カテゴリー別アーカイブ: 仕事の仕方

生き様-仕事の仕方

学生を引きつける授業

消防大学校の授業に、校歌練習があります。私も最初は、その必要性と効果を疑問に思っていました。ところが、学生たちの評価は高いのです。「発声の基本がわかった」とか「ぐいぐいと学生を引きつける教授法がすごいです」といった評価が、書かれます。今日、私も授業に参加し、なるほどと納得しました。「校歌練習」は導入部であって、発声の基本、挨拶の基本を、厳しく指導してくださいます。
社会人である以上、人前で話す、それも相手にわかりやすく話すことは必須です。さらに消防の場合は、現場での指示・指揮・報告・確認と、はっきりと手短に伝えることは基本です。もちろん、大学校に入校するのは各消防本部の幹部と幹部予定者ですから、声は大きくはっきりしています。しかし、音楽の先生の前に出ると、まだまだなのです。
全員で、あるいはグループで、さらには個別にみんなの前で、歌を歌ったり、名前を名乗ったり、挨拶をさせられます。そして、どのような点が悪いか、良いかを指摘してくださいます。学生は、声を出すことで参加し、指名されることで緊張し、しかられることで緊張感が高まり、褒められることでほっとします。人を動かす際の基本ですね。先生はもっといろいろな工夫をしておられますが、「企業秘密」でしょうから、これ以上は書きません。

わたしの仕事術:当面の仕事の書き出し

今日は、仕事の進め方について、お話しします。と言っても、その取りかかり方です。
拙著「明るい係長講座」では、年間業務予定表の必要性と効果を、書きました。 あれは、組織の業務管理です。今日は、それを前提に、各人の仕事の管理をお話しします。
もちろん、私の職場にも行事や業務の予定表があり、私自身も手帳に仕事の予定を書き込んで、スケジュールを管理しています。しかし、それは会議や懇談会などの「行事の予定」=「時間の予定」であって、自分で考え片付けなければならない「作業の予定」=「頭の予定」ではないですよね。
例えば、「13日13:00~14:00 校長講話」と、手帳に書いてあっても、それは行事・業務の予定であって、私がまずしなければならないことは、その準備(レジュメの作成、話す内容の骨子づくり)です。重要なのは、本番の前の準備です。しかし、それをいつするかは、手帳には書いてないのが普通でしょう。
また、私たちの職場では、一つの仕事に没頭しておればよい、ということは少ないです。同時にいくつも仕事を抱えていて、どれもが、なかなか片付かないことって、多いですよね。
仕事が縦一列に並んで、来てくれればよいのですが。それも、簡単な仕事から順に。アリくらいの仕事の後ろにネズミくらいの仕事が。ネズミの後ろにネコが。ネコの後ろにイヌが・・というように(笑い)。
世の中、そうはいきません。縦一列でなく、横一列や集団で、こちらに向かってきます。昔、夜店やゲームセンターの射的で、そんなのがありましたね。右に出てきたトラに照準を合わせると、左の方でゾウが出てきて。そっちに気をとられていると、また奥の方でライオンが出てきて・・。迷っているうちに、的が隠れてしまい、どれも倒すことができないのです。
私たちの抱える仕事も同じで、大物や小物が混在していて、いらいらします。夜寝る前とか、朝机に向かった時に、仕事がいろいろ浮かんで、憂鬱になったことって、ありませんか。
私は、仕事を、次のように整理しています。
まず、抱えている仕事を、紙(A4の罫紙)に書き出します。大物も小物も。その際に、「当面の仕事」と「中長期的課題」とに分けます。「当面の仕事」には、締め切り日を書きます。
そして、それぞれの中は、「本業」「副業」「その他」に分類しておきます。副業といっても、考え事の整理や原稿です。その他とは、雑事です。もちろん、「本業」が一番大切なのですが、「その他」に入っている仕事にも、気がかりなことは、たくさんあります。
「なーんだ、それだけのことか」と、がっかりなさる人も、多いでしょう。
しかし、「明るい係長講座」にも書きましたが、目に見える形にしないと、人は忘れます。さらに、書き出すことで、まずは全体がつかめて、一安心します。
頭の中にあるだけでは、ぐるぐる巡りをして、不安を増長します。「あれもしなければ」「これも片付けなければ」と思っていると、いらいらするだけで、ちっとも進みません。
次に、急ぎのものとそうでないものを分類することで、急ぎの優先順位が見えます。そして、大物と小物が見えて、どれに力と時間がかかるか、配分がわかります。このように優先順位をはっきりさせることで、本人は安心し、仕事も進みます。
「見える化」は、仕事を整理するために、とても重要なことです。
処理できた項目には、赤鉛筆で「済み」と書き込ます。この瞬間が、うれしいのですよね。途中まで進んだ項目には、「あと、××が必要」と書き込みます。
順に片付いて、赤鉛筆で消していくのですが、残念なことに新しい仕事が入ってきて、加筆され、項目が減ることはないのです。数日経って、メモが汚くなると、全体を書き換えます。
私は、こんなことを、1週間や10日ごとに、繰り返しています。
貼ってはがせるメモ用紙(ポストイット)に、処理しなければならない仕事を書き込んで、机に貼っている人もいます。あれは見た目がきれいでないことと、全体像がつかめない、優先順位が見えないので、私は採用していません。
ノートに書き込む人もおられますが、私は、1枚の用紙の方が見やすいのと、すんだら捨てる主義なので、ノートは使っていません。
皆さんも、それぞれ工夫してやっておられることでしょうが、私のやり方を「明るい係長講座」続編として書きました。

リーダーの力量・想像力の差

久しぶりに、「明るい係長講座」です。
管理職やリーダーの仕事は、次の二つに分けることができます。一つは、「決められた定型業務」です。もう一つは、「これまでにない新しい仕事」です。後者には、上司から命令された課題、未来に向けての企画、さらに事件事故など危機が生じた場合があります。
決められた定型業務なら、組織はきちんと処理してくれます。上司は、進行管理をしておればよいのです。これに対し、これまでにない仕事に取り組む際に、リーダーの能力に差が出ます。一方に、あわてふためく人、いろいろ悩むが結論の出せない人など、できの悪い上司がいます。それに対し、的確に仕事を進める頼もしい上司もいます。
その差は何か。私は、一言で言うと、それはその上司の持つ「想像力」の違いだと思います。どれだけ広い視野で、物事を考えることができるかです。危機が生じた時、想像していなかったことが起こると、パニックになります。想定内のことなら、上手に処理できます。新しいことを企画する時、想像力が貧困では、良いアイデアは出ません。アイデアが豊富なら、優れた案も出てきます。
その想像力の差は、何で生まれるか。何で身につけるか。
一つは、経験です。一度経験したことは、次には上手にこなせます。もう一つは、勉強です。歴史や他人の経験を知ることで、我が身に置き換えてうまく処理できます。古人曰く、「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」。
しかし、これまでにないことが起こる場合は、これらが役立ちません。その際に効果を発揮するのは、自ら想像してみることです。イマジネーションを膨らまして、「こんなことが起こったら、こうしよう」とか「あんなことが生じたら、ああしよう」とかです。議会の想定問答、記者会見での受け答えなどが、これです。
企画の場合は、いろんな人(専門家)を知っていることも、ここに分類しましょう。自分一人で考えるには限界があるので、想像力のアウトソーシングをするのです。しかし最後は、その人が決めなければなりません。
軍隊の参謀や、知恵モノといわれる職員など。彼らに共通することは、「想像力が豊富」ということでしょう。少し範囲を広げると、新しいことを発明する技術者、新しい理論を見いだす科学者は、日夜新しいことを想像しています。さらに、球技などのスポーツ選手や将棋などのゲームにも、当てはまります。「相手は、次にどのように攻めてくるか」、これを読むことが、勝つ秘訣です。
もちろん、想像力が豊かなだけでは、ことは成就しません。次に、それを実現する過程が必要です。(続く)

ロールモデル・お手本になる先輩

昨日の続き(「科学の伝道師」11月1日)です。鎌田先生は、新著『知的生産な生き方』(2009年、東洋経済新報社)で、「ロールモデルを求めて」を副題にしておられます。先生の言葉を借りれば、「自分の人生で目標とする具体的な像」です。
社会人なら誰でも、多かれ少なかれ、人生の「お師匠さん」がいるのではないでしょうか。お手本にしたい上司とか先輩とか。本で読んだ偉人でという場合もあります。そのようなお師匠さんに巡り会えると、幸せですよね。
「人生は、白地のキャンバスに絵を描くようなものだ」という表現もあります。しかし、会社員にせよ科学者にせよ、全く白地からのスタートでは、あまりに負荷が多すぎます。それに、普通は、自分の属する会社や学会と全く離れて、独自の創作をすることはあり得ません。
お師匠さんをお手本にして、少しでも近づきたいと思う。そして、できれば、お師匠さんを越えていく。人生って、そのようなものではないでしょうか。そのお師匠さんは、親であったり、上司であったり、先生であったり・・。
しかし、しばしば、お師匠さんには近づけず、できの悪い弟子で終わります。また、お師匠さんを越えなければ、それはエピゴーネンで終わるのでしょう。
もっとも、「あの先輩のようには、なりたくない」という、反面教師のロールモデルも、よくある話です。自ら反省。

リーダー育成と研修

15日から日経新聞「やさしい経済学-経営学のフロンティア」は、金井寿宏教授の「リーダー育成の連鎖」を連載しています。
17日は、「721の法則」です。リーダシップが発揮できるようになる上で有益だったのは、7割が仕事上の経験、2割が上手な人を通じての薫陶、1割が研修ということです。研修やセミナーが役に立つ割合は、とても低いです。