カテゴリーアーカイブ:行政

西尾勝先生、分権改革の整理

2018年5月19日   岡本全勝

今日は、午前中に都内である勉強会に参加した後(これはこれで実り多い勉強会だったのですが)、筑波大学まで講演会を聞きに行ってきました。日本学士院主催、西尾勝先生の講演「地方分権改革を目指す二つの路線」です。
分権改革から、10年以上が経ちました。その過程に参画された西尾先生が、現時点でどのように分析整理されるか、興味がありました。いつもながら、切れ味良い説明で、勉強になりました。
司会が村松岐夫先生で、東京と京都の行政学の二大巨頭がおそろいです。

会場では、西尾先生と村松岐夫先生のほか、塩野宏先生にも、久しぶりにご挨拶することができました。
私は、東大法学部で、西尾先生に行政学を、塩野先生に行政法を学びました。当時20歳だった私は、先生方を見て、「遠くの山」「とても登ることのできない、絶壁の高山」と思いました。当時、西尾先生は37歳、塩野先生は44歳でした。
自分がその年齢になった時に、自らの未熟さが恥ずかしかったです。私は37歳の時は自治大臣秘書官、44歳の時は富山県総務部長を終えて、内閣直属の省庁改革本部で参事官(課長級)をしていました。
本人は若いと思っていましたが、学生や若手公務員から見たら、「おじさん」だったのでしょうね(苦笑)。さらに、今は事務次官を終えた63歳。学生からは、父親より年寄りの「爺さん」です。

村松先生には、東日本大震災の対応と復興について、社会科学の学界を挙げて、分析をしていただきました。「東日本大震災学術調査」。ありがとうございます。充実した土曜日でした。

原発事故の責任とその後

2018年5月15日   岡本全勝

5月14日の日経新聞、経済教室、橘川武郎・東京理科大学教授の「エネルギー基本計画の論点」から。

・・・日本の原子力開発は「国策民営」方式で進められてきた。福島第1原発事故のあと、事故の当事者である東電が福島の被災住民に深く謝罪し、ゼロベースで出直すのは当然のことである。ただし、それだけですまないはずである。国策として原発を推進してきた以上、関係する政治家や官僚も、同様にゼロベースで出直すべきである。しかし、彼らはそれを避けたかった。そこで思いついたのが、「たたかれる側からたたく側に回る」という作戦である。
この作戦は、東電を「悪役」として存続させ、政治家や官僚は、その悪者をこらしめる「正義の味方」となるという構図で成り立っている。うがった見方かもしれないが、その悪者の役回りは、やがて東電から電力業界全体、さらには都市ガス業界全体にまで広げられたようである。一方で、政治家や官僚は、火の粉を被るおそれがある原子力問題については、深入りせず先送りする姿勢に徹した

このように考えれば、福島第1原発事故後、政府が電力システム改革や都市ガスシステム改革には熱心に取り組みながら、原子力政策については明確な方針を打ち出してこなかった理由が理解できる。熱心に「たたく側」に回ることによって、「たたかれる側」になることを巧妙に回避しようとしたのである。誤解が生じないよう付言すれば、筆者は、電力や都市ガスの小売り全面自由化それ自体については、きわめて有意義な改革だと評価している。
結果として、福島第1原発事故後7年余りが経過したにもかかわらず、原子力政策は漂流したままである・・・

弁護士、福祉と連携して出張相談へ

2018年5月10日   岡本全勝

4月30日の日経新聞に「法テラスの出張相談 福祉と連携、利用広げる」が載っていました。

・・・お年寄りや障害者ら、生活面で支援が必要な人が直面する法的トラブルをうまく解決してもらえるよう日本司法支援センター(法テラス)が力を入れている。こうした人たちの被害は法的なサービスにつながりにくい実態があるためだ。今年1月からは、認知症などで被害の自覚がないお年寄りらの自宅での相談に応じる新たな取り組みが始まった・・・
・・・法テラスは開業後、お年寄りや障害者ら福祉支援が必要な人たちの法的課題を巡り「被害が当事者にも認識されず、情報も届いていない」といった反省点が浮かび上がった。その結果、福祉分野で広がる「アウトリーチ」を導入。「相談待ちでなく、援助者の側から積極的に問題を見つけ出す」(法テラス本部)手法で、福祉機関と連携した出張相談などに取り組んできた・・・

記事には、判断能力が低下したと思われる高齢者が金銭の被害にあっていて、それを弁護士が救った事例が紹介されています。
困っている人をどう救うか、自分では判断できない人、行政の窓口に相談できない人をどのように救うか。様々な取り組みが広がっています。

異論の統一、国会の役割

2018年5月6日   岡本全勝

朝日新聞、5月6日の社説は「エネルギー計画 この議論で決めるのか」です。

・・・経済産業省が、今年夏に改定する「エネルギー基本計画」の骨子案を審議会に示した。国内外で逆風が強まる原発と石炭火力発電を基幹電源と位置づけるなど、4年前に決めた現行計画をほぼ踏襲する内容だ・・・
・・・国民の声に耳を傾けるプロセスも軽んじられている。
経産省は、ネットなどで受け付ける「意見箱」を設けた。原発の賛否は分かれ、再エネは大幅拡大を求める声が目立つが、そのまま印字した分厚い紙を審議会に配るだけで、議論の材料になっていない。エネルギー分野のNPOや消費者団体から、国民各層との対話の場を求める声も相次いだが、黙殺された・・・
・・・どんなエネルギーをどれだけ使うのか。望ましい方向に変えるには、個々の消費者や企業に適切な行動を促すことが欠かせないのに、こんなやり方で社会の理解が進むだろうか。
今からでも遅くない。市民やさまざまな団体、幅広い知見を持つ専門家らと意見交換する場を設け、活発な議論につなげるべきだ。重要な政策を鍛え直す機会を逃してはならない・・・

原発については、国民の間で意見が分かれています。今後のエネルギー政策をどうするのか、安定供給、安全、環境保全などの観点で、これが正しい唯一の答というものはないでしょう。しかし、どれかに決めなければならない。その際にどのような手順で決めるか。それは、国会です。国民の間にある異論を集約する機能と責任は、国会にあります。

この社説では、経産省、それも審議会が決めるかのように読めます。
かつて、審議会は、国民の意見を聞く、有識者の意見を聞く、関係者の意見を聞く場として活用されました。しかし、そのお膳立てを官僚がすること、結論もあらかじめ決められているのではないかという批判がありました。「官僚の隠れ蓑」とも言われました。
2001年の省庁改革の際も、官僚主導から政治主導に変える一つとして、審議会の数や役割の見直しをしました(方針は決まっていて、その実施が私の役割でした。「中央省庁改革における審議会の整理」月刊『自治研究』(良書普及会、2001年2月号、7月号にまとめておきました)。

エネルギー政策や原発のありようが重要政策なら、経産省や審議会に任せるのではなく、それらの議論も踏まえ、国会で議論すべきことでしょう。
案の提示とその長所短所の説明は、官僚の役割です。しかし、異論がある時に、結論を出すのは、国会です。
国民の声を聞く、国民の声を反映させるのは、審議会ではなく、国会です。

塩野七生さん、この頃の官僚

2018年5月4日   岡本全勝

塩野七生さんは、しばしばハッとするような、分析をされます。食を巡るエッセイに、次のような文章があります。『想いの奇跡』(2018年、新潮文庫に再録)p131「イタリアを旅する」。この文章は、2008年に書かれたものです。

・・・一昔前は、高級官僚にも政治家並みの健啖家が多かった。政治家は始終人と会っているためか食欲の旺盛な人が多いが、官僚も政治家同様に健啖家であったのだ。それがこのごろでは、なぜか食の細い人が多くなった。それに比例して、仕事もできない人も多くなった気がする。
昨今の官僚タタキも、仕事ができるがゆえに権勢もある官僚だからタタくのではなく、真の力がないために既得権益を守ることしか頭にない官僚に、国民が愛想をつかしたからではないかと思っている。こんなへっぴり腰の集団に自分たちの運命を左右されたのではたまったものではないとは、私だって感じているのだから・・・

塩野さんの眼力が素晴らしいとともに、イタリアから見ていると、日本にいるより、日本が見えるということでしょうか。