カテゴリーアーカイブ:仕事の仕方

人工知能が要約を作ってくれる

2025年11月8日   岡本全勝

人工知能が、長い文章の要約を作ってくれます。便利なものです。でも、人の能力向上にとっては、困ったことです。

かつて部下に、彼が出席した会議の概要を報告してもらおうとしたときのことです。その求めに対して、彼は「待ってください、全文を起こしていますから」と答えました。私は「詳しいことは不要なので、要点だけ教えてくれ」と言ったのですが、「全文を文字起こしする方が楽なので、待ってください」と言ったのです。
今なら、議事録作成を機械がしてくれて、要約も作ってくれるのでしょう。私は使ったことがないので、その要約が上司の求めている要求を満たしているかはわかりません。でも、いずれ能力が向上して、良い要約を作ってくれるのでしょう。
それで良いのでしょうか。職員の能力は向上しません。

報道機関の方と話していると、記者たちも人工知能を使っているようです。確かに、事件などの報告なら、あまり知恵も使いません。5W1Hが入っていれば良いのですから。
幹部曰く「下手な記事を書く記者なら、人工知能の記事の方が読みやすい」。
ここでも、記者の能力は向上しないでしょう。

記者会見で、一生懸命、発言をパソコンに打ち込んでいる記者がいます。私は「人間ワープロになるな」と意見していました。もうそんなことはしなくても、機械が文字起こしをしてくれるでしょう。間違っているか所だけ、手を入れれば良いのです。
私が記者に求めたのは、「質問と再質問を考えよ」ということです。
記者がつける付加価値は、発言を文字にして伝えることではなく、その発言の意味を考え、隠されていることを追及することでしょう。「頭を使う」ということはそういうことです。新聞の機能はニュースを伝えることではなく、解説にあります。

機械がすること・できることと、人間がすること・人間にしかできないことが問われるようになります。

人工知能で国会答弁作成支援2

2025年10月9日   岡本全勝

人工知能で国会答弁作成支援」の続きです。
人工知能は、答弁作成にも使えそうです。前例通りの答弁を書くのなら。

ただし、人工知能は過去の蓄積を調べる機能であって、頭の「肉体労働」を楽にするけど、新しいことを考えるといった「創造性」はないのでしょうね。過去に類似例のない質問が出たら、どのような答弁案を作ってくれるのでしょうか。その答弁の当否を、職員は判断できるのでしょうか。

次の記事を読むと、勝手に捏造してくれるそうです。しかも、社員・職員が見破ることができないのです。人工知能に頼るようになると、まちがいを見つける能力も育たないでしょう。
人工知能が嘘をつくことも大問題ですが、人工知能に頼ることで職員の能力が向上しないことが、一番の弊害かもしれません。自動運転で車を運転する技術が下手になること、ワープロを使うことで漢字を覚えなくなることなどは大きな問題を生じませんが、職員育成・能力向上については大問題です。

10月8日付け日経新聞「デロイト、AIを使用した報告書に誤り オーストラリア政府に返金」。
・・・コンサル大手デロイトが人工知能(AI)を使用して作成した報告書に複数の誤りが発覚し、顧客のオーストラリア政府に代金の一部を返金したことが分かった。AIの利用が広がるコンサル業界の信頼性に疑問符がつきそうだ。

豪メディアが7日までに報じた。報告書は豪雇用省の依頼を受け、デロイトが約44万豪ドル(約4400万円)の報酬で作成。7月に公表したという。
ところが、報告書を見た地元大学の研究者が誤りを指摘。存在しない学術文献3件が参照されたことになっていたり、裁判所の判決文からの引用として文章が捏造されたりしていた。
豪メディアによると、デロイトは報告書の作成にAIを使用したと認めた・・・

人工知能で国会答弁作成支援

2025年10月8日   岡本全勝

デジタル庁の人工知能の使用実績について発表がありました(8月29日)。
・・・デジタル庁では、本年5月以降、デジタル社会の実現に向けた重点計画(2025年6月13日 閣議決定)に基づき、デジタル庁の内部開発等により構築・展開する政府等におけるAI基盤である「ガバメントAI」に係る取組の一部として、デジタル庁全職員が利用できる生成AI利用環境(プロジェクト名:源内(げんない))を内製開発で構築しました。また、源内で国会答弁検索AIや法制度調査支援AIなど、行政実務を支援する複数のアプリケーションを提供することで、行政の現場での利用状況や課題を把握する検証を進めてきました。
このたび、源内の利用を開始してから3か月が経過したことを受け、デジタル庁職員による生成AIの利用実績を公表します・・・

これについて、9月30日の時事通信社「iJAMP」が解説していました「答弁準備もAI時代=デジ庁AI「源内」」。
・・・職員への利用アンケート結果によると、利用頻度では「週に数回」との回答が44.5%で最も多く、「毎日」も28.1%でした。業務効率化への寄与度については、「ある程度」が57.3%、「非常に」が21.8%で、全体の約8割が「寄与している」と答えました。
実際に利用した職員からは肯定的な反応が多かったようです。「行政文書を読む・整理する手間の省力化につながった」「情報検索に役立つ。さまざまな視点で気づきを与えてくれる」「システム情報を調べる際に役に立っている。マニュアルを確認する場合に比べて1回当たり30分、1時間の作業時間を削減できている」といった声が寄せられています。
国会答弁の準備作業での効果も目立ちました。これまでは、膨大な過去答弁や法令を人手で調べていましたが、国会答弁検索AIは、想定質問を入力すると過去の政府答弁を関連性の高い順に示し、URLや審議日時も併せて表示。短時間で関連資料を抽出し整理できるため、準備時間が大幅に短縮されました。法制度調査でも、複雑な条文や関連する通知をAIが要約し、以前より短時間で全体像を把握できたといいます・・・

この記述では、国会答弁作成そのものでなく、過去の答弁を調べるのに使っているようです。その作業に使うのなら、人工知能は得意です。職員は楽になります。しかし、上司が「あれもこれも、さまざまな答弁を調べよ」と指示すると、楽にはなりません。この項続く。

不測の事態の訓練

2025年9月26日   岡本全勝

日経新聞「私の履歴書」、9月は宇宙飛行士の向井千秋さんです。11日の「搭乗決定」に、次のような話が書かれています。
選ばれた有能な宇宙飛行士でも、このように訓練します。「火事場の馬鹿力」という表現もありますが、通常の人は異常事態が起きた場合に、想定したこと、訓練したことしか実行できません。いえ、訓練したこともできないのです。東京電力福島第一原発事故も、そうでした。

・・・訓練は大変でしょうとよく聞かれるが、このミッションではこういう実験をやると決まっていて、訓練の手順も決まっている。何回か訓練するとできることをやっていて、一歩一歩やっていって気がつくと打ちあげ当日になっている。NASAではそうした仕組みがしっかりできていて「すごい」と感心した。

大変なのは計画通りに行かないときだ。予定が狂ったときにどう対応するかが訓練のキモで、考えられる限りの異常事態を想定して対応する訓練を繰り返した。訓練の途中で不測の事態が発生したことを知らせる「グリーンカード」が差し入れられると、時間内に対策をとらねばならない。

例えばショウジョウバエ10匹を使う実験の訓練で「容器を開けると3匹しかはいっていない」といったカードが差し入れられる。真剣にやっているので実際の事故か訓練かの区別がつかなくなるほどで、訓練が終わるとぐったりしてしまった。打ちあげ前の2年間はこうした訓練をぶっ続けでやった・・・

間違っている上司にへつらう?

2025年8月24日   岡本全勝

8月20日の朝日新聞、ニューヨークタイムズ・コラムニストの眼、トーマス・フリードマン氏の「労働統計局長の解任 困難な正しさ、選ばない人々」から。ここではごく一部を紹介するので、関心ある方はぜひ全文をお読みください。

・・・ドナルド・トランプ氏が大統領として行ってきた数々の恐ろしい言動の中で、最も危険な出来事が8月1日に起こった。私たちが信頼し、独立している政府の経済統計機関に、トランプ氏は事実上、彼と同じくらいの大うそつきになるよう命じたのだ。
トランプ氏は、気に入らない経済ニュースを彼にもたらしたという理由で、上院で承認された労働統計局長エリカ・マッケンターファー氏を解雇した。そしてその数時間後に、2番目に危険なことが起こった。我が国の経済運営に最も責任を持つトランプ政権の高官たちが全員、それに同調したのだ。
彼らはトランプ氏にこう言うべきだった。「大統領、もしこの決定について考え直さないなら、つまり、悪い経済ニュースをもたらしたという理由で労働統計局のトップを解雇するなら、今後、その局がよいニュースを発表した時、誰が信頼するでしょうか」と。しかし、彼らは即座にトランプ氏をかばった。

ウォールストリート・ジャーナルが指摘したように、チャベスデレマー労働長官は1日朝、テレビに出演し、発表されたばかりの雇用統計が5月と6月は下方修正されたものの、「雇用はプラス成長を続けている」と宣言した。ところが、数時間後、トランプ氏が自身の直属である労働統計局長を解雇したというニュースを知ると、X(旧ツイッター)にこう投稿した。「雇用統計は公正かつ正確でなければならず、政治目的で操作されてはならないという大統領の見解に、私は心から賛成します」
ベッセント財務長官やハセット国家経済会議委員長、チャベスデレマー労働長官、グリア米通商代表部代表といったような上司の下で働くとき、彼らが自分を守ってくれないばかりか、職を守るためには生けにえとして自分をトランプ氏に差し出すだろうと知りながら、今後、どれだけの政府官僚が悪いニュースを伝える勇気を持てるだろうか・・・

と書いたら、肝冷斎が8月20日に「雲消雨霽」を書いていました。