「仕事の仕方」カテゴリーアーカイブ

生き様-仕事の仕方

ケーキ破損、原因が特定できない

12月に高島屋がネット販売したクリスマスケーキが、崩れた状態で客に届いた事件がありました。その原因について会社は、特定できないと公表しました。
・・・製造委託先や配送会社に調査した結果「原因の特定は不可能」と結論付けた。製造や保管、配送工程での温度管理は適切だったとしている・・・(日経新聞12月27日)。

これは困ったことです。原因がわからないと、今後も同様の事故が起きる可能性があります。2800個あまりを売って、そのうち約800個が壊れていたのです。1個や2個なら原因究明が難しいこともあるでしょうが、800個も、そして4個に1個が壊れているようでは、何か原因があるでしょう。少しでも、原因を絞り込めないのですかね。

それがわからないままに、今後も商品を売るのでしょうか。私が担当社員だったら、怖くて同じものは売れませんね。製造会社などを変える必要も出てきます。

在宅勤務でも会議は減らない

ワシントンポストに、興味深い記事が載っていました。”Tired of too many meetings? These companies helped cut the excess. From no-meeting Wednesdays to focus weeks, companies are finding new ways to lessen workers’ Zoom overload” 12 月 26 日
登録すると無料で読めます。

パソコンが翻訳した日本語では、「会議が多すぎてうんざりしていませんか? これらの企業は過剰分の削減に貢献した。会議のない水曜日から集中週間まで、企業は従業員のZoomの過負荷を軽減する新たな方法を見つけている」です。
本文も、パソコンに翻訳してもらって読みました。まあまあ意味はとれます。

・・・企業は、コロナウイルスのパンデミックが最高潮に達している間、従業員の多くが自宅に閉じ込められていた従業員とのつながりを保つため、会議を拡大した。
しかし数年後、多くの人が少なくともパートタイムでオフィスで働いているにもかかわらず、圧倒的な数のビデオ会議が残っています。一部の企業は、疲労を軽減し生産性を高めるために、会議の文化を見直し、時間を短縮しています。
2020 年 2 月以降、Microsoft Teams ユーザーは 1 週間あたり 3 倍の会議と通話を行っていると同社は報告しています。労働者らは、会議が多すぎて非効率であることが、生産性に対する障害の上位 3 つのうちの 2 つであると報告しました・・・

記事では、会社が会議を削減し、社員が集中できる時間を確保する努力をしている様子が報告されています。欧米の職場では、文書によるやりとりが主だと聞いていたのですが、そうでもないのですね。
会議が仕事の邪魔だとは、拙著『明るい公務員講座 仕事の達人編』で主張しました。そこでは、集まっての会議を想定していたのですが、オンライン会議が普及しても、問題は同じですね。

役員も大部屋で、決定を迅速に

11月30日の日経新聞夕刊「私のリーダー論」は、川上康・琉球銀行頭取の「役員も大部屋で、決定を迅速に」でした。

――琉球銀行には役員室がないそうですね。
「10年ほど前から頭取以下5人の役員が大部屋で一緒に仕事をしています。前任の頭取が始めましたが、実は20年ほど前、企画課長だった私が提案しました」
「役員ひとりひとりの部屋を回って説明するのは時間の無駄です。個室という密室にこもっていると考える方向性が少しずつずれてしまうと感じていました。目標に向けた価値観や情報の共有が重要なのに、部屋という壁があるとそれができない。提案は長く塩漬けになっていて、導入直後は反発もあったようですが、始めてみるとこれはいいということになりました」

――その効果は。
「意思決定の迅速化です。新型コロナウイルス禍になる前の18年秋の融資方針の転換がいい例でした。当時の県内は大変な好況でした。沖縄に観光客が押し寄せ、住宅建築着工数も伸びていました」「一方でオーバーツーリズムが大きな問題になりつつありました。建築費が上昇しアパート運営も利益が出にくくなっていたし、ホテルは供給過剰が懸念されていました。そして18年7月の観光客数が約6年ぶりに前年同月を下回ったと県が発表しました」
「ちょっと集まってくれ、と目の前に座る役員に声をかけました。景気の変わり目だと思うが、皆さんはどう思うかと尋ねると、彼らもそんな気がしていたという。ならば融資の審査基準を上げようと、その場で意思統一。役員は審査や営業など担当部門に散って融資基準を練り直しました。20年度からの中期経営計画は、不景気を前提に計画を作ることができました」

――そうした環境を作るうえで何が大切ですか。
「強固なチームワークを築き担当役員に仕事を任せることです。一番まずいのが権力の集中。自分の思い通りにできるかもしれませんが個人のリソースは限られます。何でも自分で決めようとすると判断速度が落ち、マーケットにおいてけぼりにされてしまいます。さらに部長や課長は、担当役員を軽視するようになるでしょう」
「担当役員が時間をかけて検討する方がいい結果になる。多少の齟齬は生まれますが、そこは互いが話し合えばいい。その意味でも大部屋は役立ちます」

カレーライス作りの作業手順書

木曜日お昼のNHK「サラメシ」を、職場で弁当を食べながら楽しみに見ています。木曜日夜の番組の再放送ですが、夜は見ることが難しいので。
サラリーマンの昼ご飯を見せてくれるのですが、多くの場合は職場の紹介になっています。私が楽しみにしているのは、そちらの方です。工場などで、こんな風に製品が作られているのだとか、社員はこのような作業をしているのだというのが、興味深いです。

12月14日は福島県の岳温泉の「湯守」(引湯管の中に詰まった湯花を掃除する)のほかに、広島の切削工具を製造する工場での社員全員でまかないカレーを作る話でした。これが勉強になりました。
カレーライスを作るのに、作業手順書を作るのです。用意する食材や器具、何人で何を買い出しに行くか、調理の手順などが書かれています。包丁を使う際には気をつけることまで。そこまでしなくてもと思いますが、この工場では作業手順書は当然のことなのです。初めての社員でも、できるようにしているのです。
当日はその作業手順書に従って、全員が取り組みます。順調に進むのですが、うまくいかないこともあります。隠し味にチョコレートを入れるのですが、暑さでチョコが溶けてしまいました。すると、作業手順書に「溶けないように冷やしておく」と加筆します。なるほど。

工場長は、社員のコミュニケーションを強化するために始めたと語っておられますが、社員に一体感を持たすとともに、作業手順書の重要さを認識させることになるのでしょう。ベテランの経験だけに頼らない、新人でも作業ができるのです。さすがです。役所も見習わなければ。

作る技術と閉じる技術

新しい課題に対応するため、法律を作ったり、新しい政策を作ったりします。それを実現するには、いくつかの技術が必要です。発想し企画書にする。組織内で了解を得て、外部の関係者に同意を取るなどなど。公務員も会社員も、そのような部署にいると、先輩たちを見たり前例を見て技術を身に付けます。

他方で、使命を終えた政策や優先順位が落ちた政策を閉じる必要も出てきます。ところが、これがなかなかやっかいな仕事なのです。時限にしておけば、期限が来ると終了しますが、その場合でも関係者からは「延期を」との要望が出る場合があります。

この閉じる技術は、時に作る場合より難しいことがあります。関係者の反対です。
この閉じる技術については、これまであまり取り上げられてきませんでした。新たに作ることは、担当者の自慢になりますし、周囲も取り上げてくれます。しかし、閉じることについては、周囲はあまり関心がありません。作って後世に残った場合は記録も書かれますが、閉じてしまった場合は記録も残されない場合が多いです。語り継ぐ後継者もいないのです。
戦闘においても、先駆け、先鋒は高く評価されますが、負け戦のしんがりは大変な負担なのに、あまり取り上げられません。

成熟社会になり、新しい課題への対応とともに、それらに予算や人を回すために、既存事業の廃止が必要になりました。これからは、閉じる技術を教える必要があるのでしょう。