カテゴリーアーカイブ:行政

幹部官僚の安い給与

2024年8月26日   岡本全勝

官僚の給与の低さ」の続きになります。日経新聞は、8月14、15、17日と「脱「ブラック霞が関」へ 人事院勧告2024」を連載していました。14日は「キャリア給与、民に見劣り」でした。

・・・総合職大卒の初任給について過去最大の増加幅となる2万9300円の増額を促した。大企業の背中が見える23万円に上がる。基本給にあたる「俸給」も30代後半までの若手に重点を置いた引き上げを勧告した。平均の年間給与は691万6000円となる・・・

・・・人事院が総合職の新規採用者を対象に23年に実施したアンケートは給与水準を見直す重要性を如実に示す。仕事の魅力を高め、優秀な人材を獲得するのに必要な取り組みとして8割が「給与水準の引き上げ」を挙げ、最も多かった。
民間との格差は残る。労務行政研究所の調査ではキャリア官僚が併願する会社が多い東証プライム上場企業の24年度の平均初任給は23万9078円。平均年収も東証プライム上場企業は735万7000円(帝国データバンク23年度まとめ)で見劣りする。

格差はキャリアのゴールとも言える幹部年収に顕著に表れる。24年度のモデル給与では、省庁の事務方トップである事務次官の年収はおよそ2385万円となった。労務行政研究所の23年の調査では、大・中小企業の社長の平均年収は5586万円だ・・・

15日は「公務員ジョブ型、年功序列が壁」、17日は「平均終業0時48分  元凶は国会対応」でした。

首相を目指すには志と参謀が必要

2024年8月25日   岡本全勝

8月20日の朝日新聞オピニオン欄「去る首相、逆風の自民は」、久米晃・元自民党事務局長の「志も参謀も欠き、不信拭えるか」から。

――岸田内閣の支持率が持ち直すことができなかったのはなぜですか。
「岸田さんは悪い人ではないです。しかし『諸課題に取り組んで結果を出す』と繰り返し言うばかりで、結果をまったく出していないと多くの国民は受け止めています。派閥の裏金問題でも中途半端なことしかやっていないので、政治不信が相当に高まりました」
「政治不信というのは、実は政治家不信なんです。政治というシステムへの不信ではなく、政治家に対する不信です。そもそも日本では、多くの人が政党に対して投票するのではなく、政治家という人間、個人に投票をするのです。岸田首相がしっかりと発信し、国民の不満や不安をしっかりと減らすような結果を出していれば、こうはならなかったわけです」

――政治不信の責任は岸田首相にあると。
「それが政治家たる首相の責任ですよ。この国でずっと投票率が下がっているのも、政治家に対する不信が続いている表れじゃないですか」

(総裁候補への心配について)
「岸田首相の次の総裁を目指す人とも実際に意見交換をしていますが、皆共通して自分を支える参謀たちが不在です。それが実は岸田政権にとっても最大の問題点でした」
「かつての自民党のリーダーには竹下登元首相を支えた『竹下派七奉行』だとか、安倍晋三元首相のお父さんの晋太郎さんを首相にしようとしていた『安倍派四天王』のような参謀のグループがありました。政策を練りあげるだけではなく、落としどころをさぐって政治の流れをつくる人もいました。いま岸田首相を含め、しっかりとした参謀グループを持っている政治家は残念ながらいません」

――政治家の質が変わっているのでしょうか。
問題となった裏金をもらうために集まっているような派閥ではなく、そのリーダーを首相にするために政治家が集まってくるような集団が派閥でした。また明治期や戦後、つい最近まで、どのような経歴を経て、何を実現させたくて政治を志したのかといった『個人の物語』を持った政治家がいました。世襲政治家が多いこともあり、国民に広く共感されるような物語をもった政治家はなかなか見つかりません」

――総裁選には期待できないでしょうか。
「まだ時間はあります。ただ、『選挙の顔』として一時的に衆院選で勝てるかどうかだけではなく、国民の不満や不安を取り除き、危機に対応できる政治家だということを訴えてほしいと思います。いま総裁選は事実上、内閣総理大臣を選ぶ選挙でもあるからです。南海トラフ地震などの自然災害、ウクライナでの戦争で浮き彫りになったこの国のさまざまな弱点や問題点、異次元の少子化など、国民の間にはもう長きにわたって不信や不安が積み重なっています。政治家にとって一番重要なことは、危機に対する対処をすることと、将来に対する展望を示すことです」
「総裁選で国民に『私ならこの問題に対してこうやります』ということを具体的に示してほしいのです。国民がそれに納得すれば、その人が自民党の総裁になり、首相になる。逆にそうした人が出てこないのであれば、自民党の再生はできないでしょう。そして野党を含め、政界の人材不足はとても深刻です」

こどもの事故予防

2024年8月24日   岡本全勝

日経新聞夕刊「人間発見」8月13日の週は、Safe Kids Japan理事長、山中龍宏さんの「親らが「目を離せる」社会に」でした。
・・・小児科医で「NPO法人 Safe Kids Japan」の理事長、山中龍宏さん(76)は「子どもの事故予防」に40年近く取り組む。科学的な検証で原因を究明。改善策の実行により事故を減らすことで、保護者らの責任や努力だけを追及する社会の風潮に立ち向かってきた・・・

・・・中学2年生の女子が学校のプールの排水口に吸い込まれ、当時の勤務先の病院に搬送されてきました。引き上げられるまで30分も水中にいれば命は病院では救えません。排水口の蓋さえきちんと固定してあれば良かったはずです。文部省(現文部科学省)に電話をすると「私の担当ではない」との答え。「何をバカなことを言っている」と憤りました・・
・・・1985年に起きた静岡県の中学校プールの排水口の死亡事故で、被害生徒の保護者は教育委員会宛に謝罪文を書かされていました。聞き間違いかと思いましたが、静岡の別のプール死亡事故でも、保護者が「我が子が不祥事を起こして申し訳ない」と教委に謝罪文を提出したという。そういう対応が疑問視されない時代でした・・・

明治以来、日本の役所はサービスを提供する側として仕事をしてきました。産業振興や公共インフラ充実だけでなく、教育も医療もそうです。生徒や患者ではなく、学校や病院を相手にしてきました。国民ではなく、提供者側でした。それが、公共サービスを拡充する際には効率的でした。しかし例えば、問題を起こす高校生に学校は困りますが、退学してくれると「縁が切れて」「ほっと」します。国民の側に立った役所は、消費者庁とこども家庭庁くらいです。
この問題を是正するために、提供者側でなく、国民の側に立った役所が必要なのです。私は「生活者省」の設置を主唱しています。

「公共を創る」第155回「「生活者省」設置の提言─「安全網」への転換を明確化」。「国民生活省構想」なお、国民でない人も暮らしているので「生活者省構想」に名前を変えました。

官僚の給与の低さ

2024年8月22日   岡本全勝

8月9日の日経新聞「公務員給与、若手に重点 深刻な官僚離れ対応 賃上げ率なお民間と差」から。

・・・「キャリア官僚」と呼ばれる総合職を志望する学生は大手企業と併願するケースが多い。例えばトヨタ自動車の初任給は24年4月入社の新入社員(学部卒)から25万4000円、日立製作所は25万円とそれぞれ大幅に引き上げた。
国家公務員も総合職の23万円という初任給だけみれば大企業並みの水準だ。それでも全体の賃金水準はなお隔たりがある。

就活生に人気の高い総合商社5社の平均年収はいずれも1500万円を超え、三菱商事は23年度に初めて2000万円台(平均42.7歳)になった。日立も国内従業員の平均年収が935万円(平均42.9歳)に達する。
人事院によると、勧告を適用したモデル給与では35歳の本省課長補佐の年間給与(ボーナス含む)は756万8000円だった。官舎などの福利厚生があり、単純には比べられないものの、著名企業との比較では心もとない面がある。
人事院は新卒採用と並んで経験者の中途採用を重視する。中途採用でも民間との競争が激化しており、不利になる可能性がある。
勧告は民間給与との均衡を重視する。具体的には従業員50人以上の企業の給与水準をみて決める。キャリア官僚を志す学生らが比較対象とするような大企業との給与差を十分に反映できない制度上の限界がある・・・

公務員の給与は、民間の平均を見て決めます。その際の対象が、従業員50人以上の企業です。しかし総合職(かつての上級職)は、東大をはじめとする「有名校」出身です。大銀行や大会社などに就職した大学時代の友人と比較すると、情けなくなります。公務員の方は、難しい筆記試験もあります。
もちろん、若手が職業を選ぶ際には、給与などの待遇だけでなく、仕事のやりがいがあります。しかしその点でも、近年は低下しているようです。このままでは、優秀な若手は官僚を選ばないでしょう。

財政を平時に戻せ

2024年8月21日   岡本全勝

8月9日の日経新聞経済教室は、井堀利宏教授の「財政健全化、将来世代へのツケは最低限に」でした。原文をお読みください。

・・・経済社会がコロナ危機の非常時から脱して、平時の経済状態に戻っているにもかかわらず、また欧米ではインフレ抑制のために財政・金融の両面から引き締め政策が実施されているにもかかわらず、日本では相変わらず非常時という名目で積極財政派の圧力が強い。
岸田文雄政権は、1年限りの減税(1人4万円の定額減税)を6月から実施した。さらに岸田首相は通常国会会期末の記者会見で突如、8~10月に電気・ガス料金の補助金を復活させるとともに、年金世帯や低所得世帯への給付金支給を検討すると表明した。コロナ危機を契機として財政規律が緩んだままの政治環境の中で、苦し紛れのばらまき政策を模索している・・・