カテゴリーアーカイブ:行政

最低賃金、政治の役割

2024年12月6日   岡本全勝

このホームページでもしばしば取り上げている、最低賃金の決定方式についてです。「コメントライナー寄稿第6回」「最低賃金千円に思う

今年の夏に、徳島県知事が徳島地方最低賃金審議会に出席し、「千円を超える形で決まるように強く望んでいる」と発言し、8月8日に徳島労働局を訪れ「1050円」を要請しました。結果は980円と、知事の要請には届きませんでしたが、中央審議会が決めた目安の50円を大幅に上回る84円の引き上げでした。
知事は取材に対し「学者が中心の公益(委員)と労使(の代表委員)だけで決めるのはおかしい。選挙で選ばれた自治体トップが参加し、地方の将来に責任を持つ。それが民主主義だ」と話しています(10月25日付け朝日新聞「最低賃金に政治が介入「労使で決める」建前、崩した徳島ショック」)。

首相が関与したこともあります。2016年の中央最低賃金審議会の小委員会は、前年とその前の年は徹夜協議だったのに対し、この年は早々としかも24円の引き上げを決めたのです。次のように解説されています(2016年7月29日付け日経新聞「真相深層」「「官製」最低賃金 首相の念願。異例のスピード決着、過去最大24円上げ」)。
・・・ある委員は「安倍晋三首相の発言が後押ししたのは間違いない」と振り返る。13日の経済財政諮問会議で首相は「今年度は3%の引き上げに向けて最大限努力するように」と時期と上げ幅を具体的に挙げて、関係閣僚に指示していたからだ・・・労使で決める賃金に政府は原則として介入できない。しかし、法律で義務づける最低賃金であれば政府にも介入の余地がある。内閣府中堅幹部は「労使が協議する厚生労働省の審議会で政府が3%引き上げたいとは言えない。代わりに諮問会議で首相が発言する場を作った」と明かす・・・
・・・首相の「鶴の一声」による今回の最低賃金の決め方は学者、経団連、連合の代表ら公労使による中央最低賃金審議会の不要論につながる可能性をはらむ・・・
この項続く

官民ファンドの肥大

2024年12月5日   岡本全勝

11月19日の朝日新聞「膨張予算」は、「「官民折半」最初だけ ファンド肥大化、進める官」でした。政治主導と官僚の「共犯」の構図が見えます。

・・・民間主導で運営されるはずの官民ファンドの多くが、国の「丸抱え」になっていた――。その背景には、民間企業が新たな出資を引き受けないなか、いたずらにファンドの規模拡大を進める官の肥大化体質があった。

2022年10月に設立された「脱炭素化支援機構」は、企業の脱炭素ビジネスを支援するため、資本金204億円を国と82の企業が半分ずつ出し合った。だが、「官民折半」は最初だけだった。
23年度に85億円の増資をした際、国が78・5億円を引き受けたのに対し、企業からは6・5億円しか集めなかった。その結果、24年3月末には、早くも国の出資比率が62・5%に上昇した。
設立時だけ「官民」を偽装するかのようにし、直後に国の出資比率を急上昇させる構図は、相次いでいる。
農林水産省が所管する「農林漁業成長産業化支援機構」は、官民の折半出資で13年1月に設立されたが、3月末には国の比率が94・3%になった。関係者によると、「設立時に企業から出資を集めるのに苦労した」という。その経緯から、「追加出資を依頼することはとてもできなかった」と内情を明かす。

朝日新聞の調べでは、財政投融資で運営する全8ファンドの国の出資比率の平均は、昨年度末時点で8割を超す。「官民」が名ばかりになっている現状からは、企業の意向を置き去りにしたまま国策を進める、いびつな構図が浮かび上がる。
財投を所管する財務省理財局は、赤字ファンドの経営再建を求めている。一方、やり玉にあげられた担当省庁の幹部は、「もともとファンドは、財務省から持ちかけられて設置したものだ」と愚痴をこぼす。
この幹部によると、理財局に資金を要求すると、「もっと大きな金額を出せますよ」と要求を増額するよう促されたこともあったという。

財政規律を守るのが仕事の財務省が、なぜファンドの肥大化を推し進め、「国の丸抱え」を追認してきたのか。背景には、財務省を取り巻く政治と経済の環境がある。
ファンドの多くは、積極財政が持論だった安倍晋三政権下の13~15年に設立された。財務省で予算を担当する主計局は、予算の膨張で、財政が悪化することを恐れていた。
そこで目を付けたのが財投だった。各省庁や議員から求められた企業支援を、財投を原資にしたファンドで行えば、その分予算の膨張を抑えることができるからだ。理財局も、小泉純一郎政権下の財投改革や超低金利政策で、財投の存在意義が失われつつあることに危機感を抱いていた。
ある財務省幹部は、「財務省と各省庁は、規律無きファンドの拡大の共犯だ」と話す・・・

浪江復興米

2024年12月2日   岡本全勝

今年も、おいしい浪江復興米ができました。
原発事故被災地の浪江町の田んぼで、舞台ファームと東京農業大学が協力してくださっています。
東京農大の田植えの様子」「東京農業大学学生対象の農業実習
今年は「にじのきらめき」という品種だそうです。

舞台ファーム専務の独り言「面白い品種名」(11月8日)は、面白いです。「ミノタウルス」「さつきみどり」「インドジン・ウソツカナイ」など。へえ~と、笑えます。

ごみ屋敷への支援

2024年12月1日   岡本全勝

11月14日の日経新聞夕刊に「ごみ屋敷、精神的支援に軸足」が載っていました。
・・・悪臭や害虫の発生などで周囲に大きな影響を与えるごみ屋敷。居住者の自己責任と思われてきたが、疾患や認知症などの問題が影響するケースも多いことが分かってきた。自治体は当事者に寄り添った精神的な支援に軸足を移している・・・

・・・環境省の調査によると、全国1741自治体の38%が「22年度までの直近5年度で『ごみ屋敷』事案を認知している」と回答した。
ごみ屋敷が形成される要因の一つに、生活への意欲を失い無頓着になる「セルフネグレクト」がある。ほかにも身体的、精神的な障害や特性があってごみが出せない例もある。認知症などにより判断能力が低下し、周りの環境を正しく認識できずに物をため込む場合もあり、事情は様々だ。
ごみ屋敷はその居住者だけの問題と捉えられやすいが、実情は異なる。東京都立中部総合精神保健福祉センターの菅原誠副所長は「高齢単身世帯の増加などによる孤立や孤独などの問題も絡んでおり、ごみ屋敷は社会の縮図ともいえる」と話す。
8月公表の総務省の報告書によると、181事例のごみ屋敷のうち約3割は居住者に精神疾患やその疑いがあるという。菅原さんは「住環境の改善に加えて支援に精神医学的な知見を入れる必要がある」と説く。

当事者への精神的な支援を重視し、手厚く対応する自治体も出てきた。東京都足立区は23年、ごみ屋敷対策のために精神科医を配置した。職員は月1回、悩みや課題を相談できて実際の対応に生かせる。
これまでの事例を分析したところ、問題が長期化している居住者の約6割に精神上の課題があることが分かった。ごみ屋敷対策係の小野田嗣也係長は「医療的な助言があると自信になり、現場としてとても助かる」と安堵感をにじませる。
20年から3年間対応した70代男性の事例では、医師の指摘で解決に近づいた。当初は男性が区への不満を一方的に話すだけだった。職員が医師に相談すると「①自尊心を大切に向き合う②ごみ屋敷解決のための『支援』ならできると伝える」と本人の特性を踏まえた助言を得た。男性は支援という言葉に興味を示し、片付けを申し出たという・・・

一人暮らし高齢者の増加

2024年11月29日   岡本全勝

11月13日の朝日新聞1面は「一人暮らし高齢世帯 32道府県で20%超 2050年推計1000万人超」でした。
・・・一人暮らしをする65歳以上の高齢世帯の割合は増え続け、2050年に32道府県で20%を超える見通しとなった。国立社会保障・人口問題研究所(社人研)が12日、都道府県別の世帯数の将来推計を公表した。大都市圏で大きく増えることから、医療や介護サービスなどの体制整備が課題だ。

世帯総数は、45~50年には全ての都道府県で減少に転じ、50年には20年時点から5・6%減の5260万7千世帯となる。このうち最も多いのは単独世帯(一人暮らし)で44・3%。続いて夫婦と子21・5%、夫婦のみ18・9%と続く。
世帯主が65歳以上の単独世帯は、50年に1083万9千世帯(20年比46・9%増)。全ての世帯に占める割合は、20年時点は全国で13・2%。20%超の都道府県はゼロだが、50年時点では32道府県まで上昇する。

社人研の担当者は「少子化や未婚化の影響で、子や配偶者、きょうだいなどの家族コミュニティーが小さい高齢世帯が増えていく。介護や医療だけでなく、意思決定の支援や、貧困対策、防犯といった問題について、地域での取り組みが必要になるだろう」と指摘する・・・

日経新聞は「東京の75歳以上、独居35%」を書いていました。
・・・団塊ジュニア世代が75歳以上になる2050年に1人で暮らす高齢者が急増する。国の研究機関が12日公表した世帯数の将来推計によると、山形を除く46の都道府県で、75歳以上人口に占める一人暮らしの割合が2割を超える。在宅医療や介護の体制拡充など、高齢者の生活を支える仕組みづくりを急ぐ必要がある・・・

かつては、長生きすることが望みであり、長寿をお祝いしました。日本はそれを達成しました。すると今度は、長生きが問題になっています。