昨日金曜日、若手職員が資料を持って説明に来ました。あるテーマについて想定問答集を作るので、その項目を整理した案です。自信満々の様子です。確かに彼の自信通りに、内容は良くできていました。しかし私は、厳しく次のように指導しました。
「1 右上に、作成した日付が入っていない。
2 下に、ページ番号が打たれていない。
まずここで、失格。×。
次に、
3 表題が内容を表していない。よって、表題を見ても、これが何の資料かわからない。例えば、次のようにしてはどうか・・・。
4 さらに、これは別添資料であって、関係者に示す資料になっていない。この紙を関係者に配って、答弁作成の依頼をするのだから、この紙の前に、何の目的で、いつまでに、どのような体裁で作るかを書いた「趣旨紙」が必要。
よって、××」と。
彼は「ううう・・」と唸り、「岡本学校を卒業するために、卒業試験と思って作ったのですが」と。
私は、「これでは、落第。よって、岡本組組員に残留」と、申し渡しました。
内容は良くできた資料なので、月曜日には、100点満点の資料が上がってくるでしょう。
「仕事の仕方」カテゴリーアーカイブ
生き様-仕事の仕方
情報セキュリティセンター
内閣官房に、情報セキュリティセンターがあります。先日出席した会議では、政府機関がサイバー攻撃にあった事例が報告されていました。
手口が巧妙になっているので、職員には「変なメールを開かないように」注意を呼びかけています。また、時々「引っかけメール」を送って正しく対応できるか、訓練もしています。
組織管理者、監督者には、次々と新しいリスク管理が求められます。セクハラやパワハラ、個人情報保護、部下のメンタルヘルスなどは、かつてはなかった組織のリスク管理です。管理職が知っていなければならない「知識」が増えています。そして、予防だけでなく、起きてしまった場合の対処も重要です。『明るい係長講座』の次に、「管理職が知っていなければならない組織管理常識集」をまとめたいと思っているのですが・・。
政府機関だけでなく、個人も危険にさらされています。最近では、スマートフォンを利用している際に、銀行口座からお金を引き出される、あなたの名前で他人を中傷するなどの被害が多いようです。被害に遭わないように、子どもへの教育も重要です。
悪魔の代理人
先日紹介した、齋藤ウイリアム浩幸著『ザ・チーム』に、次のような記述があります。筆者がアメリカの高校で、ディベートの訓練に励んだときのことです。
・・ディベートは、きちんと筋道立てて自分の意見を述べ、品位を保ちながら静かな言葉で、相手を説得することだ・・試合はチーム戦で行われる。弁舌をふるう人、資料を探す人、戦略を練る人がチームを組む・・
議論に不可欠なのが、「悪魔の代理人」(Devil’s Advocacy)と呼ばれる役割だ。議論にあえて反対の立場で質問し、相手の論理の弱点を突く。もともとはローマ・カトリック教会で教義を定めたり改定するとき、誰かを聖人に列するとき、意図的にその教義やその人の業績に反対する「悪魔」の立場をとって、教義を正当化する主張の隙をチェックしたり、より強い議論に支えられた教義に鍛え上げる、あるいは聖人になるためのより説得力ある理由を見つける役割だ。
いまでもコンサルタント業界などでは、大事なプレゼンテーション前に中身をチェックするとき、悪魔の代理人が指名されている・・(p222~)
・・ドラッカーは、異論の重要性を指摘している。GM中興の祖であるアルフレッド・スローンについて述べたくだりを引用する。
「スローンは、GMの最高レベルの会議では、『それではこの決定に関しては、意見が完全に一致していると了解してよろしいでしょうか』と聞き、出席者全員がうなずくときには、 『それでは、この問題について、異なる見解を引き出し、この決定がいかなる意味をもつかについて、もっと理解するための時間が必要と思われるので、検討を次回まで延期することを提案したい』といったそうである」(『経営者の条件』ダイヤモンド社)・・(p226)
私も時々、部下が持ってくる案について、あえて「こんな考えの人が質問したら、どう答えるの?」と、いろんな角度から質問を投げて、悪魔の代理人をやっています。国会質問や記者会見では、こちらの思ったような質問は出ません。こちらが困るような質問を、想定しておかなければならないのです。部下職員は、「いやな上司」と思っているでしょうね(苦笑)。
想定問答を作る際に、部下職員は、答えやすい問を作ることは、「お詫びの仕方」(2007年2月1日の記事)でも指摘しました。
想定問答を打ち合わせているときに、2種類の上司や同僚がいます。1人は、原案について、その答弁案を深掘りする人。一番狭い場合は、文章を練る人です。
もう1人は、その答弁案を離れて、違った角度から問題点を指摘する人です。例えば「そもそも、そんな質問は出ませんよ。出るとしたら、××の角度でしょう」とか「この答弁をする時点では、前提条件が変わっているはずです・・」とかです。前者も重要ですが、後者はもっと重要です。
リーダーに求められる資質
11月26日の日経新聞グローバルオピニオン、ダミアン・オブライエン氏(スイスの人材コンサルティング会長)の発言「企業リーダー早期に選べ」から。
・・欧米には「CEO(最高経営責任者)はユニークアニマル」という表現がある。企業に限らないが、組織のトップに立つ人間には、他のポストとは違う独特の資質や姿勢が必要だ。あえて言えば、CEOに向いている人と向いていない人がいる。
例えば、CEOは底抜けに楽観的な性格の持ち主であったほうが良い。どんな難局に臨んでも、「何とかなる」という前向きな気持ちを失わず、組織を引っ張らないといけないからだ。異質な人材や異質な意見を受け入れる度量の広さも必要だ。多様な人材をうまく生かすことは、企業がグローバル競争するうえで欠かせない。
自分を犠牲にしてでも、組織に尽くすメンタリティも求められる。リーダーに私心があってはならない。さらには孤独に耐えて決断を下す心の強さも必要だ・・
日本企業は改革を進めるとは言うが、人事システムのような内部慣行はあまり変化していない・・だが、現状がうまくいっていないのなら、従来のやり方は変えないといけない。米欧の企業経営は、過去20年で大きく進化した。次は日本が変わる番である・・
詳しくは、原文をお読みください。
国会答弁案作り、その3
「国会答弁案作り」の記事に、何人かの人から、批判が来ました。
Aさん(自治体職員)
「私の職場では、押し付け合いに勝利した管理職が、『できる管理職』と称されるようです・・」
Bさん(国家公務員)
「国会答弁を引き受けても、何もメリットはありません。特に各省協議が必要な場合は、面倒だし、明け方までかかるので、いやです。がんばって答弁を書いても、上司は評価してくれません・・」など。
「いやな仕事を断る上司が、良い上司」「面倒なだけで評価されない仕事なら、しない方が『賢い』公務員」。
職員から見ると、そう見えるのでしょうね。この状態を打破するには、面倒な仕事を引き受ける職員を、正当に評価することが必要だということですね。
プロ野球で、送りバントを成功させた選手を、年俸査定の際に評価するのと、同様な仕組みが必要でしょうか。