カテゴリーアーカイブ:行政

最高裁の政治化

2012年11月21日   岡本全勝

10月27日の朝日新聞オピニオン欄「ものを言い始めた最高裁」、御厨貴先生の発言から。参議院の1票の格差について、違憲状態判決が出たことに関して。
・・最高裁の判決は驚きでした。「違憲状態」は妥当ですが、論の立て方が最高裁らしくない。最高裁判決は、格調は高いが何を言っているのか分からないのが相場でしたが、今回は判決要旨も補足意見、反対意見も極めて明快。しかも都道府県単位の選挙区はダメだとか、同じ枠組みで選挙をすれば無効だとか、踏み込んだメッセージが目立つ。もはや政治論です。
戦後、連合国軍総司令部(GHQ)の支配下で米国の合衆国最高裁をモデルに新設された日本の最高裁ですが、ようやく米国流に司法が政治にメッセージを発するようになったといえます。
大法廷の裁判長でもある竹崎博允最高裁長官は相当迷ったと思います。ことは今後の最高裁、司法のあり方にかかわるからです。悩んだ末、劣化する立法や行政に対して裁判所がどう自立するかというところで、国民に寄り添い世論に近い判断をするという選択をしたんだと、私はみています・・
最高裁自体、それまで基本的に自民党政権の枠内に収まるようにやってきました。最大の権力である違憲立法審査権はほとんど行使しない。田中耕太郎長官が1959年の砂川事件判決で、安全保障など国の基本問題については違憲かどうかの法的判断は下せないとする「統治行為論」を採用したのは、その象徴です・・
とはいえこの路線が通用したのも矢口(洪一長官)さんあたりまで。1990年代以降、連立政権が続き、自民党も行政も劣化したからです。矢口さん自身、2000年には「政治と行政が自壊し始めた結果、司法が強くなってきた」と言っています。政治に寄り添うだけの手法は通用しなくなりました・・

仮設住宅での包括ケア

2012年11月20日   岡本全勝

11月14日の朝日新聞オピニオン欄は、「仮設から医療を問う」として、石巻市の仮設住宅団地の診療所長、長純一先生でした。先生は、長野県佐久から来ていただいています。
「午後1時半、仮診療所に保健師や看護師ら18人が集まった。仮設住宅でケアが必要な人の情報を持ち寄る、多職種連携のエリア会議だ・・なぜ、こういう会議を始めることにしたのですか?」
・・医師確保は厳しく、医療だけに頼っていては乗り越えられない。保健、福祉、それに住民とも連携し、ケアが必要な方を地域で支えていく必要があります・・、「地域包括ケア」を実現していくうえで極めて重要な一歩だと考えています・・
(地域包括ケアとは)医療や介護が必要な高齢者でも、病院ではなく住み慣れた地域、自宅で暮らせるよう支援する仕組みです。入院して治療を受けた後、リハビリをへて自宅に戻り、在宅医療を受けながら家族と暮らす、というイメージです。この流れを切れ目なく実現するには、医療が介護、見守り、配食などの生活支援とも連携し、サービスを一体的に提供しなければなりません。
そのベースにあるのが、高齢者が住みやすい住宅や街づくりです。災害復興住宅を今後建てていくうえで、高齢者を支えるためのどんな地域づくりが必要か、という視点は欠かせません。私は復興で生まれ変わる東北にこそ、この仕組みを根付かせたいと思って来たのです。国も復興基本方針の中で、地域包括ケアの体制整備をうたっています・・
「被災地向けですか?」
・・違います。日本の超高齢化は猛烈で、推計では65歳以上の高齢者人口は2025年に3600万人を超えます。そのうち医療・介護のニーズが高まる75歳以上が6割を占める。病院は高齢者であふれ、医療費は膨らむ一方でしょう。「病院から地域へ」という流れは近い将来、間違いなく全国に波及します。高齢化が進み、医療資源が窮迫した被災地の姿は、日本の未来図です・・
(取材を終えて)
多職種連携のエリア会議の様子を見て驚いた。18人のうち男性は、長さんを含めたった4人。ケアが必要な人を支える現場は、圧倒的に「女の世界」なのだ・・
この項続く。

世界の変化とアメリカのパワーの低下

2012年11月18日   岡本全勝

久保文明ほか著『オバマ・アメリカ・世界』(2012年、NTT出版)の続きです。
・・オバマ政権の高官は、クリントン国務長官をはじめとして「スマート・パワー」ということをことさら主張しますが、これはたんにスマートなパワーの行使が規範的に望ましいということではなく、アメリカが力を効率的に行使しようとすれば、そうする以外に方策がないという認識です。それはいわば、アメリカ後の世界におけるアメリカ外交のかたちを探ろうとする試みでもあります。こうした問題意識を具体的に展開したスピーチをクリントン国務長官が行っています・・
この演説の中で、クリントンは世界は否応なしにつながってしまったことを強調し、アメリカは単独では解決できない問題群に直面していることを認めます。それは、アメリカの力の低下というよりも、直面する問題の性質の変化によるものであり、このような世界にあっては、協調行動の基盤を積極的に形成していく以外にない。クリントンは、そのような世界を「マルチパートナー世界」と呼びます。それぞれの極が対立しあうような世界とするのではなく、それぞれの極が協力して問題を解決していく世界とでも言えばよいのでしょうか。
ゲーツ前国防長官も(若干別の文脈ではありますが)アメリカにとっては「ビルディング・パートナー・キャパシティ」が非常に重要だと繰り返し述べています・・(p22)
条件の変化を認識し、これまでの戦略では通用しないことを、自ら認識する。そして、次なる戦略を立てる。当然のことですが、なかなかできることではありません。しかも、国内問題ではなく、全地球的問題についてですから。

アメリカ大統領選挙、どちらが日本にとって得か

2012年11月18日   岡本全勝

久保文明、中山俊宏、渡辺将人著『オバマ・アメリカ・世界』(2012年、NTT出版)から。この本は8月に出ているので、大統領選挙の前です。久保先生の発言です。
・・アメリカ大統領選挙の年になると、よく受ける質問がある。「民主党政権と共和党政権のどっちが日本にとって得か、教えてほしい」というものである。そして多くの場合、とくに経済界や政界の場合、共和党政権の方が日本にとってよい、あるいは日米関係は改善するという認識があるようだ・・日本では、アメリカ大統領選挙の時に、既述したようにほぼ決まって「どちらが日本にとって得か」を尋ねる傾向が強いが、それと同程度に重要なのが、日本が何をするかである。本来、日本の総選挙の際、どの政党が日米関係強化にもっとも積極的であるか、あるいはそのための良案を携えているかも、問うべきであろう。G・W・ブッシュ(子)時代に、日米関係がいい状態であった一つの理由は、日本側が既述したような貢献をしたからであるということを、忘れてはならない・・
ケネディ大統領の名言を借りれば、「アメリカが日本に何をしてくれるかを尋ねてはなりません。日本がアメリカのために何をできるかを考えてほしい」ですかね。

アメリカ大統領選挙、有権者の意識の差

2012年11月15日   岡本全勝

11月9日の読売新聞に、6日に投票が行われたアメリカ大統領選挙の出口調査の結果が載っていました。両候補に投票した人の考え方の違いが、見事に浮き彫りになっています。
「現在の米国」について、46%の人が「ほぼ正しい」と考えていますが、その内訳はオバマ氏に投票した人が93%、ロムニー氏に投票した人6%です。反対に「かなり間違っている」と考えている人は52%。その内訳は、オバマ支持者が13%なのに対し、ロムニー支持者は84%です。
「アメリカ経済の状態」について、「良い」と考えている人は23%です。その内訳は、オバマ支持者が90%、ロムニー支持者は9%です。逆に「悪い」と考えている人は53%。その内訳はオバマ支持者が38%、ロムニー支持者が60%です。
「アメリカの経済問題の責任は誰にあるか」という問に対して、オバマ大統領と考える人が38%。そのうちオバマ支持者は5%、ロムニー支持者が94%。ブッシュ前大統領にあると考える人が53%。その内訳はオバマ支持者が85%、ロムニー指示者が12%です。
「政府の役割」について、強化すべきだと考えている人が43%います。その81%がオバマ支持者で、17%がロムニー支持者です。民間移譲を進めるべきだと考える人が51%で、その内訳はオバマ支持者が24%、ロムニー支持者が74%です。
こんなにはっきりと分かれると、わかりやすいですね。