カテゴリー別アーカイブ: 仕事の仕方

生き様-仕事の仕方

在宅勤務が変える仕事の仕方3、達人たち

在宅勤務を行っている人たちに、様子を聞きました。
しばしばこのホームページに登場するNPOの職員たちは、当初は予定されていた仕事の取り消しが続き、ぼやいていることもありましたが。さすが、自分たちで新しい世界を切り拓く人たちです。この逆境でも、仕事は繁盛しているようです。

・あらゆる会議がオンラインになりましたが、空間移動の制約がないためか、以前より量が増え、質も良くなった気がします。
・もっと前からこの方式でやってれば良かったと思います。
・オンラインでの会議も、こうなる以前から普通に実施していましたが、そればかりになると、かなり疲れます。
・移動の時間がない分だけ、次々と予定が入ってきます。
・オンラインでの研修依頼も増えてきました。
・大学の授業もオンラインで始めました。少人数なので不都合はありません。

さらに、人助けに乗り出す人も。頼もしい人たちです。
・自宅に待機しながら、コロナウイルス関連の対策に追われています。
医療機関向けの食材提供、全国の低所得子育て世帯向けの食材提供。事業が減ったNPO職員を、他のNPOに出向させる仕組みづくりなど

育休から職場復帰した若手職員は。
・生後6月の子どもは、自宅近くの保育園に入園しましたが、緊急事態宣言の発令を受け、登園自粛の強い要請のため預けることができなくなりました。当面はテレワークを中心に勤務し、この状況を乗り切りたいと思っています。
保育園に預けることができないのは困りますが、子どもと過ごす時間が増えたことを前向きに捉えつつ、仕事と両立させます。

ソニー、採用を分け初任給から差をつける

4月21日の日経新聞「正社員って何だろう(2) 」は、「さらば平等 ソニーの覚悟 新人から給与格差 完全実力主義、逆転も可能」でした。
・・・デジタル革命が世界を揺らす21世紀。正社員のかたちって何だろう。ソニーがたどり着いた答えの一つが「初任給」は横一線でスタートという平等原則の見直しだった。その先には重い課題も待ち受けている・・・

・・・ソニーは昨年入社の新入社員から「新人の給与」は平等という原則を廃止した。能力や働き方が高く評価されると「I1」から「I9」までの等級が付き、階級に応じて給与が上がる。
従来は社員に等級を与えるのは最短でも入社2年目の夏以降だったが、昨年からは新入社員にも適用することにした。その結果、3カ月の見習い期間終了後の「初任給」に格差が出るようになった。松浦さんの「I3」だと月のベース給は5万円増え、賞与なども増額。年収は等級がない同期より100万円ほど多い。
いきなり給与に格差をつけるとやる気が失われるのでは? その心配はない。今後の働きぶりでは等級の降格もあるからだ。
「知識では院卒の同期にかなわないが製品化のアイデアでは負けない」。同じ技術職の大卒女性は早期の等級獲得を目指す。自らの働きで逆転可能な仕組みだからこそライバルも評価し、400人超の同期のやる気も失われない・・・

・・・日本の正社員は終身雇用と年功序列を前提に職務や勤務地を限定せずに働く「メンバーシップ型」が一般的だ。皆が同じ「ムラ社会」に帰属し教育するのも企業なので、初任給も平等であるべきだという考えだ。
一方、初任給に差をつけるソニーの取り組みは、責任や役割に応じて報酬を変える「ジョブ型」を意識する。能力などで個別に新人の給与を決める欧米型に近づけようという試みだ。
初任給見直しに先駆けて12年には採用も変更した。面接でゲーム開発、経理など職種ごとに70コースを提示。学生は第3希望まで選ぶ。人事部だけでなく個々の事業部門幹部も採否に関わる。採用からジョブ型を意識し横並びの初任給もやめる―・・・・

・・・ソニーの場合、等級の降格や剥奪はありうるが解雇に踏み切ることはしない。従来型の雇用関係とバランスをとることで激変を緩和している。経団連も「ジョブ型で採用された社員が特定の職務で能力を発揮できない場合、(解雇するのではなく)別の仕事をやってもらう日本的なジョブ型が望ましい」とする。
焦点は「賃金水準」かもしれない。解雇なしが原則のメンバーシップ型は突然の解雇リスクがない分、給与水準は解雇ありのジョブ型よりも低くなる。初任給を含む賃金で日本が見劣りする一因も、終身雇用を保証しているからだ。だが「薄給」のままで日本企業は高度人材を獲得できるのか。初任給平等原則の見直しは日本型の「正社員のかたちとは何か」を深く問いかけている・・・

わかりやすい図もついています。記事をご覧ください。
参考「働き方innovation 正社員って何だろう(1)

在宅勤務が変える仕事の仕方2

4月15日の日経新聞オピニオン欄、水野裕司・上級論説委員の「テレワークを阻む壁 時代遅れの時間管理」から。

・・・新型コロナウイルスの感染拡大抑制策として、会社に出勤せずに働くテレワークが広がってきた。自宅で仕事が進むかどうか不安だった人からも「実践してみると、意外にいける」という感想をよく聞く。デジタル技術を使い、会議や打ち合わせもオンラインでできるのは便利だ。
通勤が不要になる利点は大きい。総務省が5年ごとに実施する社会生活基本調査によると、2016年の通勤・通学時間(往復)は全国平均で1時間19分。首都圏の1都3県が1位から4位までを占め、トップの神奈川県は1時間45分にのぼった。これだけの時間を省けるうえ、通勤ラッシュで疲弊せずに済む。仕事の効率は上げやすくなる・・・

・・・しかし一方で、テレワークをやりにくくさせているものもある。労働時間を厳格に管理しなければならないというルールだ。
労働法上、使用者(会社)には労働者が働いた時間を把握・管理する責務があり、これはテレワークでも変わらない。自宅にいれば仕事を中断することがしばしばあるが、在宅勤務をする人は原則として、始業・終業時刻はもとより業務から離れた時刻や戻った時刻をその都度、記録する必要がある・・・
・・・こうした厳正な労働時間の管理は、労働といえば工場で働くことを指していたときから続く仕組みだ。
戦後間もない1947年に施行され、労働時間や賃金の制度を定める労働基準法は、働く時間と生産量が比例する工場労働を前提としている。働いた時間は賃金を決めるための物差しであり、その正確な把握は必要不可欠だった。
ところがデジタル化を中心とした産業構造の変化で、働いた時間と成果が比例しない仕事が急増している。定型作業を除けば、労働時間を賃金算定の基準にすることは理にかなわない。時間管理の意味は薄れているといえる。
労務管理が「集団」から「個」へと変化してきたこともある。工場労働なら、製造現場に集合した従業員を管理者が直接、指揮命令下に置け、労働時間の把握が容易だった。働き方が多様化し、働く場所が会社の中とは限らない現在は、時間管理を徹底しようとしても限界がある・・・

・・・働いた時間の長さでなく、どんな成果を出したかで賃金を決める仕組みを広げていくべきだろう。
労働時間の把握には働き過ぎを防ぐという重要な狙いもある。仕事の時間配分を自分で決める裁量労働制でも、会社が日々の就労状況を把握しなければならないのは、社員の健康管理のためだ・・・

在宅勤務が変える仕事の仕方

在宅勤務の処方箋」の続き、会社側の課題です。

20日の日経新聞は、「職場には戸惑いの声 時間管理「難しい」68%」が載っていました。エン・ジャパンが中小企業491社を対象に実施した調査です。
それによると、テレワークの導入で難しかったこと(複数回答)は「社員の時間管理」が68%と最多。このほか「利用条件の設定」や「業務ルールの設定」「社員への指導・業績評価」などです。
よかったことは、「通勤困難の社員が継続して働ける」「業務効率の向上」「多様性のある働き方を選べる」などだそうです。

在宅勤務は、仕事の仕方を変えるよいきっかけです。
4月14日の読売新聞夕刊に、柳川範之・東大経済学部教授へのインタビュー「働き方 今こそ変える!」が載っていました。柳川先生は、このページでも紹介したことがあります。独学で大学に進みました。「柳川範之・東大教授の独学勉強法

・・・柳川 もし今、このIT技術がなかったとしたら、どんな隔離生活になっていたか。無理して会社に行くか、家でじっとしているしかなく、かなり悲惨な事態になっていたはずです。それがこの技術があるからこそ、家でもある程度、仕事や勉強もでき、ネットでの注文や医療もできる。
会社に行けないから、仕方がなくオンラインで仕事するという空気もありますが、変革の契機と前向きに考えたほうがいい・・・

・・・柳川 第一に、働くイコール会社に行くこと、と思ってきた人は、意識を変えざるを得なくなる。家で仕事をするからには、それぞれがすべき仕事の中身を、自分で考えざるを得ない局面が増えるからです。
——部下を怒り、駄目出しばかりしていた人、「仕事が忙しい」と深夜帰りしていた人が家でガミガミ、ゴロゴロしていたら、仕事の内実がバレそうですね。
柳川 怒ることが必要な局面もあるでしょうが(笑)、オンライン会議になると大事な会議だけ開催することになるので、いらぬ説教は減るでしょう。
——在宅勤務は公私の区別がつきにくく、長時間労働が懸念されています。ストレス蓄積で虐待、DVの増加も心配されています。
柳川 技術革新の時代にあって、失敗がない体制をつくってから動こうとする日本は、米中に比べて対応が遅いとされてきた。しかし、もはやできる範囲でテレワークをせざるを得ない以上、やりながら真剣に試行錯誤するしかない・・・

在宅勤務の処方箋

コロナウィルス対策で、在宅勤務、テレワークが広がっています。会社側と従業員側それぞれに、課題が見えてきています。

14日の日経新聞夕刊「Bizワザ」「在宅でも職場環境で働く 着替えて仕事モードに」が、在宅勤務のコツを書いていました。
知人からも、「家では、仕事に集中できません」「子どもが(学校が休みで)邪魔をします」などの、ぼやきが聞こえてきます。
仕事と家との切り替えをしないと、のんべんだらりと時間が過ぎます。また、夜中まで仕事をすることになってしまいます。そもそも家は仕事から帰って、ゆっくりする場所ですから、気持ちの切り替えをしないと、うまくいきません。難しいですね。

また、外出自粛の、心身への健康被害も心配です。4月16日の読売新聞、久野譜也・筑波大教授へのインタビュー「新型コロナ「外出自粛」 運動不足だと健康二次被害」を載せていました。
・・・働く世代では、例えばテレワークを3月から実施している健康経営企業の事例で、約1か月の間に、社員の1日あたりの歩数が約3000歩から最大5000歩減ったという、結構衝撃的なデータが出ています・・・

・・・新型コロナウイルス対策としての外出自粛はもちろん重要です。ただ、一方で運動不足が長期化してしまうと、私たちの健康状態が悪化し、免疫力なども低下しかねない。社会が新型コロナウイルスを乗り切ったとしても、基礎疾患をお持ちの高齢者や、働く世代の生活習慣病の悪化など、二次的な健康被害が多く出てくる懸念もある。そのことに、個人も行政も、もっと危機感を持つべきだと感じています・・・
・・・新型コロナウイルスへの感染予防では、手洗いや消毒、マスクの使用などがもちろん重要ですが、体の免疫力も、河川の堤防に例えられるような役割を担っている。その免疫力を高め維持するには、栄養摂取と休養に次いで、運動量を保つことも大切だとされています。適度に体を動かすことは、代謝を促し、血流を良くし、ホルモンの分泌を促すなど、体に備わるいくつもの『スイッチ』を入れる働きをするからです。逆に不活発な状態が続けば、その堤防を低くしてしまうことにもつながりかねない。そのリスクが、見落とされがちだと感じています・・・

それぞれ詳しくは、記事をお読みください。会社側の課題は、次回書きます。