。昭和の時代では「女性は補助業務」が通念でした。男女差別が禁止された際に、企業では総合職と一般職という区分を持ち込み、女性を一般職として昇進が少ない職としました。
他方で、総合職で採用された女性も、配属部署と経験で、男性とは差がつけられることが多かったのです。昭和に育った上司も、女性幹部候補をどのように育成したら良いか、わかりませんでした。そこには、家庭を犠牲にして長時間労働を強いる職場の問題もありました。家庭でも、夫は家事を分担せず、たまにすると「協力」と表現したのです。保育所も充実してませんでした。

その時代を見ている私からすると、ようやく職場での男女平等が進みつつあるなと思います。職場の通念と社会の通念が変わるには、ひと世代がかかるのかもしれません。今後、急速に変化するでしょう。働き方や家庭での男女の役割については、私たちは革命の中にいると言えるでしょう。憲法や法律では変わらなかったことが、変わりつつあるのです。

忙しい職場の生産性低下

「二兎を追う者は一兎をも得ず」ということわざがあります。二つのものを同時に取ろうとして、両方とも得られないことです。「虻蜂(あぶはち)取らず」も同義です。

霞ヶ関の官庁や地方自治体の人と話していて、改めて気がついたことがあります。仕事量が限界を超えていて、十分に処理できないこと以上に、困ったことになっているのではないかということです。

この30年間、行政改革の旗印の下、職員数の削減を続けました。バブル経済崩壊後の日本の風潮にも乗って、政治家だけでなく私たち官僚も正しい道だと考えていました。しかし、それにも限界があります。他方で、行政改革では仕事は減らず(予算は減っても、法律と政策はほとんど減っていません)、それどころか新しい仕事が増えています。職員数が減って、仕事が増える。その結果は、職員一人あたりの仕事量が増えているのです。これまでも、多くの職員は余裕のある仕事ぶりではありませんでした。

一人が処理できる仕事量を100だとします。従来の仕事Aが100として、新しい仕事Bが30追加されるとすると、合計で130。処理可能量を30超過します。すると、例えばAを70にし、Bを30して、合計100をこなすことになるでしょう。
ところが、そうはならないのです。「二兎を追う者は一兎をも得ず」が当てはまり、仕事Aも仕事Bも中途半端になって、例えばAが65、Bが15で、合計80になるのです。
二つとも完成せず、さらに総処理量も減るのです。人間の処理能力を超える仕事をやろうとすると、かえって処理量が減ってしまうのです。それだけでなく、職員の精神衛生に悪い影響を与えます。
皆さんも、学生時代の勉強や、忙しい時期にこんな経験をしたことがありませんか。
集中力、その2。本人側の邪魔する要素」「同時に2つのことはできない

新入社員4割が転職検討

5月9日の日経新聞に、「新入社員4割が転職検討」が載っていました。

・・・新卒や入社数年の若手社員の早期退職が目立っている。新入社員の4割以上が転職を検討しているという調査もある。深刻な人手不足が続く中、有望な人材をつなぎ留められなければ企業経営は揺らぎかねない。企業は入社後に若手をきめ細かくフォローする体制を整え、抱える悩みや感じるギャップに対処する必要に迫られている・・・

就活情報サイトを運営するキャリタスが2月に実施した2023年春入社の社会人を対象に実施した調査では、4%が転職活動中で、39%が検討中です。リクルートマネジメントソリューションの2023年調査では、正社員として勤務する入社1~3年目の17.5%が自己都合退職を経験しています。

若手社員が会社を辞めたいと思う理由は、次の順です。仕事にやりがいや意義を感じない27%、給与が満足できない19%、自分のやりたい仕事ができない13%、会社の将来が不安12%、動労環境・条件が悪い12%、職場の人間関係が悪い12%です。

会社の側も対応を迫られています。就職してからの対応も必要ですが、会社を選ぶ際に十分な情報を与えることも重要でしょう。
5月13日の日経新聞夕刊「関心集める「エンゲージメント」 社員生かす経営の尺度」では、エンゲージメントは働きがいややりがいとは同意ではなく、例として仕事に対する情熱、会社に対する愛着との定義を紹介しています。日経新聞社などが2023年12月に実施した調査では、東証プライム上場企業の人事部門役職者の47%が組織上の課題に「エンゲージメント」をあげ、「生産性の向上」は41%でした。

社員自ら異動登録

5月3日の日経新聞、「コマツ自ら異動希望登録、1.1万人対象、500の組織とマッチグ」が載っていました。

・・・コマツは全社員の約9割にあたる1万人強を対象に、希望による配置転換を可能にする「キャリアチャレンジ制度」を導入した。多様な経験を積みたい社員と500超の組織とのマッチングに生かす。退職した元社員の再雇用、従業員が知人を紹介する「リファラル採用」も今年から始めた。伝統的な人事制度を変え、柔軟なキャリア形成や離職防止につなげる。

キャリアチャレンジは新制度で、3月までに第1弾の募集を終えた。開発や生産、マーケティングなどの職種から30人超の応募があり、4月から選考や異動が始まった。社員が挑みたい部署や仕事内容をデータベースに登録し、上司の承認は不要だ。各部門が登録情報を基にオファーして、選考や面談に進む。
管理職を含め、入社4年目以降を目安にした中堅以上の正社員1万1000人を対象にする。コマツにはグループや課の単位で、500超の組織があり、約20職種がある。製造業の大企業が全社ベースでキャリアチャレンジ制度を導入するのは珍しい。

ただし、社会人としての基礎能力や所属部門での一定期間のスキル育成も重視する。そのため大卒の場合、入社3年目までの若手社員は対象外で、現在の所属部門での「在籍期間1年半以上」を応募の条件にした。会社主導の異動についても「新たな経験を積む機会」(同社)という。

リクルートが2023年に人事業務の担当者を対象に実施した調査によると、製造業のキャリアチャレンジの導入率は37%だった。全業界平均(35%)を上回るが、金融業(46%)や情報通信業(44%)よりは低い・・・

新社会人の壁の乗り越え方

5月2日の日経新聞夕刊に「新社会人の壁 乗り越え方は」が載っていました。

・・・就職したばかりの新社会人の生活は、希望に満ちあふれている半面、不慣れな状態が続いて心身の疲れもたまりがちだ。研修や初めての業務が難しいと感じたり、うまくいかずに自信を失ったりする場面もあるだろう。壁をどう乗り越えるか。生き生きと健やかに働くためのコツを専門家に聞いた・・・

高野知樹さん(精神科医、神田東クリニック院長)
――最近の新入社員の特徴は。
「産業医として気づくのは、上司と距離を置き、あまり相談をしない傾向だ。不調になるとすぐに病院に行き、職場に診断書を出すケースが目立つ。社会人が仕事を休むのは大きなことだ。重症でなければ、休まずもう少し働きながら治療する道もある」
「以前は『仕事の負担が重い』『調子が悪い』などと上司に相談し、上司は負担を減らす、仕事の内容を変えるなどで調整したものだ。近年はそういったプロセスを踏まず、外部で受診しすぐに休みに入ろうとする」
「仕事や職場になじめないときは環境を変えるのも大事だが、まずは自分が変わっていく可能性を探りたい。この職場で自分ができることは何か。今の場所になじむ過程でやりたいことが見つかるかもしれない」

道谷里英さん(順天堂大学国際教養学部先任准教授)
――仕事で分からないことも多岐にわたる。
「新入社員には相談することにハードルがあり、『分からないことがあれば聞いて』と言われてもできない。『自分で考えろ』と言われると思って質問できなかった人、就職活動で『できる』とアピールしたから弱いところは見せられないと思う人もいる」
「『自分でやりたい』『認められなくては』との思いから、困っていたり分からなかったりしても人に聞かず、その結果失敗して周りから助けられる、という経験をすることが多い」

――助けを求める際のコツは。
「『分からない』と発さないと、周りも助けようがない。協力して仕事を進めるには、困っていることを伝えた方が周りの人も助かる。『何も分からない、助けて』といったSOSの出し方でもいい」
「話せそうな人をいかに見つけるか、がポイントだ。会社にはいろんな人がいて、合う人は絶対にいる。社内の非公式なつながりは状況を共有しやすく、支えになる。例えば少し上の先輩がこの会社でどう生き残ってきたのか、話を聞けると楽になる」

悩んでいる新採職員には、拙著『明るい公務員講座』を読んでほしいです。そこには、「一人で悩むな」と書いてあります。薦めてください。