カテゴリー別アーカイブ: 仕事の仕方

生き様-仕事の仕方

今日の日記・支援本部での一日

朝、8時過ぎに出勤。この仕事に就いた最初のころは7時過ぎに出勤していたので、最近は遅くなりました。霞ヶ関では、これでも早いようです。でも、世間ではこれは遅い方ですよね。例によって、職員が昨夜のうちに作って、机の上に置いてくれた書類に目を通し、加筆。静かな時間帯に、これからの課題を検討。次々と出勤してくる職員を捕まえては、「あれ、どうなっている?」と確認。

9:30から、毎日の事務局班長会議。みんなで、しなければならない仕事を確認します。また、今日は金曜日なので、事務局の課題を更新しました。事務局内だけでなく、政府部内、自治体関係者にこれらの情報を知ってもらうことが、これからの取組に効果的だと考えています。
11:00から、大臣らと事務局幹部が集まって、定例の「運営会議」。いくつもの報告と課題の指摘があり、50分もかかりました。まあ、いつものことですが。松本大臣、片山大臣、仙石副長官、平野副大臣、松下副大臣、それぞれ論客ですから、最も緊張する時間です。その場で回答できないものは、宿題にしてもらって終了。
12:00から、官邸で各府省連絡会議。今日は総理出席で、公務員の給与削減の指示が出ました。その後、被災者支援の議題に。大臣や副長官からの指摘があり、引き続き各府省次官から進捗状況の報告。私は、途中から弁当を開いて、食べながら聞いていました。

13:00過ぎに終わり、道路をはさんだ内閣府庁舎に戻りました。そこで、もらったばかりの宿題を、職員に「転送」。
その後、若手職員(シャンポリオンS1くん、S2くん)を誘って、内閣府前の道路の草引きに。毎朝通る道ばた(官邸前交差点から内閣府庁舎まで約20メートル)の雑草が伸びているので、草引きをしたかったのです。一人では恥ずかしいので、シャンポリオンさん二人を誘って、決行。昨日する予定が、雨で今日に延期しました。
歩道のアスファルトや敷石の隙間に生えるだけあって、手強いです。引っ張っても葉っぱだけちぎれて、根っこは抜けないのが多いです。アザミはトゲだらけで、3人ともギブアップ。靴で踏んだらトゲが取れて、抜くことができました。3人で、うろ覚えの岡本真夜の「トゥモロー」を口ずさみながら。「・・アスファルトに咲く花のように♪♪・・これは強いわ」と。3人で、レジ袋5つに満杯になりました。

仕事場に戻ると、「ちょっと良いですか」という、M、E、M参事官の「波状攻撃」を受けつつも、次々と指示を出して「撃退」。別途、ゲリラ的に攻撃に来る、Y、F参事官の「あれ、どないしますねん」という攻撃には、たじろぎつつも「あんたの案は何や」と「反撃」し、その案を採用して「防戦」。
16:30から、午後の班長会議。17:00から副大臣の記者会見同席。その後、記者さんの質問に受け答え。
明日4日は、福島市で、原発事故関係市町村長との意見交換会。6日は、仙台市で宮城県内市町村への説明会。さらに11日からは、岩手、宮城両県で市町村との復旧復興に向けての意見交換会です。

帰ろうと思ったら、H参事官が最後の攻撃に来ました。「次長が急がせるので、次のようにしたいのですが。できれば今日中に・・」。そこで、私も電話をかけることに。時間外を承知で、いくつかの市役所の秘書課に電話をしました。金曜夕方に電話するのと、月曜の朝では、2日違いますよね。

19:00から都内某所で、事務局を卒業した中堅幹部職員の慰労会。一時120人いた職員は、現在40人まで縮小しました。苦労をかけた職員に、お礼を言いつつ、反省すべき点を聞くのが目的です。
みんな、お世辞半分で「大変だったけど、勉強になりました」と言ってくれるのが、嬉しいです。
以上、今日の日記です(小学生みたい。笑い)。

決断が不足した組織

沼上幹『組織戦略の考え方―企業経営の健全性のために』(2003年、ちくま新書)に、組織が疲労した場合の一つとして「決断不足」が挙げられています。そして決断が不足すると、次のような徴候が現れると指摘されています。
第一は、製品開発プロジェクトなどで、フルライン・フルスペックの仕様書が多数出てくることである。コストは他社より低く、すべての性能に関して他社競合製品を上回るものを、他社よりも早く市場に導入せよ、というような要求が出てきたら要注意である。これは何も考えていないことの証である。問題は、時間や予算の制約があるから、すべての点で競争相手を上回ることは簡単にはできないというところにある。だから、一部については目をつむってもらうといった決断が必要なのである。
二つ目の徴候は、社内で多様な経営改革検討委員会が増えることである。もし本当に必要だと判断したのであれば、検討などさせずに即座に導入すればよい。各部署から人を出させて検討委員会を作るのは、経営者たちに思慮が欠けていて、決断できていないことを疑わせる。あるいは衆知を集めて民主的に経営している見かけを作りすぎなのかもしれない。
三つ目の徴候は、人材育成である。人材育成はどのような時にも必要だから、誰も批判しない。しかし問題は、現在直面している課題の解決には、人材育成が時間的に間に合わない、というところにある。

現場で汗をかくことと、本部で先を読むことと

被災者支援の仕事をしていて、常に考え、悩んでいることがあります。それは、「今、私たちの仕事で欠けていることは、何だろうか」と「次に、必要な仕事は、何だろうか」ということです。
当然、今取りかかっている仕事が、うまく進んでいるかを確認することは、重要です。しかし、それは部下職員が、それぞれ責任を持ってやってくれています。
責任者としての私が考えなければならないことは、「今できていないこと」の拾い上げです。そして、「次にすべきこと」の手配です。これは、難しいですね。あることの評価でなく、無いことの想像ですから。いろんな方面から情報を集め、今の仕事から少し距離を置いて、そして例えば2週間や1か月後の状態を想像しながら、考えるしかないです。構想力が問われます。課題がわかれば、次にはそのための職員配置を考え、工程表を立てることができます。それは、大まかな方向を示せば、参事官たちが考えてくれます。

私がこの仕事に従事して最初にしたことは、「現地の課題と被災者生活支援チームの取組み(分類)」を作ることでした。そして、それに合わせて組織をつくること(班編制と職員集め)でした。この表は、その後は、各参事官が更新してくれています。私は、この表に載っていない課題を考えることが仕事なのです。
毎日忙しいので、目の前の仕事に忙殺される。それはそれで充実感があるのですが、それに没頭していると、先のことが考えられません。

定例的な業務をしている際には、このようなことを考えなくても、目標と工程表はあるのです。軍隊や初めての仕事を立ち上げる場合には、このような「作戦参謀」の仕事が必要なのでしょう。
各市町村の災害対策本部でも、現在の課題と取り組み状況の確認と合わせ、次の課題と取り組み方を考えておられるでしょう。市長とその参謀が、それをどれだけ適確にするか。「先を読む」。それによって、業務の進み方が、大きく違ってくるでしょう。うまくやれると、部下に無駄をさせず、また、住民の希望に先回りして応えることができます。

今日の失敗・あいさつ

今朝出勤して、内閣府の建物に入り、階段を下りていました。すると、掃除をしているおじさんが、手を止めて、「おはようございます」と挨拶をしてくれました。いつもは、私から声をかけるのですが、今日は考え事をしながら歩いていたので、こちらから声をかけるのを忘れたのです。毎朝、私から声をかけるので、向こうも覚えていてくれたのでしょう。でも、先に声をかけられたのは、不覚でした。
明るい係長講座」にも書きましたが、かつて仕えた大臣や知事さんから、挨拶の大切さを学びました。富山県庁で、守衛さんや掃除をしてくれている人たちに、挨拶とお礼を言ったら喜んでもらえたので、その後は、職場で誰彼なしに、挨拶するようになりました。と言っても、「おはようございます」とか「ごくろうさま」「ありがとうございます」と、一言です。「変なおじさん」と、思われているのでしょうかねえ。
先日、初対面のある大臣警護官に挨拶したら、「かつて総理官邸前で警備していたら、当時の岡本総理秘書官に、『ごくろうさま』と声をかけてもらいました」と言われました。帽子をかぶっていたらから、私とわかったのでしょうか(笑い)。
総理官邸前では、たくさんの若い警官が警備で立っています。雨の日も寒い朝も。「ごくろうさま」と声をかけると、敬礼で返してくれます。今の仕事に就いてから、総理官邸に行くことも増えました。離れてから1年半経つのですが、官邸勤めの職員さんたちが覚えていてくれて、声をかけてくれます。ありがたいことです。

部下に信頼される上司

リスクについて、勉強を続けています。連載の範囲からは少し外れるのですが、安心に関する心理学にも興味を持って、いくつか本を読みました。中谷内一也教授の著作が、勉強になりました。人は何を安全と思うか、報道によっていかにイメージがつくられるかなどです。例えば、『安全。でも、安心できない…―信頼をめぐる心理学』(2008年、ちくま新書)や『リスクのモノサシ―安全・安心生活はありうるか』(2006年、NHKブックス)です。食品偽装事件などを例に、わかりやすく書かれています。
ところで、『安全。でも、安心できない…』は、管理職論、人間関係論として、非常に参考になりました。この本は、リスクに関して関係者(製造業者、商店、厚生労働省)や評価機関が信頼できる場合とできない場合を、心理学の知見から解説しています。いくつも勉強になることが書いてあるのですが、その一つに次のようなことがあります。
人が他人や会社を信頼するのは、その「優れた能力」だけでなく、「まじめな姿勢」と「相手への配慮」によるのだそうです。
なるほど。この3つに要約すれば、わかりやすいです。仕事ができる上司でも、一生懸命さが見えない上司は、尊敬しにくいです。仕事ができ、かつまじめな上司でも、部下である私の話に耳を傾けてくれない上司は、とっつきにくいです(反省)。
今まで、部下に信頼される上司のありかたについて考え、話してきましたが、この整理はわかりやすいです。「何だ、当たり前のことじゃないか」とおっしゃる方もおられるでしょうが、なかなか実践はできないものです。私の経験を加味して、使わせてもらいます。