カテゴリーアーカイブ:行政

日本の移民対策

2012年5月4日   岡本全勝

宮島喬御茶ノ水大学名誉教授が、東大出版会PR誌『UP』5月号に、「地方の時代と国際化」(連載「四半世紀の国際化、多文化化をみつめて」第4回)を書いておられます。先生は、日本での移民(定住外国人)問題について発言をしてこられました。
・・欧米でも移民の受け入れに地方の果たす役割は大きい。カナダでは・・ドイツでは・・イギリスも・・。
しかし同時に、受け入れの理念、政策、移民の権利や給付につき国が基本方針を示すのは当然で、たいていその主務官庁も決まっている。担当の大臣はメディアにも頻繁に登場し、国の方針を語る。だが、日本では国家の顔がよく見えない。訪れる外国人研究者から「移民の統合政策を担当するミニストリーはどこか」と尋ねられて、答えに困るのである・・

この問題については、「2009年11月15日の記事」で取り上げ、内閣府に定住外国人施策推進室が設置されたことを紹介しました。しかし、まだ世間での認知は薄く、先生の指摘のような状態が続いています。マスコミの政治部記者でも、何割が知っているでしょうか。
ここには、定住外国人(移民)にどう対応するかという方針の問題と、それを政治の課題として扱うかどうかという二つの問題があります。もちろん二つは関連しています。そして、課題を解決するためには政策をつくるだけでなく、それを所管する専門組織が重要です。「あまり受けない問題」は、とかく置き去りにされがちです。これを日本の中央政治と行政の「機能不全」というのは、言い過ぎでしょうか。
外国での事象には「移民」という言葉を使いながら、日本国内での事象には「移民」をあまり使わず、「定住外国人」と呼ぶことが多いのも、何かしら意図があるように思えます。

日本近代政治史

2012年4月30日   岡本全勝

坂野潤治著『日本近代史』(ちくま新書、2012年)を読んでいます。書評でも取り上げられているので、読まれた方も多いでしょう。とにかく、おもしろいです。おもしろいと表現するだけでは十分ではありませんが、わかりやすく、そうだったのかと勉強になります。
1857年から1937年まで(年表では1842年から1937年まで)の政治史です。この間を、改革、革命、建設、運用、再編、危機(とそれに続く崩壊)の6段階に分けて、日本の政治の成功と混迷と失敗を説明しています。約100年の歩みを簡潔に整理すると、このようになるのですね。もちろん、大胆に切ることで、切り捨てられていることも多いですが、それは仕方ないです。
私も大学以来、日本の近現代史は勉強したつもりですが、これだけの視野から整理するのは、なかなかできないことです。細かいことを深く調べる研究は、たくさんありますが。

この本が示していることは、この間の歴史が、何人もの「登場人物」と「集団」が、各々の利害と思いで行動した結果であることです。明治維新も、決して単線的に成し遂げられたものではありません。学校で習う歴史や概説書は、結果としての出来事しか書いていませんが、この本では、参加者の意図がどのように実現したか、または失敗したかが書かれています。歴史が人の営みであること、「人間くささ」が良くわかるのです。
他にも、なるほどと思うことが、多いです、1900年以降、立法府(政党)と行政府(藩閥と官僚)の連立がなりたち、2大政党の交代が実現しなかったこと、それは第2次大戦後の自民党一党支配と似ていること、などなど。

著者は、2011年の日本をこの歴史に当てはめると、第二次大戦が終わって再出発した1945年ではなく、危機の時代から崩壊の時代に入る1937年(昭和12年)にいると位置づけています。昭和12年が、危機の時代から崩壊の時代への「区切り」であることは、本書をお読みください。
今後の日本(政治)が、60年前のように崩壊の道を歩むのか、あるいは再編(立て直し)に成功するのか。日本人とリーダーの力量が問われています。歴史に学ぶのか、歴史は繰り返されるのか・・・。
現在の日本政治の混迷を嘆いておられる人には、一読をお勧めします。明治維新は坂の上の雲を目指して一本道を進んだと思っておられる方、「維新」や「革命」を叫べば、日本が良くなると思っておられる方にも。さらには、原敬が大正デモクラシーの象徴だと思っておられる方にも。
ただし、新書で450ページ。また、この間の大きな出来事は知っているとの前提で書かれているので、決して易しくはありません。

男性に多い孤独死

2012年4月25日   岡本全勝

今日4月25日の東京新聞に、「男性に多い孤立、どう防ぐ?」という記事が載っていました。港区政策創造研究所が行った調査(区内の独り暮らしの全男女5,656人を対象)では、急病などの緊急時に支援者がいないのは、女性では15%、男性では29%です。東日本大震災の際に連絡を取り合った相手を訪ねたところ、男性の17%が誰とも連絡を取り合わなかったとのことです。ちなみに女性は3%です、家族や親族との行き来がないは、男性が29%、女性が10%です。近所づきあいが全くないは、男性が13%、女性が5%です。これでは、死んでいても、誰も気づきませんね。
高齢夫婦の場合、夫が死んでも妻は長生きするが、妻が死んだ場合夫とは1年以内に多くが妻を追いかける、と聞いたことがあります。男は弱いですね。

ホームレスの数減少

2012年4月14日   岡本全勝

厚生労働省の調査で、全国のホームレスの数が1万人を下回りました。
2003年の調査では、2万5千人でしたから、10年間で半分以下にまで減りました。この間に景気はあまり良くなっていませんので、政府の取組や各自治体の支援策が効果を上げているということでしょうか。
新聞には小さくしか載りませんでしたが、社会にとって大きな事案だと思います。派手な事件ではなく、また写真で見えるモノでもないので、その意義が見過ごされます。
他方で、自殺や離婚は減らず、孤独死、児童虐待や高齢者虐待は増えています。私は、かつて安倍内閣の時に「再チャレンジ政策」に携わり、また「社会関係のリスク」に関心を持っています。これらは、豊になった日本社会の新しい課題の一つであり、政府や自治体、社会が力を入れなければならない課題です。

衆議院選挙区割り違憲判決

2012年4月8日   岡本全勝

3月31日の朝日新聞オピニオン欄は、衆議院選挙区の格差が2倍以上になっていて、最高裁判所が違憲状態にあるとの判決を出したこと、しかし国会は対応していないことを取り上げていました。長谷部恭男東大教授の発言から。
・・現状のまま衆議院の解散・総選挙があれば、最高裁が「違憲」と判断することも十分ありえます。
過去にも区割り規定が「違憲」とされたことはありましたが、「事情判決の法理」を用い、選挙は「有効」とされました。しかし、次はこの法理が使われると決めてかからないほうがいいと思います・・
事情判決とは行政処分が裁判で違法とされた場合、その処分を取り消すと著しく公益を損ねるとして、取り消し請求を棄却する判決のこと。これを選挙制度の訴訟にも「法理」という形で応用しました・・
注意してほしいのは、当時、衆議院は中選挙区だったという点。選挙区に多ければ5人の政治家がいて、複数の選挙区で選挙無効になれば、相当数の議員が失職し国政が滞る。それでは公益を損ねるという判断がありました。
いまの衆議院は小選挙区制。5、6か所の選挙区で選挙が無効になり、国会議員が失われても、国会の運営に大きな支障はない。事情判決の法理を使う理由はありません・・

なるほど、そのような立論、推論もあるのですね。詳しくは原文をお読みください。