カテゴリーアーカイブ:行政

五百旗頭真先生を偲ぶ会

2024年7月11日   岡本全勝

今日7月11日は、KKRホテル東京で、五百旗頭真先生を偲ぶ会が開かれました。五百旗頭先生の活躍は多岐にわたり、またそのお人柄で、たくさんの人が集まりました。

先生は国際政治学が専門ですが、阪神・淡路大震災で被災され、防災・復興にも携わられました。東日本大震災の際に復興構想会議の議長を務め、提言をまとめられました。私が携わった復興本部と復興庁は、この提言を元に仕事を進めました。また復興庁では、復興推進委員会の委員長を務めていただきました。会議や現地視察で、何度もご指導をいただきました。

そのご縁で、今日は事務方として参加しました。要人の案内係です。何人か当時の同僚にも、助っ人をお願いしました。久しく会っていない方とも、ご挨拶することができました。
あらためて、そのご功績に感謝するとともに、ご冥福をお祈りいします。

官民ファンドの失敗

2024年7月10日   岡本全勝

6月26日の朝日新聞1面が「官民ファンド、955億円損失 海外インフラ支援 投資失敗続く 民間出資は2%のみ」を伝えていました。
・・・企業の海外インフラへの投資を支援する官民ファンド「海外交通・都市開発事業支援機構」(JOIN)が、巨額の累積赤字を抱えていることがわかった。ミャンマーやブラジルなどの事業が失敗し、2024年3月期決算で799億円の損失を計上。従来分を含めると955億円にのぼる。採算性が疑問視されてきた官民ファンドの是非が問われる。
JOINは14年10月に設立。民間の出資はわずか2%で、実態は国の丸抱えに近い。途上国の街づくりや港湾整備などに投資し、今年3月末までの投融資額は2561億円にのぼる。この4割で回収のめどが立たない異例の事態となっている・・・
・・・JOINの経営計画では、24年3月末の累積赤字は166億円の見通しだった。31年度に累積赤字を解消するもくろみだが、絶望的だ。本来なら国庫に納められる資金が失われ、実質的に国民が負担する恐れがある。
政府は、収益計画と実績が著しく乖離(かいり)した場合、抜本的な見直しを行うとしている。国土交通省は、見直しを検討する有識者会合を設置。年内に結論が出るまで、新規事業を停止する。
官民ファンドは、安倍政権が成長戦略の柱の一つとして新設。だが主要15ファンドのうち九つが昨年3月末時点で累積赤字を抱えていた。JOINの955億円はクールジャパン機構(海外需要開拓支援機構)の398億円を上回り、主要ファンドで最大とみられる。
JOINが損失を計上した事業の多くは、共同出資の企業が1年以上も前に損失を明らかにしていた。事業の失敗を国民に知らせぬまま公表を先送りしていたことになる・・・

2面の「安倍氏の「肝いり」、巨額損失 官民ファンドの海外投資 都市開発や鉄道、次々頓挫」から。
・・・採算性が疑問視されてきた官民ファンドで、新たに「海外交通・都市開発事業支援機構」(JOIN)の巨額損失が判明した。安倍晋三元首相がトップセールスした米国の新幹線事業などで次々に損失を被った。失敗を隠すかのように、損失の公表を先送りしてきた国土交通省の責任は重い・・・
・・・官民ファンドの設立を強力に推し進めたのは第2次安倍政権だ。13年にまとめた「日本再興戦略」で、インフラ輸出を成長戦略の柱の一つに据え、JOINにも役目を担わせた。新興国の台頭や円高で日本のものづくりが急速に競争力を失うなか、製品単体でなく、運用やメンテナンスを含んだシステムで勝負することで、活路を見いだす算段だった。
ところが、インフラ輸出の目玉だった原発は、米国やトルコなどの新設計画が次々に頓挫。JOINの実態をみれば、鉄道や都市開発でも難航していることがわかる・・・
・・・JOINは今回、ホームページを更新する形で損失を公表した。それらの事業の多くは、共同出資した企業が早々に「損切り」していた。ブラジルの鉄道事業はJR西日本と三井物産が20、22年度に、ミャンマーの事業も鹿島などが21年度に損失処理した。
関係者によると、損失計上を求める財務省に対し、国交省は拒み続けてきたという。明治大の田中秀明教授(財政学)は、「責任が問われないよう、損失を先送りしてきたのではないかと疑わざるをえない」と話す。
内閣官房の資料によると、昨年3月末時点で、主要15ファンドのうち、クールジャパン機構(海外需要開拓支援機構)など九つが累積赤字を抱える。田中教授は「赤字ファンドを存続させれば、さらに赤字が膨らむ恐れがある。廃止して人材やノウハウがある政府系金融機関などに集約したうえで、政府の監視体制を強化するべきだ」と話す・・・

首相指示の失敗事例?その3」に続く「首相指示の失敗事例?その4」かもしれません。

所管省が知らない政策決定

2024年7月8日   岡本全勝

首相指示の失敗事例?その2」の続きにもなります。するとこれは「首相指示の失敗事例?その3」です。
6月25日の読売新聞「電気・ガス補助に戸惑い 首相 事前調整不足」から。
・・・ 岸田首相が表明した8~10月使用分の電気・ガス料金への補助に、政府・与党内から戸惑いの声が上がっている。物価高が続く中、首相は21日の記者会見で「即効性のある対策」として打ち出したが、補助は5月使用分で打ち切ったばかり。事前調整も十分に行われておらず、「場当たり的」との批判も出ている・・・

・・・補助の再開は、自民党などからの要望を踏まえ、首相官邸主導で検討が進められた。首相周辺は「物価高を上回る賃上げを実現するため、今すぐにできることを考えた結果だ」と意義を訴える。19日の党首討論で、立憲民主党の泉代表が「補助の復活」を首相に提案し、「野党第1党も反対しない」との感触が得られたことも後押しになったという。
ただ、与党内の議論も行わないままの打ち出しには、唐突感は否めない。所管する経済産業省幹部の一人は、首相の記者会見当日まで知らされていなかったといい、「燃料価格は一時に比べ、落ち着いている。このタイミングで再開するのは想定外だ」と困惑を隠さない・・・

26日の朝日新聞「補助再開、急ごしらえ露呈 「酷暑乗り切り」なのに7月は対象外 「バラマキ」身内から批判」から。
・・・岸田文雄首相が「酷暑対策」として再開を表明した電気・ガス料金の補助に、政府与党内で困惑が広がっている。一貫性を欠く補助再開に「政権の延命策か」といぶかる声があがるほか、自ら旗を振る脱炭素社会実現の政策にも逆行する。唐突な表明も「調整不足」の批判を招いている。

「国会開会中に議論すべきだった」「行き当たりばったりだ」
25日の自民党政調全体会議。出席議員から首相の判断に指摘が相次いだ。身内から公然と疑問が呈された格好だ。
電気・ガス料金の補助は5月使用分でいったん終了。わずか3カ月後の再開に何があったのか。
複数の政権幹部によると、木原誠二自民党幹事長代理や村井英樹官房副長官ら首相に近い政治家が、補助再開のシナリオを描いた。官邸内には「あくまで激変緩和のために始めた制度だ」と再開に慎重な意見もあったが、最終的に首相が決断したという。
だが、政府の決定をこれほど短期間で覆すのは異例だ。内閣支持率が低迷する中、秋の自民党総裁選や次の衆院選など政治日程をにらんだ「バラマキ」との見方が広がるのは無理もない状況と言える。
急ごしらえの再開は、ちぐはぐさも目立つ。「酷暑乗り切り緊急支援」としたのに、真夏の7月は対象外。「手続きに要する期間を踏まえた」(林芳正官房長官)とするが、政策目的と効果の整合性が問われかねない。
情報管理を優先し、根回しが遅れた感も否めない。自民党幹部の一人が首相から電話で告げられたのは、会見当日の朝。前日に連絡を受けた財務省幹部は「完全に延命策。付き合いきれない」と吐き捨てた・・・

事故をきっかけに世界に追いつく

2024年7月7日   岡本全勝

正月に起きた、羽田空港での飛行機衝突炎上事故。国土交通省が、再発防止策を決定しました。それに関する、6月23日の読売新聞「羽田事故 対策5分野 国交省 正式決定へ」から。

・・・ 国交省関係者によると、1月以降、検討委で議論してきた新たな対策案は、〈1〉管制交信でのヒューマンエラー防止〈2〉滑走路誤進入の注意喚起システムの強化〈3〉管制業務の実施体制の強化〈4〉滑走路の安全の推進体制の強化〈5〉技術革新の推進――で構成する。

事故からまもなく半年。国土交通省は再発防止策の取りまとめにあたり、滑走路の安全に関わるハードとソフト、すなわち「人、運用、技術」のバランスを念頭に、一体的なリスク低減を図った。新たな取り組みが、別のリスクを生まないことにも配慮したという。
対策の大半は、欧米やアジアの航空当局や国際機関の状況を丹念に調査し、日本の先を行く取り組みを導入した形だ。ただ、裏を返せば「悲惨な事故を機に、諸外国への遅れをやっと取り戻そうとしている」との厳しい見方と反省の声は、国交省内にもある・・・

役所のデジタル化に見る分権と集権

2024年6月30日   岡本全勝

6月27日の日経新聞オピニオン欄「中外時評」は、斉藤徹弥・上級論説委員の「デジタル時代の新・地方分権」でした。デジタル化を進めるに当たって、なぜうまくいかないか。その問題から、新しい時代の国と地方の関係を分析した内容のある記事です。本文をお読みください。

・・・アジサイに誘われ、鎌倉の明月院を訪ねた。濃く鮮やかな明月院ブルーの花群れを眺めながら、かつて自治省(現総務省)に入ると教えられたという心構えを思った。
地方はアジサイの花だ。全体が一つの花にみえるが、よくみれば多様な形の小さな装飾花の集まりである。地方も様々な事情を抱える市町村の集合体で、全体をみるだけでなく、個々の自治体に目を向けなければならない――。
地方全体を抽象的にとらえるマクロの視点だけで政策を判断すると、市町村をみる解像度が低くなり弊害を生む。多種多様な自治体への影響をミクロに見極めて政策を判断せよという教えである。
霞が関は地方をマクロでとらえ「こうすれば地方も回るはず」と考えがちだ。デジタル庁はその典型で、現状は地方への理解が足りず、十分な成果は上げていない・・・

・・・地方分権だからバラバラなのではない。地方自治法は統一すべき基準づくりを国の役割としているが、これに国が後ろ向きすぎたのである。
各省は人員不足で手が回らず、分権を口実にしてきた面もあろう。基準がないなか、自治体は独自に対処し、結果として業務フローやシステムがばらけていった。
地方が統一した方がよいと思うものは国がはっきり基準を示すー。半年あまりの調査と協議を経て国と地方、そしてデジタル派はこうした共通認識にたどり着いた。「これがデジタル時代の新しい地方分権」と国は位置づける・・・、