カテゴリー別アーカイブ: 仕事の仕方

生き様-仕事の仕方

女性社員の育成

日経新聞「私の履歴書」、矢野龍・住友林業最高顧問、6月26日の「女性活躍 立ち遅れ挽回へ意識改革 総合職採用開始、抜てき人事も」から。

・・・話が前後するが、社長になって6年目の2004年に女性の業務企画職(一般に言う総合職)の採用を始めた。大企業ではずいぶん遅い方ではなかっただろうか。すぐには人も育たないから、ほどなく幹部候補として女性の中途採用も始めた・・・
・・・僕が社長になる前の役員の時に、専門のコンサルタントを3カ月間会社に入れて女性活躍のレベルを評価してもらったことがあった。結果は散々で、要はこんな遅れた会社は見たことがないというのが結論であった・・・

・・・女性活躍を推進する要諦は抜てきであると経営者の集まりで教えてもらい、それもすぐに実行した。
男女平等に、持っている力量で評価すべきだという考えの人もいるが、優秀なのに、不利な処遇のなかで、外との折衝や組織の統率の経験をしてこられなかっただけなのであって、それは遅まきながらでもやってもらうほうが会社のためになる。やればすぐにできるようになるのだ。
会社は社会の常識やルールのなかに存在するもので、それを制約とうるさがるようでは経営者として失格ではあるまいか。話がそれたが僕は監査役が言うことも、天の声だと思って従った。総合職で女性を採用するようになって20年近くがたち、それぞれに力を付けていて頼もしい。もう少ししたら、総合職採用の人たちも役員の年代になってくる。会社をどう変えてくれるか、本当に楽しみだ・・・
支店の本部長の接待マニュアル

支店の「本部長の接待マニュアル」

日経新聞私の履歴書、6月は矢野龍・住友林業最高顧問です。21日の「住宅本部長 抜き打ちで展示場を視察」から。

・・・僕が専務時代の1998年、住宅の業界誌に販売が低迷を続ける住友林業の体たらくを手ひどく批判されたことがあった。僕は担当外だったがこれを読んで怒りに体が震えるようであった。業界の「負け犬」呼ばわりなのだ。
僕は業界誌を3月の取締役会に持っていって「こんなことを書かれて悔しくないんですか。低迷の理由として1番目に、リーダーシップ不足と書いてある。まずは我々役員が猛反省し、早急に立て直しの対策をたて、実行に移すべきです」と訴えた。
すると5月1日付で住宅本部長の辞令が出た。なら君がやれとなったのだ。

辞令当日は早速、横浜の住宅展示場に行き、現場を激励した。しばらくして仙台に行ったときのことだ。新幹線から降りると現地の幹部以下がずらりと並んでホームで待っていた。それで言うには、今夜は宴席の用意があり、翌朝は朝礼の後、市内観光と展示場の視察をして、お土産に牛タンをもたせるという。
なんでそんなことをするのかと聞くと、全国の支店に本部長の接待マニュアルがあるそうだった。お客様の営業に費やすべきエネルギーを、社内のご機嫌とりに使って何になるのか。地酒、カラオケ、形だけの朝礼や視察、お土産など、即刻やめてもらった。

それ以降は予告していくのをやめ、抜き打ちでいきなり展示場に行くことにした。僕は本部長を務めた5月からの11カ月間、全国300カ所あまりの展示場をくまなく回った。僕はこの間、結果的に1日も休まなかった。神は現場に宿るというのが僕の考えだ。現場の話をじっくり聞き、ここを直してほしいという要望には即座に対応して、会社の仕組みに反映させた・・・

マスク氏、週40時間の出社を求める

米電気自動車大手テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が従業員に対し、少なくとも週40時間はオフィスで働くよう求めたことが報道されました。
・・・米ワシントン・ポスト紙が確認したテスラ従業員向けの5月31日付のメールで、マスク氏は週40時間の出社を求めたうえで、「もし姿を見せなければ、あなたが辞職したとみなす」と述べた。週40時間は、1日8時間勤務だと週5日出社することになる。同紙によると、マスク氏は宇宙ベンチャー「スペースX」の従業員にも同様のメールを送ったという。
テスラ従業員向けのメールでは「あなたがより地位が高いほど、あなたの存在は可視化されるべきだ。だからこそ私もずっと工場に住んでいた」としたうえで、「そうしていなければ、テスラはずっと前に破綻していた」と述べた。
マスク氏は「こうした要求をしない企業もあるが、彼らが最後に偉大な新製品を出したのはいつか?」とも明記。
「テスラは地球上で最も興奮する、意義のある製品を生み出してきたし、これからもそうしていく。これは電話をかけるだけでは起きない」と訴えた・・・(2022年6月2日、朝日新聞ウエッブニュース

パーソル総合研究所の小林祐児・上席主任研究員へのインタビュー「週40時間出社 マスク氏発言 理解の鍵は米国のオフィス回帰」(6月2日、朝日新聞ウエッブニュース)から。
――マスク氏の発言をどう受け止めますか
前提として、米国は新型コロナウイルスの感染が拡大する前から、テレワークの先進国でした。
国土が広いために自動車出勤が中心で、皆が同時刻にオフィスに集まるため、都市部では渋滞問題が深刻でした。
会社側が交通費を支給するという慣習も薄いので、ガソリン代節約という目的も相まって、1990年代から徐々にテレワークの導入が進んできています。
一方で、「場所を大事にする」という考えも根強くあるのが米国です。
象徴的なのが、アップルやグーグルなど世界的な企業を生み出したシリコンバレー。この場所には、今でも世界中から起業家や優秀なIT技術者が集まります。
マスク氏の発言を理解する鍵は、ここにあると思います。

――どういうことでしょう
テレワークが良い悪いという単純な議論ではなく、「革新的なイノベーションには人と人との物理的な近さが必要だ」という考え方です。優秀な人材が集まり、顔を合わせて議論することで、イノベーションや新しいアイデアが生まれる。こうした考え方を背景に、実はコロナ禍の前から「オフィス回帰」の流れは起きていました。
特にオフィス回帰が顕著だったのは、IBMや米ヤフーなどのIT業界です。
IT業界は仕事自体がテレワークとの相性が良い分、テレワークの実施が進みすぎた。各企業が、新しいアイデア出しやイノベーションの停滞感を抱えることになり、「テレワークではなくてオフィスで働く」という揺り戻しがこの10年あまりで出てきています。
マスク氏の発言の根底にあるのは、このように「イノベーションや新しいアイデアを生むためには出社することが必要だ」という価値観だと思います。

頼み事が来たら「はい」と言う

6月2日の日経新聞夕刊「人間発見」、舞台プロデューサー 吉井久美子さんの「ブロードウェーで生きる 4」から。

・・・「ウエスト・サイド物語」や「オペラ座の怪人」など数多くの名作の制作や演出を務めたブロードウェーの巨匠、ハロルド・プリンス氏(故人)。同氏の半生を振り返る「プリンス・オブ・ブロードウェー」(2017年上演)を手がけた。
雲の上の人だったハルとの初対面は忘れもしません。劇場で紹介してもらったとき、私のような若手のあいさつに、ハルはさっと立ち上がるのです。同じプロデューサー同士、対等だという彼の気配りでした。当時とてもうれしかったと後に伝えたら「そんなの当たり前じゃないか」と笑っていました・・・

・・・ハルから学んだことはたくさんありますが、一つは「何に対しても『NO(ノー)』から入らないこと」です。もちろん無責任に引き受けてはいけませんが、仕事でも何でも頼み事がきたら最初に「YES(イエス)」と言う。
ハルは他人に「YES」と言ってもらえる話し方も心得ていました。おだてられると頑張ってしまうのは私の元来の性格かもしれませんが、人間はポジティブな気持ちが原動力となるものだと思います・・・

締め切りが仕事を進める

5月16日の日経新聞夕刊コラム「プロムナード」、声優の池澤春菜さんの「我、締め切りを買えり」から。

・・・締め切りとは不思議なもの。
おそらく、締め切りが好き、って人は少数派だと思う。その数少ない1人が、わたし。
あ、でも、好き、というのとはちょっと違うかも。締め切りがないと駄目。締め切りが適度にある生活が好き。締め切り後の解放感が好き。
だって人は怠惰な生き物。いつでもいいよ、と言われれば、一生やらない。プライオリティを上げるには、外圧が必須なのだ。あとは脳の報酬系への刺激。締め切り後の「やったーーー、今回も乗り切ったぜ!」、これが何より効く。やらなきゃ、という緊張とそれからの解放、この繰り返しですっかり中毒になる。下手な嗜好品より遙かにヤバいかも・・・