5月27日の朝日新聞オピニオン欄「管理職はつらい?」、小林祐児・パーソル総合研究所主席研究員の「罰ゲーム化、抜け出そう」から。
・・・日本の管理職は「罰ゲーム化」しています。バブル崩壊以降の日本企業では組織のフラット化が進み、管理職が減って部下の人数が増えた。ダイバーシティーの推進により、男性正社員中心の職場に女性や非正規雇用の従業員が増えたことは、マネジメントを複雑にしました。
だめ押しとなったのが、パワハラ防止の法改正と働き方改革です。接し方に過敏にならざるを得ず、気軽な声かけすらためらう場面も増えました。働き方改革も効率化にはつながらず、「労働時間の削減」だけに焦点が当たってしまった。しかも対象は一般社員に限られ、管理職は“はみ出た仕事”を一手に担う形に。
ですが、これらは会社の外にある要因にすぎません。本当に問題なのは、外部環境が厳しくなった時、企業の内部の判断が、管理職の負荷を上げる方にばかり向かうことです。
日本の経営者は「管理職を鍛え上げればなんとかなる」という発想で、研修ばかり増やしていく。この発想は、「管理職が経営の要」という期待感と一体です。「耐えてこそ真のリーダーが生まれる」という言説もふりまかれています。
すぐにできることはいくつかあるでしょう。例えば、「管理職だけ」ではなくメンバーにも研修を受けさせる。組織を動かす時にメンバーも同じことを知っている方がスムーズです。社内のつながりを生む仕掛けを作ることも大切です。会議で他の管理職にダメ出ししたり、「そっちは大変だね」とひとごとだったりするより、協力し合える方がいいですよね。
もう一つ提案したいのは、「鍛え上げる」対象を早めに絞ることです。20代のうちにエリート層を選抜し特別な経験や研修をする一方、他の管理職は定期的に部署や業務が変わるジョブローテーションの幅を狭くし、専門性を磨いてもらうのです。
「絞り込む」提案をすると必ず「選ばれなかった者のモチベーションが下がる」と言われますが、おかしいですよね。これまで多くの女性は管理職の道を早々に諦めてきました。どうして男性が諦めるようになったとたんにケアしようとするのでしょうか・・・