カテゴリー別アーカイブ: 仕事の仕方

生き様-仕事の仕方

複写機で苦境が突破できる?

地下鉄の車内広告を見て、疑問に思ったので、インターネットで見てみました。富士ゼロックスの新商品の宣伝動画です。
ピンチを迎えた経営者たち(そう発言しています)に向かって、上司(?)がビジネス戦術を見直し、前進するという話です。地下鉄内広告よりインターネットの方が、長いようです。

疑問その1は、登場人物が、上司を含めほとんど白人であることです。日本人らしき人と黒人もでてきますが。そして、見るからに外国人らしい人が、日本語を話します。
これは、この会社の宣伝だけでなく、他の会社の宣伝にも目立ちます。なぜ、日本人ではないのでしょうね。あるいは、アジアの人たちではないのでしょうね。

疑問その2は、「ビジネス戦術を見直して立ち向かおう」と主人公は発言します。そして、新しい複写機を入れ、ピンチなった業務がよくなるぞとハッパをかけます。それを聞いて、経営者たちが、光に向かって駆けだしていきます。
私も複写機にはお世話になっています。しかし、経営者たちが悩むような事業の苦境が、複写機を変えただけで乗り越えられるとは思いません。
富士ゼロックスの幹部は、このような話を信じているのでしょうか。宣伝だからこんなものだと、思えばよいのでしょうか。

魚谷雅彦社長の「メンターは求めよ」

8月31日の日経新聞夕刊「あすへの話題」魚谷雅彦・資生堂社長の「メンターは求めよ」。
魚谷社長は、日本コカ・コーラ社長などを務めた、プロ経営者です。その方でも、メンターを持っておられます。経営者として有名な、椎名武雄・元日本IBM会長です。
悩んだときなどに、話を聞いてもらう。そして、背中を押してもらうのです。拙著『明るい公務員講座』で、一人で悩むなとお教えしました。それは、駆け出しの若で社員だけでなく、管理職などより上位の立場になっても同じです。

魚谷社長は、後輩たちに助言を送っておられます。
・・・メンターを得るには能動的に動くべきだ。私に「メンターになって下さい」と言ってくる若者もいる。本気の人は本当に連絡が来て、地方からでも東京まで会いに来る。本気でメンターを求めるなら、講演会などに積極的に足を運び、挙手して質問しあいさつする。たたけよ、さらば開かれん。・・・

危機の時の優先順位

8月23日の読売新聞、折木良一・元統幕議長の「危機管理から見た新型コロナ 優先順位一番は国民の命」から。
・・・危機に直面した時、真っ先に把握すべきは、その危機が「どんな特性を持つのか。どれぐらいの範囲に影響を及ぼしているのか」ということです。
次に、「国家レベルの非常事態になるのか、あるいは一部の地方や業界にとどまるのか」をしっかりと見極めます。それによって、我々の取り組み方が大きく異なってくるからです。
国家レベルの危機だと判断したら、今度は「何をやるか」の優先順位を決めます。その場合の一番の「物差し」は国民の命です。

私が携わった東日本大震災では、最初に大地震と津波災害、その後に福島第一原発の事故が襲ってきました。地震発生後、直ちに状況を把握し、自衛隊として取るべき対応や手段、「戦力配分」(部隊や装備の配置)を判断しました。もちろん、事態は刻々と変わります。想定外のことも次々と起きたため、絶えず自衛隊の対応や配置を修正しました。
福島第一原発事故の場合、敵は放射能で、姿が見えません。最初はいったい何が起きているのかもよくわかりませんでした。警察・消防当局とも連携し、状況を見定めながら、まずはベターな手段を取るよう心掛けました。そして、ベターから限りなくベストに近づけていきました。新型コロナの場合も「見えない敵」が相手ですから、ベターからベストに近づけていく手法が参考になると思います・・・

・・・自衛隊は、新型コロナ感染者が多く発生したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」に派遣され、検査、消毒などを実施しました。出動した約2700人(延べ人数)の隊員に一人も感染者が出ませんでした。感染防護基準の順守の徹底など、日々の訓練、培ったノウハウに基づき行動した結果にほかなりません。
医療面でも、自衛隊は国内外の災害派遣の教訓を生かし、普段から様々なシミュレーション(模擬訓練)を行っています。
クルーズ船では厚生労働省のスタッフに感染者が出ました。厚労省は基本的に政策官庁ですが、クルーズ船の対応はオペレーション(運用)。政策に軸足のある厚労省にオペレーションを求めても無理があります。厚労省と自衛隊の上部組織に、まとめ役の司令塔が必要だったと思います・・・

テレワークの短所

7月27日の日経新聞、西條都夫・編集委員の「一過性で終わらせない 希望と不安のテレワーク」から。テレワークの長所と短所が並べられています。

・・・これがテレワークの理想像とすれば、他方で負の側面も浮かび上がった。現時点で明確になったマイナスは2つあり、一つは(田中社長の感想とは正反対の)生産性の低下、もう一つは働く人の不安の増大だ。
前者については6月の内閣府の調査で「仕事の効率が上がった」と答えたテレワーク経験者が9.7%だったのに対し、「下がった」は47.7%に及んだ。他の調査でも同様の結果が出ており、これが緊急事態宣言解除後にオフィス回帰が急速に進んだ理由である。
背景にあるのは、「コロナによって、突然余儀なくされたテレワーク」による準備不足だろう。テレワーク研究で有名な米スタンフォード大のニコラス・ブルーム教授は生産性の足を引っ張る最大の要因は「子供」だという。
「うちにも4歳の男の子がいて、パパが家にいると遊んでほしくて書斎に乱入してくる。これは生産性の大きな妨げ」と教授はいう。ほかに「自室がなく家族共用の食卓で仕事をする」「通信状態が悪い」といった要因も大きく、家で働くための環境整備がテレワークの成果を引き出す前提条件であることが分かる。

「不安」については、職場における基盤が弱い若年層がより強く感じているのが特徴的だ。例えばパーソル総合研究所の調査によると、見えない場所で仕事をするので「上司から公正に評価してもらえるか不安」という人は50代では23%にとどまったのに対し、20代は43%に達した。
全員が会社に来ない一斉テレワークより、来る人と来ない人が混在する「まだらテレワーク」のほうが不安を助長するというデータもある・・・
・・・コロナによるテレワークの機運が一過性で終わるのは、やはり惜しい。日本経済の直面する人手不足やワークライフバランスの改善などの課題解決にテレワークは威力を発揮する。マイナス面を抑える取り組みが企業には求められる・・・

資生堂、人事をジョブ型に

NHKウエッブサイト「資生堂流人事の極意 “脱・年功序列”で会社が変わる?」(7月22日掲載)から。
・・・終身雇用・年功序列の日本型雇用とは異なる制度として、最近、ビジネス界で話題になっている「ジョブ型」という働き方。仕事の質や成果をより評価する人事制度です。資生堂は来年1月から、一般社員およそ3800人を対象にジョブ型を導入、思い切った改革が始まります。ジョブ型の導入で社員や会社はどう変わるのか。6年前、外部から招かれて資生堂のトップになり経営改革に取り組む魚谷雅彦社長に聞きました・・・
魚谷社長
「資生堂は変わらないといけないという強い危機感を持っていました。10年後、20年後、100年後を考えると、グローバルでの成長をさらに進めていかないといけない。そのためには、会社の中の風土やプロセス、仕組みの再構築を行い、社員の多様性や働き方の柔軟性を持たせないと会社の未来は作れないと思っています」

「資生堂を変える」ために、魚谷社長が今、変えようとしているのが人事制度です。5年前の2015年から、本社の管理職およそ1200人を対象にジョブ型の制度を導入。来年1月、一般社員およそ3800人を対象に制度を拡大します。
日本の大企業を中心に広がっている終身雇用・年功序列といった「メンバーシップ型」の雇用制度ではなく、「ジョブ型」を取り入れることで、多様なバックグラウンドを持つ社員を登用し、その個性を引き出して会社経営に生かすことがねらいです。
魚谷社長
「ジョブ型を取り入れている欧米の企業の在り方がすべて称賛すべきことだとは決して思っていません。ただ、私はジョブ型が『究極の適材適所』だと考えています。ダイバーシティー(多様性)を進めるうえで、女性の活躍を推進するだけでなく、外国人にもっとビジネスに参画してもらう。あるいは新入社員から育ってきている人と同時に、外部から採用して入ってもらうなど、さまざまな形で人材の多様性を高めていくとなると、新卒一括採用・年功序列・終身雇用といったいわゆる日本型の雇用慣行は、高度成長期の日本ではよかった仕組みだと思いますが、今の時代に合わなくなってきていると思います」

管理職を対象にした資生堂のジョブ型雇用は具体的に次のような仕組みです。
・営業・開発・マーケティングなどおよそ20の部門で各ポストに応じたグレード(職級)を設定。
・社員は、自分の持つ専門性や職務経験などを考慮したうえで、希望するポストを会社側に伝える。
・会社側は、ポストで定めた専門性や経験に対して社員の適性を見てグレードを定め、要件を満たすポストに社員を登用。
・ポストについた社員は直属の上司と面談し、今後達成する目標や具体的な計画などを決め、ジョブディスクリプション(職務記述書)と呼ばれる文書を作成。
・ジョブディスクリプションで決めた目標の達成度合いに応じて、給与や次のポストが決まる。

魚谷社長は、ジョブ型を導入すること自体が目的ではなく、多様な個人の力を伸ばすことで、ビジネスにイノベーションを起こし、企業価値の向上につなげることが重要だと話しています。