カテゴリーアーカイブ:行政

確定申告書、日本語だけ

2024年3月14日   岡本全勝

3月12日の朝日新聞夕刊に「確定申告、言葉の壁 マニュアルは5言語を用意、けど提出書類は日本語のみ」が載っていました。国際化はまだまだですね。

・・・外国人であっても日本国内で所得を得た場合は課税対象であり、確定申告を求められるケースもある。法務省によると、国内の在留外国人は2023年6月末現在、322万人超に達した。10年前の約1・6倍で、過去最高を更新した。
だが、確定申告書やe―Tax(国税電子申告・納税システム)は日本語版しかないという。一体、なぜなのか――。

国税庁に取材すると「予算の制約で他言語に対応するに至っていない」との回答だった。
申告書については、手書きの文字を自動で読み込むOCR(光学式文字読み取り装置)が外国語仕様ではないといった障壁もあるという。
同庁はホームページ上で提供する申告書作成コーナー用に、英語や中国語を含む5言語のマニュアルを用意。外国人が申告しやすい環境作りを進めているというが、申告書やe―Taxそのものの多言語化は現段階では検討されていないという。

国際税務に長く携わってきたゾンデルホフ&アインゼル税理士法人(東京)代表社員の永島寿夫税理士によると、以前は在日外国人の多くは日系企業や外資系企業の日本支社に勤めており、勤務先と契約した大手税理士法人に税務を任せてきた側面があった。「そもそも他言語の申告書のニーズがなかったのではないか」とみる・・・

朝日新聞「能登へ、首長の教訓」

2024年3月10日   岡本全勝

朝日新聞夕刊連載「現場へ!」、3月4日の週は「能登へ、首長の教訓」でした。大震災当時に苦労された首長さんが出ておられました。

この方々と一緒に、現地の惨状を見て、当初は途方に暮れました。いつになったら、がれきの山が片付くのやらと。もっとも最初は、膨大な避難者の生活支援で、先のことは考えられませんでした。それから、一つずつ片付けていったことを思い出しました。

首長さんの中には、お亡くなりなった方、引退された方も多いです。
あれから13年が経ちます。原発被災地では多くの地域で、まだ復興は緒に就いたばかりです。

追悼、五百旗頭真先生

2024年3月9日   岡本全勝

五百旗頭真先生が亡くなられました。いくつかの報道機関から、発言を求められました。3月8日の朝日新聞では、少し取り上げられました。「五百旗頭さん、残した哲学 「創造的復興」被災者に光/批判すべきは批判
・・・神戸大名誉教授の政治学者で、東日本大震災復興構想会議議長や防衛大学校長を務めた五百旗頭真さんが6日、急性大動脈解離で死去した。80歳だった・・・
五百旗頭さんが復興に携わった被災地を中心に、悼む声が相次いだ。
2011年、東日本大震災の翌月に発足した復興構想会議。議長となった五百旗頭さんは「創造的復興」を掲げた・・・
・・・ともに10年近く復興行政に携わった岡本全勝・元復興庁事務次官は「政権内に防災・減災の哲学を植え付けた」と五百旗頭さんの功績を語った・・・

先生の復興に関しての功績は、復興構想会議提言で、戦後の災害復旧思想を転換してくださったことです。戦後の復旧・復興行政は、元に戻すこと、同じ災害での被害を防止することを基本としてきました。公共施設や住宅は元に戻します。防潮堤を復旧する際には、過去の最も大きな津波を防ぐことができる高さにしました。しかし、千年に一度の津波を防潮堤で防ごうとしたら、とんでもない大きさの防潮堤が必要になります。そこで、防潮堤と逃げるを組み合わせた復旧に転換したのです。防災から減災へです。それによって、高台移転や町のかさ上げを行いました。
これがなければ、東日本大震災からの復興は現地で意見が分かれ、混乱した可能性がある。その点では、復興哲学を転換したという大きな功績です。これは、住民の意見を聞く政治家も、官僚にも難しいことでした。

先生はまた、構想会議の提言をまとめるだけでなく、引き続き復興推進委員になって、その提言が実行されるか見届けてくださいました。何度も、現地を見ていただきました。多くの政府審議会は、提言して終わりが多いのですが、お目付役も果たしてくださいました。
ご冥福をお祈りします。

政党内の集権と分権

2024年3月4日   岡本全勝

2月28日の日経新聞に、斉藤徹弥・上級論説委員の「自民党改革に権力抑制論を 集権化にポピュリズムの芽」が載っていました。自民党における、県連と派閥の機能として「分権」を指摘しておられます。その上で、

・・・政党として権力集中と権力分立をどう考えるべきか。これは時代背景やどんな政治観に立つかで異なるだろう。
迅速な合意形成を重視するなら強いリーダーシップが必要で集権が適している。冷戦終結で激動する国際情勢を受けた平成の政治改革では、政治に決定力をもたせるため、党本部の力を強める制度が相次いで誕生した。
多様な価値観を反映すべきだという政治観からは分権が望ましい。極端な政策には異なる立場から抑止が働き、ポピュリズムにも耐性がある。いわゆる振り子の論理で、地方組織や派閥はバランサーになってきた。

この30年、決められる政治への改革が進んできた。調整コストが少なく決定が迅速な権威主義国との体制間競争を考えれば、決定力のある集権化は必要かもしれない。
ただ良いことを決めやすい制度は、悪いことも決めやすい。最近、岸田首相が打ち出す政策は一時的な減税、被災地以外に不満の種をまく住宅再建支援など、ポピュリズム的な狙いが見透かされる例が散見される。

現代はポピュリズムや極右政党のような極端に走りやすい。日本は比較的それらに陥りにくいとされてきたが、決定力重視の傾向が強まればリスクは増す。
権力分立は人類が培ってきた統治の知恵である。派閥を解消し、地方組織への統制を強めるなら、それに代わって権力を抑制する仕組みのあり方をしっかり考えたい・・・

国民から見ると、対外的には、代表による集権的な説明が欲しいです。党内事情を理由にした歯切れの悪い説明は、納得されないでしょう。他方で、党としての決定の際には、分権的な過程が必要でしょう。

大月規義記者、東北の「失敗例」継承して2

2024年3月1日   岡本全勝

大月規義記者、東北の「失敗例」継承して」の続きです。復興庁幹部を務めた林俊行さんの反省も載っています。

・・・震災から2年後の13年、復興庁で住宅再建を担当していたときに、苦い経験を味わった。
津波を避けられる高台などに整備する宅地がどれだけ必要か、連日調べていた。岩手県と宮城県で被災した自治体が「必要」とした宅地を積み上げると、計約2万6千戸分に達した。
「多すぎる。手遅れかもしれない」。故郷に戻らないと決めた世帯が反映されているか疑問が湧いた。被災自治体に、本当に必要な戸数を報告してほしいと頼んだ。

すでに自治体は土木系のコンサルタント会社などと一緒に、「立派な」復興計画を作り上げていた。岩手県陸前高田市のように、震災前より人口が増える計画をつくった自治体もあった。
大幅に修正する自治体もあれば、まったく変更しない自治体もあった。1年後、必要な宅地は2県で11%減った。最終的には初期の計画から36%減った。

「それだけ縮小しても、誰も利用しないままの宅地が残っていた」。林さんは19年に再び復興庁に戻った。津波を受けた被災地に、広大な「空き地」ができているのを目にした。
「建設業界にとって復興は『稼ぎ時』のため、コンサルはきれいな復興の絵を描く。自治体がそれを真に受けて計画が一度走り出してしまうと、止めるのは難しい」。自戒を込めて語る。「巨大な公共工事をみると、誰のための復興だったのかと思う」・・・