カテゴリー別アーカイブ: 仕事の仕方

生き様-仕事の仕方

インターネットが進めたチーム研究

3月3日の日経新聞夕刊「私のリーダー論」、坂村健さんの「決定に責任持つ覚悟を」から。

――良いリーダーには何が必要だと思いますか。
「リーダーのあるべき姿は、どんな組織なのか、どんな経済環境やビジネスモデルなのか、といった条件によって変わってきます。こういう人ならどんな組織のリーダーにもなれる、なんて人はいませんよ。和をもってよしとするのがいい状況もあれば、リーダーシップを強く出してチームを引っ張っていかないといけない状況もあります」
「ただ共通しているのは、自分が決定したことに対して責任を持つ覚悟ではないでしょうか。リーダーとは決定権を持つ存在です。自分の組織がどうなっているのか、リーダーは状況をしっかり把握しないと、次にどうすべきかを決めることはできません」

――若い頃からチームのリーダーとしてプロジェクトを進めてきたのでしょうか。
「僕が学生の頃、研究はチームで行うものではなかったです。当時は個人主義で、一人で研究するスタイルが主流でしたから。研究者としてのキャリアのスタート地点ともいえるトロンを始めたのは1984年です。79年に慶応義塾大学の大学院を修了し、すぐに東京大学の助手になりました。その後、講師になろうとしていた頃です」
「まだ今ほどコンピューターが進歩していなかった時代です。普及し始めていた大型コンピューターの研究は一人で行うのは難しかった。そういう中で、70年代にマイクロコンピューターが登場したことで、これなら研究チームを組まなくてもできそうだと考え、一人でプロジェクトを立ち上げたのです」

――研究の進め方が個人からチームへ、変わってきたのはいつごろからでしょう。
「チームの力が強くなったのは、インターネットが普及し始めた頃でしょうね。80年代にインターネットは民間開放されました。それまでは軍事技術だったのです。やはりインターネットの普及が、人と人とが密接に連携することを簡単にしたんですよ」
「昔はとにかく連絡を取り合うのが大変だった。電話をかけるか、手紙を書くか、直接会うかしかないでしょう。研究の途中で24時間いつでも相談できない。いまはメールもあるし、SNS(交流サイト)もある。遠く離れている人と連携しやすくなった。環境の変化がいまのチームの基礎になっていますね」

社風を変える

2月26日の日経新聞オピニオン欄、上杉素直さんの「社風変革、覚悟の「踊り場」」から。
・・・組織文化論に詳しい佐藤和・慶大教授によると、日本企業のカルチャーはとりわけ濃い。終身雇用でメンバーの入れ替わりが少なく、文化が守られやすい。採用や評価も同じ気質を求め、風変わりな社員もいずれ社風に染まる。
カルチャーに沿った行動パターンが確立されると、あうんの呼吸が成り立ち、冗長な指示は要らなくなる。業務の効率を考えればプラス要素が大いにある。半面、その怖さも知らなければならない・・・

・・・「不祥事の多くは悪意が原因でない。社会の変化に気づかず、規範に反する行為を慣性で繰り返す無意識から生じる」。佐藤教授の分析にはうなずかされる。
たとえば、システム障害を連発したみずほフィナンシャルグループはその企業風土を金融庁に糾弾された。「言うべきことを言わない、言われたことだけしかしない」という指摘が正しいとして、そこに悪意は存在しない。
善悪で割り切れないからむしろややこしいともいえる。不祥事にまみれてカルチャーの刷新を誓うが、結局変革がかなわず、失敗を繰り返すケースはみずほに限らない。こびりついたカルチャーの「解凍」は簡単ではない。

だが、企業が自らカルチャーを解かし、改めるのは不可能でないはずだ。「企業文化を変える」と正面から唱えた損害保険ジャパンの取り組みは示唆に富む。
損保業界は厳しい環境にある。人口減少でパイが減り、自然災害の増加でコストが膨らみ、デジタル化で競争は激しさを増す。経営者が危機感を高めるところまではよくあるストーリーだ。
そこからの行動がユニークだ。西沢敬二社長が2018年、特別チームに命じたのは、いわば自画像を描き直す作業だった。合併を繰り返して誕生した損保ジャパンが誇れる強みは何か。大きく5社の源流にどんな精神が宿ったか。その上で、未来に向けてどんなカルチャーをめざすのか。
めざすカルチャーは、乱暴にいえば、従来の流儀をひっくり返すものだ。損保ジャパンはもともと上意下達のノルマ主義で知られ、市場シェア日本一が社員の誇りだった。このトップダウン型から、お客を基点としたボトムアップ型への転換が始まった・・・
続きは原文をお読みください。

職場の機能、社員の交流と一体感

2月17日の日経新聞「オフィス新常態」「芝生に集い話し合い 出社したくなる場所へ」から。

・・・在宅勤務の定着などでどこでも働けるようになった時代。オフィスは毎日出社する場所ではなくなり、機能の見直しが進む。社員同士のコミュニケーションを促す場や、在宅よりも生産性を高めることができる場としての役割を磨き、テレワークで浮かび上がる課題を補完する動きが相次ぐ・・・

・・・「家みたいにくつろげるオフィスです」。人工知能(AI)学習教材のアタマプラス(東京・港)でオフィス移転を手掛けた杉本悠さんはこう話す。2021年12月に移転したばかりのオフィスには社員が集うスペースに人工の芝生が敷いてある。自宅のように靴を脱ぎ、あぐらをかいたり、クッションに座ったりして会議や作業に没頭できる。オフィス面積は従来より1.6倍ほど広げた。
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で多くの社員は週2~3日テレワークになり、直近の出社率も2割程度。テレワークを導入して通勤時間の削減や地方との商談のしやすさなどの利点を感じる一方、社員同士の交流や一体感を生むという面では限界を感じるようになった。「全員で同じ目標に向かい、楽しみながら仕事をする上でオフィスが重要」(杉本さん)。同社はコロナ禍収束後もあくまでオフィスが働き方の主体と位置づける考えだ。

森ビルの21年の東京23区のオフィス需要調査によると、新たに借りる予定がある企業のうち面積を広げる意向がある企業は20年比7ポイント増の40%だった。6割前後だったコロナ前に比べると低水準だが、テレワークでは対応が困難な取り組みをオフィスの環境づくりの課題としてあげる企業が増えていることも一因にあるという・・・

・・・吉田淳一(三菱地所)社長は「新しい価値を生み出すには、色々な人とけんけんごうごう議論しないといけない」と指摘する。コミュニケーションを取りながら働く必要性があると見る・・・

オンライン授業の大学生の能力への影響

2月16日の朝日新聞夕刊に、「コロナ禍、大学生の能力に影 オンラインで議論減る? 協働力・親和力…」が載っていました。

・・・コロナ禍の影響で、大学生の「協働力」や「親和力」「行動持続力」などが低下している――。大手予備校・河合塾のグループ会社によるテストで、そんな傾向が浮かんだ。いずれも、社会に出て仕事をする際に必要度が高い能力とされる。コロナ禍でオンライン授業が増え、グループで議論して成果を発表する機会が減るなどした影響が出ているようだ。

このテストはピックアンドミックス社(東京)が実施している「PROG(プログ)」。ジェネリックスキルと呼ばれる、社会で求められる一般的な能力を測るもので、同じ学生が1年生の時に1回目を、3年生になった時に2回目を受ける。
21年にテストを受けた3年生2万556人分の結果をみると、目標に向けて協力して仕事を進める協働力、他者と豊かな関係を築く親和力のほか統率力といった能力が、1年生の時より低下していた。これらの力は、他の人と信頼を築きチームとして動くために必要な基礎力とされ、20年の3年生では、1年生の時より伸びていた力だった。

PROGを河合塾とともに開発したリアセック社(東京)の松村直樹・キャリア総合研究所主幹研究員は、低下の原因として、21年にテストを受けた3年生が2年生の冒頭(20年春)からコロナ禍に見舞われ、オンライン授業を長く受けてきた学年であることを挙げ、「授業で数人の学生によるグループワークが減り、力を伸ばす効果がある学生同士の議論や意見発表の機会が減った影響が大きい」とみる。同様に低下した行動持続力については、「コロナ禍で様々な活動が制限され、主体的に行動しづらい影響が出た」と分析する・・・

品質不正、組織風土

組織がつく嘘、上司の責任」の続きです。12月27日の日経新聞オピニオン欄、西條都夫・上級論説委員の「企業はなぜ失敗を繰り返すか カギは職場の「心の安全」」が、良い分析をしています。
・・・今年も企業の不祥事が多発した。なかでも経営トップが引責辞任を迫られた2件が印象に残る。度重なる品質不正を犯した三菱電機と、やはりシステム障害を繰り返したみずほフィナンシャルグループである。
再発防止を誓った会社がなぜ懲りもせず同じ失敗を重ねるのか。両社を題材にその手掛かりを探ってみよう。みずほに関しては11月26日付の金融庁の「行政処分について」という発表が参考になる。
そこで問題視されたのは「言うべきことを言わない、言われたことだけしかしない姿勢」だ。各人が自分の守備範囲にしか注意を払わず、その外縁でまずい事態が起きていても、知らんぷりでやり過ごす。そんな組織の習性を、公文書としては異例の生々しい表現で批判したのだ。

三菱電機でも、外部の弁護士らによる調査報告書で「言ったもん負け」の体質があったと報告された。何か問題を指摘しても、組織は無関心。解決が個人に丸投げされ、過大な負担を押し付けられる。それが「見て見ぬふり」の横行する風土を生んだ。
同社は過去に何度も品質点検を実施したが、それでも長崎製作所などで不正が続いていた。不正一掃という本社の掛け声を現場は単なるポーズと受け流し、問題の解決ではなく隠蔽を選んだのだ。
職位による認識ギャップも大きい。同社の従業員サーベイをみると、役職の高い人ほど「自分の部門は風通しがよく、個人を尊重する職場だ」と自己満足気味だが、一般従業員の認識は違う。例えば「プライベートを多少犠牲にしても、組織貢献が求められる雰囲気があるか」という質問に、「そうは思わない」と答えた人は部長級の64%、課長級の51%に対し、一般社員は37%と少数にとどまった。
先週発表された調査報告書の第2弾でも、上司や先輩に仕事の疑問をぶつけたところ、「担当でないのに口を挟むな」「言われたとおりにやっていればいい」と怒鳴られた社員の証言が登場する。不正が繰り返される裏には、組織の病理があったのだ。

最近の経営学で注目されている「心理的安全性」の考え方が、事態の理解に役立つだろう。米ハーバード大のエイミー・エドモンドソン教授の打ち出したこの概念は、あるチームに属する人が「自分が問題提起や異論を唱えても、仲間やリーダーがしっかり受け止めてくれる」「このチームでは何を言っても安全」と思える関係性のことだ。
反対に何かモノを言うと、頭ごなしに否定されたり、無視されたり、嘲笑されたりする集団は心理的安全性が低い。そんな職場では誰もが沈黙しがちで、新たな発想や「気づき」に乏しく、イノベーションも生まれない。
心理的安全性が注目されたきっかけは、2012年に実施された米グーグルの大がかりな社内調査だ。同社は200弱の職場ごとの生産性やイノベーション創出力を計測し、活気のある職場と沈滞した職場の違いを分析した。その結果、各人が自由に発言し、積極的に意見を戦わせるチームは成果を上げ、逆に抜群の実績を持つ人を集めたオールスター的なチームでも、心理的安全性が低いと期待に届かないことが判明した。
誤解のないようつけ加えれば、「安全性の高いチーム」といわゆる「ヌルい職場」は似て非なるものだ。職場心理の研究者、石井遼介氏の4象限分類によると、後者も安全性は高いが、求められる仕事の水準が低いので、居心地がいいだけで充実感や自己成長感とは無縁だ。一方で要求水準と安全性がともに高い職場は健全な衝突が起こり、組織としての学習が促され、優れた成果を上げやすい・・・
全文をお読みください。