カテゴリーアーカイブ:行政

大月規義記者、東北の「失敗例」継承して

2024年2月29日   岡本全勝

2月26日の朝日新聞夕刊に、大月規義編集委員の「誰のための復興なのか、東北の「失敗例」継承して」が載っていました。

・・・大きな被害を受けた能登半島の人たちも、震災前の町をつくりかえる「復興」へ向かう時期が早晩くるだろう。そのとき、東北の復興は参考になるのか――。
11年余り、人口ゼロの状態が続いた福島県双葉町。原発事故という特殊な背景があるが、一から町づくりを強いられているという点で、究極の復興事例と言える・・・

そこに移住した、浜田昌良・元復興庁副大臣、参院議員(公明党)の話が載っています。本論と違った箇所を紹介します。
・・・いま、複雑な気持ちで見ている事業がある。長年帰れなくなった家々の「解体」だ。
約13年前の震災でさほど損傷を受けていなくても、原発事故で長い間住めなくなった住宅は「機能的損壊」として、自然災害の場合の「半壊」の扱いにできる。
「そうするように指示したのは自分だった」と明かす。半壊にするかしないかで、何が違うのか。
半壊認定を受けた世帯が解体を余儀なくされた場合、全壊の家屋と同じように「被災者生活再建支援金」の制度の対象となる。1世帯最大300万円。
もともとは、住宅という私財の再建に公的資金を入れることができなかった阪神大震災をきっかけにできた制度だった。
「福島の避難者によかれと思って復興庁に指示したが、時間がたつにつれ制度本来の目的が見失われ、帰らなくても支援金ほしさに解体を急ぐ人たちが出てきた。原発事故の賠償金をもらって家は再建できているはずだが……」・・・

原発事故で住めなくなった家屋、土地、家財については、東京電力から賠償金が出ています。また、別の場所に家を建てる際にそれだけでは不足する場合にはその差額も補填されます。この方々に被災者生活再建支援金を支給するのは、本来の住宅再建支援とは異なった趣旨になっています。

能登半島地震のみ給付金倍増、公平さ欠く住宅再建支援

2024年2月28日   岡本全勝

2月22日の日経新聞に、斉藤徹弥・編集委員の「能登半島地震のみ給付金倍増、公平さ欠く住宅再建支援」が載っていました。詳しくは原文をお読みください。

・・・能登半島地震で被害の大きい石川県の奥能登地域を対象に、住宅再建の支援金を実質的に上乗せする政府の方針が波紋を広げている。災害大国の日本は誰もが被災者になり得る。被災した地域や時期、居住形態で手厚さが異なる制度は、公平性などの観点から十分な検討が必要だ。
住宅再建への公的支援は被災者生活再建支援法に基づき、300万円まで支給される。これに加えて政府は奥能登6市町の高齢世帯などに、さらに最大300万円を給付する新制度を打ち出した。支給額は最大で2倍の600万円になる。

支援金は国と都道府県が折半で出資する基金から拠出している。総務省は全国知事会に引き上げを打診したが、知事会は「引き上げる根拠はない」と否定的だった。
引き上げは知事会でもかつて議論したことがある。ただ過大な公的支援は地震保険加入や耐震改修などの自助を損ないかねない。地域事情に応じて独自に上乗せする都道府県もあり、財政負担を考えれば全国一律の制度は最低限が望ましい。
議論の末、知事会は「自助、共助、公助のバランスが重要」「支援金は見舞金的なもの」として300万円の上限を維持する報告をまとめた。今回の対応もその方針に沿ったものだ。

「できる限り支援したい気持ちはみな持っている。その中でなぜ能登半島地震の被災者にだけ、これだけ多額の税金が投入されるのか。政府の説明は十分でない」。千葉県の熊谷俊人知事はこう注文をつけた。
熊谷氏が挙げる問題点は住宅支援を巡る課題の本質を突く。
まず過去の災害や今後の災害との整合性だ。昨今の物価高を反映するのはよいが、被災した時期で額が2倍も異なるのは公平性を損なう。
次に地震保険に加入したり自費で耐震改修したりした人との間にも不公平感が生じかねない。被災後、賃貸を選んだ人への支援は最大150万円で、持ち家世帯と数百万円の差がつくことをどう考えるか。

行政は本来、住宅などの私有財産の形成に公費を投じるのは避けるべきだという考え方がある。
被災者生活再建支援法は、住宅は復興に不可欠で公共性があるとして住宅再建への公的支援に踏み出した。だが、防災の基本は自助、共助、公助。それぞれが機能するよう常にバランスに気を配る必要がある。
政府は新給付金を奥能登に限った特例としている。だが災害時の特例は新たな前例として踏襲されやすい。南海トラフ地震や首都直下地震で上乗せするなら給付金は巨額になる。丁寧な議論が欠かせない。

鳥取県知事時代、国に先立って住宅支援制度を設けた片山善博氏は「軽はずみだ。公的支援には経緯もバランスもあり、個人財産に税金を使う根源的な問題もあるのに、そうした議論を素通りしている」と指摘する。
被災地に寄り添う姿勢を見せることで政権浮揚を狙ったと見透かされれば、多くの地域の反感を買い選挙にも逆効果だ。行政の公正さこそ、信頼回復の第一歩である・・・

私がコメントライナーに書いた「工程表のない政治」の問題とも共通します。

定額減税の事務負担

2024年2月26日   岡本全勝

2月14日の日経新聞に「定額減税、事務負担に苦慮 企業・自治体1回限り」でも改修」が載っていました。

・・・岸田文雄首相の肝煎り政策である定額減税を盛り込んだ所得税法改正案が13日の衆院本会議で審議入りした。減税開始まで半年を切り、企業や自治体からは事務負担への懸念が強まってきた・・・
詳しくは本文をを読んでいただくとして。事務負担の課題は、大きく3つあるようです。
一つはこの記事にあるように、1回限りの減税でも、企業などは従業員への給与支払いの際に源泉徴収するので、そのシステム改修が必要です。
もう一つは、今回の減税は所得税3万円、住民税1万円で合計4万円。家族がいるとその人数分です。一月の源泉徴収額がこの数字を超えていれば、その金額を減額すればすみますが、引き切れない場合は、翌月以降から引き去ります。その計算が必要です。

さらに面倒なのが、次の問題です。
税金を納めていない低所得世帯は、この減税の恩恵を受けることができません。その世帯には10万円給付します。これで二本立てになります。さらにこの間に、税金は納めているけれども、減税額までは納めていない世帯があります。その世帯には、減税しきれない額を給付します。これはかなり複雑になります。

そもそも減税は、税金を納めていない、あるいは少ない納税額の低所得世帯には効果がない、効果が少ない政策です。その人たちを念頭に置くなら、減税より給付金の方がはるかに簡便です。マイナンバーカードに銀行口座を紐付けておけば、簡単に給付できます。

日本での政策の作られ方

2024年2月25日   岡本全勝

2月10日の朝日新聞に、元アマゾンでロビイストをしておられた渡辺弘美さんの話「ロビイスト、企業が政策を動かす」が載っていました。

・・・ 企業の立場から政策を動かす「ロビイスト」への注目が高まっている。巨大IT企業が国家をしのぐ影響力を持ちはじめるなか、政策をゆがめる恐れはないのか。政府と企業の関係はどうあるべきなのか。霞が関から米アマゾンに移り、ロビイストの草分け的存在として長年、日本政府と向き合ってきた渡辺弘美氏に聞いた・・・

―ロビイングとは何でしょうか。
「私は政府の認識や理解、行動を正しい方向、多くの人がそうだと思う方向に補正する作業がロビイングだと考えています。これを利益誘導と混同しているロビイストが多い。私はアマゾンという企業と、社会の利益が一致するときにだけ動いてきました。会社から『何とか政府を説得しろ』と言われて、『できません』と断ったケースもいくつもあります」

―日本でのロビー活動は欧米と違いますか。
「欧米と日本では政策のつくられ方が違うため、ロビー活動の方法は異なります。米国などでは議員が多くのスタッフを抱え、影響力のある法律をつくるケースが少なくない。日本は、ほぼ霞が関の中央省庁が法律の原案や細かいルールを作ります。我々ロビイストも、霞が関の方との関係づくりや情報交換が重要になります」

―ロビイングは必要なのでしょうか。
「政府が100%スマートなら、ロビイングは必要ないと思います。しかし現実はそうなっていません。役所の職員は与党や官邸から飛んでくるボールを拾うだけで精いっぱいです。一部の学者がいくつもの審議会や有識者会議を兼務し、法に基づき企業がつくった報告書を読んでいるのか怪しいときがあるし、発言にバイアス(偏り)がかかっているように見えるときもある。政策の透明性が高まり開かれたものになるのなら、ロビイストの活動を規制してもよいと思います」

―企業が影響力を強めすぎると、民主主義をゆがめることになりませんか。
「それはその通りだと思います。でも、ぜんぶ官僚と政治家に任せればよいのでしょうか。私はそうは思いません。企業以外の人たちの声も、もっと政治に届けることが答えになると思います。欧米ではNGO(非政府組織)や消費者団体が熱心にロビー活動をしています」

IMF、所得税減税の効果疑問視

2024年2月24日   岡本全勝

2月10日の日経新聞が「IMF対日経済審査、所得税減税の効果疑問視」を伝えていました。

・・・国際通貨基金(IMF)は9日、日本政府が6月に実施する所得税と住民税の定額減税について「成長に及ぼす影響は限定的と予想される」との見解を表明した。物価上昇率が日銀目標の2%程度に落ち着くと見込み、大規模な金融緩和を終わらせ、段階的な利上げに踏み切るよう促した。
年に1度の対日経済審査を終え、声明を公表した。
日本の財政政策に関して、厳しい見方を示した。経済が引き続き回復していることから、歳出抑制など引き締め策に軸足を移すべきだと提起した。
なかでも、岸田文雄首相が打ち出した所得税減税は債務状況を悪化させると指摘・・・
このほかにも、補正予算を毎年編成する慣行も、改めるべきだと訴えています。

至極まっとうな議論と思うのですが。
日本人、特に日本の報道機関などは、世界からの評価を気にするのに、このようなことは気に掛けないのですかね。自分に都合のよいことだけ、引用するのでしょうか。