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生き様-明るい課長講座

部長なのに「大課長」 

3月3日の朝日新聞に「部長なのに「大課長」 今月の数字ばかり気にする・各論に口を出す」が載っていました。拙著『明るい公務員講座 管理職のオキテ』に書いたことです。

会社組織のなかで部長、本部長、局長などに昇進しても、マインドと振る舞いは課長のまま――。そんな会社のエライ人を「大課長」と呼び、引き起こす問題を「大課長問題」と呼ぶそうです。経営コンサルティング会社・リデザインワーク(東京)CEOの林宏昌さん(43)に話を聞きました。

―「大課長」とは?
「10年ほど前から、人事コンサル業界で使われ始めました。課長と同じような仕事をしている部長や本部長らを指します」
「課長は短期的な目標に責任を負い、部長以上は年間計画などの中長期の目標を考え、責任を担う立場。それが部長以上になっても短期成果に目線が寄り、ひたすら口をはさみます」
「『今月の数字ばかり気にする』『各論に口を出してくる』『人材育成に手がまわっていない』。そうささやかれる部長以上がいたら、それが大課長です」

―大課長がいることで起こる問題とは。
「まず、報告業務が増えます。課長が短期的成果を部長に報告するようになり、部長が課長に指示を出す。本来ならしなくていい業務です。部長以上が短期的な仕事に時間を取られるようになるため、未来に向けた戦略の練り込みや議論が減ります。課をまたいだ業務改善、1年後の組織のあり方、人材育成……。将来的に大事な仕事に手が回らず、向かう先が分からないまま仕事をすることになります」

―なぜ、そうなってしまうのでしょう。
「課長は、部長は、本部長は、局長は『何をする人』なのか。その違いがぼんやりしているからです。『部長になった。で、何をしたら?』となってしまい、これまでやってきたことの延長をしようとして『大課長』になるのです」
「評価マニュアルなどには役割が書かれているんです。でもほぼ無視されています。日本企業の多くは、実態に即した役割整理をきちんとする必要があると感じます」

―管理職を選ぶ過程には問題はないのでしょうか。
「日本の企業は、平社員の中のトッププレーヤーが評価されて管理職になっていきます。ただ、管理職に求められるのはマネジメント。名プレーヤーが名監督ではないのと同じく、営業力がピカイチな人がマネジメント能力もピカイチかというとそうとは限りません」
「さらに、『あいつ頑張っているから』で選ぶ。『管理職のお年頃だから』『(管理職にしないと)かわいそう』でも選ぶ。結果、就けるためのポストを作ることもあります。多くは組織が小割りになってうまくいきません」

約8割が管理職になりたくない時代

約8割が管理職になりたくない時代だそうです。日本能率協会マネジメントセンター「77%が「管理職になりたくない」

しかし、この議論の立て方が、間違っているのではないでしょうか。
採用された社員や職員が全員、管理職になれるわけではありません。かつては、管理職になる社員・職員と、そうでない社員・職員は、採用もその後の配属と出世も異なっていました。上級職と中級職や初級職です。学歴と採用試験で、明確に分かれていました。典型は、軍隊です。将校と兵とは、はっきり区別されています。全員が管理職を目指すと、人事課も困るでしょう。
また、社員や職員が全員、職場に全てを捧げているわけでもありません。別に生きがいを持っている人、趣味を優先する人、家族の事情などで職場だけを優先できない人もいます。

大学卒が増えて、学歴による区分が機能しなくなり、他方で「平等主義」によって「差をつけない」ふりをしてきました。多くの人は出世したいでしょう。しかし、管理職は誰もができるような仕事ではなく、本来はそんなお気楽な仕事ではありません。
管理職を目指す競争は、本人の技能を磨く上でも有用であり、組織としても活性化するという利点があります。しかし、いずれ全員が管理職になれないことがわかります。その際の本人と会社側の対応が難しいのです。
冷たいことを言うようですが、それが現実です。

なおこのほかに、管理職とは名ばかりで、業務も変わらず負担が増えるだけ、給料も上がらないといった問題もあるようです。魅力がなければ、目指しませんわね。

技能を身につける4

技能を身につける3」の続きです。

若手官僚や社員が悩む「これで技能が身につくのか」について書いています。
ところで、このような悩みとはほぼ無縁の職種があります。医者、看護師、介護士、保育士、弁護士、公認会計士などの専門職です。美容師、庭師、大工などの専門職もあります。
彼ら彼女らは、大学時代に、あるいは見習いとして経験を積み、その職に必要な技能を身につけます。また、理科系を卒業した人たちは、機械、電子、科学、生物と、学んだことを生かせる関係ある職を選ぶことも多いでしょう。

他方で、ここで議論している人たちは、就職してから技能を身につけることで悩んでいます。たぶん多くは、文化系の学科を卒業して「教養」は身につけていても、職場で活かせる技能を身につけていないのでしょう。ここに、大学教育と会社が求める人材とのずれが顕在化します。
かつての日本の労働慣行は、大学でどのような専門知識を身につけたかを問わずに採用し、職場で鍛えるというものでした。大卒が一部のエリートだった時代は、それで良かったのでしょう。しかし、大学進学率が5割を超えると、この仕組みは不効率になりました。
教養も重要ですが、事務の職場では、複式簿記の知識、挨拶や事務文書の書き方の方が役に立つでしょう。

「どのような技能が必要かは転職する先によって異なる」と書きましたが、それは就職する際にも言えます。これまでの日本の職場慣行は、新卒は職業能力については白地で採用され、会社で訓練を受け、会社の都合で配属されるというものでした。それは。会社に職業人生を全て任せるということです。
会社に任せられなくなった、転職が可能となった時代には、適合しなくなりました。自分の職業人生を、会社に委ねるのか、自ら切り開くのか。その違いでもあります。

技能を身につける3

技能を身につける2」の続きです。

2月20日の日経新聞に「管理職に大降格時代 スキルないと2軍、でも実はチャンス」が載っていました。
・・・「このままでは一般職に戻ってしまう」。2022年4月、3年以内に必要なスキルを習得しなければ、一般職に降格する制度が導入された。スキル習得の期限が1カ月半後に迫る。
当時、社員に占める管理職の割合が3割に達し、部下のいない名ばかり管理職も多くいた。そこで、職務内容に応じて賃金を決める「ジョブ型人事」を導入するのにあわせ、降格制度を設けた・・・

・・・降格は決してマイナスではない。パーソル総合研究所の藤井薫上席主任研究員は人の入れ替えによって組織は強くなると指摘した上で、降格した社員も「別の場所で専門性など幅を広げるチャンスになり得る」と話す。
リコーの増田康宏さん(47)は、業務に必要なソフトウエアのスキルなどを習得し、1年で「1軍」に戻った。「仕事に挑戦するモチベーションが生まれた」と振り返る。
ジョブ型を採用するオムロンは19年度から「リチャージ・リチャレンジ制度」を始めた。PIPなどに基づき能力発揮が難しいと評価した場合は降格(リチャージ)させる。研修プログラム受講や面接を経て再評価すれば、最短で1年後に再登用(リチャレンジ)する。
管理職など経営の基幹人材と位置づける約290人が制度の対象だ。人事担当の南和気執行役員は「はい上がる経験を早くからして成長してほしい」と話す・・・

この記事は、管理職に必要な技能ですから、転職一般には当てはめることはできないでしょう。しかし、管理職に復帰するためのスキル(技能)がどのようなものか、知りたいです。記事には「業務に必要なソフトウエアのスキルなど」とありますが、管理職の資格を決めるのは、そのような技能なのでしょうか。
その前に、管理職に必要な技能を身につけていない社員を管理職にすることも、疑問ですが。
技能を身につける4」に続く。

技能を身につける2

技能を身につける」の続きです。
学び直し(リスキリング)も、はやり言葉になっています。
何を学べばよいのか知りたくて、インターネットを検索したら「リスキリングで学ぶべきスキル10選」を見つけました。そこには、次のような技能が並んでいます。
1.マーケティングスキル 2.プログラミングスキル 3.マネジメントスキル 4.語学スキル 5.営業スキル 6.財務・経理スキル 7.動画編集スキル 8.AIやIoTなどの先端ITスキル 9.コーチングスキル 10.ビジネスライティングスキル

さて、あなたが将来の転職を考えると、どれを身に付けますか。それは、どのような方法で身に付けますか。
私は知見はないのですが、「職業人として一般的な技能」と「その職や職位に必要な技能」は別で、後者は仕事内容によって異なるのでしょう。すると、転職先を絞らないと、身に付けるべき技能は定まらないと思います。
英語を学ぶ人も多いですが、仕事で英語を使う職業でないと、身につけても教養になってしまいます。
技能を身につける3」に続く。